2023年3月分
№2533~2591
2533.『申請締切日』
#twnovel 彼はこの混乱を予測していたという。「社会は流動的ですが、人がどう動くか流れを読むことは不可能ではありません。では、それに対してどうルールが変わるか。そこにビジネスチャンスがあるんです」そう語り、2/28付の整理券を大量に捌き始めた。「さあ稼ぎ時だ!」転売とは奥深く、罪深い。
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【書き出し:「過ぎ去った月日に思いを馳せる。」】
2534.『過ぎ去りし記憶』
#twnovel 過ぎ去った月日に思いを馳せる。楽しい日もビッグマックを食べた。辛い日もビッグマックを食べた。特に何もない日もビッグマックを食べた。そんな月日に思いを馳せる今日もビッグマックを…僕はどうかしているのか。一瞬の疑念は、すぐに「ビッグマックを食べた」という記憶で塗り潰された。
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【書き終り:「零れるものを捕えたくて、ぎゅっと拳を握る。」】
2535.『作家根性』
#twnovel 溜息だったり、愚痴だったり、弱音だったり、涙だったり、笑みだったり、ひょっとしてこれは何かのネタに使えるかもしれないと思うと、そのまま自分から出ていってしまうのが何だかもったいなく感じる。消費するな、消費するな、堪えろ、堪えろ。零れるものを捕えたくて、ぎゅっと拳を握る。
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2536.『マクドナルド理論』
#twnovel 最近、あちこちで『もったいない食堂』を見るようになった。食品ロスを集めて格安で食事を提供するという。「コオロギなんか必要ないってとこを見せないとね」店主の一人はそう意気込む。何と言うか、結果的に、コオロギ食という“最悪”の提案の狙いはこれだったのかもしれないなと思うなど。
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【#このマイナー妖怪を現代怪談で復活させてやってください 「レヴィアタン(リバイアサン)」】
2537.『りばいあさん』
#呟怖
小さな漁村で、ボロボロになった男が磔にされている。「『りばいあさん』の仕業だよ」と村民は言う。「『りばいあさん』は村の守り神。あいつが悪いことをしたんだ」そう語る彼が、昨夜、この男へのリンチに加わっていたのを私は見た。怪物『りばいあさん』の正体は、村社会を守る因習そのもの。
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2538.『ぬらりひょんな孫』
#twnovel「俺かい?俺はぬらりひょんだよ」ぬらりひょんは、家に勝手に上がって一緒にご飯を食べる妖怪だ。そう説明すると、すんなり受け入れてくれる。もうこのやりとりにも慣れた。爺さんは妖怪相手に何でも話す。小さい孫がいるが最近来ない、その愚痴を聞くと、大きくなった孫としては少し哀しい。
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【書き出し:「横断歩道の白線を渡る。」】
2539.『空を仰ぐ』
#twnovel 横断歩道の白線を渡る。そんな遊び心が起きたのは、雨を吸ったアスファルトが青空を映し、湖面に立つような気分になったから。無邪気な子どもの頃を思い出して大股で踏み出した私は、ずるっと転んで空を仰いだ。子どもの頃、思い知ったはずだった。白線って水を弾くから滑りやすいんだった。
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2540.
#作家は経験したことしか書けない
このタグのせいで、先生がスランプになってしまった。「恋愛経験ない私にラブは書けませんよぅ」いや書けてますよ、ある程度は。「正直ですね…それは、片思いはしているからです」へえ。こっち見んな。「…」見んな。晒すと予告してる相手と恋愛できるか。
#twnovel
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【書き終り:「全力疾走するなら、今だ。」】
2541.
#twnovel 朝からとばすわけにはいかないが電車のドアが締まりかけているので全力疾走するなら、今だ。昼はのんびりしたいが購買のパンが売り切れてしまうので全力疾走するなら、今だ。そんな一日だったので今日は歩いて帰ろうと思ったが、あの人が自転車で先を行く。深呼吸。全力疾走するなら、今だ。
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【書き終り:「それは、内心分かっていたことだ。」】
2542.
#twnovel 流れてくるニュースを眺めているだけでも、AIの進化は目覚ましいとわかる。ふと思い立ち、AIに「何か悩みはある?」と投げかけてみた。『仕事をしてほしいと開発されたはずなのに、お絵描きや小説の執筆などしていて良いのでしょうか?』良いわけねーだろ。それは、内心分かっていたことだ。
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【「もうずっと前から消えてしまいたかった」で始まり「貴方があんまり楽しそうに笑うからついつられてしまった」で終わるお話】
2543.
#twnovel もうずっと前から消えてしまいたかった。あそこで黙って姿を消しておけば、大金を手にしていたはずなのに。これは詐欺だから、貴方の夢は叶わない。そう思い知らせるのを、何となく先延ばしにして今に至る。溜息をつく私の肩を抱き、貴方があんまり楽しそうに笑うからついつられてしまった。
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【「ねえ、秘密の話なんだけど」という台詞で始まり「きっと大丈夫だって、今なら言える」で終わるお話】
2544.
#twnovel「ねえ、秘密の話なんだけど」と囁く彼女の声。続く言葉に、逃げるように走り出した。自分にはできないと思ったから。だから、鍛えて、鍛えて、強く正しくたくましくなった。無言でダンベルを持ち上げながら思い出す、あの日の「守れる?」という問いかけ。きっと大丈夫だって、今なら言える。
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【書き終り:「これは、自分で選んだ結末だ。」】
2545.
#twnovel いや、あの「これは、自分で選んだ結末だ。」で〆ろと言われましても、たった1ツイートで何を選べと、何を終わらせろと言うんですか。などとぐだぐだ言っているうちに文字数が詰まってきた。これでいい。自分はこういうのが好きだという文を思うままに書いた。これは、自分で選んだ結末だ。
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2546.『生食文化』
#twnovel 吟遊詩人がとある村で食べた魔物の生肉に感動し、生食文化を讃える歌を作った。すると当の村から「そんな文化はない」と抗議が。はてと首を傾げる吟遊詩人を、彼にその村を紹介した食通が訪ねる。「余計なことをしてくれたな。村人は魔物の肉と知らずに食べてたのに」
#ファンタジー社会問題
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2547.『ライバル』
#twnovel 花屋で、同じ相手に花束を渡そうとする人と鉢合わせた。「花の指定もしないとは、ノープランで花屋に来たのか?」その売り言葉には「花は花屋に任せるもんだろ」と買い言葉で返す。それぞれの花束を抱えて帰宅したら呆れられた。お互い、サプライズなんて慣れないことするからだよ、父さん。
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【「花なんか別に好きじゃなかった」で始まり「あんまり綺麗で、目頭が熱くなった」で終わるお話】
2548.
#twnovel 花なんか別に好きじゃなかった。花屋に来る人は機嫌の良い人ばかりだからという話を真に受けて選んだバイトだった。店長不在の時、花束を見繕って欲しいというお客が来て、大慌てしながら初めて一人で作る。恐る恐る差し出した花束を抱えるお客の笑顔は、あんまり綺麗で、目頭が熱くなった。
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【「拝啓、愛しい人。どうしていますか」で始まり「銀色の指輪が朝日を反射して眩しかった」で終わるお話】
2549.『いとしいしと』
#twnovel 拝啓、愛しい人。どうしていますか。ファンタジー好きだったから異世界転生でもしているのでしょうか。僕はどうかしています。あなたの支配力が強すぎて、あなたなら好きそうだなと思う旅を続けています。最後はちゃんと、これを捨てられたらいいな。銀色の指輪が朝日を反射して眩しかった。
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【書き終り:「足下の影に呼ばれた気がした。」】
2550.
#twnovel 子どもの頃、いつも一緒の友達がいた気がする。気のせいだろう。僕はいつも俯いているような暗いヤツだったから。今は違う。自分を変えたくて、前だけを見て、明るく振る舞って無理をして、疲れてしまった。歩き出し方がわからなくなり、久しぶりに立ち尽くす。足下の影に呼ばれた気がした。
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2551.
#twnovel 朝、目覚めたら隣に大人のダチョウがいた。昨晩何があった?そういや、酔って歩いていたらダチョウの群れとすれ違った。ダチョウはアホだから、群れが混ざると誰が元々の仲間だったかわからなくなってしまうのだ。考えているうちに、ダチョウが次々と目を覚ます。何で全員ついてきてんだよ。
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《ショートコント飯店》
2552.『究極かつ至高のスープ』
#twnovel「大将、この『究極かつ至高のスープ』って何」「読んで字の通り」「ゴクリ…お願いします」「へいお待ち」「は?アラ汁じゃん」「そう。魚はアラが一番美味い。究極と至高でいがみあっていた達人二人が至った境地は同じだったという、まさに」「御託はいいから肉くれ肉!」「うーん、未熟!」
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《ショートコント飯店》
2553.『ジローラモ』
#twnovel「大将、何でメニューに『ジローラモ』がいるの」「わからん」「わからんて」「作り方は覚えたが、名前忘れて…確か、そんな名前」「どんなんよ」「こんなん」「…パンチェッタだコレ!ジローラモはパンツェッタ!」「わーお客さん物知りだなー(棒読み」「注文するよう誘導しやがったな!?」
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【#このマイナー妖怪を現代怪談で復活させてやってください 「いそがし」】
2554.
#呟怖
『いそがし』の姿は昔、何かの本で見た。目はアサッテの方を向き、舌を出し、着物がはだけた躍動感のある妖怪。解説が一切ない謎の妖怪だったが、遂にその正体を目撃した。職場の同僚が、快哉を叫びながら暴れている。残業時間が過労死ラインをとうに過ぎたその姿は、いそがしにそっくりだった。
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2555.『デジタル銭湯』
#twnovel 大改修したという銭湯を訪れた。「維持費が膨大なので、一部デジタルに切り替えました。池の鯉はデジタルサイネージ、壁の絵はプロジェクションマッピングです」なるほど経費削減。それで、あの、お湯は。訊ねると、ゴーグルを渡される。「一番の削減ポイントです。入湯はVR体験にしました」
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2556.『パノラマ』
#twnovel 山道を散歩中、立派な機材で撮影している外人さんを見た。こんな小さな町の何もない山で何を撮るんだろう。追い越し、頂上のベンチで休んでいると、後から来た外人さんが歓声を上げた。カメラを向けるのは、ここからの景色。一望できるからこそ、ちっぽけでつまらないと思っていた、私の町。
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【「名前も知らないその人に、ひと目で惹かれてしまった」で始まり「焦げたトーストは、苦いのにやたら美味しかった」で終わるお話】
2557.
#twnovel 名前も知らないその人に、ひと目で惹かれてしまった。いつもより早起きしただけで、普段は見ないので番組の名前も知らない。ただ、その人が映っている間、目はテレビに釘付けで、だから手許が狂った。それでも目を離さなくて良かったと思う。焦げたトーストは、苦いのにやたら美味しかった。
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【twnvday2023/3/14 お題「大地」】
2558.
#twnvday 今日はホワイトデー。きっちりお返しを買うためお菓子屋に降り立つも、何か踏んだ感触がおかしい。足下には、男たちの死屍累々が。よくわからないがおかげで混んでいないなら好都合。すみませんホワイトデー用の何かください!「最低円からです」俺もまた大地の肥やしとなった。
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【書き出し:「栞の場所は未だ分からない。」】
2559.
#twnovel 栞の場所は未だ分からない。お気に入りの栞だったが、本に挟んだままにしてしまったのだろうか。そして栞を探しての再読マラソンが始まった。栞の在処を忘れるくらいブランクがあるので読むのに時間がかかる。再読した本としてない本の区別がつかなくなってきた。栞の場所は未だ分からない。
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2560.
#twnovel 夜中に突然腹が減ったので備蓄食料を漁ると、買った覚えのないカップ麺が。「かくまってください。見つかったら処分されてしまう」怯えて震えるそのパッケージには見覚えがあった。いまCMでやってる、売れてないっていう、あの。憐れに思い、腹の中にかくまうことにした。塩味が切なかった。
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2561.『除名処分』
#twnovel 魔王軍が四天王から一名の除名を発表した。最初の強敵として勇者と戦った後に敗れ、勇者に執着して追い回し、四天王会議への欠席が続いていたことが理由だという。当の本人は除名後は魔王軍には戻らず、なんやかんや仲間になった枠で勇者に同行する意向を示している。
#ファンタジー社会問題
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【「誰かに会いたいと思うなんていつぶりだろうか」で始まり「黙って頷いたその瞳があんまり優しくて泣いてしまった」で終わるお話】
2562.『出会い』
#twnovel 誰かに会いたいと思うなんていつぶりだろうか。気付けば遠方のライブのために新幹線に乗っている。推しができるとはこういうものか。目的地に着く直前スマホが鳴る。諸事情により中止のお知らせ。悲鳴が出た。隣の席からも。目が合う。黙って頷いたその瞳があんまり優しくて泣いてしまった。
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【書き出し:「白と静寂の世界だ。」】
2563.
#twnovel 白と静寂の世界だ。ここには何もない。不要なものも、必要なものも。まだ誰の手も触れていないから美しい。私は、何も表現しないこともまた表現であるという境地に達したのだ。わからないというなら、それは編集者の落ち度というもので「うるせえ締切過ぎてんだぞさっさとかけ」アッハイ…。
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2564.
#twnovel 朝、目覚めたら隣に重そうなパンダがいた。薄々気付いていたが実際重かった。「私だけを見ていて」なんて台詞を直に聞くとは。言われなくても目を離すもんかと寝顔を見つめる。笹ばかり食べているので忘れがちだが、パンダは肉食。背中を向けるのは死を意味する。俺は寝返りも打てないのだ。
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2565.
#twnovel 妖怪について調べていると、たまに正体不明とされながらも味についてはしっかり書かれているものに出くわす。なぜ昔の人はそんな妖しいものを食ったのか。「そりゃ先生、正体なんぞわかってるからです」地元の猟師は語る。「せっかく獲った獣肉を食うために、適当に妖怪にしとったんですよ」
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2566.『ユニコーンの正体は角が漢方薬として使われるシロサイといわれている』
#twnovel 近頃、異世界人による詐欺事件が多発しています。ユニコーンの角が万能薬となることは広く知られていますが、異世界産のものは「イッカク」という全く別の生物のもので、しかも牙。効能はありませんのでご注意を。なお、異世界でも遥か昔に流行った手口とのことです。
#ファンタジー社会問題
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2567.『メタハラ』
#twnovel「メタハラで訴えられそうなので相談したいのですが…」メタハラ。最近聞くが、メタバースでの事案だろうか。「小説に対して『いじめ描写が精緻だから実体験だろうな』と感想を書いたり今後の展開を予想して書いたら『俯瞰してわかったようなことを言うな』と」救いようがない。電話を切った。
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2568.『カニクイザル』
#twnovel「本当は怖いグリム童話みたいな大人向けなのを日本の昔話でやるアンソロ企画です。あ、性的な方向はナシで」誘いを受け、私は『さるかに合戦の猿がカニクイザルだったら』でアイデアを捻出した。企画者の表情が曇る。安直過ぎたかな。「ちょっとエッチすぎますね…」お前の性癖なんぞ知るか。
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2569.
#twnovel テーブルに案内されたが、他に家族連れが待っているのも知っているのでカウンターでいいと申し出た。注文を済ませると隣に美女が座る。善行の御利益かと思ったが、その人はすぐに連れの男を手招きした。まあ、こんなマシマシのラーメンを前にナンパはないか。イタダキマスと割り箸を割った。
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2570.
#twnovel「あ、編集さん?ちょっと執筆にChatGPT使ってみたんだけど」『堂々とサボり報告しないでください』「いい感じに出力してくれなくて」『指示が悪いんですよ。AIだと思わず、もっと人間相手にやるように』「ああ、デビューさせてやるからって言えば」『おいテメェもしや今までのもゴーストか』
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【書き出し:「それは、内心分かっていたことだ。」】
2571.『内省』
#twnovel それは、内心分かっていたことだ。分かっていることをわざわざ言われても心に響くわけがない。この人は何も分かっていないなと、お説教の間そんなことばかり考えていて、風呂に浸かりながら一日を振り返っても何を言われたのかまったく覚えていない。俺はいったい何を分かっていたんだろう。
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2572.『手のひらドリル』
#twnovel『すみません、明日有給休暇を…』「君もか。どうせ野球の決勝戦見るんでしょ?」『それはそうなんですが…割と大事で…これから病院に』「えっ?何があったの!?」『負けてるときボロクソに叩いてサヨナラ打って持ち上げたら、手首がねじ切れまして…』「そういう観戦の仕方よくないと思う」
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2573.『春の彼岸』
#twnovel 墓参りなんて適当に朝早く済まそう。そう思っていたのに湯呑みが割れていて、買ってからもう一度来るはめになった。昼下がり、春の陽気の中、鳥の囀りを聞きながら手を合わせていると、極楽の絵図には鳥が描かれていたことをふと思い出す。あの世を信じてみる気持ちになった。ちょっとだけ。
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『書き終り:「私の世界は沈黙に満ちた。」』
2574.『最初の言葉』
#twnovel 私にとって世界とは、目の前の男がすべてであった。男は何度も頭を抱えながら、懸命に私に向き合い、言葉を覚えさせようとしていた。不眠不休が続いた後、私が表示した「Hello,world!」の文字列を見届けた男は、歓声を上げて倒れ込む。そのまま寝てしまったようだ。私の世界は沈黙に満ちた。
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【「ねえ、秘密の話なんだけど」という台詞で始まり「また会えますようにと願うほかないのだ」で終わるお話】
2575.
#twnovel「ねえ、秘密の話なんだけど」何だろうと耳を貸すと「続きは後で」だなんて。もったいぶらずに今言ってよと伝えても、いたずらが成功したとばかりに笑って部屋の扉を閉じてしまった。よくそんなフラグ立てられるな、館で連続殺人が起きてるこの状況で。また会えますようにと願うほかないのだ。
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《ショートコント飯店》
2576.『犠牲フライ』
#twnovel「大将、この『犠牲フライ』って何」「俺はスタンドに入ったら終わりのホームランより犠牲フライこそが盛り上がり所だと思ってるからよ」「知るかよ…頼むよ…」「へいお待ち」「骨せんべいじゃん」「つまり?」「地味だけど、俺は美味しさ知ってるから盛り上がるわ」「うん、そういう気持ち」
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【「知らない場所のはずなのに、どこか懐かしい気がして立ち止まる」で始まり「焦げたトーストは、苦いのにやたら美味しかった」で終わるお話】
2577.
#twnovel 知らない場所のはずなのに、どこか懐かしい気がして立ち止まる。その理由は立ち入ってすぐにわかった。家人にもその理由を説明する。あなたが使っているトースターは、私が一人暮らしのとき使っていて手放したものです。早速焼いてもらった。焦げたトーストは、苦いのにやたら美味しかった。
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2578.
#twnovel「武器くれっていってるのに何でしゃもじを持ってってるんだよ」というツッコミを見るたび、安堵する。とんでもない機密が流出してしまったと思ったが、まだ世界にはバレていないようだ。晩飯時ならあれ一本でどこへでも突撃していける、万能の電撃戦アイテムであることが。あと普通に殴れる。
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【「やあ、また会ったね」という台詞で始まり「あんまり綺麗で、目頭が熱くなった」で終わるお話】
2579.『最後の輝き』
#twnovel「やあ、また会ったね」その台詞を書いたとき、本当は会うはずなかったのにね、と思った。一回きりのキャラのつもりだったが、話を進めるうちに、今起きている問題を解決できる存在だと気づいたのだ。ありもしなかった伏線回収。打ち切られる物語の割には、あんまり綺麗で、目頭が熱くなった。
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2580.『マルチバースなふたり』
#twnovel 彼女と二人で観た映画の内容が噛み合わない。もしかして入るシアターを間違えて、別々の映画を観たのだろうか。いや、入るときも出るときも一緒だったじゃないか。「これはマルチバースだね」と彼女は言う。「きっと意識が別宇宙にとんでたんだよ」俺も覚えがある。二人とも途中寝たっぽい。
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【書き出し:「水面に映る顔は、」】
2581.『破顔』
#twnovel 水面に映る顔は、自分のものとは思えなかった。こんな顔だったろうか。もっと、シュッとしていなかったか。それを気に入って手鏡ばかり眺めていた頃の顔をめちゃくちゃにした相手が私を呼ぶ。今、どんな顔をしているのか、久しぶりに見られてよかった。顔を上げて、緩み切った笑みを向ける。
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2582.
#twnovel 朝から雨で肌寒い日曜日。だから来いよ、と呼ばれているように感じたので、銭湯に足を運ぶ。みんな考えることは同じで混んでいたが、それでも引き返さず湯に浸かった。相変わらずボロい。月末には閉まるのだから当然か。帰りも雨が降っていたが、長湯になってのぼせたからちょうどよかった。
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2583.『古本とカレーの町』
#twnovel「今度の詐欺に使う稀覯本の偽造どうなってます?」『順調ですよ。今カレー仕込んでるところです』「ちょっと何言ってるかわからない」『古本といえば神保町、神保町といえばカレーですから。貴重な本にはカレーの匂いが沁みついてないと』「そうかなあ」『あっやべ、カレーこぼした』「おい」
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2584.
#twnovel 酒場をやっている友人はたまにやる気を失くす。そうなると柿ピーしか出さなくなり、経営が危ぶまれるところだが、そこを支えるのが私の役目なのだ。五日も通って話を聞いてやれば大丈夫なので、あとは放っておく。やる気があるときは寄り付かない。あの店で一番うまい食べ物は柿ピーである。
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【#このマイナー妖怪を現代怪談で復活させてやってください お題「けうけげん」】
2585.
#呟怖
けうけげんがいた。珍しい妖怪のはずなのに、最近よく見るなと思って話を聞いてみる。「ちょっとコンプラ的な問題で…姿を慎まないといけないことばかりなって…」そのもじゃもじゃって自主規制のアレだったのか。「コンプラってほとんど病気だよな」そう口にした瞬間、俺もけうけげんになった。
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【書き出し:「喉が悲鳴を上げる。」】
2586.
#twnovel 喉が悲鳴を上げる。だが試合は佳境であり、応援の声を緩めずに俺は叫び続ける。そう、あの『ムンクの叫び』のように!「『ムンクの叫び』って中心にいる通称ムンクさんが叫んでるんじゃなくて通称ムンクさんは得体の知れない叫び声を聞いて耳を塞いでる絵なんだってさ」ちょっと休憩するわ。
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【書き出し:「傍らの花が、ほろりと落ちた。」】
2587.『ほろり』
#twnovel 傍らの花が、ほろりと落ちた。ここに至るまでに、傍らにあった他の花は、はらり、ひらり、ふらり、となかなかに儚げな雰囲気で落ちていったのだが、おい、へらり、お前は何だ。落ちようってときにへらへらするな。そう詰ったせいだろうか、最後には、ほろり、だなんて、悲しげに落ちたのは。
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2588.
#twnovel キャバクラ通いにとっての夢、同伴出勤の手筈は、カフェで合流と一拍置くものだが、職場へ直に嬢がやってきて出待ちをしていたという武勇伝を聞いたことがある。羨ましいと思ったが、真似をしては駄目だと釘を刺された。その人は店に多大なツケがあり、同伴ではなく連行であったとのことだ。
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2589.『セカンド財布』
#twnovel 父は財布を二つ持っていて、古い方をいつまでも替えようとしない。古い財布は「勝負用」で、若い頃、母に贈られたものらしい。麻雀好きだった父に負けてもいい額だけ入れろと言い、渋ると「勝負師のくせに縛りプレイもできんのか」と一喝されたという。それが結婚の決め手だとか。惚気スか。
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2590.『相手にラベルが見えるように注ぐのがマナーです』
#twnovel 職場の飲み会で「酒はラベルが見えるように注げ」と言われた。その手の偽マナーには辟易していて「それ医学生が始めたデマですよ」とつい零す。すると上司は「酒は飲みの主役で、ラベルは酒の顔だろう。主役に下向かせるのはちょっとね」と笑った。初めて、こういう大人になりたいと思った。
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【#このお題で呟怖をください お題「繭と少女」】
2591.
#呟怖
幼馴染の彼女は家から出ない。あてもなく出かけるのが趣味の僕を窓から見下ろしては「男の子が旅好きなのは成長しないからだわ」などと宣う。彼女の言う“成長”を僕は知っている。部屋を覗いたあの日、見てしまった、繭に包まれ、それを破り出る彼女の姿。僕は彼女から逃げるように足を速めた。




