2016年7月分
№201~243
201.『寝ない』
#twnovel 保育園のお昼寝の時間が嫌いだった。子ども心に、寝ている間は人生を損していると感じていたのだ。抜け出そうとする僕の手を、隣で眠る監視役のあの子が捕まえている。仕方ないからお昼寝の時間はその子の寝顔を眺めて過ごす。寝顔が見たいから眠れなくなったのはいつからだったか。
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202.『山形県・慈恩寺』
#47のべる 仏像のあまりの保存状態の良さに秘訣を聞くと「いや…別に」と関係者は答えた。謙遜かと思いきや本当に特別なことはしていなかった。重要文化財や史跡に指定された今も「来たきゃ来りゃいいんじゃない?」という商売気のない気構え。きっとその自然体を、仏様も気に入っているのだろう。
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203.『貼りついたような』
#笑うという文字を使わずに笑顔を文学的に表現してみろ 目尻を下げる、口角を上げる。この顔を作っておけば、たいていのことはうまくいく。たとえ本心を隠すためでしかなかったとしても。きっとその違和感に君が気づいてくれたから、僕は今、自然とこの顔をしていられるんだと思う。#twnovel
204.『見れたもんじゃない』
#泣くという文字を使わずに泣き顔を文学的に表現してみろ 人の顔ってこんなにくしゃくしゃになるものなのか。あまり見たいと思うようなものではなかった。だから、君が悲しむことがないよう努めてきた。なのに僕がそんな顔にさせていたら世話がない。僕だって見せたくなかったのに。#twnovel
205.『燃える瞳』
#怒という言葉を使わずに怒り顔を文学的に表現してみろ 人に見せられるようなものじゃない、と思った。瞳の奥で燻る激情が、顔を醜く歪ませている。だから笑顔を貼り付け、泣き顔で歪みを誤魔化した。すべて君に剥がされ、残ったのは眼差しだけ。今なら思える。この顔は、悪くない。#twnovel
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【ついのべ三題ったー「火星」「風邪」「未対応」】
206.『火星風邪』
#twnovel「火星風邪ですね」聞いたことのない病名だった。そもそも火星には生命がないから病原菌もないはずでは。「深刻な病ですが保険は未対応です。全額自己負担になりますが、診断書と紹介状を…」慌ててもう平気ですと断った俺に、医者はニヤリと笑った。「火星風邪はね、仮病の隠語です」
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【ついのべお題ったーマニアック「こんぺいとう」「鍵をかける」】
207.『宝物がなくなった』
#twnovel 鍵をかけることを覚えたばかりの私は、大好きなこんぺいとうが誰にも食べられないように、鍵付きの戸棚に仕舞っておいた。なのにこんぺいとうはなくなっていた。合鍵を持っていた母は「食べられなくなる前に食べたのよ」と言った。私は、こんぺいとうを眺めるのが大好きだったのに。
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208.『とあるふたりのサラダ記念日』
#twnovel 他に出された料理が全部まずかったから、皮肉で一番手間のかかってないサラダだけを「この味がいいね」と誉めた。そしたらサラダしか出されなくなり、馬鹿の一つ覚えのふりをした皮肉返しだと気付いたときにはもう遅かった。そんな一年越しの冷戦終結の日が「サラダ記念日」である。
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209.『地元の七夕まつり』
#twnovel「織姫と彦星が逢えますように」と男たちが短冊を吊るす。俺の地元にはロマンチストな男が多い…わけじゃない。天候を憂うのは、ビッグイベントである七夕まつりの売り上げを左右するからだ。その日だけは、都会へ出て行った若者も帰ってくる。織姫に逢えるように、俺も短冊を吊るす。
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【ついのべお題ったーマニアック「耳鳴り」「タンバリン」】
210.『血は争えない』
#twnovel 耳鳴りがする。耳元でタンバリンを叩かれているような感じ。「そんなこと言って、耳元でタンバリン鳴らされたことあるの?」あるんだなこれが。昔の話だが、寝起きが悪かった俺はその方法で叩き起こされていた。お前のママにな。「慣れてるから起きないわけね」お前そのタンバリン…
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【平等主義の料理人と過剰に責任感のあるギャンブラーとの喜劇】
211.『コイントス』
#twnovel「好き嫌いなんて不平等認めないから」俺の苦手な料理を差し出す彼女を前に、いつも通りコインを取り出し告げる。「表なら食べる、裏なら食べない」果たしてトスの結果は、表だった。「キミ勝負運ないねー」作っておきながらそう笑う彼女は、このコインには表しかないことを知らない。
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212.『総選挙』
#twnovel 18歳から投票できるようになり、今日になって娘が「誰に入れたらいい?」と聞いてきた。父親らしく「自分で考えなさい」と答えた。「わかんない。私、どっちかっていったら入れられる方だし」それはアイドルグループの一員だからって意味だよな決してチョメチョメな意味じゃ文字数
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213.『死票』
#twnovel …「死んでいるというだけで選挙権がないのは不当である」との世論を受け、ゾンビにも投票が認められてから初の選挙ですが、全国各地で、投票のためだけに死者を蘇らせるという動きがあるもようです。現時点ではこれを違法とする法的根拠がなく、今後の整備を望む声が高まっており…
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214.『ナイフを持つその本当の意味を』
#twnovel いつからかナイフを懐に忍ばせるようになった。ただ持っているだけで気が大きくなれた。やがて大切な人もでき、俺はもっと鋭いナイフを持たねばという焦燥感と、持っていることで悲しませるリスクを秤にかけて、ナイフを捨てた。まさか魅力がなくなったと言われるとは思わなかった。
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【ついのべ三題ったー「雪」「無差別」「無作為」】
215.『話しかけるのには理由がある』
#twnovel「無作為であっても無差別じゃない」雪を欺く肌と、それに見合うクールな知性を持つ彼女の話は、僕では聞き役にすらなれない。隣の席にいて申し訳ないといつも思っている。「例えるなら君のこと」へ?「偶然に任せたけど誰でもよかったわけじゃないってこと」何が?「バカ!」えぇ!?
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【twnvday2016/7/14 お題「GO」】
216.『UN』
#twnvday「どこにも行けませんよ」探偵は無慈悲に宣告した。「この暗号が解けるまではね」意味不明な文章から、不要な言葉を取り除く作業が続く。「言う、得ぬ、これを外せば…」そして遂に。「暗やみは晴れました。あとに残されたのは…」探偵が口にしたのは、誰もが待ち望んだ言葉だった。
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【ついのべ三題ったー「意識」「残業」「書簡」】
217.『置き手紙 ~終・残業スナイパー』
意識を集中していて気付かなかったが、デスクに書簡が置かれていた。守衛さんが持ってきたのだろうか。『拝啓。あなたを見つめていましたが、残業のし過ぎです。お体に気を付けて。先に上がらせて頂きます』不覚にもときめいた。一体誰が…#twnovel その日、一人のスナイパーが日本を発った。
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【「自転車」というお題で、10個のストーリー】
218.『終わりと始まり』
#twnovel 工場が自転車操業に陥って早数年。もうダメだと首を括りかけたところに「どうせなら換金させろ」と詐欺師が現れた。彼は俺が借金した闇金の仕業に偽装し、俺を工場と心中させた。借金はチャラになり、保険金は山分け。俺はこれから新しい人生を歩むことになる。たぶん詐欺師だろう。
219.『はじめての不信感』
#twnovel 自転車に乗れた日を、人は忘れない。そのとおりだと思う。私も初めて補助輪なしで走った瞬間のことをよく覚えている。「絶対放さないでね」と懇願したのに、手を放して笑っていた親。子どもはこのとき、大人は裏切るから身内でも信用できないという教訓を痛みと共に記憶に刻むのだ。
220.『異世界までチャリで来た』
#twnovel 敵将は戦慄していた。異世界から来たなどと戯言をぬかしているという男。馬にもろくに乗れぬと聞いていたが、そのような者が、騎馬ですら踏破できぬ険しい山道にあるこの陣地までどうやって――「チャリで来た」異世界人はそう言うと、担いでいた二輪の“何か”を敵将に叩きつけた。
221.『スリップストリーム』
#twnovel 彼はスリップストリームを得意とする競輪選手だ。その技の原点は幼少期にまで遡る。彼は決して引っ込み思案な少年ではなかったが、自転車に乗るときはいつも女の子の後ろをついていった。「スカートがね、めくれるんですよ。で、バレたら追い抜いて逃げる。これで鍛えられましたね」
222.『自転車に(黒)歴史あり』
#twnovel 中学生から使っていた自転車を、遂に下取りに出すことになった。こいつにはたくさんの思い出がある。ハマッてたアニメのステッカーを貼ったり、長い長い下り坂をブレーキ踏まずに下って怒られたり、好きな子の家の周りをひたすらぐるぐる走ったり…この手で処分できないのが残念だ…
223.『人力課金』
#twnovel 健康的にゲームをしようという風潮から、人力課金というシステムが導入された。登録ユーザーが自転車を漕いで稼いだ電力を会社が買い取り、代金を支払う代わりにゲームで優遇するというものだ。皆必死で、廃人ほどマッチョになる。何せ電気が集まらないとサーバーがダウンするから。
224.『無断駐輪×アート』
#twnovel 駅前の無断駐輪をなくすためアイデアを練り、シャッターアートのように良い方向で利用できないかと若者の力を借りることにした。「任せて下さい、前からやってみたいと思っていたことがあるんです」名乗りを上げた動画職人に委託した。数日後、彼は自転車でドミノをして逮捕された。
225.『今度こそどこまでも』
#twnovel 小さい頃、僕は自転車でどこまでも行けると思っていた。家出を決めたあの日も、君を後ろに乗せて連れて行くつもりでいたっけ。今となってはどれだけ無謀だったかがわかる。だから、今度からは後ろじゃなく、隣に乗ってくれないか。自転車に乗ってた頃から、ずいぶん待たせたけど…。
226.『口が悪い自転車屋』
#twnovel「またパンクさせたのか」子どもの頃から世話になっているオッサンが呆れたように言う。「太り過ぎなんだよ」「だから運動のためにチャリに乗ってるんじゃん」大人になってからは自転車に乗る機会も減った。だから…「だから無理すんなって言ってんだろ。身重なんだからよ」デスヨネ。
227.『都会の自転車』
#twnovel 自動車は車道と歩道どちらを走るべきか――その論争に終止符が打たれる時が来た。東京基準でだが…「一定以上の速度が出せない場合は、歩道を通ること。」なんだそりゃと思ったが実際に見て理解した。あいつら、自動車より早く走るんだな…。車追い越す時、超ベル鳴らしてたもん…。
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228.『BANG!BANG!蛮族』
#twnovel「リア充っぽいことをするぞ!」の一言で、泳ぎもしないのに水着になり家の庭でBBQをすることになった。皆リア充の口調など知らないので、大げさな身振り手振りで「ウェーイ!」や「ウィ~!」が飛び交う。半裸の連中が奇声を上げながら肉を焼く様は、もう蛮族感がハンパなかった。
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229.『海開き』
#twnovel 海開きの日。村の各地から海開き自慢が集まり、今年のモーゼを選ぶ祭りが始まる。出・故郷がかかっているため皆本気だ。都会で暮らそうと心に決めたパートナーを持つ若者がしのぎを削り合う。だが皮肉にも、この祭りの趣旨は、モーゼを優遇して都会行きを断念させることにあるのだ。
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230.『サイボーグ戦士』
「お前は平和のために生まれたサイボーグだ。悪のサイボーグを倒し、人類を救うのだ」「博士。悪のサイボーグを作り出した人類を滅ぼしてこそ、本当の平和が訪れるのでは」#twnovel 同じことを言い出したのはこれで9体目だ。やはりプログラムを「平和」から「正義」に書き換える他ないか…。
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【ついのべお題ったーマニアック「勇み足」「遺憾ながら」】
231.『グレートステップ』
『ここまで来てしまいましたか…遺憾ながら私はこの事実を報告しに去らねばなりません。この大きな一歩が、勇み足でないことを祈ります…』#twnovel「これが月面着陸の映像を地球で撮り直した理由?」「月には派遣された地球の守護者がいて、そいつをお役御免にしちまったなんて言えないだろ」
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【ついのべ三題ったー「タバコ」「流行」「タルト」】
232.『タバコのタルト』
#twnovel「タバコのタルト」なるものが流行しているらしい。ジャムの代わりに水タバコを使うというが、なるほどもともと果実系のフレーバーが主流のものなので合うのかもしれない。そう思って食べてみたが、味の方は…。どうやら流行の理由は、禁煙中でも吸いたい人の偽装工作の賜物のようだ。
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【ついのべ三題ったー「残業」「猫なで声」「乳」】
233.『疲れたときに現れる妖怪』
#twnovel 働き過ぎで遂におかしなものが見えるようになってきた。残業していると日付が変わる頃に「大丈夫?おっぱい揉む?」と猫なで声で訊いてくる女性がデスクの上に寝そべっているのだ。それが見たくて毎日残業しているようなものだが、何となく無限地獄のようなものにハマった感がある。
ご要望によりロリVer.もつくりました。
234.『疲れたときに現れる(ロリ)妖怪』
#twnovel 働き過ぎで遂におかしなものが見えるようになってきた。残業していると日付が変わる頃に「大丈夫?おっぱい揉む?」と猫なで声で訊いてくる幼女がデスクの上に寝そべっているのだ。揉むほどねーだろ!と思いつつ眺めるしかない。イエスロリコンノータッチの精神はこうして培われる。
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235.『もはや逃れられぬ』
#twnovel「君、それは妖怪の類だよ」残業中に『おっぱい揉む?』と訊いてくる女が見えると知人に話すと、そう断定された。「心が折れかけた孤独な社員の前に現れ取り憑くんだ。このままだと君は社畜になる」逃れるにはどうすれば…「実際に揉ませて貰えばいい」妖怪に?「いや彼女」ガッデム!
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236.『正体見たり』
スマホをかざして遊ぶアプリが流行している。僕の彼女が夢中なのは、人にかざすと画面ではバケモノになって見えるというもの。ほっとかれて残念がっているとスマホを見せてきた。「これ、あなたの正体だって」
#twnovel
本当に残念だ。アプリがなければ君のこともう少し生かしておけたのに。
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237.『三食かき氷生活』
朝はさっぱりと削った氷に醤油だけ。昼はひと手間をかけて削った氷におろし醤油。夜はちょっと豪勢に、削った氷に溶いた生卵に醤油を混ぜて…
#twnovel
「夏バテ以前の問題ですね。まあ、毎年珍しくはないですよ。せっかく買ったかき氷機のもとを取ろうとして、極端な食生活になる人は…」
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【ついのべお題ったーマニアック「死にたがり」「花冷え」】
238.『三ヶ月後の死にたがり』
#twnovel 社会に出たら辛くてすぐ死んでしまうと思っていた。こんなことなら…と自由だった学生時代にやり残したことへの未練を募らせていた。そんな調子だったから仕事でミスをしたのだが、それでも“死にはしない”とわかった。花冷えの季節のあの死にたがりは、今日も何とかやっています。
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《今日の献立報告シリーズ①》
239.『スイカソーメン』
#twnovel「今日のお昼はスイカソーメンですよ」「貰いものを一気に片付けようとするにしたって限度ってもんがあるだろ!」「失礼な。私の地元ではよく食べてたんですよ」「それ麺にスイカを練り込んでるとかだろ。めんつゆに雑にスイカが浮いてるなんて代物ではないはず…つゆも果汁かよ!?」
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240.『閉じ込められたゲーム世界に僕だけが出入りできる』
イベントの最中にVR世界からログアウト不能になりしばらく経った。皆が順応し始める中、僕だけはこっそりログアウトする。このことは皆には黙っている。#twnovel 崩落したイベント会場の救助作業はなかなか進んでいないようだ。僕の体もだいぶ弱ってきた。即死した皆のように、いずれ僕も…
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241.『怪獣の帰還』
#twnovel 長らく現れていなかった怪獣の襲来に、国中が色めきたった。逃げる者は我先にと実況しながら映像を配信し、通り過ぎた後には土産物屋ができる。この国のたくましさは知っているつもりだったが、元気そうで良かったよ。久々でも遠慮しなくてよいのだと悟り、怪獣は元気に火を噴いた。
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【酷いゲーム脳の科学者と狐憑きだと噂される巫女さん、どちらかの大切な人が犯人のサスペンス】
242.『二人の隠避者』
遂にやったか…。狐憑き巫女の噂が流れたのは、心神喪失状態を装って罪を免れるための布石だったのだ。俺のゲーム脳発言で捜査を撹乱せねば。#twnovel 遂にやったか…。ゲーム脳を研究していたのは、責任能力を問えない状態を習得し罪を免れる布石だったのだ。私の狐憑きで注意を逸らさねば。
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243.『平賀源内のうなぎエピソードは作り話らしい』
#twnovel「源内さん、夏に鰻を売りたいんだが何かいい案は…」「鰻を食べようってキャンペーンをすりゃいいんだよ」「きゃんぺ…よし、それじゃあ」「鰻を注文した客にはもれなく俺のエレキテルを体験しながら食べることができる電気ウナギキャンペーンを!」「普通に土用の丑の日に掛けるわ」