2023年1月分
№2467~2496
2467.『グッドバーテンダー』
#twnovel「馴染みの客に初対面のふりをできるのがいいバーテンダーなんです。最近、身についてきました」老いた祖父は帰省した俺を客と勘違いして話す。孫の顔を忘れても、極意を忘れないんだから天職だったんだろうな。作ってくれたドリンクを飲む。昔、親の目を盗んで頼んだ、濃いめのカルピスの味。
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2468.『デス飯ノート』
#twnovel グルメと温厚さで有名な先輩の退職にあたり、仕事は俺が引き継いだ。「これもあげる。役に立つよ」とノートを貰う。美味しい店リストかな。「僕が調べた不味い店リスト」ちょ、何に使うんスか。「二度と絡みたくない人に教える用」う…わあ。「教えた相手もまとめてあるから」怖い怖い怖い。
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【#このマイナー妖怪を現代怪談で復活させてやってください お題『しゅのぼん』】
2469.『紅白〇合戦』
#呟怖
年末特番のオファーが来た。歌手としてステップアップするべく意気込んで打合せに出向くと、そこにいたのは真っ赤な顔の妖怪。「おれは朱の盆。相方の舌長姥と紅白ヒト合戦を毎年やっているのだが、お主には我が紅組に加わってもらおう。なに、白組で白骨になるよりマシさ。まずは皮を剥がし…」
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2470.『自分大阪出身やけど』
#twnovel「先生、急患です!」「これはひどい…自分大阪出身火傷だな。『自分大阪出身やけど』と話を振った際に起きる。『何かおもろいこと言って』から大火傷につながる。恐ろしいのは、話を振った方こそ、大阪出身でも火消しができるほど面白いわけでもないのでひたすら延焼することだ。知らんけど」
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2471.『恋はあせらず(大意)』
#twnovel 今年こそ変わろうと思っていたのに、おみくじは『そのままでいいよ(大意)』と言ってくる。特に焦っていた縁談にいたっては『時間をかけろ(大意)』の始末。溜息が出る。おみくじを結ぼうとしてもうまくいかないし。「こう結ぶんだ、ぶきっちょ」ふと触れた幼馴染の手に、別の溜息が出た。
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2472.『田舎町の雪夜』
#twnovel 雪が降る夜、田舎町は死に絶えたように静まり返る。夜明け前の雪かきのため、寝だめをせねばと皆知っているからだ。素知らぬ顔で煌々と灯りをつけるのは飲み屋群。明日の地獄を知りながら飲む酒は美味いのだろうか。何もかも嫌になろうとも、踏み出せず、今日も灯りを眺めるだけの残業帰り。
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2473.『チョコの牙城』
#twnovel 老舗の和菓子屋がやにわに活気づいている。ついこの前まで経営が厳しいと言っていたのに。「一発逆転の目が出たのさ。チョコ、物価高らしいな」今朝のニュースで言ってたね。「ようやく牙城を崩す隙ができた。これからは、バレンタインにはヨーカンの時代よ!」…ヨーカン、言うほど安いか?
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2474.『白の女』
#twnovel 全身白コーデの人って本当にいるんだ。信号待ちの間、交差点の向かいに立つ女を見て、そんなアホなことを思った。ファッション雑誌から抜け出てきたような存在感。だからついつい、歩きながら盗み見してしまったのだが、彼女は横断歩道の白いところだけ踏んで歩いていた。やりすぎだろうよ。
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2475.『日本一の被害者役にインタビュー』
――被害者役のレジェンドとして御高名ですが、なぜ数多の映画やドラマで死に続けることができるのでしょうか。
#twnovel
「先に私の死体がキャスティングされます。以前、予算が潤沢にある映画で出来の良い死体を作ってもらって、それが色んな現場で使い回されてるんです。死体のバーターですね(笑)」
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2476.『売れ筋』
#twnovel 小説書きの知人が「最近、タイトルの勉強を始めた」と言う。長ったらしくてとても最後まで読む気にならないようなタイトルが“売れる”らしい。その成果は如実に表れたようで、彼がネットオークションに出品した『某最新ゲーム機(中略)の空箱』が即決でSold outしていた。捕まるよ、マジで。
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2477.『成人式行かなかったわ』
#twnovel TLを流れる「成人式に行かなかった自慢」をぼうっと眺めている。振袖でどっかに遊びに行っただの何だの。私は行った方の人。ていうか、親を欺くために出席の返事をよこしたその人たちが来なくてパニックになった幹事の人。へえ、ほお、楽しかったのか。よござんしたね。スマホの電源切った。
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【#このお題で呟怖ください 「知ってる女」】
2478.『知ってる』
#呟怖
『知ってる女』の話を知ってる?
「ねえ、知ってる?」と声をかけてくる女。
それに「知ってる」と答えては駄目。
女は自分を知ってる人を探してるの。
ええ、そうよ。
この話を聞いた貴方は女のことを知ってしまった。
あ、「知らない」って嘘はもう通らないからね。
じゃあ訊くけど。
…ねえ、
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【「知らない場所のはずなのに、どこか懐かしい気がして立ち止まる」で始まり「そんな思い出が今でも心臓を刺すのだ」で終わるお話】
2479.『郷愁ビジネス』
#twnovel 知らない場所のはずなのに、どこか懐かしい気がして立ち止まる。そういう郷愁ビジネスの店をやっていた。繁盛したが、常連客は日に日に減っていく。懐かしくなりすぎてみんな田舎に帰ってしまうのだ。店じまいの日、わざわざ上京した彼らと語り合った。そんな思い出が今でも心臓を刺すのだ。
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2480.『奇跡の一枚』
#twnovel 奇跡の一枚を撮れる瞬間がある。俺の場合は、カメラを向けたら電車が通り、そんなつもりはなかったのにいい感じの写真に収めてしまったとき。これは天の導きかもしれないな。「で、そのとき本当に撮るはずだった調査報告用の証拠写真は?」ないっす。「探偵やめなよ」撮り鉄になろうかな…。
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《ショートコント飯店》
2481.『天使メシ』
#twnovel「大将、この『天使メシ』って何」「カロリーの高いメシに『悪魔的』だの『罪深い』だの言ったりするよな」「あるねそういうの」「作ってやってんのに何て言い草だと思わんか」「人間が小せえな…」「ならばお望み通り、正反対のメシを食わせてやろう。白飯、豆腐、もやし!」「シメに貰うわ」
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2482.『翌日のジェイソン』
#twnovel 昼飯に出かけると、ジェイソンとばったり会った。昨夜は13日の金曜日なのに見かけなかったけど何してたの。訊けば「家で寝てた」と言う。「息子が今日、受験でな。そばにいてやりたかったし、今朝送り届けるために寝坊できなかったから」そう語るホッケーマスクの下には、父親の顔があった。
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【twnvday2023/1/14 お題「ブルー(青)」】
2483.『青き日々よ』
#twnvday 雨上がり。晴れ間。濡れたアスファルト。空の色を映して青く染まる田舎路。いい景色だろうと助手席に声をかけたら「詩人だね」と言われた思い出。そう呼ばれたのはそれっきり。駄作だけを重ねた。あの日の何が、どう詩人だったのか、教えてくれる相手はもう隣にいない。俺に詩はわからない。
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2484.『打ち上げ花火、どこから見るか』
#twnovel 線路沿いで花火を見た。会場からは遠いが、線路を越える踏切を通るにはちょっと歩かなくてはならない。だからここでいいや、と思った。それが真下から撮った花火の写真をアップしている彼女との違いであり、距離であり、俺なんだと思う。冷えてきた。まだ続く花火に背を向け、音だけを聞く。
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2485.『最後の怪人』
#twnovel 僕の町には怪人がいる。変な格好をして、毎日ぶらぶらしている。大人は危ないから構うなと言うけど、話しかけると気さくに答えてくれる。子どもが好きみたいだ。「なんで怪人て呼ばれてるの?」「戦う相手がいなくなって、俺だけになったからかな」と笑う怪人。「昔はヒーローと呼ばれてた」
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《ショートコント飯店》
2486.『せんべろスターターキット』
#twnovel「大将、この『せんべろスターターキット』って何」「せんべろを学べる入門編メニューだな。酒三杯、肴一品を出す」「なるほど、よく言われてる"作法”をシステム化したのね。注文します」「へいお待ち」「…えらく高そうな酒と肴だけどこれで本当に千円でいいの!?」「時価」「千円でやれよ」
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2487.『はやくこれになりたい』
#twnovel 風呂なし物件を借りた。アトリエ用だ。作業中はどうせ風呂には入らないし、入りたくなったら歩いてすぐそこに日帰り温泉もある。週末に車を走らせやってきて、気晴らしに温泉に入って、買い込んできた酒を空け、寝て、また何も作業できなかったなと帰っていく。それを幸せに思い始めている。
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【#このマイナー妖怪を現代怪談で復活させてやってください お題『瀬戸大将』】
2488.『瀬戸物が欲しい』
#呟怖
瀬戸物が欲しい。最近、何をしていてもそんな気分になることがある。いい酒のために買った徳利、それで飲んだ後は特にそう思う。何かに操られるように大金をはたいて瀬戸物を買って回った。ある日、枕元に何か変なのが立つ。「おかげで体が揃った。褒めて遣わす」瀬戸大将は去り、借金が残った。
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【「花なんか別に好きじゃなかった」で始まり「笑顔からこぼれ落ちる涙が光を纏って美しいと思った」で終わるお話】
2489.『納得いかない目覚め』
#twnovel 花なんか別に好きじゃなかった。なのに彼は逢う度に花束をくれるのでうんざりしていた。ある日、鼻がムズムズして我慢ならずに飛び起きる。私は大量の花に囲まれ、病室にいた。長い間、眠っていたらしい。納得いかない目覚めだけど、彼の笑顔からこぼれ落ちる涙が光を纏って美しいと思った。
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【お題「所有の証」】
2490.『証が欲しい』
#twnovel 芸術家の彼女に釣り合うよう、せめてビジネスパートナーになれればとNFTアートの話を持ち込んだ。彼女の作品をデジタル化して売る際、アートの唯一性と価値を証明するのがNFTだ。その所有の許可が欲しい。「それを証明できる作者の私が欲しいってことかな」えっ、「変わったプロポーズだね」
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2491.『冬の訪問者』
#twnovel 北風小僧の寒太郎が訪ねてきた。「かくまってください。強い寒波がやってきます」そういやテレビで言ってたけど北風小僧が逃げ出すほどなのか、と笑って家に上げる。するとまた訪問者が。「かくまってくれ。強い寒波が来る」そこにいたのは冬将軍だった。最強寒波到来の予感に、縮み上がる。
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2492.『最凶コラボ』
#twnovel「ここの回転寿司、動画の企画で他人の注文を勝手に食ったら死ぬほどワサビが乗ってたぞ!謝罪しろ!」「あんたにも言いたいことはありますが、まず店は悪くないことを証明しましょう。紹介します、先に捕まえた『動画の企画で他人の注文に勝手に死ぬほどワサビを乗せた人』です。ファイッ!」
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2493.『本屋で買ったカレー』
#twnovel 昼は本屋で買ったカレーを食べた。出鱈目じゃない。カレーのレシピ本を買おうとしたら「本当に欲しいのはカレーだろ」と出されたんだ。その話を聞いた友人は『お金がたまる本』を買いに走った。「予想通り、本当に欲しいのは金だろって言われたよ」彼は今、本屋の店員として賃金を得ている。
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【#このお題で呟怖ください】
2494.『駅のホームにて』
#呟怖
「イヤホン貸してやろうか?」と片耳分だけ差し出されたが、アホみたいなナンパだなとそっぽを向く。逃れるように電車に乗り込もうとするが、いきなり腕を引かれ、耳にイヤホンを捩じ込まれる。お経が聞こえる。消え失せる車両。安堵した顔の男。踏み出した私を轢いていたに違いない車両の到着。
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2495.『エンゲルと幸せの係数』
#twnovel「焼肉好きです!年に一回は食べます!」好きなのに回数少ねえな、と思った俺は、彼女を焼肉に誘うようになった。あのとき、ボケだと思って流していたらどうなっていたんだろう。思いを馳せながら、本当に年イチの誕生日イベントになった焼肉を囲む。母親に似て焼肉好きな子どもたちも一緒に。
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《今日の献立報告》
2496.『イタリア豚汁』
#twnovel「今日は豚汁ですよ」「ん、大根とじゃがいもがちょっと違う…?」「おっ、気づきましたか。それぞれコールラビ、ルタバカというイタリア野菜を代用してます。両方カブなんですよ」「へえ。なら、料理名もイタリアっぽくしたらいいんじゃない?」「じゃあ…ポルコ汁?」「飛べなかったのか…」




