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出逢いと災難と

【☆祝☆お誕生日】


(*^^*)この物語を今日誕生日である我が愛する妹に捧ぐ。


お誕生日おめでとう♪


【★兄より★】

秦初の煮え切らない態度は、女性たちにとても怪しげに写った。


特に男勝りの白雪には、かなり目力(めぢから)で威圧されており、秦初もさすがにそれは薄々感じているので、顔に穴が開く前に何とかしたい(^^;…。


ところが、やはりどんなに頑張っても思い出す事は出来ないのであった。


『(-_-;)これはさすがに諦めた方がいいかもな…』


秦初はそう想いながら、偶然にも耳に手をやって、耳朶(みみたぶ)を指で摘まむ様にしながら、撫で撫でした。


此れは秦初が考え込んだり、悩んだりしている時の(くせ)であり、本人は至って無意識にやっているので、全くといって自覚は無かった。


ところがである…(^^;♪


この至って無意識に起こした偶然が彼を救ったのだから、世の中とは摩訶不思議なもので在ろう。


但し、正確に言えば、一喜一憂であり、確かにこの偶然は彼を救ったのだろうが、失う物も大きかったと言えるのかも知れなかった。


()にも(かく)にも、この場の秦初の尊厳だけは、守られたので在る。


耳朶を(こす)る事で、耳に着けていた耳飾りが、シャランシャランと震えて鳴り、その黄金の耳飾りに気を取られた喬燕が、突然「あっ!!」と大声で一言叫んだ後、慌てて口許を両の手で押さえたのだ。


此れには秦初は勿論の事、白雪(はくせつ)も驚いた顔で、喬燕を見つめている。


一瞬、周りの客たちも、彼らの席に目を遣ったが、直ぐに何事も無かったかの様に、目線を戻して、在る者は会話を続けるし、また在る者は酒を口許に持って行って、その場は平静に却っていった。


秦初は何事かと喬燕を見つめているが、その喬燕はどちらかと言えば、白雪の顔を見つめており、心の驚きとは裏腹に、用心する様に口許に手を充てたまま、かなり小声で(ささ)いた。


「白雪様!あの方です。太子様です!」


そう言って、食い入る様に秦初の顔を見つめると、いきなり指を差した。


「ああそう言えば…」


白雪も秦初の耳にキラリと輝く黄金の耳飾りを指差しながら、然も理解したと言った呈である。


秦初は二人の言葉の遣り取りに、注意深く耳を傾けていたが、ようやく言わんとする事に気がついて、此方(こちら)も、


「あっ!!」


と叫びそうに成るが、流石に彼は武人であるから、直ぐに自重したのだった。


『(^^;…そうか!思い出したぞ!趙良の想い人かぁ…何で気づかなかったんだろう…』


秦初は自分の護衛を任せている趙良という付き人から、自分の好いた女人(おなご)を若君に紹介したいと相談を受けていたのだが、生憎(あいにく)と考え事をしていて、良く聞いていなかったのだった。


但し、聴いて無い風に見えて、秦初の耳は、耳敏く『喬燕』という名前を覚えていたのである。


「貴方が伝説の王族商隊を率いている西夏国の太子様…」


白雪はそこまで言うと、急にガラリと態度が変わった(´- `*)♪


「間違い在りませんよ…白雪様!だってあの耳飾りが動かぬ証拠…」


喬燕もこの突然の素晴らしき遭遇に興奮している。


彼女ら中華を又に架ける程の商売人たちの間でも、西夏国という国家主導で手広く商売を行い、それを国の財源の根幹としている貿易国家には、憧れと羨望が在ったのだった。


さらに言えば、そんな国は噂に過ぎず、謂わば幻の国とさえ想われていた風潮も在ったので、それが今正に現実の存在として証明された事に感動していたという事なのだろう。


白雪の父・白老(はくろう)は代々継承されて来た商家の(おさ)の地位を彼女に譲った。


白雪が聡明で、商売の機微を心得ており、人の扱い方も上手かった為だが、彼女はその父の期待に応えて、商団を此処まで大きくしていた。


そして大商団の長である白雪を支える二人の人物のうちのひとりがこの喬燕であり、彼女も家宰としての力量で白雪をしっかりとサポートしている。


後のひとりは白雪の弟で、白峯(はくほう)と言った。


白雪・白峯・喬燕の三人は小さい頃に、白老から、『幻の国・西夏国』の伝説を聞いた。


中華の北方にあると言われたこの幻の国は、天然の要害に囲まれた桃源郷に在り、外界を寄せ付けない。


そしてこの世界の端から端までを行ったり来たりしながら、観たことも無いような色んな品物を物流させている、まるで神の如き商売請負人の集団なのだと…。


幼心にそれを聴いた三人は、将来遭遇する事を夢見ながら、此処まで頑張って来たのである。


特に白雪は王族商団を束ねる太子様の存在に大きな夢を馳せていたのだった。


そして今、夢に見たその太子様が目の前に座っているのだ。


彼女らがそんなにもこの王族主導の商団に憧れているのには実は大きな訳が在った。


それはこの中華の実情を如実に表したもので、残念ながらこの中華の地では、商業を営む者の地位はそんなに大きな物では無くて、むしろその地位は低く、下賎(げせん)の輩と同等の地位しか与えられて居なかったのである。


商売などで儲ける輩は国に何の寄与もせず、自分達の利益しか追求していないと観られて、蔑まれていたのだ。


それは国にとって商売を営む者から、税を徴収するシステムがまだしっかりと構築されていなかった事も大きく関係していたのかも知れない。


現在は年間の報酬(利益)に対して課税する仕組みが出来ているが、この当時はそういうものの考え方がまだ無かったので在ろう。


いずれにしても、物流が無ければ、物は手に入らないのが現実的な考え方であり、実際にそこで生活している人々は生活の実情に則して、物は手に入れる必要があるのだから、生活雑貨などの安い物は、購入していた筈で、商売人から購入しなければ手に入らなかった物もあった筈である。


但し、この頃はまだ貨幣経済は主流では無いので、金や銀などの粒や塊などで取引したり、物々交換という方法が主流で在っただろうから、高価な物を買う人々はごく一握りの地位の高い者だけで在っただろう。


民の本質的な仕事は農作であり、その業務に従事する者が大勢を占めて居たのは、それが国の方針で在ったからである。


それは、食料の生産力こそが国力であると考えられていたからであり、それが無ければ他国と戦うための兵糧が賄え無かったからであった。


(とど)のつまりは、農業生産労働力の為に、国は民をその地に縛りつけておく必要があり、民が他国に流出したりしないように、国外に出さない事が大事な事で在ったのだ。


その為には、彼らの気持ちを『国に貢献する者たち』と位置付けて、ある程度高い地位に置いておく必要が在ったのだ。


『士農工商』という言葉は、日本の江戸時代に確立された制度だから、皆さんもご存じで在ろう。


良く見て頂きたい。


農民は武士の次の地位が与えられて、その下に工務従事する者が居て、商売人は一番下位にされている。


実は此処に大きな矛盾が隠されていて、実際は農民は貧しく虐げられた者たちであり、商売人は儲けた利益である程度、贅沢な生活が送れていたのだから、実情に即していない事、甚だしいものがある。


『士農工商』はそういう社会風潮を人為的に(こしら)えて、農民の不満を抑え込もうとする制度の一環で在り、それは農民の不満が爆発して一揆に発展したり、逃げ出したりしない様にするためだったと考えられるのだ。


そんな考え方に立つのは中華も同じという事である。


いや、むしろ中華のこの様な制度が、日本に渡って来たという事なのだろう。


だから商売をやる事が、どんなに蔑まれた行為だったとしても、物流が儲かる限りは、商団というものは存続していたし、それを仕事にする者も後を絶たなかったのだ。


商売とは需要と供給が在って、始めて成り立つ。


先程も述べた様に、ごく一握りの地位の高い者たちは、『飽食』するくらいの贅沢な生活を送れており、人は金が余ると、気持ちが大きくなって、より贅沢な暮らしを求める物であり、宝飾品や調度品など馬鹿高い物に手を出す者たちも、当然居たで在ろう。


その様な高貴な者たちにとっては、商団の者たちは大切に扱う必要があるのだから、公には保護出来ないとしても、裏で手を回して、彼らを大事に扱う人々も居た筈であり、そうする事に依って、彼らを介して必要不可欠な物を手に入れさせたり、彼らから各国の情報を手に入れたりと、持ちつ持たれつな関係が構築されていたとしても不思議は在るまい。


さらに言えば国の高い地位に在る者が、裏で商団を作り上げて運営していたとしても、有り得ない話では無かった。


そもそも商売を始めるには、元手がいる訳で、誰か地位の高い者をパトロンとして、援助して貰うのが、一番手っ取り早い。


実際、白雪(はくせつ)の父の白老(はくろう)は元々は魏国に仕える高官の地位に在ったのだから、引退していたとしても、元手は充分だったろう。


そんな訳で、白雪や喬燕が国家主導の商団を国の大切な機関として運営する、『西夏国』という国家とそれを担う太子様の存在に、憧れを抱いていたとしても不思議はなかった。


秦初はホトホト困っていた。


『まさかこんな所で正体を露呈するとはな…』


(^^;困った事は困ったが、まだ否定する事は出来た。


しかしながら、この喬燕は自分の腹心の想い人なのだから、この場は遣り過ごせても、いずれは身バレする事は必至で在る。


『(;^_^Aくそぉ~趙良の奴…色々喋っているのじゃ無かろうな…』


秦初は()(ぎし)りをしながら、変な汗を()いていた。


『いずれにしても二択だ…(^^; 怪し気な変人に成るか、身許を認めるか…だな。困った事だが即断即決せねば成るまいよ。(-_-;)ええい…忌々しい。趙良の奴、後でどうしてくれようか…』


秦初は決断に迫られていた。


『せっかく子規を味方につけて、中華に上手く潜り込んだのに、まさか身内から(ほころ)びが出るとはな…(^^;参った!』


彼はそう想いながら、腹を(くく)る事にした。


『ままよ…』


秦初は決断した。


「左様…私が西夏国の太子で秦初と申す者です。以後お見知り置き下され…但し、この事はくれぐれも御内密に!宜しいですな…」


彼はそう言いながら、


『言ってしまった…(;^_^A』


と大きな溜め息を洩らした。

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