同志よ!・・・どうしよ
「・・・Excellent!」
この光景を見てその感想が出る頭のオカシイやつを私は一人しか知らない。出来れば一人も知りたくなかった
「なにあのデザインかっこよすぎでしょ!機械ながらも内包した生身の筋肉と骨格を想起させる滑らかで美しい曲線を描くフレーム!改造された元生物の悲哀を感じさせる所々に散見する地肌とふわふわの毛皮そして滲む血液かと思いきや濃い目の色のあれは多分燃料的ななにか!お子様にも安心なグロさ控えめのクリーチャーだがよく考えるとあの飛び出た金属とか拘束具は本体にかなりの苦痛を与えているのでは?感受性豊かな人間には分かる残酷さに正気が削られてゆく!だが狂気と美しさは比例するものなんだ!嗚呼、ありがとう機械兵!ありが・・・いってぇ!!」
「うるせぇ」
周りの視線が痛くなってきたので物理的に黙らせた。奴のHPが残り一割になったがいつもすぐ死ぬしいいだろ。
「鐚ちゃん!機械兵は僕の同志だったんだよ!あのクソウサギの存在が許せなくて訂正しに来てくれたんだ」
折れた左腕を振り回しながら訳のわからん主張をし始めた。・・・痛みでハイになってるのか。思い至った私は奴に回復薬をぶっかけた。
「・・・・・・」
突然テンションが下がった。いまなら話が通じるか。
「喜んでいるのはお前だけだ。機械兵は明らかに難易度を上げて帰っていった。さっきからプレイヤーが攻撃しているがあまりにダメージが通らない。なにか攻略の手順があるんじゃないかと皆探っているようだが・・・お前何か分からないか?」
私は頭脳労働が苦手だが、こいつはこんなでも恐ろしく頭のきれるやつだ。たまにふりきれるが。
「・・・お礼に渡したいものがあったのになあ。さっさと帰るなんて・・・」
どうやら今日はダメなようだ。もう完全に戦闘から興味が逸れている。
もう自分でメカウサギ殴りにいこう。ギルドの貢献度のためだ、サブマスターとしてこの戦い、参加しないわけにはいかない。ちまちま攻撃するのは性に合わないが。
ハゼルの傍を立ち去ろうと踵を返そうとした時、足元に+3がいることに気づいた。
「+3、一緒にウサギを殴りにいくか?」
「いいえ、めいれいにいはんしますのでだめです」
「基本お前も機械兵と同じスタンスなんだな・・・」
同じ、と自分で口にしてふと思いついた。
「ハゼル、機械兵に渡し損ねたものがあったら+3にあげたらいいんじゃないか?間接的に」
「いいのかなあ・・・」
ハゼルはあまり納得していないようだが、これは逸れた興味を戻したい故の進言だ。そしてもう一押し。
「+3は店番がんばってくれただろ?特別給与、みたいな」
「それもそうか・・・。+3、店番とかありがとうな。これはキミにあげよう」
説得はなんとか成功した。
なにをプレゼントしたかったのかと見れば、・・・『ケイオススライムの魔石』?通常の魔石よりもかなり大きい、拳ぐらいの大きさはある。魔石ってこのゲーム内じゃ未だにはっきりした使い道が示されてないんだよな。もっぱら金策として魔術ギルドに売るくらいか。それでもたいした額にはならないが。勿論プレゼントに使う奴なんて見たことがない。ほんとにコイツの考えは読めない。
「わっ、いいんですか!?ありがとうございます!おいしいれふ」
かつてない喜びを満面の笑みで表し、間髪いれず魔石を口に頬張る+3のことも私には理解は出来ない。
「もぐもぐ・・・」
でも可愛いから許す。ああ顔がにやけてしまう。
「うわ鐚ちゃん顔気持ち悪い」
お前は絶対許さない。