第4章 ~絶対国防圏~(2)
久しぶりの更新ですみませんです。
いよいよ戦端が開かれます。
裕太の恋愛要素も少しだけ入れました。今後どう育つか楽しみです。
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ビザニア帝国軍第2陣の斥候軽騎兵が五騎、早朝の朝靄と湖からの霧で視界を阻まれた街道上を駆け足で貫けて行く。視界は僅か20m程度しかなく、斥候兵たちは前方の街道と右側の崖の法面を確認するのが精一杯の様子で、それでも鐙の上に立ち上がって少しでも崖の上を確認しながら進んでいく。
だが、馬上の斥候兵よりも更に2~3mは高い上に朝霧で視界が遮られており、彼らは何も見る事ができないまま湖の側方を抜けて前方の街道まで進出した。
「取り敢えず異常はないな。敵影も無いし、安全を示す青色の信号弾を打ち上げろ。」
斥候部隊の隊長らしきライトメタルアーマーの20歳位の騎士が、他の騎兵、ハードレザーアーマーを装備した兵に命令する。兵達も17~20歳位の若者で、素直に「はい!直ちに行います!」と馬から皆で降りて信号弾の準備を始めた。
「・・・・あれは実戦経験の無い新兵だな。重要な斥候兵に新兵などを使うとは、敵軍の練度と指揮官の作戦指揮能力の底の浅さが哀れな程透けて見える。本当にこれが大陸に勇名を轟かすビザニア帝国軍なのか?」
裕太は街道の湖の出口側で崖の上に伏せて腹這いになって、ビザニア帝国軍の斥候兵達が街道の真ん中で馬を下りて大声で信号弾の準備をしているのを見て呆れて言った。
「キンダー(子供だ)」
思わず独逸語で呟いた裕太は、ベルリン防衛戦でのヒトラーユーゲントの少年兵達を思い出し、自分がこれから彼らを殲滅しなければならない現実に心が凍り付いた。
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・・・・少年兵達は、ほぼ例外なく、母を呼んで死んでいった。
「ムッター!ムッター!(お母さん!お母さん!)」
敵弾を受け、裂けた腹から内臓をぶちまけながら母を呼びつつ死んでいった少年兵達。大粒の涙を流しつつ虚空に手を伸ばし、母を求めながら死んでいった彼らと目の前のビザニア帝国軍の幼い斥候兵達が被って見えて、裕太の手が瘧のように震える。
「・・・ユータ、私も一緒に戦うよ。大丈夫、大丈夫。もし、これから起こる戦闘をユータが罪だと思うなら、私も一緒に背負うから。」
エテルがユータの手を握り、頬をユータの頬に摺り寄せて言った。
「なぜ?なぜそこまでしてくれる?」
ユータは震えながら聞いた。
「・・・あなたが好きだから。愛してしまったから。」
エテルは、そう言うと裕太の唇にキスをした。
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「信号弾、発射します!」
(ドーン!)と大きな音と共に、青色の光の弾が虚空に撃ちあがった。
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裕太はエテルの手を握りながら、これから非情な命令を下す。なのに、不思議な程に心が落ち着いていた。
まるで、自分の内面が入れ替わる様に感じる。
そう、記憶に残る、最初の生 独逸第三帝国陸軍砲兵将官、フランツ・フォン・マイヤー伯爵中将に。
冷酷にして有能な指揮官であった、あの自分に。
「・・・・・よし!これで敵軍は安全と判断して進軍してくる!直ちに斥候兵を始末しろ!」
「了解!指揮官殿!弩弓隊、放て!!」
(((ビュウンビュン!!!)))
弓ではなく、攻城兵器に分類される弩弓が一斉に放たれる。重装騎兵すら一撃で貫通するその威力に、ビザニア帝国軍の斥候兵達は声を上げる事も出来ずに血飛沫をあげて倒れていく。
「死体と騎馬を片付けろ!このまま敵軍の先頭が此処に到達するまで手を出すな!!」
最早一切の躊躇いもなくそう命令する裕太の貌は、前々生で軍団を指揮していたマイヤー砲兵中将のそれに変わっている様であった。
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「青色信号弾、確認しました。」
湖手前の平原で野営したオテル将軍麾下の第二陣部隊は、日の出前から起きだして準備を整えていた。
「よし、今日中にヘルシニア攻略中のモルガン司令官に合流するぞ。重装騎兵や重装歩兵の鎧や大楯にハルバードなどの重量物は、輜重隊の荷馬車や従軍商人隊の荷馬車に積んで身軽にして行軍速度をあげれば夕刻には合流できるはずだ。ここは安全地帯だから、武装を一旦解いて合流の直前に再装備すればいい。」
オテル将軍は麾下の第二陣・15万の軍勢に命令する。
「さあ、行くぞ!モルガン司令官閣下が援軍と補給物資を待っておられる!全軍、進め!!」
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ビザニア帝国軍は速足位の速度で進軍し、ナッキュ湖畔の街道を進んでくる。
「・・・・いいか、まだだぞ。命令を待て。先走ればすべてがご破算になるぞ!」
(暁の長槍団)の各級指揮官達や冒険者パーティーのリーダー達が、はやる部下や仲間たちを抑えて(その時)を待つ。
裕太は湖畔の街道出口の崖上で待機してタイミングを計っている。
ついに、ビザニア帝国軍は全部隊が湖畔脇の街道に入り、更に先頭部隊が出口に差し掛かった。
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「今だ!前後を塞げ!」
裕太の魔信での命令に、「落とせー!!!」「どりゃああああ!!!」
ビザニア帝国軍の前方の街道上に大量の岩と丸太が盛大に落とされて進路を塞ぐ。高さ4m・奥行6mにもなる山になり、一部はナッキュ湖にも落ち込み完全に進路を塞いだ。
続いて最後尾でも同じことが起き、退路も塞ぎビザニア帝国軍は袋小路に取り込められた。
「発揮油を!!」「了解イイ!!!」「ヒャッハー!!!」
その山に大きな陶器の壺に入った発揮油や酒精・油が何十個も投げられて行く。しかも、裕太の知識で砂を混ぜたうえ油と発揮油がブレンドされた、油脂焼夷弾に近い物も混じっている。
「火矢を放て!火炎魔法もだ!!」「おおーー!!!」「ファイアーボール!」「ファイアーランス!」
((((ボワン!!)))) ((((グワン!!))))
ビザニア帝国軍は進路と退路を塞いだ山が、盛大に炎上して近づく事も出来ずに混乱している。
「何だ!何が起きてんだ!」「事故か?補給物資の油が燃えたのか?」「ええい!馬を鎮めよ!蹴られたら負傷者が出るぞ!」
ビザニア帝国軍は、これだけのことで混乱に陥っている。
現役の古参兵や精鋭を悉くヘルシニア強襲に引き抜かれ、実戦経験の無い新兵や現役を長く離れてから再招集された予備役兵ばかりの上、士官や騎士は(特科士官・兵站士官・軍政士官)が殆どであり、少数は居る(兵科士官)も20歳そこそこの経験不足の者ばかりだ。非常事態に対処できる指揮官が、(特科将官)のオテル将軍以下誰もいないような状態では当然の事であろう。
だが、裕太やグスタフ団長以下、ロンバルディア・クーアラント側は内情までは知らなかった。
だから、精鋭部隊と考えて対処した。
少しでも気を抜けばやられる、と。
徹底的に殲滅せねば、数も少なく正規軍でもないこちらがやられてしまうと。
部下が、仲間が、そして自分が。
その恐怖に晒されたクーアラント・ロンバルディア側は当然、徹底的な殲滅攻撃となった。
なるべく早く更新します。
仕事が地獄で。




