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第二章 宿屋:気付きの瞑想

更新遅れました。申し訳ございません。今回は裕太編です。

*********************************************



 「やっと帰って来れたわね。」 リリアがほっとした顔で呟いた。



 ここはタラスの街の表通りから一本入った裏通りにある宿屋(気付きの瞑想)。

その2階の部屋の中である。


 パーティー別に分かれた、いわゆるドミトリー部屋で宿泊費に余裕のない新人や下位冒険者ご用達の安部屋である。とりあえず2段ベット2つと1つのソファー・小テーブルがあるだけの小部屋であるが、(四つ葉の新芽)が週単位で借りているパーティーの拠点でもある。


 「とりあえずユータは、ソファーでいいかな?」リリアが聞く。「それとも、あたしのベットで一緒に・・・モゴモゴ」

(いや、それはまずいっしょ!)ユータは思わず色々と想像してしまい心の中で叫ぶ。

「えっ?何なら私と一緒でも・・(ニチャア)」房中術のスキル持ち、マラクの神官のシエラが邪悪な笑顔で誘い掛ける。


 「ちょっと!2人とも抜け駆けは無しよ!」「ほら、ユータが困ってるじゃない!」

残る二人に窘められ、「冗談よ~。」「もう、真面目ちゃんなんだから。」とリリアとシエラがくすくす笑いで混ぜっ返す。


 「あー、僕はソファーで十分です。ありがとうございます。」裕太は敢えて真面目な顔で四人に礼を言い頭を下げた。

「気にしないで。この部屋は後三日分前払いしてるから、その後はベットが5つある部屋に変えてもらおうね!」「それまではソファーでごめんね。」


 皆の気遣いがうれしく、「ありがとうございます。」としか裕太は言えなかった。



 その後、中庭の井戸で体や髪を順番に拭き清めた。女性陣に先にすましてもらい、最後に裕太は井戸の前に行くころには空は夕焼けで赤く染まりかけ、遠くに見えるまるで中世の様な尖塔や石造りの館や街並みを照らしていた。裕太は遠い記憶・前々世にフランツとして幼少期を過ごしたオストプロイセンの夕暮れを思い出し、言いようのない寂しさと郷愁に襲われ思わずわが身を抱きしめた。




 「夕飯にしましょー。」エテルが宿の一階にある自炊用の竈に火を入れて、備え付けの鍋に手持ちの保存食の残りや今回のクエストのついでに採集した野草や山菜、軍払い下げの塩漬け魚や干し肉を細かく切ってスープを作っていた。

 「これに軍の固焼きパンを浸して食べると、柔らかくなっておいしいのよ~。」「そうそう。でも、エテルが作ると他の3人が作るよりおいしいんだよね。料理の才能ある。」アリアが真面目な顔で絶賛すると、「そんなことないよ~」と、まんざらでも無い顔でエテルが答えている。


 「さあ、召し上がれ!」「(((いただきます。)))」

「うまっ!!」塩加減と旨味の調和の攻撃に、裕太の舌が降伏旗を揚げた。

(塩漬け魚と干し肉の塩分がスープにすることで丁度よく染み出して消費期限間近の熟成された肉と魚の旨味に合わさり、それらが野草や山菜に染み渡って正に絶品となっている。)

 「これはうまいよ、いや、お世辞抜きで。」裕太が食べながら嬉しそうに言うと、「でしょう?エテルの料理はほんとに美味しいのよ。街の食堂の料理なんか、食べたくなくなるわ。」

 「うちらのパーティー、ホントに恵まれてるよ。」「ウマウマ。」

皆に絶賛され、エテルはテレテレだった。


 その後、疲れていた皆は部屋に戻り早々に眠りについた。




******************************************


 「目標、700m先敵塹壕線!弾種マスタードガス弾!装填・発射命令を待て!!」


 「総員防毒面装着!風向きに注意しろ!」「発射用意!・・・・・撃て!!」


    (((((ドン!ドン!ドン!))))


・・・・・夢を見ている。そう、これは夢だ。


     1917年、西部戦線・ソンム。


 私はプロイセン王国陸軍砲兵中尉として、((あの地獄))に居た。

 塹壕戦の膠着状態を打破すべく、投入された非人道兵器・毒ガス弾。最初に使ったのは我が帝国だった。効果は覿面で、対毒ガス装備を持たない連合軍の将兵は、文字通りもだえ苦しんで死んでいった。だが、直ぐに反撃が来た。敵も毒ガスを投入してきたのだ。初期の防毒面は正にお粗末で、効果はほとんどなくお互いに夥しい戦死者と負傷者を大量生産した。


 私は下級とはいえ指揮官として、(その殺戮兵器)を躊躇なく使用し殺戮を繰り返した。


 報復として撃ち返されたガス弾で、もだえ苦しんで死んでいく友軍兵達。敗戦濃厚で有効な新型防毒面が全く足りず、将校にしか支給されずに目の前で血反吐を吐きつつ死んでいく部下たちを只々見続けるしかなかったあの地獄。

 

 1人の兵卒が塹壕の床に転がり泥にまみれながら、血の涙を流してこちらを見ている。


 そう、ハンス二等兵だ。17歳の新兵、まだ五日前に前線に来たばかり。

彼は嘔吐し、血涙を流しつつ塹壕の泥まみれの床をこちらに這いずってくる。


      私に手を伸ばし、救いを求めて。


 彼は、声にならない声で私に問いかけてくる。


「なぜ?」と。


「なぜ、助けてくれないのか」「なぜ、死ななければならないのか」


 私は、後ずさりして大事な部下であるはずの彼から逃げる。


「なぜ、置いていくのですか」「中尉殿、助けてください」「助けて」「助けて」「たすけて」


 頭の中で、見捨てた、死んでいった部下たちの声が渦巻いて襲い掛かる。ぐるぐると。

 

 「許してくれ!すまなかった!許してくれー!!!!!」



***************************************



「・・・・・!おきて!起きて!ユータ!!ユータ!!」

「しっかりして!大丈夫!大丈夫だから!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ。これは夢か。


 夢で、よかった・・。





不定期更新ですいません。

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