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2023年7月分

№2735~2785


#文披31題 に参加させていただきました。

2735.『更新のない店』


#twnovel 新しくオープンするという店のアカウントを発見しフォローしたっきり半年間更新がなく「潰れてしまったか…」とずっと思っていたのだが、たまたま店舗の前を通りかかると行列のできる人気店となっていた。「忙しくてツイートしてる暇がなくなった」らしい。ツイッターを捨てよ、町へ出よう。


 *


2736.『otaksa』


#twnovel あじさいを「オタクサ」とも呼ぶという話の根拠はなく、愛する女性の名前をつけるためのウソだと聞いた。仮に俺が、何かの新種を発見したとしたら、名付けをしてまで永遠に残したいと思う人などいるだろうか。足を止めた俺を犬が急かす。そういやお前の名前、好きな子からとったんだっけな。


 *


【小説の書き終り:「空のインク瓶が手に残った。」】


2737.『魔法のインク瓶』


#twnovel 魔法のインク瓶を買った。頭の中の文字を出力してくれるという話題の道具。ふと思いついたことを心に書き留めながら一日過ごしたが、手帳には一文字も記録されていない。インチキ商品だと拡散しようとしたら、何故かツイッターがパンクしていた。まさか。疑念と、空のインク瓶が手に残った。


 *


【#妖怪呟怖 お題「ろくろ首」】


2738.『ATMじろじろ』


#呟怖

この御時世、個人情報の流出には気を付けないといけない。ATMを操作する際も、他の人が立ち去ってからにしている。なのに、何故か視線を感じる。前の女性の遠ざかっていく足音もしっかり聞いているのに。振り返ると、さっきの女の顔がすぐ目の前にあった。じろじろ覗いてくるろくろ首に御用心。


 *


【#文披31題 Day1『傘』】


2739.『傘を探す』


#twnovel 葦谷さんは『傘』というお題を出されたら、面白い傘などではなく『雨の中、傘も差さずにいる人』を探すタイプの小説家である。見つけたら理由をインタビューするのかと聞けば「見るだけでそっとしておく。それを勝手に想像するのが小説だろう」とおっしゃる。人と話したくないだけだと思う。


 *


【#文披31題 Day2『透明』】


2740.『限りなく透明に近いブルー』


#twnovel 葦谷さんの作家としての色って何?と聞いたら「無色透明」と答えが返ってきた。「書いてる方はそのつもりだよ。色を見るのは読んでる方」色なんて光の当たり加減で変わる、そういう意味のようだ。良いこと言ったつもりのようだが、最初に「無職童貞」とふざけて答えたこと忘れねえからな。


 *


【#文披31題 Day3『文鳥』】


2741.『文鳥・夢十夜』


#twnovel 取材の一環で迷い文鳥探しを手伝った葦谷さん。初手でよく似た文鳥を買いに行った。「ウソぐらいつくさ。小説家だもの」だが、本物の文鳥が自力で帰ってきてしまい面倒なことに。葦谷さんは「並行世界同位体かな?」とSF設定で誤魔化した。異世界から来た方はしばらく葦谷さんが飼っていた。


 *


【#文披31題 Day4『触れる』】


2742.


#twnovel「触れること」それが葦谷さんの言う『紙の本の良さ』だ。「現実にギリギリ指を引っかけてられる」物語の中に深く深く潜って行っても、頁を抑える指先が『これは本です』と教えてくれるから、現実に戻って来れる、らしい。スマホだって指使うんだが、紙じゃない本を何だと思ってるんだろう。


 *


2743.『トイレ戦術』


#twnovel 仕事中、何度もトイレに立つ人がいる。体調が悪いどころの頻度ではなく、もはやサボりとしか思えない。上司に告げ口したら「いや、あれは仕事のうちだ」と意外な擁護。「『今忙しいから!』と取りつく島もない人も、用を足してる最中は逃げ場がない。仕事に巻き込むチャンスを窺ってるんだ」


 *


【#文披31題 Day5『蛍』】


2744.


#twnovel 蛍の取材に行ったっきりの葦谷さん。蛍の保護区で『観光地化が蛍を滅ぼす』『フラッシュ撮影禁止』のプラカードを掲げ座り込み活動をしていた。小説家は思想にかぶれやすくてよくない。帰りますよと声をかけると「ニンゲン…カエレ…!」と唸る。小説家は自分も人間だと忘れがちでよくない。


 *


【#文披31題 Day6『アバター』】


2745.


#twnovel 小説家のアバターはやっぱり主人公かと訊くと、葦谷さんは「全員」と答えた。「どんなに嫌な脇役でも自分の中から出て来たんだ。そいつだけは他人だなんて通用しない」ちょっと感心。「じゃないと『それってパクリじゃないッスかァ!?』て言われたら勝てないんだよ!」いい話ではなかった。


 *


2746.『カエル・ヘビ・ナメクジ』


#twnovel 蛙化現象とは、好きな相手のダメな面を見て冷めてしまうことで、蛇化現象とは、そんなダメなところも食べちゃいたいくらい愛おしいと思うことで、では三すくみを成立させるためのナメクジ化現象とは、頑張って隙をなくしたせいでフラれてしまう当て馬系完璧超人ではないかと思う今日この頃。


 *


2747.


#twnovel「今日はノー残業デーとします。七夕だからね。織姫ないし彦星に会いに行くといい」と言われたものの、そんな相手のいない上京者は残業してる方がマシだ。定時で飛び出し、時間の川を越える新幹線に乗れば、土日は故郷で過ごせる、でも…と、アパートでうだうだしてる間に、もう日付が変わる。


 *


【#文披31題 Day7『酒涙雨』】


2748.


#twnovel 小説家の集い『酒涙雨会』に出席した葦谷さん。予想通り泥酔していた。「酒涙雨会の目的は、織姫と彦星の逢瀬を阻止することにある。成就した恋ほど無価値なものはない。会えなくて泣く方がマシ」御高説を垂れるが、酒のせいで二日酔いに涙するのはアンタだよ。小説家は湿っぽくて、阿呆だ。


 *


【#文披31題 Day8『こもれび』】


2749.


#twnovel いい感じに木漏れ日の場所があったので葦谷さんに教えたら、寝てしまった。もっとこう、本読むとか、物語を考えるとか。「涼しくて日当たりも良いならそれはもう寝る場所だろ。そんなどこでもできることしてたら勿体ない」そんなこと言っていつ小説書くんだよ。咎めると「俺が小説だ」とさ。


 *


2750.


#twnovel 天気はどうあれ、ジャズは身軽に聴くものだ。雨に濡れながら聴くつもりだったが、傘を差していると、傘に演奏が響いて、これも悪くない。濡れ鼠の私を見かねて押し付けられた傘を、あの人に返さなければ。また会えるように、次の演奏会も開けるように、活動資金の募金箱に千円を突っ込んだ。


 *


2751.


#twnovel 私が北海道に越してきたのは、長年の謎を解明するためです。知ったきっかけはもう覚えてませんが、テレビで見たとか、悪魔が紹介したとか、虚実入り混じった証言の中で、最も古いものが「北海道で話題」というラジオ投稿だったんです。本当に話題になってたんですか?『チーズ茶漬け』って。


 *


2752.


#twnovel「本当に怖い物?そうさなぁ…この前は饅頭が怖いと言っちまったが、今は金が怖い」(やたら直球で欲を出してきたな…)「それを得るために騙し合ったり、奪い合ったり…人間にそんなことをさせる、金が一番怖い」(なんか意地でも金をやって笑い話にしなきゃいけない雰囲気になってきたな…)


 *


【#文披31題 Day9『肯定』】


2753.


#twnovel 葦谷さんは「読者に全肯定を求めるな」と言う。「その作者にしか書けないものでも、読者にとっちゃその作者でなくても構わないんだから高望みだ」一理あると思い、否定的な感想も大事にしようと「作者の私もそう思います。気が合いますね」と返信する。出会い厨だと思われてブロックされた。


 *


【#文披31題 Day10『ぽたぽた』】


2754.『伏線回収』


#twnovel 葦谷さんは晴れの日でも傘を持ち歩く。道行く人の「えっ何で?」という反応を観察するため。「降るんですか?」と話しかけてくる人への取材にもなるらしい。で、肝心の雨の日は、髪から雫を滴らせながら帰って来る。「雨の中、傘も差さずにいる人になってみた」勝手にDay1の伏線を見出すな。


 *


【#文披31題 Day11『飴色』】


2755.


#twnovel 飴色って何の飴の色なんだろうと訊くと「そりゃ鼈甲飴だろ」と葦谷さんは答える。「知ってるだけで食ったことはない。料理は作る過程だけで小説になるから抑えてる」でも鼈甲飴は砂糖と水だけで作れるらしい。「ヘタクソが作ればそれだけでコメディだよ」焦がしてしまってぐうの音も出ない。


 *


【#文披31題 Day12『門番』】


2756.


#twnovel 小説家の頭の中には門番がいて、果たしてこの作品を世に出していいのか、吟味する。「まあたいていは結局出しちゃうんだが」ゆるいなあ。「仕方ないだろ。インプットしたらアイデアが溜まる。溜まったら押し出される。生理現象だ」その門番、もしかして頭じゃなくて尻の方にいるんじゃない?


 *


2757.『偽造屋親子』


#twnovel 文書偽造は生業ではあったが、なりたくてなった偽造屋ではないから息子に後を継がせる気はなかった。なのに息子ときたら、俺の仕事は人助けのためと分かっているからと、勝手に習得し、勝手に、俺が技を仕込もうとしなかった理由に気付いてしまった。そうさ、俺の初仕事は、お前の戸籍だよ。


 *


【#文披31題 Day13『流しそうめん』】


2758.


#twnovel 流しそうめんは作家界隈の縮図だと葦谷さんは言う。「そうめんを食いたい!って人たちが下駄を用意してまで上流で独占する」下流じゃダメってことかな。「いや、上流の人たちは腹いっぱいになったらすぐどっか行っちまう。最後まで残るのは『流しそうめん』を楽しみたかった人さ」詭弁かな?


 *


【twnvday2023/7/14 お題『君(君たち)』】


2759.


#twnvday 出会ってからずっと、あの人は私を呼ぶのに「You」を使う。気取ってる、と周りの人は茶化すけど、たぶん気を遣ってくれているんだと思う。「You」は単数でも複数でも同じで、聞いただけじゃ違いがわからないから。あの人は、私に潜むもう一人にも呼びかけていて、「私たち」はそれが嬉しい。


 *


【#文披31題 Day14『お下がり』】


2760.


#twnovel 葦谷さんが小説を書くようになったのは「書けるから」に他ならない。幼い頃から暇潰しに父の蔵書を読み漁り「慣れてしまった」のだ。「おかげで生き難くなった」父のお下がりで頭だけは人生二周目も同然だが、小説のための知識は、自分の人生を生きる邪魔をした。すべてが、飯の種に見えた。


 *


【#文披31題 Day15『解く』】


2761.


#twnovel 小説家らしく謎解き懸賞に応募して賞金を狙う葦谷さん。結局、応募しなかったようだ。「途中で、謎を解く過程を小説にしたいと思った。応募したら発表した後で面倒になると思ってな」応募しなくてもトリック拝借には問題があるとわかっているはず。賭けてもいいが、解けなかったんだと思う。


 *


2762.


#twnovel 大学院生との掛け持ちという異色の経歴を持つ声優さんと話す機会があった。声優になったのは、幼い声を何パターンも出せる特技を活かしてのものだが、もともとは研究のために身に付けたらしい。「子どものふりをすると、その道のプロから情報をタダで引き出せるんです。子ども電話相談室で」


 *


【#文披31題 Day16『レプリカ』】


2763.


#twnovel 小説家はレプリカの話を好む。作品のモチーフとしてはもちろん、パスティーシュも。葦谷さんは「それは自分たちが偽物だって自覚があるからだ」と失礼なことを言う。「完全に模倣したくてもどうしても自分の色が出てきてしまう。その不甲斐なさと幸せを味わえるから、偽物はやめられないよ」


 *


【#文披31題 Day17『砂浜』】


2764.


#twnovel「砂浜に来ると『牛鬼』の話を思い出すな」小説家は急に妖怪の話をし出すので困る。「姿を見たら突然気を失う。俺ァ正体は、砂浜に打ち上げられたクラゲで、それを踏んだからじゃないかと思うんだが」じゃあ同じことが起きないように砂浜掃除の手を動かしなさいよと葦谷さんを小突いてやった。


 *


2765.


#twnovel 初めて偽造に手を染めたのは、アイスの当たり棒。アタリとそれっぽく書き込むだけだったが、うまくいったことに味を占め、次は露店の当たりくじの偽造に着手する。今度はすぐばれた。理由はわかってみれば簡単。露店のおやじは、そもそも当たりくじを用意していなかったのだ。大人って賢い。


 *


【#文披31題 Day18『占い』】


2766.


#twnovel 小遣い稼ぎで占いの内容を書く葦谷さん。「キーワード使ってあらすじ書くようなもんだから、いい練習になる」と、練習のつもりが、最近は占いサイトにどっぷりのようだ。「このサイト、コンテンツに小説もあってさ。これで書いてくれってリクエスト結構もらうんだよ。夢小説って言うんだが」


 *


【#文披31題 Day19『爆発』】


2767.


#twnovel「頭の中でな、突然、ビッグバンが起きるんだ」葦谷さんは創作におけるブレイクスルーをそう語る。「こぢんまりしてた世界に、作者も知らなかった奥行きが生まれる。まあ、そうやって風呂敷を畳めなくなるんだが」そうなったらどうするの。「二度目のドッカーンだな」滅亡オチなんてサイテー!


 *


2768.


#twnovel 中世の戦で最初に行うのは「ステージ」の設営であった。悪口に長けた者を舞台に上げ、まず詞戦ことばたたかいを仕掛けた。ディスり合いに耐えられなくなった方が矢を射る。そして「先に手を出したな!?」という大義名分をもって攻め入るのだ。悪口を言うと早死にするという寓話である。


 *


【#文披31題 Day20『甘くない』】


2769.


#twnovel 落選した。「応募しただけ大したもんだが、正直、この程度の小説大賞ならいけるかもって舐めてたよな?」葦谷さんは丁寧に図星を突く。「このタンスを見ろ。甘いと思うか?これはな、歴史を重ねた色だよ。飴みたいな色でも、飴みたいに甘いとは限らないのさ」そして丁寧にDay11の伏線を拾う。


 *


【#文披31題 Day21『朝顔』】


2770.


#twnovel エッセイなどを始めてみた葦谷さん。書くことがないからと朝顔を育て始めた。おわかりだろうが、朝顔の観察日記ほど書くことに困るものはない。葦谷さんは小説家のプライドにかけて面白くしようと朝顔の種を食レポすることを宣言し、エッセイはそこで途切れている。真似をしては、いけない。


 :


【#文披31題 Day22『賑わい』】


2771.


#twnovel 葦谷さんは祭が好きだ。誘う相手もいないのに。「お前もだろ」失敬。でも、普段は誰も出歩いてない町に、こんなに人がいたんだと眺めるのは楽しい。「ま、遠巻きに見るだけだけどな」賑わいは好きだが、参加できるほど陽キャではない。小説家とは、土着の妖怪のようなものなのかもしれない。


 *


2772.


#twnovel 異世界人の勇者がもたらした『醤油』により我が国の調理レベルは劇的に改善したが、国王は「でも戦闘で役立たずじゃん」と用済みの勇者を追放。以来、我が国の兵力は低下し続けている。市井に紛れた勇者が、醤油の一気飲みによる兵役逃れを広めていると噂されている。

#ファンタジー社会問題


 *


【#文披31題 Day23『静かな毒』】


2773.


#twnovel「小説家が書きたくてたまらなくなるのは、自分の中に、静かにたまっていた毒を吐き出す生理現象だ。毒を出せば今度は書けなくなる。だから小説家は毒を含み続けるのさ」二日酔いのバカが何か言ってらあ。葦谷さん、体に毒だから酒やめなよ。「やめない…」じゃあ小説やめなよ。「やめたい…」


 *


【#妖怪呟怖 お題「蛸入道」】


2774.


#呟怖

蛸入道の伝承がある地を訪れる。何でも、海から念仏が聞こえるのだという。民話の文献を遡ると、偉い坊さんに調伏されて仏門に入ったから蛸入道なのであり、それ以前は、意味不明な歌が聞こえていたそうな。聞いた者は正気を失ったらしいが、辛うじて残されている歌い出しは、『ふんぐるい』…。


 *


【#文披31題 Day24『ビニールプール』】


2775.


#twnovel ビニールプールを用意した葦谷さん。まさか入る気かとドン引きしていると、プールに金魚を放し始めた。「風流だろ」更に風鈴を浮かべると、金魚が突いて涼やかな音色。「これ、やってみたかったんだ」伊達や酔狂がすべてな小説家にとって、イカレて当然の夏は肌に合う季節なのかもしれない。


 *


【#文披31題 Day25『報酬』】


2776.


#twnovel 遂に小説で報酬を得るときが来た。応募先から、入選作をまとめた冊子が送られてきたのだ。僕の作品は載ってない。希望すれば全員が貰える冊子だった。「メルカリで売って金にするか?」珍しく気を遣う葦谷さんだが、そんな慰めの報酬はいらない。僕は寝っ転がって気休めの報酬を読み始めた。


 *


2777.


#twnovel ずっと何を言ってるのかわからない状態が続くと「そば食いたい」のように意味が通じる言葉が出てくるとほっとする。「温泉入って、そば食って、寝たい」と言ったのは涙が出た。それは俺がほんの数年前に誘い、めんどくさいと一蹴された孝行プランだった。寝たきりになった今言うなよ。ぼけ。


 *


【#文披31題 Day26『すやすや』】


2778.


#twnovel 睡眠は小説家にとって大事な時間だ。これまでの記憶を素材に、脳が、何かいい感じにストーリーを組み上げて夢を見せてくれるからだ。その有難みは『原作』に匹敵する。「原作の存在は執筆動機の強い裏付けになる」という葦谷さんの御託は覚えているが、見た夢をまた忘れた。うん、いい朝だ。


 *


【#文披31題 Day27『渡し守』】


2779.


#twnovel 小説家は渡し守だと葦谷さんは言う。正確でなくてもいい、おもしろおかしく書くことで、それまで『向こう岸』と思っていた場所に人を連れて行く案内人になるのだと。「ふざけすぎてたら、岸に着いた途端に袋叩きにされるけどな」そのときはまた新しい岸を探す。小説家は水にたゆたう商売だ。


 *


【#文披31題 Day28『方眼』】


2780.


#twnovel 方眼紙を前にすれば「埋めなければ」と反射的に考えるのが小説家だ。「空白のマスの並びに不安を覚える。一種の群体恐怖症だな」と葦谷さんは言う。「ファンタジーが根強いのは、横文字の名前だとたくさんマスを埋められるからだよ。呪文詠唱もそれ」恐怖心を魔法で乗り越える職業、小説家。


 *


2781.『見栄』


#twnovel 新車を買った。神社にお祓いをお願いすると、神様の前だからスーツと背広で来てと言われる。このクソ暑いのに何て融通の利かない神様だ。待合室で着崩してやろうかと思ったが、お祓いをしてくれるのは巫女さんだとわかりネクタイを締め直す。あっ、初穂料ですか。もちろん最大の一万円で…。


 *


【#文披31題 Day29『名残』】


2782.


#twnovel たまに、名残だけで構成された小説が書き上がる。流行の最先端を捕まえるつもりで、流行が過ぎ去ってからやっと物語として結実した作品。葦谷さんは「そういう最後尾で『ロス』を掬い上げるような、スローな小説家やるのもいいもんだ」と笑う。失ったものに馳せる思いは、それはもう小説だ。


 *


【#文披31題 Day30『握手』】


2783.


#twnovel 握手会のシミュレーションをする葦谷さん。いや、まず本を出しなよ。「本を出してから体作りを始めても遅いだろ」と筋トレする。『小説家』の印象と見た目のギャップをつけたいらしい。「そうすりゃ表面的な話に留まって内容への言及はないだろ」解釈違いの感想を聞くのはしんどい、らしい。


 *


《ショートコント飯店》


2784.『X丼』


#twnovel「大将、この『X丼』って何」「今日、俺の鳥がXになったからその記念メニュー」「やってたんだ…注文します」「へいお待ち」「白飯の上にX字に切り抜いた海苔だけじゃん。せめて焼き鳥とか」「ほれ追加の具」「うわっ!なに紅生姜ひっくり返してんだ!?」「紅だァァァァ!!」「やめろ!!」


 *


【#文披31題 Day31『遠くまで』】


2785.


#twnovel 遠くまで来た。なりたかった自分から、僕は今日も遠ざかっていく。葦谷さんのような小説家になりたかった。葦谷さんのようにダメでいい加減で阿保で、強い人間になる度胸がなかった。葦谷さんは、今日も僕の内側で、表に出ることのない小説として生きている。最近やけにうるさくなってきた。

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