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予備役(一般兵)1

突入する12人の露払いが選定され、それに応じた武具の開発も急ピッチで行われている。

魔界での支援は受けられるとはいえ、

敵陣に乗り込む訳だから準備はいくらしても足りない事はないだろう。

俺はというと勇者の元パーティメンバーという立ち位置で

壮行パレードや魔界側の門の護衛等を行うことになった。

とはいっても、実際護衛するのは別の面子らしく、

参加する意義としては鼓舞目的の予備役という訳だ。

まあ、利き手が無い傷病兵だ。

参加出来るだけ、まだマシなんだろう。


という訳で、現在は勇者の故郷、元フレアウォール王国、現在魔族唯一の前線基地、北門にいる。

魔族・人族問わず、物資の搬入や仮設住宅の建設を進めている。

この戦争が終われば、此処は魔界と人界の交易地点として使われる事も決まったらしく

今から混在したチームを作り行動を共にしているそうだ。


元フレアウォール王国

勇者 ユリウスとその妹 マリア の故郷、

魔界と交易を願ったインフェルノボーガン公爵家を裏切り、

攻めてきた魔族によって滅ぼされた亡国。


攻め込まれたのは、ユリウス6歳、マリア1歳の頃だったらしく、

「マリアが幼く、乳母が守ってくれたお陰であの地獄の光景を見せずにすんだ」

とユリウスが辛そうに語ってくれた。

自分だって辛かっただろうに、妹の事を気にかけていた。

そして、故国の事も。

いずれもう一度興すのだと、産まれて6年の間に見聞きした故国の話をしてくれたのを覚えている。


勇者も魔王も目覚めには強い絶望が必要と聞く。

・・・二度も家族を故郷を失ったあいつは、それを目覚めさせるに足るだけの絶望を得たのだろう・・・

あいつ(勇者)がまた、この地に戻ってきた時は、初めて訪れた地を見るような

そんな顔をしていた。


暫らく町を散策していると、警邏をしていたのか、ユリウスが居た。

あいつもこっちに気づいたのか、笑みを浮かべながらこちらに向かってくる。

俺も軽く手を挙げ、挨拶をした。


「見回りかい?」

「うん。周りがピリピリして、走り回っているのを見ると

 あと少しなんだ・・って改めて実感するんだ。」

(勇者達)が頑張ったからだ。そして、(人類)がお前を支える。」

「うん。」

「当然。俺もだ。

 まあ、この体たらくじゃ前線にも立てないがな。」

「ううん。心強いよ。」

「そうか。」

「うん。」


ユリウスは、少し寂しそうに周りを見ていた。

この景色を家族にも見せたかったのかもしれない。

そんな、少し寂しそうな、悲しそうな、そんな横顔は、(マリア)を、どうしてだろうか、

思い出させる。


「ねえ。ガイ。」

「ん?」

「5日後、往く。」

「・・・・そうか。」

「前日に話たい事が、伝えたい事があるんだ。」

「・・・・・」

「部屋で待ってる。夜に。」

「ああ。」

「うん。それじゃあ、警邏に戻る。」

「分かった。またな」


そうか・・・5日後か・・・

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