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白雪との邂逅

『御理解頂けたのだろうか?』


秦初は横目で白雪を眺めている。


その白雪は秦初に俄然興味を持ったとみえて、目を輝かせながら、此方(こちら)を見つめている。


秦初は正直その好奇心に参っていて、出来得るものなら避けたいと想っていた。


根掘り葉掘りと色々聞かれるのは目に見えているが、彼に取っては甚だ迷惑だし、面倒臭い…。


しかしながら、正体を明かしたからには、無礙(むげ)にも出来ないので、あしらう程度には付き合う他無かった。


秦初は敢えて再び確認する様に口を開いた。


「今の話を御理解頂けたのだろうか?」


すると、白雪は『ああ!』と穏やかに言葉を発して言葉を継いだ。


「勿論、そんな事は口が裂けても言いませんわ♪…だって貴方(あなた)は私達の憧れなんですもの…。(´- `*)正直こんな偶然に私達も驚いていますの…こんな事ってあるのですね、その偶然に私達は感謝しなくてはいけないわっ。そしてどんな事が起きようとも私達は貴方(あなた)を裏切る事は在りませんから安心して下さい。貴殿方(あなたがた)の為さる事は私達の理想です。それを体現している方々に迷惑は掛けませんわ♪」


白雪はフフッと微笑みながら、秦初に尊敬の眼差しを向けた。


(^_^;)秦初はそれを聴いていて少しホッとしたのか大きく息を吐くと、相槌を打った。


『この言葉に嘘は在るまい…人柄も悪くは無さそうだから、ひとまずは安心だな。しかしこの様な事は二度と御免だ。趙良を始め、配下には再度徹底せねば成るまい…』


そう想いながら、ふと在る事に気がついて、口に出した。


「ところで、太子が黄金の耳飾りをする習慣の事はなぜ御存じなのかな?何処ぞで聴いた噂か何かなのだろうか?」


(^^;…ほぼ出所は判っていたが、念のために(とぼ)けた顔をして、鎌を掛けてみる。


すると白雪が口を開いた。


「私の父・白老が若き頃に出会った"左慈"という白仙から聴いた話なのです。西夏国の太子様は必ず黄金の耳飾りをしているから、出会ったら必ず協力せよ。そうすれば貴殿方の道は拓けよう。彼らこそ真の救世主なのだと…」


此れは彼女たち…正確には弟の白峯(はくほう)を含めた三人が、白老から託された伝承で在った。


白雪はそう言うと、「ねっ?」と喬燕の方を振り向いて同意を求めた。


喬燕も微笑みながら、「ええ♪」と嬉しそうだ。


秦初は『やれやれ…』と言った呈で苦笑した。


『趙良が洩らしたのでは無かったのか…安心した。さすがは、私の腹心だ。しかし、左慈が絡んで居たとはな…神仙のする事は、我ら人間の心では理解出来ぬものだが、恐らくこの出会いは為るべくして為った運命なのだろう…白仙が絡んで居るならば、避けようが無かった事だ…何か今後に意味があるのだろうな…』


彼はそう想う事にした。


すると、喬燕が不思議そうな顔をして、秦初に言葉をかけた。


「太子様は…、あ、いえ、ご免なさい。秦初様は何で先程、私の顔を穴の開く程、御覧に為って居たのですか?未だにそれが私には不思議で為らないのです…」


白雪もそれを聴いて、「そうよね…何でなんです?」と素朴な疑問に感じている素振りをみせた。


(^_^;)『やれやれ…早まったな。噂の出所は違うし、変な素振りを然程、怪しくも感じられて居なかったとすれば、私の行動は早計だったと言えよう…まぁ神仙の御導きではいずれにしても避けられはしなかったのだから、この際やむを得まい。感受するとしようか…』


秦初はそう決意して、頬を緩めると、優しく微笑んだ。


そしてこう提案した。


「その言葉に応える前に河岸(かし)を変えませんか?此処では人が多過ぎる…どこか静かな所でお話した方が良いと思うが?」


白雪は辺りの人波を見渡しながら、相槌を打った。


周りの人々は見渡す限りにおいては、皆愉しそうに酒を傾けて、談笑しているが、こちらを窺っている人物が居ないとは言い切れない。


「そうですね…夢中になる余り、気遣いを忘れておりましたわ…御免なさい。そうね、河岸を変えましょう。そうだわ!ちょうど良い場所が在りますの…私の斉での拠点にしている店なのですが、ちょうど今なら弟の白峯(はくほう)もおりますから、是非ご紹介致しますわ♪きっとお役に立ちましょう。」


そう言って、善は急げと立ち上がった。


秦初はそれに応える様にこちらも立ち上がると、軽く頭を下げながら、


「宜しくお願いする…」


そう言って清々しく笑った。


三人は連れ立つと、その場をソッと引き払った。


秦初は帰り際に亭主に払いを済ませようとしたが、先程の手間賃で充分だと言って受け取らなかった。


三人は陽の暮れ掛かった夕陽の中を歩きながら、道を進む。


すると秦初はやおら大きな声を出して、口をついた。


「趙良…居るのだろう、我に従え!」


喬燕は秦初の口から趙良の名前が出たのでびっくりして、無意識に左右を見渡す様に彼を探した。


「此処に控えております。」


そう言うと、1人の武士(もののふ)が颯爽と現れて、秦初の前に(ひざまず)きながら、口頭した。


「そういう事で御座るよ…」


秦初は二人の乙女に向き合いながら、口許に笑みを浮かべた。


喬燕は跪きながら顔を上げた趙良を見つめながら、


「趙良様…」


と呟きながら嬉しそうに頬を緩めた。


二人の乙女はこの瞬間に全てを理解したのだった。


秦初は晴れやかな顔で自分を見つめる趙良の顔を眺めながら、心の中で『(^^;疑ってしまってすまんな…趙良…』と謝っていた。


趙良は主人の顔を見つめながら、『(^^)?』と不思議そうな顔をした。


やがて四人は連れ立って白雪の館に向かった。


この出逢いが今後の彼らの将来に大きな変化をもたらす事に為る。


その事に微かに気づいているのは、まだ秦初のみで在った。

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