バトンタッチ
前衛二人が死亡、これすなわち戦線崩壊という。
『魔法使い』カテリーナさんは呪文詠唱の途中、『狩人』のヴィル君は前衛二人が初撃を決めてから
矢を射ち込む算段だった。前衛二人が離れてからでないとフレンドリーファイアになってしまうからね。
『守護騎士』の狛猫は後衛二人を守るべく中衛ポジション。
三人は想定外の早期決着に唖然とした様子だ。
機械兵はモルガナさんが煙のように消えた事態にまたまた驚いている。
死に戻り、二人目。二人とも防御力低めなのは知ってたけどほぼ一撃で沈めるとは恐れ入った。
さて、モルガナさんの遺品はなんだろう?
綺麗な石のついた首飾りだった。あれは確か『閃光の輝石』、クリティカル率を上昇させる装備だ。
多分買い直せばまた入手できるだろうが、それでも結構なお値段だった気がする。ご愁傷さまです。
機械兵は首飾りを拾うと・・・
棺桶の小窓にシュートした。魔石と勘違いしたのだろうか?
と、小窓から『ペッ』と首飾りが吐き出された。棺桶は『これ違う』と言いたげだ。
機械兵はやや首を傾げ、首飾りを拾うと・・・
棺桶の小窓にシュートした。こいつポンコツじゃないか?
と、小窓から『ペッ』と首飾りが吐き出された。今度は機械兵の頭にコツンと当たって落ちた。
奴が阿呆を晒しているのを良いことに、三人は緊急会議を始めた。
ヴィルヘルム:あいつのSTRとVITどうなってんだ!
カテリーナ:これって詰みですよね?撤退しませんか?
ヴィルヘルム:・・・『菊一文字』を置いて、か?
ヴィルヘルム:イベント限定アイテムだぞ?あの刀無くしたら、アートが鬱になりかねん
カテリーナ:うっ、回収は・・・諦めるしか・・・
狛猫:なーご(物理より魔法撃った方が効く可能性)
カテリーナ:こちらが攻撃しない限り、ロボ君は何もしてこないと思います
カテリーナ:魔法が効いたとしても、一撃で仕留めないと反撃されますよ?
カテリーナさんの推測は良い線いってると思う。
こちらが攻撃しない限り、何もしてこない
だが惜しい。もう一歩というところだ。
正しくは
こちらが攻撃しない限り、何もしてこない『人畜無害な機械兵』 なのだ。
『人畜無害な機械兵』を、どうして躍起になって討伐する必要がある?怖いからってだけで?
僕はこの『クエスト』自体に疑問を感じざるを得ない。
ただ『クエスト』をこなせば先に進めると信じるのは攻略組の悪い癖だと思う。
僕は今から『クエスト』なんて関係なく、自分のやりたいように行動する。
ついでに『菊一文字』と『閃光の輝石』を回収して『アヴァロン』に恩を売り、
困っているカテリーナちゃんを颯爽と助ける、そんなハッピーな展開を目指すのだ。
作戦開始。