<Tale.3> はじまり
暗い夜道を、俺たちは何故か寄り添うようにして歩いている。
すみれは俺に腕を絡めて、上機嫌に鼻歌まで歌っている。.....やや不気味だ。
「すみれ...これは本当に恥ずかしいんですけど」
「こんな夜中じゃ、誰もいませんよ?」
「そ、それはそうなんだが......」
「駿.....嫌なのですか?」
すみれは上目使いに俺を見てくる。.......あぁ、もう!何か凄ぇ可愛く見えるのは何でだ!?さっきから腕にやわらかいものが当たってるし、ここは天国なのか!!?
などという雑念を理性で無理やり押し込め、雰囲気を変えた。
「.....それで、璃々花に話したくないほどの話ってなんだ?」
すみれは、俺の口調が変わったのを察したのか、まじめに答えた。
「.....私がここに来た理由、そして、この星波町に起こっている事、です。」
「..........」
過去に2、3度、こういう状態になったことがあった。すみれは真面目モードになると、嘘や冗談、その他あらゆる感情を殺して、淡々と真実のみを話してゆく。途中、口を挟もうにも、相手は周りの声など聞こえないがごとく、話すスピードを変えないので、聞き手に徹するほかないのだ。今、まさにすみれはその状態だ。
「まず、私がここに来た理由は、正体不明の小さなエネルギーがこの町から観測されたからです。私は魔力観測本部、副佐としてその原因の元となるものの調査に来たのです。そして、この町の星波神社の裏手に大きなクリスタルが見えた途端、強烈な光に包まれたかと思うと、私は地面に倒れていたのです。ぼんやりとする視界の中、そのクリスタルから五筋の光が矢のように飛んでいくのを見たのです。恐らく、クリスタルの魔力の一部が飛び散ったのだと思いますです。魔力自体はそんなに大きくはないので、問題はないと思うのですが......」
(ぉ、終わったか?)
「.......ふにゃ〜」
「よく息継ぎなしで、これだけしゃべれるもんだ」
しかもわりと聞き取りやすいペースで。
「とりあえず、三つ言いたいことがあるが、いいか?」
「ぁ、うん、いいですよ」
「まず1つ目。ずいぶんと立派な肩書きもってんだな」
こいつの親が魔法協会のトップだということは、噂で耳にはしていたが、まさかすみれまで.....
「本当に肩書きだけですよ。実際、疲れるだけなのです」
「またまたご謙遜を。...じゃあ2つ目。ここへ来るのに、ちゃんと親か征兄には連絡いれたのか?」
ちなみに征兄とは『神無月征一』、すみれの実兄だ。あったことはない。
「征兄って、どんな呼び方ですかそれ。兄さんにはメールを打っておいたので、大丈夫ですよ」
「そっかぁ、ちゃんと連絡いれてたんだな。えらいえらい」
「な、なでるな〜です〜。私、そんなに子供じゃないですよ〜」
「おっと、スマンスマン。んじゃ、ラスト。これからどうするつもりなんだ?」
正直、この質問以外はどうでも良かったんだけどな。ノリで三つっていった手前、やらなきゃ負けだなと思っていた、なんてことは絶対ないからな!
「こっちに来たからには、原因を究明して帰らないとです......。ですから...」
すみれはそこで言葉を止めた。言わんとすることは俺にも判ってる。......まったく、変なとこで遠慮する癖は相変わらずだな。
「しばらく、俺んちで一緒に住め。その方が璃々花も喜ぶ。それから、足手まといかもしれんが、手伝ってやる。性格上、ほっとけないからな」
「........!!」
すみれは俺の言葉を聞いて、酷く驚いていた。しばらく逡巡した後、
「駿、ありがとう、なのです!!!」
俺に勢いよく飛びついてきた。
こうして、すみれとの生活、そして後々の波乱のはじまりが幕を開けることとなった。
次話、Tale.4より、主な舞台は学園へと移ります。今後の展開にご期待下さい。