Oracle:02
『カノプス』の街の入り口には当然、見張りの機械兵が待ち構えていたわけだが。
今や僕らの見た目は完全にクロガネであったし、さらに念入りに、+3の【音声合成】スキルを使用した。
『『動くな』』
という短い音声データを作成してもらったのだ。
僕らは無事、微動だにしなくなった機械兵の真横を通り抜けることができたのだった。
ハゼル:そういや+3、街に入ったけど例の『謎の声』は聞こえた?
+3:『もはや何も必要がない』ですって。今回は楽で良かったです
やべー、神に見捨てられてるぞ。
砂色の四角い民家が連なる道をセド君は迷いない足取りで通り抜けて行く。真昼の往来には僕ら以外人っ子一人いない。しかし干しっぱなしの洗濯物や、開けたままの戸口のドアが、少し前までそこに生活していた人々の気配を感じさせた。
「綺麗なもんだ」
「ああ、街から逃げた時、そこかしこに血だまりがあったんだ。建物もいくつか破壊されているのを見たんだが…」
「建物の破壊は幻だったんだろうね。血だまりは…
わざわざ掃除までしたのかな?なんて優しいんだ、どれだけ皆の帰りを望んでいるんだろう!もう以前の関係には戻れないのに」
「メルティ…」
噂をすれば、神殿へと続く大通りの真中に佇む人影が1つ。猫獣人女性の姿形を模してはいるが、左半身が明らかに機械兵だ。顔も左半分は金属の仮面に覆われているが、顕になった右側は美しく、そして吊り上がった目がこちらを睨んでいた。
「予告もなしに来るなんて、らしくないですわね?
…クロガネ」
あっまだ変身中だったわ!どうすれば元に戻るんだ?
【ナノマシン操作】スキルで解除すれば…
いや待てよ。解除する前にまだやるべきことがある。
+3、【音声合成】頼む!
「…何故お前は『遊んで』いた?」
僕はクロガネの「いつまで遊んでいるつもりだ」という発言の真意が知りたいのだ。この質問をすれば何かしらの情報をメルティの返答から推察出来るかもしれない。
「理解できないでしょうね。『心』がない貴方には」
メルティには『心』があるのか?少なくとも本人はそう思っているようだ。
先程からセド君は黙って成り行きを見守ってくれている。彼もメルティのことを知りたいのだ。
「…」
「私はこの街の人が好きですの。
なるべく長い時間を共に過ごしたいと思いましたわ。
だから医療に力を注いで、
死にそうな方は半分機械に改造しましたの。
貴方が私にそうしたように。
別に私と共に永遠に生きていてほしいなんて考えはありませんわ。ただ、せめて天寿を全うしてほしかった。
それが貴方には『遊び』に見えるというのね。
獣人種の平均寿命は50年前後。
貴方はそれを25年に調整しろと言ったわね。
貴方、人の命を何だと思っているのかしら?」




