さようならは言えない
短縮版へようこそ、それぞれのキャラの姿は皆さんが思い描いてくださいね。彼らの姿は皆さんの想像で浮かび上がる筈……
あの日、君から手紙を貰った。あの日は桜が散りゆく4月の末、僕たちが一緒に居られる最後の日だった。
君の手紙は「愛してるよ」と「さようなら」しか書けなかった僕の手紙よりも僕らのこの三年弱の思い出が詰まった君らしい手紙だった。この手紙を読むまで知らなかったあの日、君が僕に対して感じた第一印象だったり、一度も言おうとしなかった僕の良いところ、ダメな所だったり、三枚にも及ぶ便箋は僕のことだけが君の丸みを帯びた可愛らしい文字で詰まっていた。
僕は今は君の側には居られないけど、この手紙が僕たち二人をいつでも隣で笑いあっていたあの日々に連れていってくれる。すると僕は今でも君と一緒に暮らしているように感じるんだ。
季節は巡り、君のいるところでは桜が散り始める時期がやって来た。何年振りだろうか、別れてから初めて君から手紙が送られてきた。宛名に書かれた文字はあの時の手紙と同じ丸みを帯びた可愛らしい文字で、またあの時の事を思いだす。久し振りに送られてきた君の言葉に不思議な気持ちになりながら封を切り、桜色の便箋に書かれた手紙を読み始めた。
『久しぶり……だね。
もうあの日から何年も経ったけど、君は元気にしているかな?
私は君と別れてからも日本で変わらずに──違うね、君の居なくなった日々を過ごしていました。
覚えているかな?二人でよく行ったあの駅そばの本屋さん。実は先月、潰れちゃったんだ、他にも、勉強会をよくやったファミリーレストランも変わったんだ。もうあの時のこの街とは大分変わっちゃったけど、まだあの日々の名残は残っているよ。
そうそう、私ね、前に言ってた夢が叶ったの、まだまだ何も分からないんだけど、小学校の先生として毎日頑張っているんだよ。君は夢を叶えられたかな?確か国際弁護士になるって言ってたよね?
夢を諦めずにやってこれたのも君がくれたあの手紙のお陰だよ。『愛してるよ』と『さよなら』しか書かれていなかったけど、だからこそ君の想いが籠った素敵なあの手紙。挫けそうになったときはいつもあの二つの言葉を読んで頑張れたんだ。
本当はあの時直接言いたかったけど、気恥ずかしくて直接言えなかった言葉を最後に書こうと思う『三年間いつも一緒に居てくれてありがとう』きっと会いに行くから、待っていてね。
それじゃあ、会える日までじゃあね』
読み終わり、便箋を仕舞おうと封筒を手に取るとまだ何かが入っているのを感じた。封筒を逆さにして取り出すと、そこにはあの日々の面影を残した君が小学校の生徒と一緒に和やかに写った写真が入っていた。
~以下は書くつもりなし~
あの手紙を受け取り、2日かけて返事の文を綴って送った日から一月程経ったある日、再び君から封筒が届いた。
『首を洗って待ってなさい!』
A4の便箋に大々とそう書かれていた。どういう事だろうと首を捻っていると、もう一枚が出てきた。その紙には飛行機の座席予約の完了した通知メールの一部が印刷されていた。
もう何年も会っていない君がここへやってくる。そう思うと、喜びと困惑が僕の心を支配した。
その日からは君が来ると思うと勉強にも手が付かず、それは一緒に学ぶ友達にも心配させてしまうほどだった。
そうして迎えた君が飛行機に乗ってここへやって来る日。部屋を片付けて準備をしていたが、予定の時間になっても来ない君、どうしたのだろう?と思いつつも時間を潰すためにテレビを点けた。──そこには君が搭乗している筈の飛行機が消息不明になったという、信じられない──信じたくないニュースをアナウンサーが伝えていた。
気に入って頂けた方は、いつか上げるロングVer.を待っていてくださいまし……来年だと思いますが