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その3「日本一宗教に走りそうなJK」

 中庭に戻るとリルが猫と和平交渉を成立させていた。


「そっかー。おまえらもエサなくて、たいへんだったんだにゃー」

「ニャー」

「にゃー。わかるにゃー! つらいにゃー!」

「ニャー」

 猫を抱きかかえてニャーゴと鳴きあうリル。

 なんかほんとに意思疎通してる気がする。さす教(さすが教祖)。


「わあ……かわい、かわいいですっ」

 信者候補一号、巨乳いじめられっ子のまもりちゃんがトトっと駆け寄る。確かに小5ロリが猫と話す姿は童話的なほのぼの感があるけどそれは巧妙な罠。動物を使って警戒心をなくす周到な作戦なのである。ごめん嘘です今考えた。

「みゃー。ふしゃー、にゃっ?」

 僕はまだ猫語を話してるリルの肩をトントンと叩いた。

 そろそろ本題に入ろう。


「リル、人類の信者候補を釣ってきたぞ」

「お? おほー? まじでかー?」

 天然巨乳の女子高生にリルが興奮している。リルはロリコンだがJKも大好きなのだ。おっさん趣味としか思えないが僕もJK巨乳とかJKパンツとか大好きなので人のことは言えない。

「まあまあ、ようこそいらっしゃいました! そこへかけたまえ!」

 胸を張って興奮気味に話すリル。

「え……あ、うん……よ、よろしくね?」

 しずしずとスカートを抑えて花壇のレンガに座るまもりちゃん。

 わりと無防備な座り方だ。ヒザをあげちゃってる。

 つまり中身が見えるのだ。

 僕は中身には興味はもちろんある方で、そこには純白のスノーリボンパンツが鎮座していた。しわっしわのディバインホワイトな魅惑布に赤リボンがちょこんと輝いてて、白い中央部はぷっくりとまるーく魅惑的にふくれてる! うわーいうわーいばんざーい!


 いや落ち着け僕。こんなことをしている場合ではない。


 すーはーすーはー深呼吸。

 そして凝視。


 落ち着いて、きっちりと、この白布の天国を脳に焼き付けるのだ。


「えっと、それで、わたし、どうすればいいのかな?」

「まずはリルがあなたのおなまえをきく」

 妙に偉そうだがまもりちゃんはクスクス笑って対応する。

 まあ普通に見ればリルは北欧美少女だし。のどかな雰囲気にもなる。

「リルちゃんていうんだ。あのね、わたしの名前はね、小森川まもりだよ」

「まもりんかー!」

「あはは。私の妹みたいに呼ぶんだね、ちっさいころの家でのあだ名だよ、それ」

 いいぞリル打ち解けるんだ。

 うーん白いシワがよく見える。なんでパンツの白ってこんなに輝いてるの?

 しかも太ももにぴっちり食い込むはしたなさ。サイズちょっと小さいな。うーん着こなし95点。やはり僕の目に狂いはなかった、清楚いじめられっ子のパンツの丸み、本当に大好きだ。おしりが正面から見えるのもポイント高くてえっろえろい。まだ視線に気付いてないまもりちゃんの純粋な笑顔の下にこんなエッチなパンツがはかれてると思うと愛しくてたまらない。


 よし、記憶した。


「まもりちゃん」

「あ、はい?」

 リルと話してリラックスした様子のまもりちゃん。

「とりあえずパンツ見えてるから隠そう」

「ええええええ!?」

 ばばばっ!

 慌ててスカートを抑えて足をピチッと閉じるまもりちゃん。

 天国は立ち消えた。でも僕の頭の中にきちんと残っている。満足だ。

「す、す、すみませ、すみませんごめんなさいお見苦しいものを!」

 わあい超恥ずかしがってスカート伸ばしながら自己卑下、すごい大好物です。

「いや素晴らしいパンツだった。喜んでいいと思う」

「へ!? ははは、はい、喜びます!?」

 わう。

 殴られるの覚悟の理屈だったのに、なんて言いくるめやすい子だ。

 それゆえ危ういとも思う。

 この子は人が良すぎる。いずれ悪い男にだまされる。

 その前に僕が救ってあげなければいけないと、強く決意した。


「そ、それで、な、何をお助けすればいいんでしょうか?」

「むしろ僕らが助ける側になりたいのです」

「え?」

 僕はリルの後ろに突き立ててある木製の看板を指差した。

 そこには『あなたのなやみ ぶったぎり』とある。文章変わっとる。

 でもゴロがいいな、テレビ番組みたいだ。このままでいいや。


「え、えーと……?」

「きみ、今深刻な悩みを抱えてるよね」

「えぅ!?」

 ぎくうっと小森川まもりちゃんはわかりやすく反応した。

「そそそ、そんなことは……っ、ないですよっ!?」

「うそ」

 リルが一言言うと、まもりちゃんはビクっと震えて黙ってしまった。

「今ちょっと、お悩み相談室を開催してるんだ」

「おなやみ……相談室?」

「そう。わたしのへや。それで、まもりんの悩みを聞いて、かいけつして」

 リルがぱんぱんとみかん箱を叩いて、ゆっくりと立ち上がった。

 そしてまもりちゃんの手を握りしめると、笑顔で見上げる。

 外見からは想像もできないほど大人びた声をリルは発した。


「わたしとまさきと、まもりんで、一緒に幸せになるんだよ」



 完璧である。



 まもりちゃんはしばらくリルをじっと見ていた。

 が、やがて、とすんと腰を落とした。

「……リルちゃんって、なんだか、不思議な雰囲気だね。安心できちゃうよ」

「まさきには、よく不思議せーぶつ、っていわれる」

「あはは、そーなんだー。不思議だねー」

 どうやら話す気になったようだ。まもりちゃんはぽつぽつと喋りだす。

 笑顔でゆっくりと、本当の神様に告白するようにだ。


「あのね、お父さんがお店やってたんだけどね……失敗して夜逃げしちゃったの」

 よくあるよくある。

「それでお母さんが働いてたんだけど、心労で倒れちゃって……いま入院してて」

 まあよくある。

「そしたら家に借金取りさんが来ちゃって……お、お父さんの借金5千万円はらえって」

 ほう。怪しくなってきた。

「どうしようって泣きながら、でも料理してたら……あの……て、天ぷらの火で」

「火で?」

「昨日……い、家が、もえちゃいました……」

 マジかい。

「実は今日、寝るところすらなくて……あはははは……わ、笑えちゃいますよね……あは……」

 まもりちゃんは乾いた笑いを浮かべた。

 たしかに笑うしかない状況である。どこのギャグ漫画だ。


「それで……クラスでも私が火をつけたってうわさが広まって……いや事実ですけど……」

「いじめられたと」

「うん、も、もともと友達いなかったけど……今は最悪で……と、トイレで殴られたり……」

「なるほどなー」


 うんうんとリルは腕組みをしながらうなずいていた。

 僕も腕組みをしてうなずいていた。


「まさき、どうおもう?」

「極まってるね」


 僕が感じた「わたし不幸です助けてください!オーラ」は伊達ではなかった。

 スーパーヘビー級の不幸娘であるこのJK。歩く不幸の数え役満か。


「しかし、まもりちゃん、お金は持ってなさそうだね」

「え……あ、お、お金とるんだ? そうだよね、ごめんね、いま四十円しか持ってないよ……」


 しょぼんとするまもりちゃん。

 まあ計画は狂ったけど問題ない、これから稼いでもらえばいいだけだ。

 あ、もちろんエッチな稼ぎ方ではない。まっとうな宗教的な稼ぎ方だ。


「ご、ごめんね、深刻なこと話しちゃって、初対面なのにね」

「だいじょうぶ。安心する。ぜんぶ解決してあげる」

「へ? え、む、無理……ですよね、あの、お気持ちは、ありがたいですが……」

 まもりちゃんが申し訳なさそうに、小動物みたいな瞳をこちらに向ける。

 あー、そんなの見せられたら、助けるしかないじゃないか。


「解決、できるよ?」

「ああ。できるな」

 僕とリルは目を見合わせると、同時にまもりちゃんに手を差し出した。

「僕と一緒に」

「わたしといっしょに」

 二人で息を吸って、同時に言う。



「「 新興宗教で、幸せになろう 」」



 五秒。十秒。

 やがて二十秒が過ぎて猫がまもりちゃんの足元でにゃーと鳴いた。

 まもりちゃんが、ぽつりとつぶやく。


「…………しんこう、しゅう、きょう?」



 そう。

 新興宗教を、やるのだ。

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