被告の証言「彼が勝手に早合点しただけなので僕としては訂正するつもりは無いです。」
「つまり街から逃げ延びた獣人達は今『拠点』とやらに隠れて、街を機械兵から奪還せんと機をうかがっていると?しかしキミは及び腰な大人たちに痺れを切らして単騎で乗り込み・・・」
「てきにみつかってさんざんおいまわされたというわけですね。『むぼう』?いや、『ふもう』?」
とりあえず僕らはガイド役の案内に従い『拠点』を目指して砂漠を進むのであった。
「うるせえ!俺はな、一番最初に街に帰んなきゃならねぇんだよ!」
なんか事情あっての行動らしいが、目的達成はどうせ無理だろうし詳細は訊ねないでおこう。
「それより僕の足が全然生えてこないんだけどおかしくない?キミ何か知ってる?」
「おかしいのはテメェだよ!無くなった足が生えるわけないだろうが!」
第一実験場に居たころは一旦ログアウトすれば、ログインした時にはまた生えてたのになあ。まあよく考えたらそっちが異常なんだけども。バグとして修正された可能性が高いかな。となれば足を取り戻す唯一の方法は『死に戻り』なわけだけど、今やってしまうと『はじまりの街』まで戻されてしまうんだよなあ。まだしばらくは車椅子生活が続きそうです。
「ていうかお前足なくすとか何があった・・・あっ、まさか角が生えてるせいで人間どもから迫害されて・・・ちょっと頭がおかしいのも辻褄が合う・・・」
それから彼の僕に対する態度がちょっと軟化しましたが、彼が勝手に早合点しただけなので僕としては訂正するつもりは無いです。はい。
砂漠を歩き続けると、なんとそこには緑生い茂る熱帯雨林が。
「拠点はこの森の中だ。身を隠すにはちょうどいいしな」
熱帯雨林は、僕の眼前に壁のようにゆるく弧を描きながら、視界の許す限り延々とそそり立っていた。
「・・・セド君、この森はどこまで続いているんだい?」
「海側を除いて砂漠と街を円で囲むような形だな。森を抜けたら向こうは崖しかないぞ。俺が生まれる前は街の城壁までみっちり森があったらしいぜ?大人達はそう言ってた。」
「・・・街を中心に砂漠化が進行している?森の木を大量に伐採したりしているのかな?」
「そんなことしねえよ!俺達は森の恩恵を受けて生活してるんだ。・・・森と距離が離れても、狩りや採集をしに毎日街と森を往復してた。今は森に仮住まいしているわけだから往復せずにすんでるわけだが」
僕は彼の話に僅かな違和感を覚えつつ森の中の獣道を進んでいた。車椅子がギリ入る道の幅なのは幸いであった。
「それでは、まちをすててもりにすめばいいのでは?」
+3に悪意はないんだゴメンネ。まあごもっともな質問なんだけど。
「・・・街を奪還できなければ嫌でもそうなるだろうけどな。森の中は恵みもあれば危険もある。クソ強い魔物やモンスターがそこらを徘徊しているんだ。男連中で交代しながら見張りを続け、気の休まる間もなく何度も移動を繰り返して・・・正直限界が近いかもしれないな、特にガキ共や老人は」
「へー、きけんなモンスターって、たとえばいまこちらにもうスピードでせまってるあれですか?」
考え事にふけっていた僕はふと+3の台詞で顔を上げた。
眼の前にあるのは
巨大な獣の口腔だった。




