わっつ ゆあ ねーむ
さて、大分商品もはけてきたし、僕はギルドの『広告塔』としての役目を果たしにゆくとしますか。
「ハゼルさん、そろそろ店も落ち着いてきたんで・・・」
「わかったよ、行ってくる。はぁ、戦闘は苦手なんだけどな」
そう愚痴る僕の後頭部に強めの手刀がはいる。
「さっさと行け。ウサギはあたしが引き受けてやるんだから、スライムの方が幾分マシだろうしな」
と、ここで心強い鐚ちゃんの後押しが。しかしいまの手刀で僕のHPは残り七割になった。
・・・たしかプレイヤー情報では今回のボスは『通常モンスターの集合体』。故に元となるスライムとダークラビットの戦闘力を比べればどちらのボスの討伐が容易かある程度予想がつく。スライムの方が少し弱い。そして魔法攻撃が有効。ウサギは動きが素早いので物理攻撃の方がいいだろう。
下手な鉄砲も数撃てば当たるってやつだな。
機械兵はついて・・・きてくれないか。
『はじまりのまちにきたるわざわいにそなえよ。ただしまちをほろぼすもまもるも、ひとのわざ』
『ひとのわざ』。
神託によればこの戦いに機械兵は手出しできない。
・・・たださっきからこいつは店番やらレジ打ちやらで鬼神のごとき活躍をみせていたわけだが、
その行為は手出しにはあたらないのか。それとも、神託に従う気が無いのか?
「本人に聞いてみよ。おーい・・・あれ?」
いまさらだけどこいつの名前って、なんだ?4号?
質問を変更しよう。
「なんでしょうか」
「えーと、お前のこと、何て呼べばいい?」
「ほんみょうは・・・」
「ああダメだって、ゲームの中じゃみんなリアルとは違う名前なんだ。ハンドルネームってやつ。
実名だと住所特定とかされちゃうからね」
「なるほど、したしげにニックネームでよびつつ、ないしんではたがいをきょぜつしていたのですね。このせかいはおもしろいなあ!」
しばしの沈黙の後。
「『+3(たすさん)』とおよびください。」
「たす?」
「さんづけでおねがいします」
「あっはい。いまからスライムを木っ端微塵にしてこようとおもうんだけど、一緒に来る?」
「・・・いえ、やめておきます」
「それはさっきの『お告げ』に従うということかな?」
「それもありますし。あの『かさ』があればあなただけでじゅうぶんでしょう。」
見届ける必要も無いくらい僕とビニール傘を信用してくれているらしい。
ちょっとやる気がでてきた。
「よーし!やってやりますかあ!あ、別行動するなら連絡手段が必要か。ここらでフレンド登録しとく?」
「ふれんど?」
「ゲーム内でいつでもどこでもチャットができるようになる。ぼくがフレンド申請するから、
承認してくれるとお互い便利かなって」
「ともだち」
+3はどこか懐かしそうに笑った。
『フレンド申請が承認されました』
『称号『人類の敵』を取得しました。』