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☆3

 国際世論も沈静化した。尿道でもイケるなら話は別だ。アメリカも深刻な懸念から、引き続き注視はするが直ちに脅威となる陰茎ではないという見解に移った。Y県は巨大粗チンおじさんを受け入れた新たな日常へと回帰する。

 その巨大粗チンおじさんだが、崇敬を集める一方で、数日すると新たな問題を引き起こしていた。直截に言って臭かった。糞尿は垂れ流し状態で、風呂にも入れない為、激甚な悪臭が県内を襲った。おじさんは自分の近くに置かれたお供え物を毎日少しずつ飲食していたのだが、菓子類などが多く、やはり栄養が偏るのか、下痢気味の排便となり、それが悪臭に拍車をかけていた。街中ではガスマスクが飛ぶように売れ、匂いが衣服に付着するのを恐れてか、雨合羽を着て外を出歩く者も増えた。



 対策に乗り出したのは、再び望月氏。警察・消防と連動し、放水車を五台稼働し、おじさんの体を洗うことにした。人員の多くは愛知からのヘルプだ。頭、顔、脇(気持ち良いのか目を細め、おじさんは腕を上げて洗いやすくしてくれた)と続き、腹へ下り、デリケートゾーンを飛ばし、足先まで洗い終えた。

「さて」

 望月氏の言葉は場に居る全員の内心の声だった。さて、ここからだ。粗チン、尻穴と劣悪な状態の部位も洗わなければミッションは終われない。いや、むしろ一番必要とされている所だろう。

 まず陰茎から取り掛かった。はしご車を用意し、作業員が陰茎の皮の内側に食い込ませるようにワイヤーフックを取り付けた。左右二か所に取り付けると、地上部隊がワイヤーを引っ張る。徐々に皮が剥けていき、その刺激で棒部も勃起し、数分でズル剥け状態となった。自然と拍手が巻き起こる。剥けて露出した所には黄と白の中間色をした恥垢がまばらに付着していた。それらに水流を当て、丁寧にこそぎ取っていく。根気の要る作業ではあったが、みな集中して取り組んだ結果、一時間程度で洗浄しきった。

 


 続いての鬼門というか菊門、尻穴に取り掛かる。何となく空気を読んだらしく、おじさんは腕を後ろに回し、自分から尻タブをグイと持ち上げ、尻の穴を露わにした。具体的な指数までは分からないが、これまでの行動を見るに、おじさんには相応の知能が備わっているらしい。羞恥心は無さそうだが。

 尻穴洗浄は死闘を極めた。何せおじさんは排泄の後、尻を拭いていない。拭くための紙が無いのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだが。しかし、それが意味する所は、

「クソ! クソが飛び散ってくる!」

 隊員の怒鳴り声が示す通りである。尻穴の入り口から道中まで乾いてこびりついていた糞が水を受けて、再び粘質の下痢便状態へと戻り、それが飛び散って来るのだった。隊員たちは慌ててガスマスクを装着したが、手や服は真っ茶色の糞まみれになってしまった。そして、今ですら無間地獄の様相だが、ここで更に悲劇が起こる。

 何とおじさんが脱糞したのだ。追い便である。ウォシュレットを強く当てているうちに潜伏分まで引き出されるのと全く同じ現象が、おじさんの身にも起こっていた。しばらく、奥を洗っては再び新生した物が水流で四散し、また洗うという循環に陥っていた。それでも八分ほど続けるとストックが尽き、やがて洗浄は終わった。ただ洗浄後におじさんが放った特大の屁の風圧で放水車が転倒するというオマケもあった。みな泣きながら車体を起こしていく。

「こんな事のために産まれてきたんじゃない」

 誰かが言った。

 作業の翌日には、愛知県知事から「Y県にはもう関わりたくない」という旨の発言があった。



 溜まった糞に関しては、予想外の結末を見た。研究施設の職員が一部をサンプルとして持ち帰ったのが数日前、そして今日、正式に発表があったのだ。おじさんの糞には地球にない未知の物質が含まれており、解析研究を様々な分野で広く行う事を推奨されたし、という内容だった。

 つまり、おじさんのウンコを買い取ってくれる人達が現れたのだ。山の斜面をボーリングして肥溜めにする計画もあったが、地盤が弱くなり、大雨の際などの土砂崩れを警戒する声も多かったため、今回の申し出は渡りに船だった。更に街も潤うし、おじさんにも幾らかのお金が入る、と一石三鳥。おじさんにも話して聞かせると、彼は頬を緩ませ、嬉しそうに笑ったのだった。

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