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「…親父、この赤ん坊の世話頼む」
セド君はそう言って赤ん坊を獣王様に渡し、そしてキンペンに飛び乗った。
「わかった。この娘は今日からお前の妹だ」
「ありがとう、じゃあ行ってくる」
キンペンは僕とセド君を乗せてカノプスを離れて行く。
「セド君、よかったの?」
故郷を離れる事と、あの娘を置いていく事を。そんな質問だ。
「『初期化』ってのは、つまりは何も憶えてないんだろ。
…でも、アイツはまたこの地が好きになるよ。
俺は、ここには無いものを探しに行くんだ。メルティはこの地で、問題の解決策を隅々まで探したはずだ。だからここにはきっと答えはない…」
「クロガネはそこかしこをうろついているのに答えが見つかってないみたいだけど」
「俺はあの鉄クズは信じてねぇから」
噂をすれば影がさすというか。
横から何か黒い物が飛んできて、キンペンの上に着地した。
クロガネの左腕だ。
「な、何だ?何しにきた?」
「指をさしてる…あっちか」
巨大な黒い犬が神殿の中にゆっくりと入っていくのが見えた。一部の獣人達が祈りながらその後に続いてついていく。
「カノプスは新たな『黒い箱』を手にしたという事さ」
「アイツがカノプスに居つく理由ってあるのか?」
「獣人達の記憶を取り込んだ影響かな、データ処理が落ちつくまではこの地を離れがたいのかも…この左腕は拒否したっぽいけど」
「街の奴ら、この短時間で信者と化してやがる…確かに砂漠に植物を生やしたり死にかけの獣人を赤ん坊にして復活させたり、やってる事は神っぽいけど…」
「でも寿命はきっちり調整するだろうね。理想的解決とはいかないんじゃない?」
「しばらくはペンギンで時間稼ぐしかないか…」
左腕は今度は海の向こう、パンドラを指さした。
「言われなくともわかってるよ、元々そのつもりだし」
「何だよ俺にもわかるように説明しろよ」
「この黒い箱をパンドラに運べってこと。僕もそれがいいと思う、パンドラとカノプスの存続にはこの方法しか考えつかないし」
「…お前がそういうなら、その方がいいか…
でも、どうやって?」
黒い箱は減速しつつあった。やがてゆっくりと海岸に辿り着き…
接岸していたスワンボートの尻に連結した。
連結した勢いそのまま、パンドラに向かって滑るスワンボート、それに引きずられる黒い箱。つかず離れずの距離で追いかけ、冷気を吹きつけるキンペン。
パンドラの沖で連結装置を解除した。今や黒い箱のカウントダウン表示は消え、キンペンが張り切りすぎた結果黒い箱は海に浮かぶ氷の固まりと化した。成れの果てがこの巨大な氷山である。小規模なダンジョンくらいのスケールだ。
『新たなダンジョンが作成されました。名称と管理者を登録してください』
あっマジもんのダンジョンになったの?じゃあ『しべりあリゾートアイランド』で。管理はキンペンにお願いしよう。
『条件:ブラックボックスの奪取 の達成により、
『第一実験場管理者』の称号を獲得しました。
スキルレベル上昇【精密機械Lv.4】→【精密機械Lv.6】』
この称号僕が持ってていいのか?そんな思いでクロガネ(左腕)に目を向け…いつのまにか姿が消えてる事に気づいた。ホント勝手なヤツだよ。
『ナノマシンの侵食率が50上昇しました。
侵食率が50%を超えた事により、
回復スキル【遺伝子操作】を獲得しました。
【遺伝子操作】の効果により
耐性スキル【拒絶反応無効】を獲得しました。
【拒絶反応無効】の効果により
状態異常『免疫不全』(永続)になりました。』
これは改造手術待った無しだな!
「ああ、楽しくなってきた!ふへへへ!」
セド君がこいつヤバいな、という視線を送ってきた。
「…俺、お前のギルドに入りたいと思ってさ」
「いいよ」
「でもお前の笑顔を見るたび不安しか湧かないんだよな…
果たして俺はこのままお前についていって正解なのか?」
「大丈夫、ウチのギルドのサブマスはスゴくまともだから」
「お ま え は ?」
「ふへへへへ!」
「怖い怖い怖い!」




