2016年6月分
№171~200
171.『衣替え警察』
#twnovel 動くな!衣替え警察だ!その春物の服、貴様まだ衣替えをしていないな!貴様のタンスから引っ張り出してきた去年の今頃着ていた夏服だ、着てみなさい!捨てるつもりだったとか、流行りがどうとかじゃない、『まだ』着られるかどうかだ。着てみろ!あっ逃げた!逃走!確保!確保ォー!
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172.『呪いの人形』
#twnovel 捨てても家に戻ってくる呪いの人形を持っていたことがある。迷子になったとき、私は人形に手がかりを持たせて、家族に自分の居場所を知らせようと試みた。捨てた人形は、家ではなく私のもとに戻ってきた。この役立たず、と泣きながら、私は迎えが来るまで人形をぎゅっと抱いていた。
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【ついのべお題ったーマニアック「ワールズエンド」「朝顔」】
173.『世界の果てに咲く花』
#twnovel 蔓をたどって世界の果てまでやって来たが、果たして幻と言われていた黒い朝顔はそこにあった。人目を忍んでひっそりと、七輪だけ咲いている。僕は震えが止まらなかった。これを持ち帰れば、花の形の通り喇叭を吹き鳴らすように告げることになるのだ。世界の終わりはここから始まる。
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【文中に「テレビ」を入れて「知りたい」をイメージ】
174.『ザッピング』
#twnovel 部屋から出ない生活がだいぶ続いたので、外の様子が気になってテレビを点ける。再放送ばかり。出演者が比較的新しい番組も、だいぶ前に収録したものを流しているだけ。生放送がひとつもない。地上がどうなっているのかまるでわからない。地下のシェルターでひとり、不安だけが募る。
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175.『本体電源』
#twnovel『就寝なさいますか?』「YES」『夢を見る場合は、本体の電源を入れたまま、レム睡眠モードをONにしてください』「NO」『かしこまりました。ノンレム睡眠モードにつき、本体の電源を落とします』そして俺の電源がOFFになる。自力で眠れなくなったのはいつからだったろうか。
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176.『医療用クローン』
#twnovel 私たちは医療用クローン。オリジナルの身体に不具合が出たときのスペアとして生まれる。私たちはその用途ゆえに、健康優良児として育てられる。オリジナルは皆、自分より優れている私たちの命を奪うことに意味を見出せずに、後を託して死んでいく。#医療用をつけるとなんかよさそう
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【文中に「手紙」を入れて、「後悔」をイメージ】
177.『私へ』
#twnovel『この手紙を残すのは、ひとえに、私の中の未練と折り合いをつけるためです。ああする他になかったとわかりつつも、なぜしてしまったのかと、失ったものを取り戻したい思いがあるからです。その迷いを、ここに綴っておきます。願わくば、この手紙を笑いとばしてください。未来の私へ』
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【お題ミックス 「逃げる」「マリオネット」×「情報」「支え」「液晶」】
178.『悩めるマリオネット』
#twnovel 自分がマリオネットだと気付いた時から、逃走劇は始まった。絡みつく糸を振り切り、逃げる、逃げる。その支えになったのは、携帯端末がくれる情報だ。液晶の向こうの誰かの言う通りにしなければ何もできなかった。やがて気づく。自由になったつもりで、新しい糸に絡まっただけだと。
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179.『ロックだろ?』
#twnovel 有名ロックスターの違法ドラッグ使用疑惑に対して、刑事たちは何年も前からロックオンしていた。いよいよガサ入れをする当日、彼の家にロックはかかっていなかった。踏み込むと、そこには粉末を水にも溶かさずキメてむせる彼の姿が…「ロックだろ?」ってやかましいわ。しょっぴけ。
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180.『早く進む時計』
#twnovel 時計が壊れたので、この機会に新調することにした。「生き急ぎたいので早く進む時計でお願いします」別に太く短い人生を望んでいるわけではない。ただ、時間に追われている。「確かにアレよりは早く生ききってしまいたいものだな」僕と店主は、世界終末時計を見上げる。残り、3分。
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181.『カメハメハ大王』
#twnovel カメハメハの意味は『孤独な人』。統一を成し遂げた大王が孤独?「成し遂げた時には、本当の理解者は誰もいなくなっている。偉業ってのはそういうものさ」なら、俺はまだ大したことはしてないってことだな。そう笑いかけながら、こいつを失うとしたらどんな時だろうと思いを馳せる。
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182.『地方の常識』
#twnovel オススメの昼食を、と頼まれたので案内すると「デタラメを言うな」と怒られる。「そば屋にラーメンがあるもんか」と。次に「こんな暑い日にラーメンが食えるか」と。ところがですね。そば屋にラーメンがあるのは当然で、ラーメンは冷たいんです。嘘だと思ったら、おいでませ山形県。
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183.『小学生までだよね』
#twnovel「えっ、経験まだなん?」恥ずかしながら。「テキトーに済ませといた方がいいよ。歳食ったらハードル上がるだけだから」彼の言う通りだった。小学生のときチートな助っ人と軽いノリで世界を救った彼に対し、僕に課せられたのはブラック企業体験記。社会に出てからの「主人公」は辛い。
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【twnvday2016/6/14 お題「半」】
184.『半分』
#twnvday 健康志向ブームを牽引する、カロリーハーフの食材を作るのに重要なのは「餌」からだ。ヘルシーな餌を与えることで、牛も豚もカロリーハーフな健康体を手に入れる。その家畜用の餌として、健康食品を卸す業者は語る。「これを人が食えば、半分以下の手間で健康になるんだろうけどね」
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【文中に「わずか」を入れて「後悔」をイメージ】
185.『SFではよくあること』
#twnovel 食料も燃料も残りわずか。宇宙船はいよいよ立ち往生の状況に陥っていた。「あのとき補給できていれば…」「悔やんでも仕方ない。こうなったら前に進むだけだ」わずかな可能性を信じて、やっとの思いで目的地に辿り着いた。だが…「ここがメッセージ送ってきた地球?死の星じゃん…」
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186.『八福神』
#twnovel「昔、七福神は俺を入れて八福神だったんだ」八の方が末広がりで縁起良いだろ、と僕に憑いた神は語る。彼は道具に宿る神で、物持ちの良い者を加護していた。それがケチと呼ばれるようになり、物を大事にしない者が増えてからは福の神の立場を降りたらしい。今の名前は、貧乏神と言う。
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187.『植えるってどのレベルから?』
砂漠化の進行を止めるための植樹は、とりあえず植えればいいわけではない。既に緑があるオアシスを見つけて、そこから広げていくのだ。だが、そのオアシスが見つからない。#twnovel「こうなったら日本のTV番組を招聘しよう。『無いなら作ろう』と言い出すアイドルがいるらしい…彼らなら…」
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【世界が終る頃に/これでおしまい/初めましてと傅く王の】
188.『世直し』
「これでおしまい」世界が終る頃にやって来た客人は、その一言ですべてを一蹴した。私を縛る鎖も、内に抱えた絶望も、何もかも暴れるがまま吹き飛ばして。#twnovel 閉ざされた世界から解放してくれた人の目の前で、私は傅いている。心中を悟り、私は白々しく挨拶した。「はじめまして、王様」
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189.『お父さん(今まで)ありがとう』
#twnovel「お隣のよしみで、父の日のプレゼント合同で割り勘にしない?」なんて娘だと思ったが、お金が浮くのは歓迎だった。で、実行したら隣のおじさんから「この義父と腹を割って話そう」と押しかけられ、今は奪っていく者として殴られている。なんだろう、よくわからんがハメられた感ある。
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190.『太陽に届く塔』
#twnovel 太陽神は、人間が「地球と太陽が最も近づく日」を心待ちにしていると聞いて感心した。何やら太陽へ届くように塔を造っているようだし、まだ信仰心が残っていたのかと。そして当日、人間は軌道エレベーターを通して大量のゴミを太陽という焼却炉に放り込んだ。崇める者はいなかった。
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【ついのべお題ったーマニアック「恋わずらい」「まどろみ」】
191.『すべてがわかるひと時』
#twnovel まどろみの時間は俺にいろんなことを教えてくれる。「ストロベリームーンを観よう」と誘われたのがどういう意味なのかとか。そもそも夜に一緒に居ようと言われて、承諾している自分の気持ちとか。今まで寝不足だった原因は、恋わずらいだったとか。起きたら忘れてるだろう、と、か…
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192.『無一文ダイエット』
#twnovel 財布を持たない「無一文ダイエット」が女性の間で流行している。買い食いをするお金がなければ太らないという寸法だ。どうしても食べたくなったら、誰かに奢ってもらう。このダイエットがユニークなのは、まず周囲の男性から痩せていく「破産ダイエット」とセットになっている点だ。
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【ついのべお題ったーマニアック「羽化」「ボーイミーツガール」】
193.『一晩の読み手』
#twnovel「『少女は蛹から一人の女となって羽化した』…ホラーじゃん!」「そりゃ比喩をそのまま受け取ったらな…」僕は小説を書き上げる度に、彼女を一晩買ってそれを読んで貰っている。「ねー、これのモデルとかってあるの?」再会したとき、夜の蝶になっていた君のことだよ…とは言えない。
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194.『あの日みたもの』
#twnovel そのとき見たものを、少年だった僕は円盤だと言い張った。流行りのUFOを見たことにしておきたかったのだ。本当は人の形をしていた。今ならその正体もわかる。こうやって空を飛んで、街を見下ろせるようになった今なら。あのとき、あなたも僕のことを見ていたんですか。父さん。
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195.『そこに受信機がある限り』
ひとりぼっちの惑星で、せめてどこかの誰かの声を拾おうとアンテナを設置してしばらく経った。まだ一度も受信はない。私はこの惑星どころか、宇宙でひとりぼっちなのでは…不安になっていたが、遂にメッセージを受信した。読み上げる。#twnovel「えぬえいちけー です じゅしんりょう を…」
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196.『「愛してる」とは言えないから①』
#twnovel 叶えたい夢があった。そのために都会に出たかった。その踏ん切りがつかない俺は『愛してる』の代わりに小狡い言葉を絞り出した。「君の方から、嫌いになってよ」と。彼女はきょとんとして「嫌いになったらついてってもいいの?」と言った。女って、男の自己満足を軽々しくぶち壊す。
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197.『「愛してる」とは言えないから②』
#twnovel 愛してるなんて、言ったこともなかった。ずっと一緒に居たのに、何だか気恥ずかしくて。いつの間にか、代わりに言ってくれる人を見つけてしまったんだね。「言わなくても伝わってたよ」そう言って腕をすり抜けていく彼女を「誰よりも、幸せになって」と送り出す。おめでとう、娘よ。
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198.『「愛してる」とは言えないから③』
#twnovel「貴方がもっと、最低な人間なら良かったのに」「それは聞き捨てならないな。“最”低と言うからにはそれはワーストのはずだ。なのに“もっと”最低? ワーストのもっと下などあるものか。」「じゃあ、貴方は最低の人間です」「……」「はいはい愛してる愛してる、あーめんどくさい」
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【文中に「見上げ」を入れて「悔しい」をイメージ】
199.『上へ上へと』
#twnovel この世界は階段を一歩ずつ、ずっと上っていくようなものだという。ふと下を見れば、自分より下がいることに安堵して足を止める。本当は足がすくんでしまうだけだ。「見上げてだけいられればいいんだけどね」そう嘯くアンタは、エスカレーターですいすい上っていく。こんちくしょう。
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【ついのべ三題ったー「責任」「一人」「アメンボ」】
200.『話が逸れる瞬間』
#twnovel 誰か一人が責任を取らねばならない。そんな時に目をつけられてもあいつは、何とか責任を取らせようとする手をかいくぐり、そしていよいよ逃げ場がなくなったという時には、『飛ぶ』。あいつのすいすいと社会を渡る様は、まさにアメンボ……ちょっと待った。え…アメンボって飛ぶの?