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第一話 晴天の霹靂

「アーノルド・トラス こちらへ」


 いよいよぼくの番が回ってきた。父上や母上をはじめとして、大勢の期待を一身に受けてぼくは祭壇をのぼる。この領地を束ねるトラス家の次期当主であるこのぼくは、この日街の住人すべての関心が寄るところとなっていた。


「アーノルド・トラス 神ラフマーに祈りを」


 ぼくはその声に従ってラフマー様の像を前に跪き祈りを捧げる。


 神官様もまたラフマー様の像に一礼し、ぼくの方を向き直しその天啓を読み上げる。


「アーノルド・トラス そなたに天啓が下った そなたの色はナシだ」


 ぼくは首をかしげる。今までそんな色は聞いたことがなかったからだ。梨色なんて言葉は初耳だ。それを裏付けるようにぼくの後ろに並んでいる子達も顔にはてなマークを浮かべている。もっともも父上たちはやけに神妙な顔をしていたけれど……


「その梨色というのはどのような色なのでしょうか?」


「いいえ、アーノルド・トラスよ。梨ではなく無だ。君には全く魔法の才能がないということだよ。この街で数多くの色を見てきたが無色というのは初めてだがね」


 ぼくは強い衝撃を受けた。ぼくはこの街を治めるトラス家の長男なのだ。いわば跡取り息子であるぼくに魔法の才能がないなんてことがあっては大変だ。しかもトラス家は伯爵家なのだ。


「神官様、ぼくは本当にこれっぽっちの才能もないのでしょうか?」


「そうだ、アーノルド・トラスよ。君は全く魔法に才能がない。トラス家の跡取りである君がこのような結果になって至極残念だが、私にはどうしようもない。せいぜいお悔やみの言葉をかけるだけだ」


 ぼくは落胆して祭壇を降りる。母上は顔をおおって泣いているようだ。父上に至っては……見るのも恐ろしいほどの表情を浮かべている。仕方のないことだろう。なんだってぼくは長男で跡取り息子なのだから。そのぼくにかけられていた期待を考えたら当たり前だ。


 しかしながら、この時ぼくは想像だにしていなかった。これから僕の身に降りかかる運命のことを。


 ほんの数分前まで僕の人生は開かれていたはずだったが、この一瞬でぼくの人生は閉じてしまったのだ。数えきれないほどの選択肢があったはずだがそれも消え、決定的に定まってしまったのだ。


 一言父上に謝ろうとしたが、父上は有無を言わさぬ表情でそれすらも遮り、ぼくを屋敷へと連れ帰る。


 帰りの道中、馬車の中で父上はその表情を崩すことは無かったし、母上は始終泣いていた。



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