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白雪の願い

その晩は皆時間を忘れて、遅くまで語り尽くした。


その為、秦初と趙良はその夜は白雪の館に泊まり、明くる朝早くに斉国を出発する手筈と為ったのだった。


白雪や喬燕とは此処で別れるが、今後の為にと、二人の道行きには白峯も加わる事と為ったのである。


「宜しくお願い致します…」


白峯はガタイの良い頑強な胸部を窮屈そうに折り畳むと、深々と頭を下げた。


「白峯、励むのですよ…」


白雪は弟に姉らしい優しい言葉を掛けながら、背中を推す様に、強い気持ちを込めた。


「無論です…この運命的なお引き合わせを大事にしなければ成りません。」


白峯は長年待ち焦がれた様な強い気持ちを表しながら、決意を新たにしていた。


「趙良様…お身体にお気をつけて、私はいつまでも貴方の事をお待ちしております。」


「判っている…時が来れば必ずそなたを迎えに来よう♪」


喬燕は趙良を想い、趙良もそれに応える。


若き二人はこの門出に水を指さない様に、しばしの別れに抱擁していた。


白雪は名残り惜しそうに、秦初を見つめると、


「太子様…少々宜しいでしょうか?」


そう言って、秦初を近くの小高い丘の上に誘った。


秦初は『……』と考え込んでいたが、振り向きながら、趙良を見ると、


『直ぐに終わるから、少々待つように…』


そう言って、白雪を伴い、丘の方に歩を進めた。


白峯はそんな姉の背中を笑顔で見送っている。


「何でしょうか?」


趙良は白峯に声を掛けたが、白峯は、


「さぁ??┐('~`*)┌…」


と含みを持たせるだけで、明解な解答は得られなかった。


『男女の事に兎角(とかく)首を突っ込むものじゃあ無い…』


白峯はそういう主義だし、第一、今度いつ会えるか判らないのだから、あんたはあんたの想い人ともう少し、語り合えば良かろう…そう想っているのだ。


ここら辺が、趙良の生真面目過ぎる所以であり、主を御守りするのが、私のお役目と心得ているものだから、そんなに簡単に割り切れる者でも無いのだ。


(;^_^A…要は不器用って事ですかな?


喬燕は喬燕で、趙良の其処ら辺の機微も理解しており、今此処で彼に声を掛けない事が、愛する人を迷わせ無い事だと心得ているので、自分は一歩引いて、彼のそんな姿を優しく見つめていた。


彼女も控え目で、奥ゆかしい…いやいや筋金入りの奥手だったのである。


白峯はそんな二人がとても観ていて、焦れったく、仕方がないので自分が人肌脱ぐ事にして、二人の肩に手を廻すと、


「まぁまぁお二人さん…話が長くなるかも知れんのですから、互いに怖い顔してないで、気楽に行きましょうや?でしょ(*^^*)♪」


そう言いながら、三人で肩を組んだままのんびりと、丘の上に目を遣って、二人の姿を遠目で見つめて居たのだった。


白雪は丘の上から雲を観ている。


白い雲は一面の青空の中を雄大に細長く伸びて、後から後からと続きながら、のんびりと流れて行く。


秦初は急かすでも無く、此方も青空を眺めながら、時折、白雪の方をチラッと見て、その言葉が発せられるのを気長に待った。


「太子様…衛鞅様は、私にとっては、あの白い雲の様なお人なのです。」


白雪はそう呟きながら、秦初を見つめた。


(*^_^A「……」秦初はその白い雲を眺めながら、何となくだが、言わんとする事が判る気がした。


白雪はフフフッと笑いながら、


「可笑しいでしょう?」


と言って恥ずかしそうに照れている。


(´▽`)「いいえ…何となく判る気がしますよ…」


秦初はそう同意した。


「衛鞅様はあの白い雲の様に、自由な方…そして掴み所が無い方、いくら追いかけても、あの白い雲の様に雄大に漂いながら、先に先にと行って仕舞われるのです…だから私には少し心配なのです…」


白雪はそう言うと、秦初を再び見つめている。


それはまるで、


『私の頼みが判りますか?』


と訴えている様に秦初には感じられた。


「白雪殿…いつの時代も男とはそういう者です。特に大志を抱いている本物の男の場合はね。男とは本来的にいつになっても童心の心を忘れない者ですから、自分の見つけた"遊び"に夢中になると、ついつい(ほか)の者は後廻しに為ってしまうのですよ♪改革を"遊び"などと表現するのは、不遜かも知れませんがね…」


(´▽`*)「いいえ…良く判ります。面白い喩えですね…実際、太子様も大きな大志を抱いておられるのですから、衛鞅様と似た所が在るのかも知れません…」


白雪は秦初が自分の言わんとしている事に、既に気がついているのだと感じていた。


(*´▽`)「本来なら、男と女の仲ですから、嫉妬と取れなくも無い。改革に邁進する男への嫉妬という意味ですが、貴女にもそれが無いとは言わないが、今言わんとしている意味合いは違うのでしょうね…貴女は彼が行き着く先で、只ひとり立ち往生して仕舞う事に危惧している様に感じます。助けてあげたいが、貴女にはそれだけの長い足が無い…そこまで辿り着けない、そういう事なのでしょうね?」


秦初はどうやら白雪の危惧を的確に捉えた様である。


(´▽`;)「!!」白雪は自分の気持ちを的確に言い当てられて、少し驚いていたが、同じ大志を抱く者としての戒めが、この方には在るのかも知れない…そう想ったのだった。


(´▽`*)「太子様はどうやらそこら辺の歯止めを掛けられる方なのですね…」


白雪は羨ましいという気持ちを素直に口にした。


(´▽`)「私は太子ですからね…破裂するまで邁進する訳には往かぬのですよ…それに万が一、私がそうなった場合には、止められる者、止めてくれる者が、たくさん廻りに居てくれます。だから貴女の言わんとしている事が良く理解出来たのでしょうね…」


秦初はそう言って、はにかむように笑った。


「助けてくれますか?」


白雪は単刀直入に切り出した。


秦初は優しい面持ちで白雪を眺めながら、


(´▽`)「…」と少し考え込んでいた。


そして、ゆっくりと言葉を選ぶように話し始めた。


(´▽`)「そうですな…渠梁様(孝公)が生きておられる間は、彼は安泰でしょう。しかしながら、改革とは…遣り方の如何(いかん)を問わず、必ず敵を作るものです。本人は国の為に成ると信じて行った事でも、その為に不利益を被る人は必ずいます。喩えそれが馬鹿らしい程、身勝手な既得権益だったとしてもね!特に秦国は因習の根深いところで、古くからのさばって居る貴族連中がいますからな…そういう連中を相手に廻して、改革を進める事は中々に厳しい道程(みちのり)でしょうし、敵も多く作る事でしょうね…当面は見守る事しか出来ませんが、いざと為れば、助け出すのは容易(たやす)い事でしょう…がしかし。」


秦初はそこまで言うと、急に言い淀んだ様に口を(つぐ)んだ。


『本人が逃げる気が在れば…の話しです。』


この事はやはり口に出す事は(はばか)られた。


衛鞅という人が真摯に改革に向き合っている人なので在れば、それに殉じる…それが中華の偉人の考え方なのである。


『いざとなったら全てを捨てて、逃げる事が出来なければ、危機は回避出来ぬ。本人がどこで身を処して、その身を引けるか…』


それ次第だな…と秦初はそう想うのだった。


白雪は急に言い淀んだ秦初を心配そうに見つめている。


秦初はそんな白雪に優しく尋ねる様に口を開いた。


「時にあなたもいずれは彼の許に、傍に行くのでしょう?ならばまずは貴女が彼を支えてあげる事こそが大切に為るでしょうね。勿論、貴女が彼の邪魔にならぬ様にしたい気持ちは判りますが、貴女と生きて行く希望が在れば、先の展望も少しは変わるかも知れませんよ。私はいつだってあなた方に手を差し伸べる用意はしておきますが、此れからのあなた方の生き方次第に為るのではないでしょうか?」


そう締め括る様に話を終えた。


白雪は頷きながら、


「私もそう想います。まずは心配する前に行動すべきですわね…貴方に相談して良かったですわ♪私も近いうちに…そう春に為ったら秦に、あの人の許を訪ねたいと思っています。」


そう応えると、感謝の意を込めて、軽く会釈した。


(´▽`)『良かった!此れで少しは状況が好転するかも知れない…』


秦初はそう想いながら、彼女がそこまで愛する衛鞅という人に、より強く興味を抱いたのだった。


(´▽`)「会った時にそう伝えておきます。彼も貴女が来ると知れば、活力も湧く事でしょう。私も彼に逢うのが愉しみに為って来ました。」


秦初はそう述べると、清々しく微笑んだ。

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