<Tale.6> 予兆
ここから第二部となります。
別に分ける必要なくない?・・・とか思わないでくださいね!
「穢れなき純白の閃光!!!!!!」
すみれの魔法を目の前で見て、俺は改めてその存在を知った。
そして、すみれと過ごしていく中で、俺は多くの魔法に触れていくことになる。
この時の俺は、そんなことを考えてもみなかったし、些細なことだと思っていた。
だけど――――
「それじゃ、また放課後な」
「うん、お兄ちゃん」
一階で璃々花と別れて教室に向かう。ちなみに今日はすみれは休みだ。新学期始まって二日目で休むのもどうかと思うが、これにはきちんとした理由がある。・・・いや、きちんとはしてるんだが、これがまた厄介で、俺達以外の人たちにどう説明したら、というか説明するわけにもいかないから困っているんだ。
――――昨晩。
「私にもあの白いの教えて!すーちゃん!!」
「は?」「え!?」
何故か最悪のタイミングで俺たちの後をつけていた妹を事後、無事回収し、家に戻り、晩飯を食って、さあすみれを詰問しようかというまさにこの状況下、何とおっしゃいましたかうちの妹は?
俺たちの真向かいのソファーに腰掛けているすみれも、言葉の意味を理解しかねているご様子。
「ええっと・・・パ、パードゥン?」
「だーかーらー。私にも昼間のピカーンってやつ教えてって言ったの!」
「・・・すみれ、どこから突っ込めばいい?」
「わ、私に聞かないで下さいです」
「お前以外の誰に聞けと?」
ですよねー、といった表情を浮かべ、すみれはどこか疲れたように説明を始めた。
事情と魔法についてひとしきり説明した後、璃々花は、ほえ~と宙に浮いているような様子ですみれを見ている。そりゃ聞きなれない単語を羅列されまくられればな。俺ですらよくわからん。
「・・・といった感じで、私はこの町に戻って・・・って聞いてます?二人とも」
「ふえっ!?・・・う、うん。もちろんだよ。つまり、何だかわかんないことに巻き込まれて、実はすーちゃんは魔法使いで、それで、ピカーでフワーでドカーンなんだよね」
・・・意味がわからん。
すみれもこめかみを押さえながら嘆息している。
「まあ、そんな感じです」
こいつもう諦めたな。
「とりあえず、さっきも言ったように、資質のある人、家系の者にしか魔法は使えません。璃々花には無理です」
すみれは話を早く打ち切るかのように話す。
「うぅ・・・じゃあ何でお兄ちゃんは、」
「璃々花!!」
「うお!」「ひぅ!」
すみれが突然璃々花を怒鳴った。こいつが璃々花を怒鳴ったことなんて、思い返してみても一度だってなかったはず・・・。
「ご、ごめん。すーちゃん」
「い、いえ。私もキツく言い過ぎました」
すみれはそう言って立ちが・・・れなかった。足元がふらついたのか、俺のところへ倒れこんできた。
「だ、大丈夫か?」
俺はすみれを抱きとめながら支えた。
「ごめんなさい。昼間のあれ、結構魔力を消費するやつだったので、疲れがきたのかも・・・」
「ったく、ほら。運んでやるからおぶされ」
俺はすみれに背中を向ける。
「・・・ありがとう、駿」
すみれは俺におぶさると、すぐに寝息を立て始めた。相当疲れてたんだな・・・
「いいなーすーちゃん。私もおんぶして欲しいよー」
調子を取り戻した璃々花は、開口一番そんなことを言ってくる。
その言葉を軽くスルーして俺はすみれを部屋へと運んだ。――――
「回想終わりっと」
俺は誰に説明するのでもなくそう宣言する。何故かしなきゃいけないような感じがしたんだ。
「さて、本当にどうしたものか・・・」
俺は重い足取りで教室に向かった。
放課後、俺は机に突っ伏していた。理由は・・・聞くのも野暮ってもんだろ、そこのキミ。察してくれ。
「お兄様、まだ帰ってなかったの?」
近づいてきたのは璃々花だった。
「すーちゃん、家で待ってるよ。早く帰ろうよ」
俺の苦労も知らないで・・・そう思ったが、璃々花に愚痴を聞いてもらうのは、何か兄として情けないよな。
「よし、帰るか!」
気分を切り替えて勢いよく立ち上がった・・・瞬間、
ドゴォーーーーーン!!!
「きゃあ!!」
璃々花が抱きついてきた。
「な、何だ今の音は!?」
突然地面が割れるような音が聞こえたかと思うと、激しく校舎全体が震えた。
「お兄様、おにいさまー!!」
璃々花が俺の腕の中で震えている。
「大丈夫、大丈夫だから・・・」
確証なんてない。けど今は震えている璃々花を安心させるのが先だ。
しばらくして揺れは収まり、もとの静かな校舎に戻った。
「もう、大丈夫だよ」
俺はできるだけ優しく、璃々花に声をかける。
「ふえ、ほんとう?」
俺にしがみついたまま、璃々花は顔を上げた。
「とりあえず、家に帰ろう。また地震がきたらいけないから」
「・・・うん」
俺は璃々花の手をとり、学校を出た――――
――――はずだった。