2021年2月分
№2021~2040
2021.『おにはそと』
#twnovel 真夜中に帰宅。さすがに子どもたちは寝ていた。「パパと豆まきするってがんばって起きてたのよ。もう済ませちゃったけど」そう言って妻も寝た。今年も節分をやり過ごして申し訳ないと思っている。裏腹に、今年も言われずに済んだとほっとする。俺はいつまで追い出されずにいられるだろうか。
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2022.『Highway Runway』
#twnovel 自分で編集した音楽データをカーステレオに突っ込んで「DJカノジョがご機嫌なナンバーをお届けします」とラジオごっこして、イントロ流れてるのに喋り続けたり曲の途中で「ここ!ここ!」と遮ったりでまともに聴けたことなかったから、いい機会だと静かに聴いても、君の声が耳に蘇るんだ。
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2023.『早朝のコインランドリーにて』
#twnovel Wi-Fiがないコインランドリーでスマホの電源を落とし、窓越しにぼんやり、朝焼けと時々通り過ぎていく車を眺める。いつも困っている人もいつも怒っている人も今はいない。洗濯が終わればまた電源を入れる。他者にライフをハックされようとも、手放せない、この万能感。大学生の頃に似ている。
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2024.『時代が追いついた』
#twnovel ぼっちでお越しのお客様、スマホばっかりいじって会話がないお客様、マイ箸・マイ調味料をお持ちの意識高い系のお客様、お釣りを受け取るとき手のひらを差し出さない愛想のないお客様、今までバックヤードで小馬鹿にしてきてごめんなさい。あなた方が感染症対策のトップランナーのようです。
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2025.
#twnovel「たかし君が病院から帰る途中、牛がモーと鳴いて通り過ぎ、蝶もとんでいきました。さて、たかし君が宣告された余命は何年だったでしょう」という「盲腸…って病名関係ねえ!」とツッコむためだけのボケに「もうちょっと」って存在しないはずの正解を与えたお前が、未来を切り開く希望なんだ。
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2026.『馬喰町』
#呟怖
ふと、地元の地名に疑問を覚えた。元々は宿場街で、このあたりでへばった馬を食べるのにちょうどいいから『馬喰町』だと聞いていたのに、馬肉料理の文化が無いのは変だと思った。まだ調べている途中だが、『馬喰町』の名がついたのは『東海道中膝栗毛』なるものが流行った頃だったのはわかった。
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2027.『サイレントマジョリティー』
#twnovel それは思いの丈を込めた140字だった。とても収まりきらないから、インパクトのある部分だけ掻い摘んだ。好き勝手言いたいことを言っただけのようで正確には伝わらないかもしれない。それでも炎上覚悟で「沈黙は賛同です」と添えて、タイムラインに投じた。うーん。そっかー。みんな賛同かー。
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2028.『退職代行サービス』
#twnovel はい、退職代行サービスです。ああ、済みましたか。今回は流石に代行はできず、筋書きの提供のみで失礼いたしました。ええ、うまくいってようございました。みんな、あんなに決断を迫っていたのに、失言ですぐ辞めろの大合唱でしたね。まあ決断は後任に預けましょう。まずはお疲れ様でした。
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【twnvday2021/2/14 お題「チョコレート」】
2029.
#twnvday 地震、うちの被害は大したことなかった。食器がいくつかと、チョコが割れただけ。片づけていると『大丈夫?火傷した?』とLINE。なぜに。『チョコ作ってるかと思って…』の後に『誰のか知らんけど』と弱気な言葉が続いた。仕方ない、もう一つ作ってくれてやるか。贈る相手は変わらないけど。
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2030.
#twnovel「ホントは昨日だけのサービスだったんですけど」そう前置きして、彼女は俺の手に、チョコ菓子の入った小さいビニールの袋を握らせた。『ご来店ありがとうございます』のメモもあった。ふわふわした気持ちで買い物をマイバッグに詰めていたら、俺の次の客にも昨日だけのサービスをやっていた。
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2031.
#twnovel 郵便受けにチョコが入れられていた。相手は一人しか思い浮かばない。ずいぶん会っていないが、近くまで来ていたのか。このまま昔の良い思い出に浸るか、金属バットを持って辺りを探し回って踏み倒した借金を返せと迫るか、貰った『不義理チョコ』のビターな甘さを噛みしめながら考えていた。
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【お題「言わなくてもわかるから」】
2032.
#twnovel 手際が悪い、順番が違う、仕事がおざなり、とかせっかくやる気出してるっていうのに自覚してるよそんなこと、言わなくてもわかるから。なんつって。盾突いたりしませんよ、ハイハイゴメンゴメンとぼやきながらやるだけです。後で絶対にめんどくさいことになるって、言わなくてもわかるから。
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【お題「変化球は得意じゃないんだ」】
2033.
#twnovel 打者に緊張が走る。俺は、変化球を打つのは得意じゃない。投手にも緊張が走る。相手が変化球を苦手とするのは知っているが、俺も、変化球を投げるのは得意じゃない。それを知ってなお捕手は、冷静に変化球のサインを出した。実は俺も、変化球を捕るのは得意じゃないが何とかなるだろ…あっ。
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2034.『変遷』
#小説を書く理由はなんですか見た人も答えるんだ
「小説が好きだから」「読者を楽しませたいから」「どうしても伝えたいメッセージがある」「世の中を変えたい」「本当は詐欺師になりたかったけど捕まってしまうのでその代わりに」
#twnovel
「この作家、質問に答えるたびに不穏になっていくな…」
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2035.
#呟怖
リコールの署名、故人の名前が多くあったそうですね。そして発起人は知らないと言っている。それが本当なら危険な状態です。今回は届かなかったから事なきを得たものの、故人の声が増えていけばどうなるか。あなたがこれまで何をやってきたのか知りませんが、これは、あの世からの呼び声ですよ。
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【お題『君の「大丈夫」が、大嫌い』】
2036.『大丈夫と言って、だいじょばないことを』
#twnovel 根拠もないのに「大丈夫」と言って、雲行きが怪しくなったら皆に語りかける「大丈夫」に自分のことは含まれてなくて、やっぱりだいじょばなくて一人だけ傷ついた君に差し伸べた手を「大丈夫」と振り払う。なのに私がそれを悲しむと「大丈夫」と訊いてくる。そんな、君の「大丈夫」が大嫌い。
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2037.『ノーマスク運動』
「そろそろマスク外そうぜ」
#twnovel
おい待て、何で外そうとしてるんだ。あんな戯言を真に受けたのか。よく見てろ。ほら、外して名乗り出た奴が連れていかれた。俺たちを炙り出すための罠なんだよ。ヒーローがマスクで顔を隠さないといけないのは、法で許されない行為をしているからでもあるんだぜ。
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【『灯台』を舞台に、『自転車』と『ノコギリ』と『地球外生命体』の内二つをテーマにした話】
2038.
#twnovel 夜更けに自転車を灯台まで走らせ、その壁面にノコギリの歯を入れる。この古い石造の灯台を削ると、砂金が出ると噂を聞いたのだ。ギーコ、ギーコと削りカスを生み出す。咳、息切れ。自転車をこいだせいか。後から原因がわかったが、経緯が経緯だけに言い出せなかった。まさかアスベストとは。
2039.『B級映画大戦』
#twnovel「おい!危ないから灯台には近づくなって言われてるだろ!」だから行くんだよ。それ以外に、俺たちを追ってくる地球外生命体をどうにかする術はない。奴らが乗ったUFOは灯台よりも強烈な光で俺たちを照らし出す。その光に惹かれたかのように、海中から飛び上がったノコギリザメがUFOを貫いた。
2040.
#twnovel あの映画っぽくていいじゃん。そう思って自転車のカゴに乗せて連れてきたけど、彼が行きたがっていた灯台とは、この町の灯台のことではなかったらしい。細長い指が示す先を見ながら、そっかー宇宙人にとってはあれが灯台なのか、と溜息をついた。北極星って自転車で行けるものなんだろうか。




