<Tale.2> 懐かしい空間
「お兄様、あの子...すーちゃん、だよね?」
「...ああ、間違いない。だけど、何でアイツ、日本に戻ってきてるんだ?」
俺と璃々花は今、リビングで今までの経緯について話している。とりあえず、あの少女を家に連れて帰り、今は璃々花の部屋で寝かせている。
「それに...神社の裏で一体何が...」
神社の裏が光ってたことは、璃々花には伏せてある。よくわからないことで不安にさせたくはない。
「ぁ...」
「ん?」
振り返ると、少女が目を覚ましたらしく、ドアから顔を覗かせていた。
「もう、大丈夫なのか?」
「......(コクッ)」
少女は判別できるかできないかぐらいの動作でうなづいた。
「ぇっと......」
俺はどう対応したものかと言葉を選んでいると....
「......駿」
「えっ!?」
少女はぽつりと、けど確かに俺の名前を口にした。
「......覚えて、いますですか?」
少女は恐る恐るといった感じで尋ねてきた。
俺はそれまで感じていた緊張が一気に解けていくのを感じた。
「....久しぶりだな、すみれ」
「!!!」
そう答えた瞬間、すみれが俺に飛びついてきた。
「ぉ、おい。どうしたん...」
そこで俺は、すみれが泣いているのに気づいた。
「ぅぐ、....ひっぐ....」
「.......」
俺はすみれが泣きやむまで軽く抱きしめていた..。
ようやく落ち着いたのか、今は璃々花とソファーで話をしている。.....というか、璃々花がすみれにべったりだ。そんな二人をキッチンで料理しながらみていると、とても懐かしく感じた。
璃々花はすーちゃん、すーちゃん、といつもべったりしていて、すみれも璃々花を本当の妹のように可愛がっていた。そこへ俺も加わり、よく三人で一緒に遊んでいたっけ。
それから何年も経って、すみれは見違えるほどになっていた。
昔は短かった白銀の髪は、腰まで伸びたきれいなストレートに。髪飾りのリボンは変わらず大きな緑色のリボンのまま。肩からスラっと着こなした純白のワンピースが、その可愛さを何倍にも引き立てていた。
「何やってるのですか!」
その声で俺は現実に戻ってきた。隣に目をやると、すみれが半分怒ったような顔と口調で、火を止めていた。
「火をつかってる間に考え事なんて...火傷したらどうするのですか」
その口調は怒ってるというよりも、純粋に心配してくれてるようだった。
「ごめん、気をつけるよ」
すみれは、まったくもう、といった感じで戻っていった。そのやりとりで、本当に帰ってきたんだなと改めて実感した。
食事の後、俺たちはどうして帰ってきたのかをすみれに聞いた。
すみれ曰く、何も覚えていないそうだ。気がついたら璃々花の部屋で目を覚ましていて、日本にきてからのことは記憶にないらしい。
話を聞いているうちに何か違和感を感じた気がするけど、璃々花が眠そうにあくびをしていたので、話はまた明日に、ということになった。
すみれは璃々花の部屋で一緒に寝ることになり、俺も寝ようと自室に戻ろうと腰をあげたとき、すみれがこっちを一度だけ振り返った。......何か言いたそうな目で...
深夜、扉が開く音で俺は目を覚ました。部屋に入った人影はまっすぐこちらへ近づいてくる。
それがすみれだと気づくまで、さほど時間はかからなかった。
「そろそろ来るんじゃないかと思ってたよ」
「嘘ばっかり。さっきまで寝てたじゃないですか」
「眠気に抗うのは結構大変なんだぞ?」
少しおどけた風に返した。すみれもちょっと笑っていた。......さて、
「長い話なら、夜空を見ながら、.....なんてどうだ?」
そう言うと、すみれは大して驚いた様子もなく頷いた。........ちょっとショック///
そうして、俺とすみれは深夜の散歩に出かけることとなった。