『アヴァロン』さん、ちーっす!
目新しいもの、発見!
ハゼルさんの鑑定スキルが火を噴くぜ!
??? Lv.30
種族 機械人形『アヌビス甲型』
職業 機械国軍衛生兵 ???(非表示)
ふん、相手にもならないな(震え声)
ゲームだし、普段なら死に戻りも厭わず挑戦するのが僕のスタイルだ。
ただ、死ねばデスペナルティとして所持金の半分とアイテムの一つをランダムでロストしてしまう。
金はそんなに持ってないが、ビニール傘を失うのは僕的にアウトだ!まだ遊んでないのに!
でも機械兵にも抗いがたい魅力を感じる・・・もうちょっとだけ、近づいてみよう。見るだけだよ?
装備を『疾風の下駄』から『やわらかい下駄(効果:忍び足)』に変更する。
それで、近づいてみたんだが・・・先客がいるね?
機械兵に気取られぬよう、5人ほどのパーティーがじりじりと包囲網を張っていた。奇襲をかけるつもりらしい。・・・って、あれ『アヴァロン』さんじゃないか!
あちらさんも僕の接近に気づいたらしい。テキストチャットを飛ばしてきた。今は声出せないからな。
ヴィルヘルム:げぇっ、ハゼルだこっち来んな!
ハゼル:なんだい人を雨雲みたいに・・・ちょっと見るだけだしいいじゃん
カテリーナ:ハゼルさん、こんにちは。ヴィル、見ているだけならば構わないのでは?
アート:俺は構わない
モルガナ:いーけど、うちらの獲物に手ぇださないでねー?
狛猫:にゃー(ええで)
ハゼル:ありがとーカテリーナちゃん!大好き!あ、動画も撮るから
カテリーナ:ふえっ!?
ヴィルヘルム:あつかましいにも程があるぜ全く
アート:かっこよく撮れ
ハゼル:仰せのままに。てかあれモンスターなん?
ヴィルヘルム:わからん。が、冒険者ギルドからの討伐クエストで来た
カテリーナ:この前街の城門前に出現して、その時は何とか追い払ったらしいです
モルガナ:でもまだこの辺うろついてるらしくてぇ、街のやつら怯えてんの
狛猫:にゃ(伝承が正しいなら、人類滅亡の兆しか?)
アート:何だあれは
そこには実に奇妙な光景があった。機械兵は棒立ちしているだけだが、その目の前に草原のモンスター、
ダークラビットが身じろぎもせず鎮座している。いつも僕らを素早さで翻弄するはしっこいウサちゃんが・・・しかも一匹だけではない。数十匹のダークラビットが、ただ、じっと、機械兵を見つめていた。
僕はこの時、昔見た映画の事が想起されてならなかった。
『朝方、子羊の悲鳴で目が覚めたの。牧場に行くと叔父が子羊を殺していて…逃がさなきゃと思って柵を開けたのに、子羊たちは逃げないの。咄嗟に近くの一匹を抱えて逃げたわ…でも重くて…』
機械兵は足元に置いていた、黒い大きな箱を持ち上げた。それはどう好意的に見ても、
棺桶だった。それを、ダークラビットの上に振り下ろす。再び棺桶をもちあげると、下にある
肉塊と、ドロップアイテムの小さな魔石が見えた。機械兵は魔石を拾うと、棺桶の小窓を開けて中に石を放り込んだ。そして一匹ずつ、微動だにしないダークラビットを魔石に変えていった。
あたりはいよいよ血臭に満ちて、そして
??? Lv.31
種族 機械人形『アヌビス甲型』
職業 機械国軍衛生兵 ???(非表示)
全員呆然として動けなくなっている間に、あちらはレベルがしっかり上がっていた。
「総員、突撃!!」
ヴィル君、奇襲するのに掛け声はいらないんじゃないかな?
まあ平常心を失う光景ではあったけどな。