傷病兵3
俺たちは別室に移動し、ユリマリアが提示した条件と条約について話し合いをしようとしていた。
だが、別室に移動してから既に30分が経過したが、誰も何も話そうとはしなかった。
此方に優位な条件であるのは事実だ。
けれど、優位な提案を先方からされてるからこそ、その裏を疑っているのかもしれない。
統合軍のお偉いさんは、重い口をようやく開き
「誰を人身御供として捧げるか・・・を決めなければならないか」
と呟いた。
「けれど、人質になる訳ではないだろ?」
「子供を取られた時点である程度の人質として見るしかないだろう。」
「なら、勇者は無しだな。
後誰がいたっけ?」
「ガイ・・君くらいだ。」
「へ?」
「君くらいしか残ってない。」
「あー。まあ、利き腕を失くした俺が役に立つなら、
まあ、構わないけど・・・。他に居ないのか?
例えば、
詩人の第三王子だったエドワードとか
大魔導士のジャスミンのおじさんとか」
エドワードもジャスミンも人族の国々を渡り歩いていたときの仲間だ。
パーティから抜けたとしても俺も含めて一応勇者の仲間の内に入ると思っている。
しかし、お偉いさんからは
「エドワード王子は南部戦で死亡してる。
ジャスミンは大の女嫌いだからな。無茶だよ。」
と、言われたしまった。
「そうか。
先方が構わないなら、俺が一番妥当なのか。
考えてみたら、孤児だしな。
柵も人質としての有効性も一番乏しいのは俺か・・・」
そう、自虐に似た回答をすると、ユリウスは憤りながら
「ガイを人質にするくらいなら、ぶっ潰す。」
「おいおい」
「『おいおい』じゃないよ。仲間を売る気はないよ?」
「それでも、有効な手ではあるだろう?」
「・・・・」
そう。皆分かってはいるのだ。
四天王と戦わなくて良く、さらに外交相手が居るという安心感を。
だからこそ。
「お互いに利用し合えば良いさ。」
そう俺が答えた後
ミリア様は、誰にも聞こえないように何かを呟いていた。
「いいえ、寄生虫のように人族が群がるのです。ガイ。」
§
そのあとは、とんとん拍子に事が進んだ。
同盟の結成
突入の人選
道案内の人選
投入する人員は、勇者達4人とそれを護衛するための12人の英雄
その12人の英雄には人智を結集した武具
12の人器
を創造し、渡す事が決定した。
作成の完了は1カ月後
突入も一カ月後
後は、皆の勝利を待つだけだった。
「ところで兄さん。」
そんな手持無沙汰な俺に、人器を作成するスタッフの一人が話かけてきた。
「ん?」
「兄さんも、既に脱退したとはいえ、勇者のお仲間の一人なんだろ?
兄さんの得意な武器ってなんなんだい?」
「俺?俺は・・・盾だな」
「盾?」
「ああ、門のような頑丈な盾。
手が無くなった俺が出来ることは、防ぐ事くらいだろうからな。」
「ふーん、ありがと、参考にするよ。」
「何にだよ。」