表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/99

2023年4月分

№2592~2647

【書き出し:「焼きたてのパンの匂いが漂ってきた。」】


2592.『合わない僕ら』


#twnovel 焼きたてのパンの匂いが漂ってきた。布団から這い出して台所に向かう。いつも通りトーストとコーヒーが用意されているが台所には誰もいない。まるでメアリー・セレスト号事件の様相だが、単に同居人が出がけに作っていってくれただけ。朝が早い彼女と夜が遅い僕は、最近顔を合わせていない。


 *


【「好きって言ったら怒る?」という台詞で始まり「黙って頷いたその瞳があんまり優しくて泣いてしまった」で終わるお話】


2593.『マジのやつ』


#twnovel「好きって言ったら怒る?」「怒らんよ」見もしないでそう答えた。雑誌を読んでいる途中だったから。「好き」と言ってきたので「コラ~!」と怒った。エイプリルフールだから。リアクションなし。雑誌から視線を上げる。「マジのやつ?」黙って頷いたその瞳があんまり優しくて泣いてしまった。


 *


2594.『第一歩』


#twnovel「これが #真っ赤な嘘の結晶 ですか」「ええ。手に入れるのに苦労しましたよ」話し込む二人の横で、俺は困惑している。顔合わせにと上司に連れられていった得意先でのこと。二人は美しいと言っているが、何もないじゃないか。「なあ?」と水を向けられる。「…はい」今日から、俺も社会人だ。


 *


《ショートコント飯店》


2595.『梅水晶』


#twnovel「大将、この『#真っ赤な嘘の結晶』って何」「今日しか出さない限定メニューだ。ほれ」「梅水晶じゃん。味も…梅水晶じゃん」「本当にそうかな」「えっ材料が違うってコト…?ううん…?」「考えてるとこ悪いが閉店時間だ」「大将、結局アレの正体って…」「梅水晶。普通の」「ウソつき!!」


 *


2596.


#twnovel 連れの女がお手洗いに立った瞬間、男がカウンターに身を乗り出して「なあ、アレ頼むよ」と言ってきた。頷き、女のカクテルに #真っ赤な嘘の結晶 を投入。男性にはすぐ酔いが回るとウワサの薬。女が戻り、グラスを見て困惑する男に平手を食らわす。女性には赤く染まったら要注意と定評の合図。


 *


2597.


#twnovel 職人はちょうど #真っ赤な嘘の結晶 の加工に取りかかるところであった。「美しいだろ。でも、これには価値を見出さず加工を依頼する奇特な人もいる。実は綺麗な結晶になるには嘘が純度100%じゃダメなんだ。嘘を美しくしている、僅かに含有されている真実。それを抽出するのが今回の仕事だよ」


 *


2598.『約三十の嘘』


#twnovel 今日も #真っ赤な嘘の結晶 を飲む。くれた相手は「一つの嘘のため、約三十粒必要になる。だんだん効かなくなっていくよ」と忠告していたが、やめるわけにはいかない。「大丈夫ですか?」と声をかけられ「大丈夫だよ」と返し、ミスに気づく。大丈夫な人は「何が?」と言うんだった。もう一粒。


 *


2599.『父「めっちゃ大声でaikoのカブトムシ歌ってた」』


#twnovel 母の惚気話の矛盾に気づいてしまった。父に抱きついたらバックハグで強く抱きしめられてキュンとした…って何で父が前と後ろに分裂してんだよ。それ本当に父か。父が聞いて大丈夫な話か。「間違ってないよ」と父。「べろべろに酔って電柱にしがみついた母さんを引っぺがしたときの話だから」


 *


【書き出し:「ここまでか、と覚悟を決める。」】


2600.


#twnovel ここまでか、と覚悟を決める。考え抜いたが時間切れだ。「潔く、腹を切ろう…」「アジフライにかけるのは醤油かソースかを悩んだ挙句に真ん中から割ってそれぞれ別にかけるのを潔いとは言わない」「腹を…」「あとうちのアジフライは腹開きだから腹はもう切れてる」そんな違いもあるのか…。


 *


【「花なんか別に好きじゃなかった」で始まり「焦げたトーストは、苦いのにやたら美味しかった」で終わるお話】


2601.


#twnovel 花なんか別に好きじゃなかった。そう思っていたのに、いざ貰ってみれば、押し花の栞にするほど大切にしている。人間って変わっていくものなんだなと実感する日々である。今日もまた、別に好きじゃなかったものを好きになる。娘が初めて作った焦げたトーストは、苦いのにやたら美味しかった。


 *


2602.『異次元』


#twnovel「異次元の少子化対策って何ですか!意味がわからない!」記者の誰かが叫んだ。私も頷く。「少子化の原因は『三次元以外』の異次元…二次元にあると考えています。ただの絵を嫁にして子どもができますか?」との答弁であった。「失言だ!」と私は叫んだ。皆、異次元人を見る目で私を見ていた。


 *


【書き出し:「枯れた植木鉢に水を遣る。」】


2603.『インスタント植木鉢』


#twnovel 枯れた植木鉢に水を遣る。すると観葉植物はみるみるうちに瑞々しさを取り戻した。「このように、来客があったときなど、好きなときだけ活きた状態に戻せるインスタント植木鉢です」来客もないのに買って早数年。自分を元気づけるために使おうと思ったが、長持ちさせたくて思い止まっている。


 *


【「君はきっと知らないだろうね」で始まり「貴方があんまり楽しそうに笑うからついつられてしまった」で終わるお話】


2604.


#twnovel 君はきっと知らないだろうね。僕が小説を書くのにどれだけ苦悩しているか。ああだこうだと頭の中でアイデアをこねくり回し、下手だ下手だと嘆きながら文章を書いては消す辛さが。そういう話をしていうのに何故笑うのか。君は答える。貴方があんまり楽しそうに笑うからついつられてしまった。


 *


2605.


#twnovel アイコンが鳥から犬に替わったので、これでツイッターの鳥とツイッターの犬が揃い、あとツイッターの猿が出たら桃太郎だなw…とツイートしようとして、我に返る。ツイッターの猿ことスマホ猿は、ツイ廃の俺のことではないのか。それ以来俺は「鬼退治いこう」とDMが来るのを待ち続けている。


 *


【書き出しは「なぜ、と問えなかったのを今も悔いている。」】


《異常聴取》


2606.


#twnovel なぜ、と問えなかったのを今も悔いている。今年の新人は大学生時代をコロナ禍でフイにした世代だから社会を知らないだろう言う通りにやればいいよと世話を焼いてもらったが、違和感を覚えたこともある。あのとき、なぜ、と口にしていれば、ここにいることはなかったんでしょうか。刑事さん。


 *


【書き終り:「風に翻るそれを、美しいと思った。」】


2607.『時を戻そう』


#twnovel 風に翻るそれを、美しいと思った。何ということのない、白く長い布。だが、春一番を受けて優雅にたなびく姿は青空に映え、美しいという感慨を呼び起こすのだった。もはや些細なことではあるが、あの布は何なのだろう。「ふんどし」記憶よ消えろ。

#twnovel 風に翻るそれを、美しいと思った。


 *


2608.『虫の結婚』


#twnovel 虫が結婚の報告をした。かねてより交際していた相手とのことだったが、そんな素振りを見せたことがないので唐突に感じ、お前はいつも説明しないよなと思ってしまった。よくないことばかり知らせると思ってたけど、いい知らせをすることもあるんだな。で、俺の中で何と交際していたんだろう。


 *


2609.『花冷え』


#twnovel 名残り雪が降る。ちょうど桜の花が咲いた頃で、奇跡の共演をお手軽に見られる。そんな物見遊山の私とは違い、浮かない顔で桜を見る人がいる。「私は植物の言葉がわかるんです」では、この桜は何と言っているのだろう。「クソ寒い、話が違うと言ってます」呑気に風流とか言ってて申し訳ない。


 *


2610.『投票日』


今回の投票率の伸びが良いらしい。

#twnovel

「各投票所に桜を植えて、ちょうど開花に重なったから花見ついでに投票しようということで、普段は来ない人も来てるんです。ワンカップ片手にね。でも、ご機嫌になって『〇〇に一票ヨロシク!』と言っちゃって選挙法違反で即お縄になる人も結構いますね…」


 *


【書き出しは「雨音のリズムに身を委ねた。」】


2611.


#twnovel 雨音のリズムに身を委ねた。雨が降ると聞いて、桜の花が散る前に行こうと飛び出した矢先であった。傘は煩わしくて持たなかったので雨の中を跳ねるように走る。たかが写真を撮るために何故こんな目に。いや、それこそが俺の使命。地元を離れたばかりのあいつに桜を見せてやらねばならんのだ。


 *


2612.


#twnovel「出口調査で…うわ何ですかその恰好」「赤穂浪士です。せっかく雪が降るので、四十七人でコスプレ合わせして、討ち入りっぽく投票所に行こうと」「あの、ちなみに、票は…」「ちゃんと浅野様じゃない人に入れました」「それはよかった」「吉良公を探す小芝居をしたら注意されました」「当然」


 *


【書き終り:「あともう少し、と布団に潜る。」】


2613.


#twnovel あともう少し、と布団に潜る。あともう少し、と布団に潜る。あともう少し、と布団に潜る。あともう少し、と布団に潜る。あともう少し、と布団に潜る。あともう少し、と布団に潜る。あともう少し、と布団に潜る。あともう少し、と布団に潜る。寝そうで寝れない。あともう少し、と布団に潜る。


 *


【書き出し:「遠く、そっと幸運を祈るしかあるまい。」】


2614.『当選確実!』


#twnovel 遠く、そっと幸運を祈るしかあるまい。サーバーがダウンし、オンライン購入の望みは絶たれた。あとは店頭で抽選に参加している同士の戦果に期待するのみ。第一報が入る。『当選確実!』選挙っぽく言うな。えっ当たったのか!『いやこれから抽選だからまだ…』何なんだろうね、当確って言葉。


 *


2615.


#twnovel「見たら呪われる」系のツールは、ビデオから遠くへ来たものだと思う。ただの動画はもう古く、最新の「見るコンテンツ」といえば超ショートムービー。僅か8秒で井戸から出て画面を通り抜けないといけないのだと愚痴る彼女の両腕は鍛え抜かれてムキムキで…いやこの面白さで怪談は無理でしょ。


 *


【#このマイナー妖怪を現代怪談で復活させてやってください お題「笑い地蔵(あるいは袈裟切り地蔵)」】


2616.


『はいどーも!今日はチャレンジ企画ってことでね!六体あるうち一体だけ笑い出すという地蔵を見つけ出して袈裟切りにしちゃいまーす!』

#呟怖

この動画を残した配信者は翌日、遺体で発見された。袋叩きにされたように傷だらけだった。近隣住民によると、一人の悲鳴と六人分の哄笑が聞こえたという。


 *


【書き終り:「漂う匂いにお腹がぐぅ、と鳴った。」】


2617.


#twnovel 花は匂うものなのだから、桜にも匂いはあるのではないだろうか。気になって調べたら「ある」とのことだったので、実際に嗅ぎに行く。今日の私は風流だ。花見に名所を訪れ、深呼吸すると、鼻に集まってくるのは…ソースの匂い!屋台のやきそばが今できたて。漂う匂いにお腹がぐぅ、と鳴った。


 *


2618.


#twnovel 朝早く出かける用事があったので、朝活と洒落込んで散歩の足を伸ばす。さして名所でもない近所の桜だが、雪が降るほど冷えた空気の中、他に誰もいない場所で見ると格別感があった。ワンカップが欲しくなる。人に言われた名前をそのまま書いただけの一票が、何だか惜しいような気がしてきた。


 *


【twnvday2023/4/14 お題「歌」】


2619.『テーマソング』


#twnvday 新人くんについてわかってきたのは「こいつテーマソングかかるときあるな」ということ。今日も予定調和な会議の終わり際に、意を決した表情で挙手をした。熱くなるなよ。だが、嫌いじゃない。どうやら混線して俺にも聞こえる。二人して怒られたら、今日はブルース流しながら飲みに行こうか。


 *


【「今世紀最大の一大事だ」で始まり「テーブルにメモと一緒にプリンが置いてあったから」で終わるお話】


2620.


#twnovel 今世紀最大の一大事だ。そう思うくらい頭が痛い。飲み過ぎた。こういうときはアレだ、プリンぐらいしか喉を通らない。などという状態になるのは何度目のことか数えきれず、いつも通り迷惑をかけたに違いないが、そう怒ってはいないはずだ。テーブルにメモと一緒にプリンが置いてあったから。


 *


2621.『競ハクビシン』


#twnovel「うちでは町おこしの一環で、捕獲したハクビシンでレースをしています。住宅に住み着いたハクビシンの、住民による捕獲を推奨することで害獣を減らせて一石二鳥…のはずだったんですが。最近、より速いハクビシンを厳選するブリーダーが現れて、期待外れだった個体を放しちゃうんですよね…」


 *


2622.


#twnovel ヤバいクレーマーのグルメ評論家に「私が文句のつけようのない料理」のオーダーを出されたうちの店。料理長は「簡単なオーダーで良かった。要は自分が食べられなければ文句のつけようがないんだから」と、祝勝会に焼肉を出してくれた。誰も食べなかった。評論家は来店せず、連絡もつかない。


 *


2623.『ボブ』


#twnovel「はい嫁派遣サービス」『チェンジをお願いしたいんですが』「えっ、ご要望通りのコを派遣したはずですが。特にこだわっていた、ボブ感の強い」『ボブって髪型のことで、そもそもボブ感なんて尺度ないんですよ』「はあ」『あと、派遣されたコ、ボブ感っていうか、強いのはサップ感なんですよ』


 *


2624.『首輪女子』


#twnovel 新しいラブコメ漫画のキャラデザを上げてもらったが、ギャルがチョーカーをしていた。うわあ、炎上の火種になりそうだな…と思ったら何かヒロイン全員チョーカーしてる。うん、外させよう。「えっ、実はデスゲーム参加者だったって伏線だから無いと困るんですが…」ラブコメって言ったよな?


 *


2625.『叙述トリックカフェ』


#twnovel 叙述トリックカフェ?どんなコンセプトカフェなんだろうと気になって入店し、コーヒーを注文する。「あ、はい」と戸惑っている様子を見ると、雇われの新人店長なのだろう。にしても、キッチンを引っくり返す勢いで探して「ないと思います」はひどくないか。「すみません。実は、私も客で…」


 *


《ショートコント飯店》


2626.『叙述トックリ』


「大将、この『叙述トックリ』て何」「だまされる徳利」「え?普通に美味い酒だけどなあ」「フッ、入ってるのはただの水さ」「マジで!?いや、大将の店だとただの水でも美味しい酒になるんだなあ!」

#twnovel

「大将、俺と話してるていで一人で喋ってるけど俺は頼んでもない水に金は出さねーからな」


 *


2627.『正直とは別問題』


#twnovel「あなたが落としたのは金の原稿ですか?銀の原稿ですか?」僕はどちらも違うと答えた。次に女神様が持ってきたのは、とても面白い原稿だった。でも書いた覚えがない。僕は微笑み、それも違うと答えた。「正直でさえいれば総取りできると思いましたか?」そんなに考えが顔に出る笑みだったか。


 *


2628.『バブルの時代』


#twnovel バブルの頃、母はモテた。アッシー君もメッシー君もいたという。「ま、みんな本当の目的は私じゃなかったけど。とにかく車を走らせたかったり、男一人じゃ入りにくい店で食べたかったりするだけの人だったの」そして母は別の人と結婚した。泡のように蒸発した、スペックが高かっただけの父。


 *


2629.『ヤングケアラー』


#twnovel ヤングケアラーとは、本来は大人が担うべき役割を課されている子どものことを指す。「子どもが辞めたいと言ったとき、それは困ると思ったらヤングケアラーである」との尺度も示された。ところで「勇者を辞めたい」と言った少年への国の総意は「それは困る」であった。

#ファンタジー社会問題


 *


2630.『情けは人の為ならず、旅は道連れ、余は満足』


#twnovel 新幹線は断然、窓側席が良い。酒缶を並べられるから。景色が見たいなどという奇特な人との競争率が高く、やっとの思いで手に入れたその席は、結局、親子連れに譲ることにした。親子の席が通路を隔てて離れているのは良くない。善行を肴に酒が進み、トイレが近くなったので通路側で助かった。


 *


【書き出し:「光陰矢の如しとは言うけれど、」】


2631.『Light and shadow like an arrow.』


#twnovel「光陰矢の如しとは言うけれど、これ元は英語だと思うんよ」へえ、その心は。「ライト・アンド・シャドー・ライク・ア・アローで韻が踏めんのよ」酒の席でこういう馬鹿馬鹿しくも突拍子もないことを言い出すところに、彼の才能を感じ、それに手を叩いて笑える自分のセンスを諦めきれずにいる。


 *


【「ずっと貴方を捜していました」で始まり「そのときの手紙はまだ大切にしまってある」で終わるお話】


2632.


#twnovel ずっと貴方を捜していました。そう切り出したその人は、一通の手紙を差し出した。手紙を読むことはできなかった。そこで夢から覚めてしまったから。夢の話とはいえ、こんな自分を捜してくれる人がいる。そう思いたくなるときがあるから、頭の中に、そのときの手紙はまだ大切にしまってある。


 *


2633.『積んどく』


#twnovel モデラーの俺にプラモを貰ってほしいとの相談。「五十年間積んでた親父の形見」いや恐れ多いわ。代わりに作ってやれよ。「そう思ったけど…親父、五十年あっても手をつけられなかったプラモがあるわけじゃん。俺も、他人の趣味に付き合う前に、自分の積み分を消化しないとなって…」それな。


 *


2634.『馴染みの店』


#twnovel 投票のため、つい一ヶ月前まで住んでいた町を訪れた。義務は朝のうちに済ませ、あとはゆっくり馴染みの店を回る。年度末のドタバタで顔を出せなかったから、実は転勤しまして、と最後の挨拶をするつもりだった。で、特に何も言われなかった。そういやそもそも月イチでしか来てなかったな…。


 *


2635.


#twnovel AIはもう使わないことにした。そう言うと「ビビってる」とか「古い人間」とか揶揄されるが、もうAIは信用できない。だって質問すると、ユーモアに富んだ答えが返ってくるのだから。人間ならよく知ってるはずだろう。AIの答えは、面白くても、正しくはなかった。話が面白いヤツは、嘘つきだ。


 *


【書き出し:「眠気をこらえて、体を起こす。」】


2636.『突然の筋肉チャンス』


#twnovel 眠気をこらえて、体を起こす。「そこでストップ!起こしかけの体勢をキープしたまま、ゆっくり数を数えます。いかがですか?腹筋が鍛えられましたね!それではまた、日常に潜むふとした筋肉チャンスの瞬間にお会いしましょう!」筋肉痛で腹が攣った。眠気はとんだが、体を起こせなくなった。


 *


2637.『うな丼大臣』


#twnovel うな丼大臣に任命された。当初は「更迭しろと言ってるんだから本当に作って即更迭すればいい」という冗談で作られたそうだが、今となっては絶滅危惧種のうなぎを皮切りにSDGs全般を司る由緒あるポストだ。そんなうな丼大臣が初代から掲げる理念は「何があってもしっかり食べる」ことである。


 *


【書き出し:「静寂が耳に刺さる。」】


2638.『刺さる静寂』


#twnovel 静寂が耳に刺さる。コール&レスポンスとは独りよがりではダメで、聴衆との一体感が大事なのだと思い知った。でも先生、そりゃそうでしょう。下の句を一斉にレスポンスしてもらおうだなんて、あんたのセンスは皆とは違うんだから。その体験を詠んだのが『閑かさや岩にしみ入る蝉の声』です。


 *


【「まだこんな場所があったのか」で始まり「また会えますようにと願うほかないのだ」で終わるお話】


2639.


#twnovel まだこんな場所があったのか。整理のための巡回だったが、思わず目が釘付けになる。かつては毎日にようにここを訪れ、多くの仲間と騒いでいた。遠い昔の話。更新が止まったサイトを閉じ、しかしブックマークは削除せず、次の巡回へ。あの人たちとは、また会えますようにと願うほかないのだ。


 *


【「耳触りのいいその声が、好きだと思った」で始まり「そのときの手紙はまだ大切にしまってある」で終わるお話】


2640.


#twnovel 耳触りのいいその声が、好きだと思った。運転中たまたまつけていたラジオ番組。その声を聞くために、用が無くてもその時間に車を走らせるようになり、気まぐれで葉書も送った。返事を貰ったこともある。声と違って歪な手書き文字で笑ってしまった。そのときの手紙はまだ大切にしまってある。


 *


2641.『シャーデンフロイデ』


#twnovel 魔法のひょうたんを手に入れた。ひょうたんには吸い込んだものを封じる力があるので、早速周りの幸せを吸い込んで集める。手に入れる際に注意された。ひょうたんに一度吸い込まれたものは二度と外に出せないそうだ。それでいいと思う。みんなが不幸になるなら、それが私のささやかな幸せだ。


 *


2642.


#twnovel いよいよゴールデンウィークに突入するので、私の仕事も最後の追い込みに入る。皆が浮かれて定時帰宅をする中、この夜にどれだけ数をこなせるかが成果につながるのだ。休みボケで思わずクリックさせるため【至急】や【警告】のワードを仕込む。私の仕事は釣りメールを送り付けることである。


 *


2643.


#twnovel 近所の銭湯が移転リニューアル。設備が一新され気持ちが良い。だが、頭を洗ってシャンプーの泡を流すためシャワーヘッドを手探るとき、なかなか掴めず「前はここにあったのに」と思ってしまい、寂しくなった。通い慣れた風呂はもう目蓋の裏にしかないのだ。そんなことよりシャワーどこだよ。


 *


2644.


#twnovel お婆さんが川で洗濯をしていると、どんぶらこ、どんぶらこと桃が流れてきた。「ははあ。これは隣の家のように、桃太郎が生まれる桃だな。うちも育てて鬼ヶ島に行かせて宝をとってこさせよう」それを聞いた桃は「うわ親ガチャ失敗だ」と足早に流れ去っていったとさ。桃の行方は誰も知らない。


 *


2645.『スーパーキノコ」


#twnovel マリオの映画のことは、マックで隣席のカップルの会話から知った。二人は別々に観にいったらしい。「マリオの帽子かぶった子どもがいて可愛かったなあ。今日はいた?」と訊ねる彼女。彼氏は「そういえば帽子かぶった大人がいた」と答えた。「キノコ食ったのかな」聞き耳がバレるほど噴いた。


 *


2646.『喧嘩神輿』


#twnovel この集落で奉納される喧嘩御輿は、祭りの小規模さに見合わないほど激しいことで知られている。信仰するものが違う者同士の一騎打ちとなるので熱の入り方が違うのだという。鉢合わせは、両者の境界線である川を挟んで行われる。掛け声と共に、里からたけのこ御輿、山からきのこ御輿が現れた。


 *


2647.『グータッチ』


#twnovel 最近は握手ではなくグータッチなるものが主流らしいが、どういうものなのだろう。体験してみようとグータッチ会に参加する。待ち受けていた相手は、ギリリと音が鳴るほど拳を握りしめていた。なるほど、わかった。こちらもファイティングポーズをとり、全力で拳を打ち合わせる覚悟を決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ