副隊長3
ザビーネが重力で抑える。
鈍くなった所をグラディウスで叩き落とす。
突き出されたグラディウスを弾いて空へ逃げる。
逃げたと思ったら、重力を扱うザビーネへ突撃を狙う。
それをぎりぎりの所で盾でいなして仕切り直す。
膠着した戦局。
ただし、相手は1。
こちらは2。
そのうえ、手数は相手の方が勝っているという、
こちらが有利に見てようやく膠着と言える状況だった。
連携が崩れたら、どちらかが落ちたら、敵が味方を盾にしたら
様々な要素で一方的に蹂躙される結末が待っている。そんな状況。
それでも、あいつをなんとかすれば、勝機が見える。
相手もそう思っているのかもしれない。
今日は、あいつは、撤退の意思がなかった。
今日突破しないと後がない。そんな気迫で攻めて来ていた。
だから、当然なのかもしれない。
既に数時間の戦闘だ。相手も慣れてきたのだろう。
徐々に重力で抑えきれなくなり
何度も盾を蹴られ、徐々にザビーネと切り離されていく。
彼女も切り離されるのを嫌ったのだろう。
あいつが一度空に逃げ、突撃も行えない体勢のタイミングでこちらに駆け寄ってくる。
でも、あいつがその隙を逃すことはなかった。
ザビーネに対してウインドウカッターを放ったのだ。
「ちぃっ」
咄嗟に右手を射線上に突き出す。
結果、グラディウスは真っ二つ。
・・・・加えて、俺の手首より先も持って行った。
2つの硬い壁を乗り越えたウインドウカッターはザビーネに届く前に消失した。
「ガイ!」
「まず、留めろ!」
ザビーネは動揺の色を見せたが、俺の一喝で、あいつの動きを留める方に意識を向けた。
けど、絶望の色は彼女の顔からは消えなかった。
どくどくと滴る?違うね。流れ落ちる赤いモノ
それと並行して背後からくる希望
咄嗟に左手に持っていた盾を頭上に掲げる。
「遅せぇよ」
「すまない」
ずんっと盾に係る人一人分の重量。それをあいつにぶつけるように盾で突き飛ばした。
「行ってこい」
「行ってきます」
付き飛ばされた勇者は四天王に向かっていった。
もう一度、盾を頭上に掲げる。
今度は、先を失った右手も添えて。
今一度、一人分の重量が係る。
「戦士が勇者より遅れてどうするんだ?」
「これから追い越します」
「良い度胸だ」
盾を左腕に固定していたバンドを口で噛み千切り
盾ごとあいつに放り投げ、さらに蹴りを入れて加速をつけてやった。
上に乗っていたシルヴィはユリウスに追い越すために盾を蹴り上げ、更なる加速を得た。
さて、俺のやれることはやった。
失血のせいか、そろそろ意識を繋ぐのが厳しくなってきた。
後方から、アンジェラの声が聞こえる。
運が良かったのだろう、一命は取り留める。
先がなく、衝撃で噴火したように赤い血が噴き出す右手を見て、
次はどうやって戦おうかと考えながら、意識を手放していくのだった・・・・・・・