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<Tale.8> 告白と決断


「単刀直入にいいます。・・・駿は生まれつき、魔力を持っています」

「・・・は?」

突然の告白に、俺は間の抜けた声を発するほかなかった。

「・・・すまん、もう一度言ってくれ」

「・・・駿は、魔法を扱うことが出来ます」

「・・・」

聞き間違いではないようだ。どういうわけか、俺は魔法が使えるらしい。

「今朝、駿に渡したブレスレット・・・通称『クラウディカ』は、いわゆる魔力制御の道具の一種です」

「制御?」

「駿が魔力を持っていることは私も、そして璃々花も知っていました」

「へっ?璃々花も?」

隣に座る妹に目をやると、「やっぱりあの時のって魔法だったんだー」と、一人で何やら納得していらっしゃった。

「だけど、いくら魔力を持っていても、制御できなければ暴発して暴走してしまいます。だから、制御アイテムを渡したのです」

なるほど、つまり魔力があっても魔法が使えないから、多少なりともちゃんと使えるようにとそのクラウディカってやつを、俺に渡したんだな。

「事態がこうなってしまった以上、駿の魔力をこのまま放置するわけにはいかなくなってしまいました」

「いかなくなったって・・・じゃあどうするんだ?」

そう聞き返すと、すみれは後ろに立っている男に目を向けた。

男もその視線を受けて、無言で頷いた。

「えっとー、さっきから聞くタイミングを逃しちゃってたんだけど・・・すーちゃん、そちらの方は?」

璃々花が今更の質問をする。かくいう俺も気になってはいたんだけどな・・・

「あ、ごめんなさい。二人は会うの初めてでしたっけ・・・私の兄、神無月征一です」

・・・

『えっ、お兄さん!!?』

見事に兄妹ハモってしまった。

「おいおい、そんなに驚かなくてもいいだろう、二人とも」

「いや、だって・・・なぁ」

「う、うん・・・」

俺達二人はもう一度、すみれの兄の顔を見る。

銀髪・・・

『おおー』

「お前たち・・・見るのはそこだけか?」(いやだって、それ以外で判断できないし!)

「ま、まぁ正真正銘私の兄さんです」

「・・・そういうことだ。すみれ、話しを戻せ」

「あ、はい兄さん」

すみれは仕切直すようにして、俺に問う。

「駿が選べる選択肢は二つです。一つは魔力を手放すこと。もう一つは私と魔法の訓練をすること」

「魔力を手放せば、この世界から出られる。この世界はいわゆる結界の一種、駿たちが暮らしていた世界とは違う」

「違う、世界?」

例のごとく、知識のない俺は、言葉のままを解釈するしかない。

だが、それなら納得できる。あの獣のことも、あの空も異常だったからな・・・

「仮に魔力ってやつを手放した後、すみれたちはどうするんだ?」

「私と兄さんはこの世界に残って、原因を突き止めます」

「いや、俺は帰る」

「ええ!?」

すみれが何言ってんのこの人!?って顔で兄を見た。

「この程度を解決できないようでは副官の名折れだぞ、すみれ。それに、駿の魔力はお前とほぼ同じくらいだ。その魔力をお前が受け継げば、この事件も楽に片付くだろう?」

「それは・・・そうかもしれませんけど・・・」

「と、いうわけだ」

兄の方はこれで満足といった顔で俺に視線を向ける。

すみれはというと・・・

「・・・ぅぅ(T^T)」

何か捨てられた子犬みたいな目をしていた。


くいっ、くいっ、

「ん?」

璃々花が服を引っ張ってくる。

「・・・何か手伝ってやれって遠回しに言われてる気がするんだけど」

まったくだ。

「ああもう、わかった。わかりました!」

俺の声にすみれが顔をあげる。

「一度手伝うって言ったんだし、最後まで付き合うさ。それに、少なからず魔法に興味があるしな!」

「ううー、ありがとうです駿ー!!」

すみれは泣きながら抱き着いてきた。

「だーかーらー、抱き着くなっての!」

「そうだよすーちゃん!離れなさーい!!」

さっきまでの空気は何処へやら、すっかりいつも通りの俺達にもどっていた。


どうやらこの世界は俺達の世界とほぼ同じらしい。

強いて違いを挙げるなら、人がいないことと、空の異変、獣の存在くらいのものらしい。

魔法についての講義、訓練は明日やることとなり、今日はこれで休むことになった。

だが、璃々花とすみれが寝付いた後、俺はすみれの兄に「話しがある」と、外に連れ出された。


「話って何ですか、えっと・・・征一さん」

「ああ」

征一さんは言葉を選ぶような仕草を見せた。

「お前の妹、璃々花だったか? アイツは・・・何者だ?」

・・・えっと、さっき言葉を選んでましたよね?それでこの質問って・・・

「・・・どういうことです?」

聞き返すと、またもや言葉を選んでいるようだ。

「この世界、というか結界はな、魔力を持つものしか存在できないはずなんだ」

・・・え?それって・・・

「璃々花も魔力を持ってる、そういうことですか?」

俺の言葉に、征一さんは静かに首を横に振った。

「俺もすみれも、璃々花から魔力を感知できなかった。なのに、ここに存在している」

「イレギュラーってことですか?」

今度は首を縦に振った。

「とにかく、魔力を持たない生身の人間には、この結界がどんな悪影響を及ぼすかわからない。すみれにも注意させるが、お前も気をつけてほしい」

その言葉に俺は力強く頷いた。

(なるほど。つまり、さっきの話はここに繋がってたのか)

「あとは、訓練すると言ったからには、そう簡単に根をあげるなよ?」

少し挑発するように言葉を投げてくる。

「言われなくても!」

そんな挑発に、簡単にのってしまう俺なのだった。




その翌日、俺は見事にボロボロにされたのは、言うまでもない・・・。

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