たった二文字が言えなくて
彼女は美人だ。
すごく可愛い。
性格もいい。
僕のために何でもしてくれる。
でも。
不満はある。
「あのね、ケーキ買ってきちゃった」
「そうか」
「でも、お金持ってなくて。ひとつしか買えなかったの」
「そうか」
彼女は悲しそうにしていた。
『半分食べる?』
彼女は僕にそう言ってきた。
だから僕は。
『うん』
そう言おうとした。
すると彼女は。
『半分食べる?』のすぐ後に。
『食べない?』と続けてきた。
このまま勢いで『うん』と言ってしまったら、食べない方になってしまう。
食べる?食べない?のように、正反対の言葉を時間を置かずに放つ。
そんな彼女の癖に、僕は悩まされている。
その癖が『うん』と言おうとしている僕を困らせる。
でも。
そんな彼女も可愛い。
『イチゴ食べていい?ダメ?』
僕は学習した。
彼女に『うん』ではなくて。
『食べてもいいよ』と答えた。