三人寄れば…
「若君…あんた馬鹿ですか(-Д-)!」
「(^。^;)??」
秦初がその日の報告をしている最中に、魯粛から突然頭ごなしに罵倒が飛んできて、彼は訳も判らず戸惑っている。
本来なら、家来で在る筈の魯粛が太子様に向かって発する言葉とも思えないので、通常なら趙良が待ったを掛けそうなものだが、彼も困った様に主君を横目で観ている。
秦初は案の定、趙良の方を振り向いて、『どういう事なのだ!』と眼で訴える。趙良はそれに対して、溜め息で応えた。
さすがに二人から叱責を受けている事が判った秦初は、『なっ…!』という拒否反応にも近い感情が頭をもたげて、腹を立てそうになったが、そこは彼が並みの人物では無い所だろう。
彼は自分が何か不味い事をしでかしたのではないかと、考えてみる…。考えてみるのだが、特に何も自覚は無かった。仕方なく彼は魯粛に問うた。
「何が馬鹿なのか良く判らん…魯粛殿!どうかご教授願いたい!」
魯粛も未だに主君が気がつかない事に呆れた様に、こちらも溜め息をつく。だが、低姿勢で翻意しようと尋ねている者を、これ以上叱りつける事も出来ない。
そして幸いな事に、どうやら趙良は、事の次第が飲み込めていそうなので、彼に話を振る事にした。魯粛自身がこれ以上諭すよりも、若い趙良の口から諭す方が主君も判って下さるだろう。
「趙良、お主なら私の言いたい事が判るだろう?悪いが、主君に説明してやってくれぬか…」
「(^。^;)え~私がですかぁ、言い出しっぺは兄貴じゃあないですかぁ…そりは酷い!」
「(¬。¬)…何?お前も判ん無いとかじゃないよね?」
魯粛は冷ややかに趙良に返す。趙良もそう言われるとまだ若いので剥きになる。
「判りましたよ…私が親衛隊長ですもんね!(-Д-)言いますよ!」
趙良は決心した様に主君を見つめた。秦初も畏まって趙良を見つめる。
「殿!いいですか?今日は確か兄君の子巌様の所に行く予定だけの筈でしたよね?だから私もお伴をしないで命令に従ったのですよ!それを事も在ろうに、我々に無断で櫟陽宮に行ったですと?何かあったらどうするのです!」
趙良はそう言うと、魯粛を横目で観る。『こんなもんで良いか?』とその眼で訴える。
「(¬。¬)…それだけ?」
趙良の説明を聞いていた魯粛は、そう言うと、再び彼を見つめた。今度は趙良が困っている。
魯粛は溜め息混じりに仕方ないと自分の口から諭す事にした。
「50点だな…何か在ったらのとこだけ正解ね!主君、いいですか!貴方、自分の格好を御覧なさいよ…黒髪のサラサラした長髪に甘いマスク、それだけでも貴方は十分に目立ちます。そもそも長髪の野郎なんぞ秦国には居りませんからね!それに貴方は背が高いし、足も長い。そして止めの一発はその黄金の耳飾りです!街中を歩くくらいなら、好奇な眼で観られるくらいで済みますが、あんた櫟陽宮にそれで入ったら不味いでしょ?(¬。¬)観てるのは味方ばかりとは限らないんですぜ?あっしの言う事が間違っているなら、罰を受けましょう?如何です!」
秦初はそれを聞いて言葉も無い。確かに迂闊な行動だったと反省せざるを得ない。しかも叱られてるのか褒め殺しされているのか判らない様な言い回しに苦笑してしまった。
「確かに…お前の言う通りだな!反省せざるを得まい…すまなかった。兄の話を聞いていて、大后様にお逢いするなら早い方が良いと思ったのだ。趙良…お前の指摘にも一理ある。確かに私が驕っていたのだろう。だが、済んでしまった事だ!今後は気をつけよう。敵に観られたと判断して、慎重に行動する事にする。だが、近々で大后様に今一度お逢いせねば為らぬ事も確かだ。魯粛どうすれば良いかな?」
魯粛は再び溜め息を漏らすと、気持ちを切り換える様に表情を引き締めた。
「殿!私も言い過ぎました。申し訳御座らん。前以て指摘しておくべきでしたな!子巌様の所だけなら、函谷関ですから、街外れで心配無いと想ったのです。私も甘かったと言わざるを得ませぬ。」
彼はそこで一旦言葉を切って、少々思案している様だった。そして改めて、自分の考えを述べた。
「これはあくまで私の提案です♪お決めに成るのは主君ですから、良く考えて下されば宜しい。まず、今日からはその長髪を何とかして頂きます。それが一番目立ちますゆえ…。次に黄金の耳飾りは外して下さい。勿論、意味は判っております。それが太子の証だと!只、今堂々とお付けになる必要が在りますか?我々のこれからやろうとしている事は間諜の類いの事なのですから、却って邪魔になるでしょう。その他は…まぁ、後は変えようが在りませんから、まずはそんな所からでしょう。」
「そうですぞ、殿!その耳飾りは白雪殿にさえ見破られたのです!どうも中華の噂というものは、馬鹿に出来ない様ですから、私も魯粛殿に同意させて頂きます!」
趙良もここぞとばかりに嗜めて来る。
秦初もさすがに自分の格好が、この中華では目立ち過ぎると、ようやく自覚する。勿論、何事も無ければ堂々として居れば良いが、敵と遭遇する局面では、成るべく用心した方が良いだろう。
「判った!その様にしよう。但し、長髪を切る訳にもいかん…これは私の本来の姿だからな!それは曲げられぬ。衣類の中に隠し、首周りは襟を立てるなどして上手く誤魔化そう。そして耳飾りはしばらく外す事にする。それでどうか?」
「まぁ…いいでしょう!髪は少し痛みますが、しばらくは編み込んで隠す方が宜しいかと!その方が耳も出ますし、雰囲気は変わりましょうからな♪後、念のため服装も代えて下さい。それで格段に目立たぬでしょうから!」
「判った!そうしよう(*´▽`)♪」
配下の二人は主君が割と素直に聞き入れてくれたので、ひとまずは安堵する。これから我々が対する相手はそれだけやばい連中なのだ。なるべく主君を守りやすい様にしておくに越したことはない。
「ところで、話の続きだが…」
秦初は今日在った出来事を包み隠さず述べた。その話には二人も耳を傾けて真剣に聞き入っている。
『もし仮に今日、殿が観られて居て不味い相手は、恐らく杜摯あたりだろう。甘龍にもご注進するに違いないからな…』
魯粛はその事はこれから、常に念頭に置かねば成らないと感じていた。そこの所は殿はもとより、趙良にもきつく伝えておく。二人もそれに同意した。
「大后様だけは、殿がさる国の太子だと知ってらっしゃるのですね?」
趙良は確認しておく。
「そうだ!後の方々は、私が子規の一族だとしか知らぬ…」
「判りました!それはこちらも重々気をつける事にします!」
魯粛も承知した。
「そうなると、後はどのようにして大后様に接近するかですが…」
魯粛は考えている。今、楽に接近出来るとすれば、それは自分以外には居ないだろう。趙良も主君ほどでは無いにしろ、特徴が有り過ぎて、目立つ事には違い在るまい。
それに引き換え、自分は間諜だから多少の心得がある。変装だ!よもや自分が変装などと云うものに自信が持てる日が来るとは、かつての最強戦士だった時代には想いもしなかったが、ここでそれが活きようとは、人生何が在るか判らぬものだ。
「私が変装して使者に立ちましょう。その中で、大后様は勿論の事、蘭玉様、黒龍殿にも話を通して、まず秦初様の存在を隠せるか確認して参ります。そしてついでに間諜の存在も探って参りましょう。どうも間諜がひとりやふたりくらい居ても可笑しく有りませんからね!」
「判った!お前に任せよう♪魯粛、お前の本領発揮の時だ!やむを得まい。但し、くれぐれも慎重にな!お前は黄金の騎士団の副長だから、よもや後れは取るまいが、注意せよ!」
「判っております!この魯粛、まだまだ死ねませんからな…心配には及びませんよ♪」
魯粛はそういうと右拳を胸に置いて、『任せて下さい(o≧▽゜)o』と目配せした。
「それでだが…身分はどうするのだ!さすがに櫟陽宮は君主の宮殿だからな。おいそれとは入れて貰えないぞ。私は蘭玉様や黒龍殿が一緒だったから入れたが、お前はそうは行くまい。」
秦初は心配そうにそう尋ねる。すると魯粛はあっけらかんとした顔でそれに応えた。
「あぁ…それなら考えがあります!」
魯粛はそう口をつくとニッコリと微笑んだ。




