勝利者インタビュー?
「ビニール傘!実に懐かしい」
「わたしでなく、このきかいのかんそうですね。あるじのいえにはありますから」
「懐かしい?『古代ビニール傘』・・・この世界の古代には存在していたってことか。」
このゲーム、ポストアポカリプスなのか?そして、
「君は二重人格か何かか?」
つまり茶番の最初からこいつは傘しか目に入ってなかったわけだ。
じゃあ僕らの小芝居が全くの無駄だったかというと、そういうわけでもない。
機械兵は『証拠品』のくだりで僕らの目的を察して、それを餌に傘の持ち主を釣り上げた。
僕は餌である『菊一文字』『閃光の輝石』をゲット、今は僕のアイテムストレージにちゃんと入ってる。
ギブアンドテイク、引き分けといったところ。・・・試合に勝って勝負に負けたとも言う。
機械兵は傘を矯めつ眇めつ、美点を論った
「特に『完全撥水』効果は生物に対して非常に有効だ。どんな生物も水分を含んでいる。
つまりこの傘の柄以外に触れた生物は瞬時に弾け飛ぶ。ヒトに刺せばと肉が爆ぜて傷口はぐちゃぐちゃになり治療は困難を極める。」
「えぐい!」
「貴方は素晴らしい兵器を蘇らせた。誇ってよい」
ギルドの皆と違って、褒めちぎってもらえた。素直に嬉しい。内容はともかく。
え、今、何してるかって?
お茶飲んでます。カメラ回ってますけど。
棺桶の上に僕と機械兵で仲良く座ってます。「すわって」と言われたのでね、
機械に倫理観は無いよな。『そういうキャラ設定』なら仕方ない。
そして機械兵はどこからともなくティーセットを引っ張りだしたのだ。
まあ、アイテムストレージからだろう。
NPCは持っていない、プレイヤーしか持っていないアイテムストレージだ。つまり
「君さ、中の人、いるよね?」
それも、『死に戻り』に驚くほどの超ゲーム初心者がさ。
「なかのひと、とはなんですか?」
「あー、このゲームのプレイしてる『現実』の人?アバターという着ぐるみの中の人ってこと」
「中の人などいない。中のロボならいる。」
「・・・は?」
話を聞けば、現実では家政婦ロボットなる存在らしい。今現代においては珍しいというわけでは
ないが、こいつほどのAIが搭載されているならお値段は相当お高いに違いない。
「なんでゲームやってるんだ?主人の命令とかか?」
「実はこいつの主人が長いこと家に不在でな。帰ってくるまで仕事も無く暇を持て余していたらしい」
なまじ知能が高い故に『退屈』という感情が生まれてしまったのだろう。
「いえからでてはいけない、とのめいれいでして」
「らーめんをつくって、ゆかにぶちまけて、それをそうじしたり」
「おふろばはそうじしすぎて、たいるのめじが2、3みりひろがりました」
精神汚染が酷い事になっていらっしゃる。
誰も居ない家をずっと彷徨って、ある日面白そうなオモチャをみつけた。
他ならぬVRゲーム機である。主人がこれで時たま遊んでいたのを思い出し、
見よう見まねで操作して・・・現在に至るということだった。