僕と愉快な仲間達
どうやらかなりの人数が『アヴァロン』の呼びかけに応えたようで、
ざっと20名ほどのプレイヤーがこの場に現れた。さすがトップギルド、人望が厚い。
まあ単純に機械兵のクエストに興味があるってだけかもしれないけど。
その中には見知った顔もちらほらと・・・ってうちのギルドの子たちじゃん!
ということは、
「ハゼルさんよお、街の人とのおしゃべりは終わったのか?じゃあギルメンにも説明してもらおうか、
その安っぽい傘についてな」
「ひえっ」
ドスの効いた声をあげながらこちらに近づいてくる女の子がひとり。
うちのギルドのサブマスター、鐚ちゃんであった。
サブマスターはギルドにつき二人いる役職で、例に漏れずうちにも二人いる。
僕はいわゆるギルドのマスコット的立ち位置にいて、ギルドの運営は実質二人のサブマスに丸投げしている。
だから頭が上がらないというか・・・あと鐚ちゃん普通に怖い。
僕と彼女は現実世界で知り合いであるから、彼女がヤンキー女子高生であると知っている。故に怖い。
「傘の話はあとにしてくれ。ハゼル、機械兵は何処に・・・」
ヴィル君とカテリーナちゃんは街で人を集めてこちらにとんぼ返りしてきたようだ。
アート君とモルガナさんはデスペナルティで戦闘力が著しくダウンしているので戦力外だろうけど・・・
「あれ、狛猫は?」
「・・・アートが首を吊らないように見張っている役目が要る」
「モルガナが、その、錯乱状態で・・・あんな死に方でしたから」
頑張れ狛猫!
「で、お前ちゃんと取り返せたんだろうな?」
『アヴァロン』の二人から事のあらましについて説明を受けたであろう全員がこちらを見た。
そして視線は下がって僕の足元に視線が集中する。
なぜって今、僕の白衣のすそに潜り込もうとしている謎の機械生命体がいるからね。
別に隠れる必要なんて、これっぽっちもないのになあ。
わたわたしている機械兵(小)の首根っこを掴んで持ち上げる。・・・結構重いな
「機械兵君は用事を思い出して帰ったよ。もちろんアイテムも無事返してもらった。ほれ」
そう言いつつ僕はアイテムストレージから例の二品を取り出し、カテリーナちゃんに渡す。
礼儀正しいカテリーナちゃんはお礼を口にしようとしたが、申し訳ないがそれは遮らせてもらう。
今から礼は返してもらうので、そんな言葉は必要は無いのだ。
「さて鐚ちゃん、僕がまさかビニール傘なんぞの為に君達ギルドメンバーに多大な労苦を課したと
思っているのかい?あれはほんの冗談だよ!実はね・・・
この自立式機械兵1/4スケール再現モデルを作っていたのさ!」
「なんだって、スライムの薄皮とダークラビットの耳軟骨からそれを!?」
おっ、いい反応だね!そういうのがに欲しかったんだよなあ傘をみせた時に!
「前々からロボを作りたいと思って骨組み程度まで作成しておいたんだが、今話題の機械兵君を見たら
ぜひモデルにしてみたくなってね。取り急ぎ外殻をつけて完成にこぎつけたのさ」
これで僕のロボ製作期間は機械兵出現以前から現在までということになり、外のガワをつくるだけなら
出現から現在までの時間で十分。この嘘は矛盾が無くなった。
ただし『アヴァロン』のメンバー五人はこれが嘘だとわかるだろう。僕があの時初めて機械兵を認知した
反応であった事、そしてその時点から今現在に至る時間内には外殻すら到底完成出来ないこと。
この二つは僕の今の発言と明らかに矛盾している。
現に『アヴァロン』の二人は何か言いたげにこちらを見ているが・・・
僕は二人に向かって軽くウインクした。
もし僕に対して多少でも恩を感じているなら、協力してくれるよね?