2022年7月分
№2288~2324
【#文披31題 Day1「黄昏」】
2288.『黄昏時の彼女』
#twnovel 彼女ができた。逢瀬はいつも黄昏時。お互いの顔もわからないから「誰そ彼」などと言うらしいけど、喋っている様子から笑ってくれているのはわかる。そして僕から話しかけると、きょとんとした顔の、知らない誰かになってしまう。「誰そ」と尋ねるまでは僕の彼女でいてくれる、不特定な彼女。
*
【#文披31題 Day2「金魚」】
2289.『金魚と彼女』
#twnovel 女の子と手を握って歩く、あの男の子には見覚えがあった。何度やっても金魚を掬えず泣いていたので、情けで一匹あげた子だ。わざわざどの金魚がいいか指定してきたので覚えている。理由は確か「可愛いから」。あの金魚の模様、思い返すと人の顔に見えて、そうちょうど、あの女の子のような。
*
2290.『氷がとけてゆくように』
#twnovel クールでミステリアスな恋愛をするはずだった。別人のように飾り立てて、ゲームのように駆け引きをして。それなのにこの暑さは何だ。沸騰した頭は飾らない本心を口走らせる。即座に脱ぎ捨ててしまうのは自然の流れ。クールでミステリアスな恋愛をするはずだったのに。ああ、謎がとけてゆく。
*
2291.『黄昏リセットマラソン』
#twnovel 誰だか判別がつかなくなるという「誰そ彼」時を狙って、ちょっとイマイチな彼女をリセマラすることにした。「誰そ、誰そ」と訊ねるたびに別人となる彼女。ようやく好みのド真ん中の子になったので、リセマラは終了!さあ一緒に帰ろうかと手を差し出した俺を見つめて、彼女は言った。「誰そ」
*
【#文披31題 Day3「謎」】
2292.『謎かけの彼女』
#twnovel「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足になる生き物は?」その謎かけの答えが「人間」だと聞き、悔しくなって「そうは限らないんじゃないか?」と食い下がった。だから僕はそれを証明しなければならない。出題者の傍で。とりあえず、夜は三本足にならないように二人で健康的に過ごしています。
*
【#文披31題 Day4「滴る」】
2293.『水かぶりの彼女』
#twnovel 水も滴るいい男になりたいと願った結果、常にスプラッシュマウンテンのごとく水飛沫をとばす男になった。何でや。そんな状態でも彼女ができた。何でや。「落ち着くから」めっちゃ飛沫かかってますが。「いつも滴ってるなら、私のことなんか気にならないでしょ」そう言って笑う彼女は、雨女。
*
2294.『出品者の気遣い』
#twnovel 価格が高騰している野菜はネットオークションで買うに限る。今日も玉ねぎが出品されていた。しかも「食べやすいよう加工済み」とのこと。即決で購入したが、届いた包みは空だったので苦情を入れる。回答は「仕様どおりです」バカ言うな。「食べやすいよう、皮を全部剥いておきましたので!」
*
2295.『布一枚の隔たり』
#twnovel 七夕にしては珍しく晴れで、織姫と彦星も会っているだろうし、あやかって会いに行くことにした。自粛ムードも和らいできたしいい頃合いだろう。久々に画面を通さず顔を合わせた第一声は「何でマスクしてないの?」「は?逆に何でしてるの?」どうやら天の川より険しい溝ができていたらしい。
*
【#文披31題 Day5「線香花火」】
2296.『花火と彼女』
#twnovel 線香花火の光が彼女の笑顔を照らし出す。たった一瞬の繰り返し、それが僕にとって至福のとき。でも本当は気づいている。これは売れ残りのマッチが灯すような、走馬灯じみた過去の残像だ。空を見上げれば大輪の花火が開く。今夜、本当の彼女はあれを見に行っているはず。僕の知らない誰かと。
*
【#文披31題 Day6「筆」】
2297.『恋文の彼女』
#twnovel ラブレターを貰った。随分とまあ達筆な。思いが込められているのがよくわかって、いい筆を使っているんだろうなと思った。それはそれとしてお断りの返事をすると、また下駄箱に手紙が入っていた。「失恋したのでこれにて断筆します」とのこと。手紙には、艶やかなおさげ髪が添えられていた。
*
2298.『カササギ橋』
#twnovel 今年も七夕の橋渡しを終え、現場カササギが打ち上げをしている。「ところで、何で俺たちなんですかね。水辺の鳥いっぱいいるのに」「今はもうずるずる続いてるけど、最初は水の専門家に頼むつもりで、誤発注でうちになったんだと。ほら、俺たち、ちょっと似てるからさ。色とか、ペンギンに」
*
【#文披31題 Day7「天の川」】
2299.『牛乳を注ぐ彼女』
#twnovel うちの食卓には「天の川」ができる。ミルキーウェイのことだ。つまり牛乳をこぼした跡。僕は昔から不摂生で、牛乳を飲めと家族に言われていたので、一人暮らしの今を心配してくれてるのはわかる。でも注ぎすぎじゃないかな。と、彼女を見る。形見分けで実家から貰ってきた『牛乳を注ぐ女』。
*
【#文披31題 Day8「さらさら」】
2300.『ブームな彼女』
#twnovel 彼女の中でスムージーブームが終わったので、健康になりたいんです。暴飲暴食をやめた理由を人に話すと、誰もが首を傾げる。スムージーブームの間に一緒に健康になればよかったのに、と。それは需要と供給の関係というもので。さあ、どろっとしていた血液を、今の好みのさらさらにしないと。
*
【#文披31題 Day9「団扇」】
2301.『都合のいい彼女』
#twnovel こんなところにいたのか。いや、ほったらかしにしてたのはそっちって言われたらそうかもだけど。ほら、あいつらは手がかかるから。でもさ、縁側で風鈴の音を聞いたり、夏祭りに花火を見に行ったりとか。どこでもいっしょに行けるのは、エアコンでも扇風機でもなく、団扇、お前だけなんだよ。
*
【#文披31題 Day10「くらげ」】
2302.『クラゲ系女子の彼女』
なんか透明感あってほんわかした雰囲気の美女が現れた。どうも僕に恩返しをしにきたらしい。覚えがないけど。彼女はやわらかい笑みを浮かべ「あのとき、浜辺に打ち上げられていたのを助けていただいた――」
#twnovel
目が覚めた。僕は海に戻そうとしたカツオノエボシに刺されて昏倒していたのだった。
*
【twnvday2022/7/14 お題「鍛錬」】
2303.『鍛えてます』
#twnvday この夏は本格的に心身を鍛えたいと言うから費用として金を出したのに、お前クーラー買ったのか。「これはキンキンに冷えた部屋と灼熱の屋外を行き来してサウナを再現し精神を整えるためで…」クーラーはまだいいよ、この大量の酒は何だ。「これは今まさに、肝臓を追い込んでいるところで…」
*
【#文披31題 Day11「緑陰」】
2304.『捲る彼女』
#twnovel 木陰で読書をしていると、ついうとうとしてしまう。そんなとき僕に代わってページを捲るのが、勝手に覗き込んでいる彼女(妄想。ただの風)。早く読んでと急かされているようで、思わず笑ってしまいながら自分でページを捲る。反対側から風が吹いてページを戻された。まだ読んでないってか。
*
【#文披31題 Day12「すいか」】
2305.『甘い彼女』
#twnovel 話さないといけないことがある。僕は君が思うような人間じゃない。恩返しに来たと言っていたが、僕は君を助けてなんかいないんだ。あのとき、たまたま外れただけで、振り上げた棒は君を狙っていたんだよ。腹を割って罪悪感を吐露する僕に、甘いのはお互い様ですね、と微笑むスイカであった。
*
【#文披31題 Day13「切手」】
2306.『消えた彼女』
#twnovel 彼女が姿を消したのは僕の趣味のせいだと人は言うが、大枚をはたいて切手を収集していたのは彼女のためだった。そこにあるはずのものが描かれていない、ミスプリントの切手を。それに彼女はいなくなったのではなく、ようやく自分が収まるべき場所を見つけたのだ。その切手だけは飾ってある。
*
【#文披31題 Day14「幽暗」】
2307.『幽かな彼女』
#twnovel もう夕方か、なんて思いながら窓辺で風にあたる。彼女の気配を感じるのはそんなときだ。本当に幽かで、確かめようとすると消えてしまう。ぼんやりしていれば、同じようにぼんやりそこにいてくれる。カーテンにくすぐられて目覚める。もう暗い。彼女と居るには、夏の夜はやることが多すぎる。
*
【#文披31題 Day15「なみなみ」】
2308.『超エネルギー彼女』
#twnovel なんやかんやあって彼女のSF的技術で一命をとりとめた僕は、特殊なエネルギーを摂取しないと生きていけなくなった。そのエネルギーは特殊なパワーによって生み出される。とてもSFだ。「これが君のパワーの源」と、彼女はコップになみなみと水を注ぎ、指さした。「表面張力だ。さ、ずずっと」
*
【#文披31題 Day16「錆び」】
2309.
#twnovel 彼女ができて食事の世話までしていると聞いたが、嘘だなと思った。だって包丁が錆び付いている。それを指摘すると「いや、それでいいんだ。美味しいって言ってる」そんなはずないだろう。「本当だって。今も言ってるし、ほら」と包丁を指さす。「それに錆びじゃなくてバクテリアちゃんだよ」
*
【#文披31題 Day17「その名前」】
2310.
#twnovel「その名前を、決して呼んではいけない」と、散々脅かされてきた。脅しではないのはわかっていたが、それでも僕は気持ちを抑えられなかった。呼ばないように、呼ばないようにと気を付けて、今ではすっかり板についた。もう「おい」と言うだけでお茶を淹れてくれます。「おい」と僕は幸せです。
*
【#文披31題 Day18「群青」】
2311.
#twnovel「空が好き、海が好き」夏になると僕は嘘つきになる。「青い空が好き、青い海が好き」これも本当に言いたいこととはちょっと違う。僕は青が好きなんだ。そうやって僕の不毛な「好き」をずっと聞かされている、君の群青色の肌が好き。つまりは「君が好き」だ。これはさすがに青すぎるだろうか。
*
【#文披31題 Day19「氷」】
2312.
#twnovel せっかくのデートだからと気合を入れて、山のように盛られたかき氷を食べる。かき込むように食べる。当然、頭痛。道行く人は何をしてるのかと僕を笑うが、まだ足りないのでブロックアイスを噛み砕く。痛い。頭痛も痛い。でも、この過敏すぎる知覚をもってでしか、君の姿を捉えられないのだ。
*
【#文披31題 Day20「入道雲」】
2313.
#twnovel ふわふわとした関係が続く、そんな彼女の父親に会うことになった。掴みどころのない雲のような女性だとは思っていたけど、山の向こうから立ち上る、あの入道雲がお父様ですかそうですか。でも彼女に似て大らかな感じなんだろうな。希望を込めて観測するが、ごろごろと雷の唸る音が聞こえた。
*
【#文披31題 Day21「短夜」】
2314.
#twnovel 夏の夜は短いからキライ。僕だってそうだが、彼女は夢魔だから深刻だ。僕の睡眠時間も短くなるので、エナジーの確保が難しくなる。快眠できるよう甲斐甲斐しく世話を焼いてくれても、一瞬の羽音で水の泡。いいとこだったのにと追い回す彼女。短夜は、夢魔と蚊で僕を取り合う三角関係になる。
*
【#文披31題 Day22「メッセージ」】
2315.
#twnovel「彼女ができた」「マジかよ!えっ、どうやって」「『彼女になってくれ』と毎日言い続けたんだ。その気持ちが伝わったんだよ」「へえ~、やってみるもんだなあ」「僕も最初は眉唾だったよ。でも『ありがとう』なんて曖昧な言葉でも応えてくれるんだからってピンときてね。やっぱすごいよ、水」
*
【#文披31題 Day23「ひまわり」】
2316.
#twnovel 僕が子どもの頃に育てたひまわりですと名乗る女がやってきた。確かに夏休みの宿題でそんなことやった気がする。世話をしてくれるというので受け入れたが、よくよく思い出すと、ガキだった僕は渡されたひまわりの種を「だーいすきなのはー」と歌いながら全部食べた気がする。誰なんだ、彼女。
*
【#文披31題 Day24「絶叫」】
2317.
#twnovel 声が枯れた。ケンカするといつもこうだ。先に力尽きて、何も言い返せなくなるのは僕の方。喉が回復してきた。また山へ行こう。登っている間に気持ちの整理もつく。そして頂上で、大きな声で「ごめん」と言うのだ。彼女と付き合うコツは、必ず僕から呼びかけること。声が小さいと返事もない。
*
【#文披31題 Day25「キラキラ」】
2318.
#twnovel「キラキラ」のことは同業者として知っていた。だが、呼ばれる現場が違う。後ろ暗い役割の僕にとって、文字通りのまぶしい存在だったのだ。それが最近では、同じ現場で会うようになって意気投合。僕らが付き合えたのは、「モザイク」と「キラキラ」加工を一緒にやるSNS全盛期のおかげですよ。
*
【#文披31題 Day26「標本」】
2319.
#twnovel 同棲している彼女のスペースを作ってあげたくて。相談した理由を打ち明けると、相手は困惑して「…弊社は医療機器メーカーですが」と言った。はい、おたくのコレが欲しくて。「これは家具の類ではなく、標本箱といって、人体の切片を…」そこで相手は息を呑む。ええ、大量発注になりますよ。
*
【#文披31題 Day27「水鉄砲」】
2320.
#twnovel 炎天下に水分補給は欠かせないので、水鉄砲が良いということになった。霧吹きでは足りず、水筒やペットボトルでは零れる量が多い。その点、水鉄砲は調整がしやすく、タンクを背負っていける。これで充分な水を確保し、迅速に提供できる。喉と同じように、彼女の皿も乾いてからでは遅いのだ。
*
【#文披31題 Day28「しゅわしゅわ」】
2321.
#twnovel 街ですれ違うたび、彼女はいつも無言で僕に手刀を切ってくる。攻撃の意思だろうか。いや、手話なのではないか。どうも「ありがとう」の意味らしい。それに応えるつもりで彼女の前に立つと、彼女は手刀に左手を添えて十字を組んだ。何の手話だろうと疑問に思うより早く、僕は光線を撃たれた。
*
【#文披31題 Day29「揃える」】
2322.
#twnovel 彼女は普段は五等分で、バラバラにいるのだが、僕の一大事には集結する。絶対に負けられない僕のために、勝利の女神となってくれるのだ。そして勢揃いする、彼女の右腕、彼女の左腕、彼女の右足、彼女の左足、封印されし彼女の本体。これで勝利は決定したようなものだ。デュエルスタンバイ!
*
【#文披31題 Day30「貼紙」】
2323.
#twnovel 思えば一目惚れだった。放課後は盗み見るように周りをうろうろしていた。その貼紙の少女は僕と一緒に成長していった。大人になるにつれ、それを幸せと感じてはいけないのだと気づいた。そして今、彼女の成長予想図を描いた貼紙は剥がされている。もう行方不明ではなくなったのだと信じたい。
*
【#文披31題 Day31「夏祭り」】
2324.
#twnovel 夏祭りは中止になるそうだ。感染がアレだし妥当とは思うが、彼女を誘った勇気は無駄になった。仕方ないので、花火の代わりに文を開く。お題に沿って短編を書くイベントの作品群。読み進めていると、彼女からメッセージ。暇らしい。ならこれ読んでみなよ、というお誘いはスムーズにできた夜。
#文披31題 に参加させていただきました。
個人的な一貫したテーマは『奇妙な彼女との恋愛小説』。




