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白楽天
向かい合うばかりの
愛は息苦しくて
二人きりの傘を分ける
衝動的に寄り添っただけ
小雨になればさよなら
また嵐で逢うわ
襟元の乱れを直して
小股で駆ける
薄暮に点る電灯
わたくしを脱ぎ捨てて
物言わぬ華に変わる
何てことないわね、きっと
千年変わらぬ都の月
街はずいぶん明るくなったけれど
人の悩みは尽きぬまま
今宵も鐘が鳴る
手すさびに
奏でるのは嘘か真か
あたしにもわからないわ
途切れもしない雑踏の中で
どこからか梅が薫る
知らぬ間に春が来たのね
手ぐしで髪を整えながら微笑む
“今は漕ぎ出でな“
さて漁師は誰かしら
龍の眠りは深く
手風が幽かに鈴を鳴らす
漁火が高く燃え上がって
集まる銀の光
遠くで駒が嘶いていた