都市防衛戦?稼ぎ時だね!
「おーい、みんなぁ!草原からボスモンスター共がすごい勢いでこっちに向かって来てる!
急いで迎え撃つ準備を・・・って、あれ?」
もう皆とっくに門の前に集合しているのであった。
「あれ・・・?準備よすぎないか?」
襲撃者の情報をいち早く届けようと全力疾走してきた彼は、皆の落ち着きように困惑している。
『事前情報』がなければ今頃は、街のプレイヤーがアナウンスを聞いて慌てて
NPC達の避難誘導等に勤しんでいるはずだった。
それがどうだろう、NPCの兵士までもがすでに戦闘配置についていた。
「もしかしてアナウンスよりも前に情報が行き渡ってたり・・・?」
その質問には皆を代表してカテリーナちゃんが答えた。
「ええと、とあるツテから情報が入ってまして。城壁の上から望遠鏡であたりを
見回してみたら、異様な黒雲が見えたのでこれは非常事態だと確信しました」
「さすが『アヴァロン』さん!こんなに急いで帰る必要なかったか」
「いえ、敵ボスの情報は何も持っていないので・・・貴方が知りえた相手の情報を
是非教えていただきたいのです。」
美少女のお願いは聞き入れられないはずも無かった。
「ええと、はじまりの草原にいるモンスター・・・だいたいスライムか兎なんですけど。
あの黒い雨を浴びたら全部真っ黒になって、しかもなんかぶよぶよしてる感じで。
なんなんだって見てるうちに、スライム同士とか兎同士で融合?し始めて、どんどんデカくなって
終いには城壁ぐらいの大きさになってました!」
悪い夢でもみたんじゃないかと言いたくなるが、嘘ではないらしい。
それに、想像以上に嫌なニュースが話しに含まれていた。
「つまり・・・ボスは2体、ということですか?」
「はい!兎の方は街の南、つまり正門に向かって進んでます。スライムは多分東の城壁に。」
「どちらにも対応しなければなりません。スライムが来るであろう東には魔法系ジョブの方を・・・」
「あっ!言い忘れてことがありました!」
まだ情報があるらしい。これ以上悪いしらせは御免こうむりたいものだが。
「あの黒い雲、ボスと一緒に移動してるんです。常に黒い雨を降らせてて・・・
あの雨、プレイヤーに当たるとダメージ食らうんです。
でもボスに当たると奴ら少しずつ回復してました」
最悪だ。みんなのテンションがもはやお葬式だ。
「しょっぱなのボス戦ってレベルじゃねーぞ・・・」
「防具で軽減できないダメージ・・・毒より性質が悪い」
え、僕?僕はそれどころじゃないよ。
臨時の店用テントを設営するので大忙しだからね!
今回のようなプレイヤー同士で協力するいわゆる『レイド戦』における生産職の役目は
主に後方支援である。回復薬や有利な武器、防具などの物資を売って戦闘職共をサポートするのだ。
もちろん戦ってもいいんだけど。僕も『目玉商品』をある程度売りさばいたら戦闘に参加する
つもりだしね。ギルマスは目立ってなんぼでしょ!さて、
「レインコートと長靴、セットでたったの500イェンだよー!使い捨てだけど
『完全防水』効果ついてまーす!お一人様2セットまで!」
装備防具 古代レインコート 効果:『完全防水』 効果時間:戦闘一回
装備防具 古代長靴 効果:『完全防水』 効果時間:戦闘一回
『完全撥水』は水ダメージ反射効果があるが『完全防水』は水ダメージを無効にする。
つまり黒い雨によるダメージを防ぐことができるのだ。
予想はつくだろうがこれらは例のビニール傘の副産物だ。少しだけ余分に素材を入手しておいてよかった。使う素材は少なく効果は数段劣るが原価は安くなる。価格はお手ごろ。商売としてはかなりの儲けになるのである。
僕は賢いギルマスなので『傘』で降下するであろうギルメン達の機嫌を上方修正する手段も
ちゃんと用意していたのだ。まさかこんなにすぐ役立つとは思ってなかったけれども。
見よ、店頭に群がるプレイヤー共を!まるでカモだぜ!
ギルメン達もほくほく顔である。鐚ちゃんも珍しく機嫌が良さそうだ。
計 画 通 り