2022年11月分
№2401~2430
2401.『幻のクリームパン』
#twnovel 幻のクリームパンを探している。何がどう幻かは知らないが、とりあえずクリームたっぷりで美味かった。困ったことに幻のクリームパンは全国にあり、そのどれもが追い求める幻のクリームパンではなかった。失意のうちに帰郷し、近所のスーパーで『復刻!幻のクリームパン』を買う。これだわ。
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【「聞き覚えのある声が聞こえた気がした」で始まり「やっと言えた」という台詞で終わるお話】
2402.『大混雑の夜に』
#twnovel 聞き覚えのある声が聞こえた気がした。ハロウィンの夜、誰かに逢えるかもと出かけた矢先のこと。その声も、私も、人混みに流されて離れていく。群れから抜け出した私は叫んだ。「いや仮装してちゃ誰だかわからねえよ!」息苦しさから解放された勢いで吐き捨てるように呟く。「やっと言えた」
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2403.『アイの証明』
#twnovel ふたりでラーメン屋に来たのは初めてだった。「デートにラーメンとかありえない!」といつも彼女が言っていたから。その彼女も、今日は神妙に席に着いている。「信じたいんだ。君は“本物”だって」注文したラーメンを差し出す。彼女は目を伏せ、観念したように、ラーメンを素手で食べ始めた。
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2404.『清算』
#twnovel 久々に会ったその男は、憑き物のとれたような顔をしていた。足を洗ったってのは本当なのか。「ああ。今は商いをして、その金で細々と暮らしてる。あの頃の俺はクズだった。もう戻りたくないから、清算してるところだよ」ところで、商いって何を売ってるんだ。「昔の仲間」クズの中のクズ…!
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2405.『実在性』
#twnovel 評判のリサーチをせずに入った飯屋。答え合わせをしようと検索したが、情報が一切ない。店はここにあって、料理も食べたのに、何だか狐に化かされた気分になる。では私がレビューの一番乗りになるのか。それはそれで気後れして、結局投稿できず、ネット上には存在しない店に通い続けている。
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2406.『湯上がりに』
#twnovel 景勝地ではないが、湯上がりにぼーっと眺めるにはちょうどいい場所だと思う。ベンチで風に当たっていると、のぼせた頭が、何かを思い出させようとしてくる。郷愁。照れくささを覚えつつ感傷的な自分に付き合ってやっと思い出したのは、寒いからあったまろうと温泉に入ったことだった。寒い。
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2407.『LUNACY』
みんな明日の皆既月食の話をしているけど、今日のほぼ満月なだけで何でもない月もいいもんだと思うな。夜道を歩けばわかるよ。コンビニまで散歩に出てみないか。
#twnovel
…的なことを何も伝えられないまま横になっている。文字は駄目だ、途中で我に返る。どうせなら電話かけるほど狂わせてくれ、月。
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2408.『マッチポンプ』
#twnovel「名画にスープ投げって最近あるじゃん。最初は馬鹿にしてたけど、意図を知って、俺もやってみようかなって」「やめろそっちに行くな…」「思ったけど、他人の絵にやるのは心が痛むから、まずは俺が名画を描こうと勉強始めたんだ」「お前みたいな奴が第二のバンクシーとかになるんだろうな…」
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《ショートコント飯店》
2409.『認証制メニュー』
#twnovel「大将、この認証制メニューって何?」「客のオーダー通りのオリジナルメニュー。自分の名前つけていいぞ」「マジで!?じゃあさ…」「裏メニューだから採用には裏金が要るぞ」「真っ黒じゃねえか。健全化しろ」「じゃ、リクエストは自由だがメニュー化の継続には維持費を貰う」「サブスク…」
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2410.『心の中の「馬鹿ね」と言ってくれる私』
#twnovel タダ飯を食らう。甘美な響きである。まあスタンプカードがいっぱいになった故の当然の権利なのだが。カードを提示して中華そばを無料で注文、のつもりが、料金上乗せでマシマシトッピングをしてしまう。無料で食べたら、カードと引き換えに、もうここには来られないような気がした。馬鹿ね。
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2411.『ポッキーをプリッツにする簡単なお仕事』
#twnovel ポッキーをプリッツにする仕事がしてえ。今まで思いついてきた架空のくだらない仕事の中でもこれは群を抜いてくだらない。チョコだけをきれいに舐めとる業務。やってみると棒が簡単にふやけてしまい職人ワザだとわかる。失敗作だ!と激情のままボリボリ齧って職人ごっこに興じるひとりの夜。
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《ショートコント飯店》
2412.『SDGs定食』
#twnovel「大将、このSDGs定食って何」「中途半端に余った食材の再利用をな。もう一度火を通したり、まとめて玉子とじにしたり」「…何か、晩飯の残りで作る朝飯みたい。実家を思い出すよ。なあ、親っぽいこと言ってくれるサービスとかどう?」「働かずに食う飯は美味いか」「何でニート設定なんだよ」
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2413.『完全栄養食』
#twnovel ランチタイムなのにパフェだけでいいのかと尋ねたところ、彼女と開戦。生クリームとアイスクリームは乳製品、プリンは卵、更にパフェの底にはバナナがあるので完全栄養食であるとの攻勢に降伏し、僕の注文の品であるトーストを割譲して和解とする。これでいい。炭水化物がないと思っていた。
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【twnvday2022/11/14 お題「Twitter」】
2414.『ツイッ太郎』
#twnvday おばあさんがタイムラインでツイート漁りをしていると、どんぶらこ、どんぶらこ、と妙にキラキラしたツイートが流れてきました。それは鬼ヶ島の経営者交代による退職報告でした。おじいさんに見せると「残念だが当然」と一刀両断でした。この先、鬼ヶ島に攻め入る者は生れ出るのでしょうか。
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【ついのべ三題ったー「戦友」「味覚」「緑」】
2415.『緑の部隊』
#twnovel 軍にいた頃は『緑の部隊』の担当でした。菜食主義者を集めた隊です。彼らのために、味覚のすべてを駆使してできるだけ肉に近い味わいの料理を作り、彼らと戦友の関係を築いていきました。信頼を得ると後は楽でした。彼らの方から、本物の肉でいいよと気遣いを受けましたので。強めの圧で…。
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2416.『サッカーの才能』
#twnovel スラムのガキからサッカー選手へ。夢のある話だ。俺もストリートで稼いでいたが、サッカーに必要なスキルを見込まれてスカウトされた。エースのような活躍はできなかったけど窮地で何度もボールを取り戻したよ。何が役に立つかわからないもんだな。当たり屋の芝居でファウルをとれるなんて。
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2417.『逃げ場所』
#twnovel 家主をしているマンションの隣に大型ビルが建つことになった。それでは景観も日当たりも悪くなって住人が出て行ってしまう。抵抗虚しく、ビルは完成し、住人は激減。だが別荘としての新規契約者で部屋は埋まった。ビルのせいで電波が入らないと聞きつけた胡乱な連中。作家と名乗る者が多い。
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【ついのべ三題ったー「水薬」「老婆」「模様」】
2418.『ある老婆の夢』
#twnovel カウンセリングでする話ではないかもしれませんが、あの、夢を見るんです。その話をすると、みんなおかしくなってしまう。怪しい老婆が、鍋で、謎の水薬をかき混ぜている。薬はだんだんと、マーブル模様になっていって…先生?「ねる…」寝る?「ねるねるねるねるねってるかーい!」先生!?
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【#このお題で呟怖をください 「ゲーム」】
2419.『ゲーム友達』
#呟怖
「こうして遊ぶのも久しぶりだね」毛むくじゃらの友達は、盤上を睨み何も答えない。「ここってこんな露骨に牢屋だったんだなあ」僕はかつてここに囚われ、智慧をしぼって脱出した。「実はこのボドゲ、外にはなくてさ。退屈な毎日だよ」愚痴ると、友達は牙を剥いて唸った。『じゃあ僕の体返せよ』
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2420.『百万本のバラ』
#twnovel 付き合っていた彼女に、俺じゃない人と結婚すると告げられた。ずっと俺の夢を応援していてくれたじゃないか。「彼はね、私が『花が好き』と言ったら、写真や、絵や、詩や、曲や、小説や、『彼女は花が好き』なエッセイ漫画にするんじゃなく、花束をくれる人なの。つーか何回夢変えてんだよ」
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2421.『長男だから』
#twnovel 婚活に必要なのは本気度と責任感だとアドバイスされたので、長男だから『家』を存続させる義務があるし何より弟妹に『ちゃんとした人』として生きる道を示すために結婚はマストです!とアピールしたら「この時代では何もかも間違っている」と丁重にお断りされた。俺は長男だから耐えられた。
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《ショートコント飯店》
2422.『新酒承認』
#twnovel「大将、酒のメニューにある『緊急承認制度』って何」「店にない酒をリクエストするシステム」「いいじゃん、それなら俺も飲んでみたい酒が…」「ただし、あくまで緊急承認。一般流通はせず、買い上げて一括管理になる」「つまり?」「試し飲みじゃなく、ボトルを入れるんなら仕入れてやるよ」
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2423.『夕暮れが街を包んだら』
#twnovel ハーモニカじいさんが居たベンチに座る。いつもこんな夕暮れの街を見ながら吹いてたんだな。じいさんはこの景色を見て、この景色を見た気持ちを、ハーモニカの演奏にした。俺はといえば、写真にして持ち帰り、もう見なくなったじいさんを思い出しながら、うだうだとこんな文章を書いている。
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2424.『絶対に負けられない戦いがそこにある』
#twnovel サッカーが盛り上がってる期間は憂鬱だ。どいつもこいつも普段はハイハイと流すようなことに『絶対に負けられない戦い』なんてテロップと脳内BGMをひっさげて食い下がってきやがる。それを散々読み取った俺は、試合を観る気が失せてビール飲んで寝るだけ。テレパスってこういうときしんどい。
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【ついのべ三題ったー「液晶」「ランプ」「シャボン玉」】
2425.『記憶はシャボン玉』
ランプの光が当たると、シャボン玉は表面に私の記憶を映し出す。ザッピングするように無数の液晶画面に目を走らせる。いらない記憶は指先で次々と割る。こうやって大事な思い出を守らなければ。
#twnovel
という夢を見るようになってからだ。認知症だと悲しそうに告げる、知らない誰かが家に居るのは。
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【「手紙が届いた。差出人の名前はない」で始まり「そのときの手紙はまだ大切にしまってある」で終わるお話】
2426.『受取拒否』
#twnovel 手紙が届いた。差出人の名前はない。未開封のまま「受取拒絶」の貼紙をして郵便局へ。後日、困り顔の配達員が「差出人もあなたのようですが…」と。綴られていたのは、私から私あての、別れの言葉。それきり記憶にない行動をとることはなくなった。そのときの手紙はまだ大切にしまってある。
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《ショートコント飯店》
2427.『推しカツ丼』
#twnovel「大将、この『推しカツ丼』って何」「推しに捧げるカツ丼」「推し活ってコト…?じゃあひとつ」「へいお待ち」「ただの白米」「カツ丼とライスの差額が当店への応援になります」「この店かよ!いいけどさ…」「ありがとう。俺の推しが勝つよう祈っててくれ」「競馬代に充てるならカツ寄越せ」
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2428.『日本が勝ったら…』
#twnovel 鬼のように不在着信がきていたのでかけ直すと『私メリーさん。今、あなたの家の前にいるの』ごめん、日本が勝ったらサイコロの旅に出るって言っちゃったから留守にしてるんだ。今は夜行バスの中で、スマホで試合見てる。『私メリーさん。日本が勝ったらあなたの後ろに行くの』おお怖い怖い。
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2429.『レンジで4分!豚バラ肉とキャベツ蒸し』
#twnovel いい肉の日なので、少し離れたスーパーへ買い出しに。そこでは電子レンジで調理できる豚バラ肉の惣菜が手に入る。もっと手間を、どうせなら外食、せめてカルビ、などと、訴えかける自分との対話は済ませてある。俺は遠出をしてまで四分待つだけの肉を食いたかった。だって疲れてるんだもの。
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【#このマイナー妖怪を現代怪談で復活させてやってください お題「ミイラ男/ミイラ女」】
2430.『カップルミイラ』
#呟怖
二人揃ってミイラ状態で発見される心中事件は流石に世間の興味を惹き、真実の愛だなどと町おこしに使われ『映え』スポットと化した。二体のミイラの前で記念撮影したカップルは決して別れないとの噂だ。別れない。別れられない。死んでも。それこそがミイラの呪い、ではないと、誰が言えようか。




