☆6
二人は早速、竿付き未熟キンタマ(西園がフグリンと命名)を連れて店舗へと戻った。当初は料理で元気づける方針だったのが、まさか育児をすることになるとは。望月は苦笑い気味だが、西園は持て余していた母性の行き先を見つけたとばかりに、恍惚とした瞳でフグリンの竿部分を撫でつけている。
「この子、なに食べるのかな?」
「どうだろう。恥ずかしながら俺もキンタマを育てたことはないから」
西園は意外そうな顔をする。いつも何でもソツなくこなす望月でも、キンタマの育て方は知らないと言う。命を預かるというのに、自分たちは軽率で無知だったのではないかという一抹の後悔が生まれかけるが、彼(彼女)は慌てて頭を振る。もう既に連れて帰って来てしまっている。今更だ。
「まずは水をやろう」
望月の冷静な声音。確かに、何はなくとも水分補給は大事だ。
トレーに水を注ぎ、タマの下半分くらいまで浸してみた。少し冷たかったのか、ピクンと跳ねたので、西園は慌ててレンジで人肌程度まで温めた湯を用意し、そちらにフグリンを移し替えてやった。すると今度は気持ち良かったのか、竿の部分がプクリと膨らんで、チョロチョロと皮の隙間から尿が垂れてきた。少しだけ剝いてやり、尿道を塞いでいた皮部もどける。すると公園の水飲み場にある蛇口を捻ったように上向きに少量ずつ噴き出した。
「なるほど。竿が短すぎて、常に上を向いているのか」
それは即ち、上に噴いた尿が降って来て竿自体に当たってしまうということを意味し、衛生的に好ましくなかった。西園が逆さに持って、尿道を下にしてやると、ようやく適切に放尿できた。
トレーの湯を張り替え、暫くそこにつけて様子を見ることにした。足湯ならぬ玉湯である。結果、タマの下側が白く変色し、ふやけた。湯につかり過ぎた人間の指先と同じような現象。特に成長に繋がりそうにはなかった。やはり栄養が必要なのか。
次に市販の植物活力剤を尿道に突き刺し、液を注入してみたが、陰毛が薄っすらと生えただけで、これも陰茎成長の効果は見られなかった。二人は万策尽きた。
途方に暮れ、何の気なしに西園がフグリンを抱き上げた、その時だった。
「ん……あん」
西園の口からくぐもった嬌声が上がった。シャツ越しの乳頭に甘い性感が走っていたのだ。慌てて視線を下げると、密着したフグリンの竿部分、皮から僅かに覗いた尿道口が酸素を求めるかのようにパクパクと動き、それが甘噛みの要領で西園の乳首に刺激を与えていたのだった。
「もしかして」
二人、顔を見合わせる。望月がフグリンを受け取り、西園がテキパキとシャツを脱ぐ。渦巻く腹毛とシャツの裏地で静電気が起こり、パチっと小さな音を立てた。裸になると、胸の周辺の贅肉を寄せ、ぐっと突き出す。
「裕哉君、吸ってみて」
合点承知とばかり、望月が西園の乳首へと吸い付く。ジュパジュパ、チュルチュルと激しい水音がしばらく続き、やがて……望月の口腔へと流れ込んでくる液体があった。もちろん二人とも予感があったからしたことだが、実際に出てくると、やはり形容しがたい感慨が湧くのだった。
しばらく夢中になっていた。西園が与え、望月が飲む。40を超えて惹かれ合った男二人、しいて今まで子供や母性・父性といった話題は避けてきたというのに、母乳ひとつで自分たちも生命のサイクルに加わったような恍惚に陥っていた。だがいつまでもそれに浸っているワケにもいかない。
「ん……そろそろ」
「そうだったな。フグリンにもあげないと」
望月がフグリンをゆっくりと持ち上げると、自分が先程まで吸っていた乳首へとあてがう。慎重に皮を剥いてやると、尿道口が乳首を捉え、そのまま吸い付いていく。
「飲んでる飲んでる」
堂々とした飲みっぷりだった。潜在的に授乳願望を抱えたオスの乳腺を刺激し、母乳が出るようにし、それを飲んで成長する。そういう生存戦略だった。
「少し大きくなっている気がするな」
最初より無理なく吸えているようだ。陰茎の長さが僅かに伸びたのだろう。
望月も辛抱堪らなくなり、反対側の乳首に吸い付いた。西園は「キャッ」と小さな声を上げたが、そんな彼の事も受け入れ、頭を優しく撫でる。
アラフィフ男性の母乳を求め、同い年の男性が鼻息荒く口をすぼめ、キンタマ付き粗チンが尿道口を盛んにパクつかせながら、左右から乳首を吸いあげる。他のラーメン店では滅多に見られない光景が広がっていた。




