2020年10月分
№1869~1909
1869.『つながらない夜』
#twnovel ツイッターの調子がおかしい。せっかく全国各地からアップされる中秋の名月を楽しもうと思っていたのに。窓を開ける。見上げる月はやっぱり見劣りする。でも、これが俺にしか見られない月なんだよな。ツイッターが復旧しても、開かずに寝ることにした。月がきれいですね。寝言のように呟く。
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1870.『大事にするのは手放すため』
#twnovel 早朝に目が覚めた。ので、部屋の掃除をする。本当は早く起きたのではなく、愚痴をきいてという彼女に、優しくしなきゃと思って付き合って、案の定寝付けなかった。アパートをきれいにしておくモチベは、いつかは出て行く場所だから。別れるかもな、と思いながら、ごみ箱にちりとりを傾ける。
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1871.『不正受給』
#twnovel「魔王が活動自粛しているからモンスターと戦えない」勇者と、「勇者が活動自粛しているからモンスターが戦えない」魔王が、それを理由に持続化給付金を申請していた件について、国は「示し会わせて不正受給しようとした疑いがある」として、この申請を却下したと発表。
#ファンタジー社会問題
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1872.『貌』
#twnovel 君のすっぴんはきれいだよ。前に、励ますつもりでそう言ったときは怒られて、わけがわからずムッとした。でも、カーテンの隙間から差し込む光で、ぼんやり浮かんだ君の輪郭。その貌をきれいだと言ったのはきっと僕の本心だと思う。性懲りもなく君に怒られても、こうして笑っていられるから。
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1873.『背広の模様』
#twnovel 衣替えとなり、約半年ぶりに新人くんの背広姿を見るが…なんか、お洒落になった?「柄つきの背広、新しく買ったの?」「え?春に着てたのと同じですけど。ずっとクローゼットに入れてたのを今朝出して」夏の間、一度も出さずに。まさかと思って模様を間近で見て、理解した。「これカビだわ」
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【本日のログインボーナスは「お寿司詰め合わせ」です。】
1874.『ソーシャルディスタンス』
#twnovel 座れる席の数が少ないのもソーシャルディスタンス、流れてくる皿の間隔がやたら長いのもソーシャルディスタンス、板前が顔を見せないのもソーシャルディスタンスで仕方ないと思ってきたが、おみやげのお寿司詰め合わせが詰めないでスカスカなのはソーシャルディスタンスじゃ済まされねえぞ。
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1875.『疲れは水溶性』
#twnovel 疲れは水溶性。そう言われると、昔の彼女を思い出す。銭湯に行き、いっしょに出ようねなんて言っていたのに、彼女が女湯の暖簾から出てくることはなかった。僕らは当時、互いに疲れていた。だから溶けてしまったのだろうか。雑踏の中をひとり歩いていると、溶けたのは僕の方か、と時々思う。
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【本日のログインボーナスは「食パン」です。】
1876.
#twnovel 出会いが欲しいと嘆く私に与えられたのは食パン。咥えて走れということか、やってやろうじゃん。そんな夢を見たのが昨日。今朝も食パンはこんがり焼けて美味しい。私、食パンと朝の惰眠があれば他に何もいらない。何か、夢を見たのは昨日じゃなく、昨日の昨日の昨日で…ずっと前な気がする。
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1877.
国勢調査の〆切今日までじゃん!TLで誰も言わないからスルーするところだった。つーかフォロワーたち大丈夫か、誰もやったってツイートしてねーぞフォロワー!#twnovel イキって呼びかけたら「とっくに終わってるから今更ツイートしない」「そんな当たり前のことでツイートしない」と返され無事死亡。
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【本日のログインボーナスは「傘」です。】
1878.
#twnovel 雨の中、捨てられていた私を拾ってくれたあなた。折れた骨を直し、開いた穴を塞いでくれたあなた。これからはあなたの役に立とうと思っていたら『みんなのもの』として置いていかれました。巡り巡っていつか恩返ししたいけど、あの日も、雨だというのに、あなたは傘を差してなかったですね。
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【本日のログインボーナスは「ワイン」です。】
1879.
#twnovel ワインを最初に口にしたときのがっかり感は、たぶん思い描いていた「ぶどう酒」って感じの甘い味ではなかったからだ。これで充分とぶどうジュースを焼酎で割っていたら、いつからかワインも普通に飲めるようになっていた。何でだろう。焼酎の割合がだんだん増えていることに関係があるのか。
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1880.『真紅の劇場』
#twnovel 今日も真紅の劇場の幕が開く。支配人の私が世界中で見聞きした、物語の演目はよりどりみどり。湖の気球操縦士、黄金の囚人、悲運の御者。しかし彼らは、世界中のどこを探してもこの劇場にしかいない。だって、結局はどれもなりきった私だからね。ここは真紅の劇場。真っ赤なウソをご覧あれ。
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1881.
#twnovel 国勢調査に黒塗りで御回答いただいた皆様。御存じのとおり、皆様からは罰金を徴収いたしまして、第二回の給付金の財源として、きちんと御回答いただいた方のために大切に使わせていただきます。徴収は第一回の給付金の際に申請いただいた口座から自動的に行います。ありがとうございました。
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1882.
#twnovel かわいさ余って憎さ百倍くらいに手がかかるのに、なんで猫なんか飼ってるんだ。しんどい、しにたいが口癖のお前がよ。代わりに雑事をしてやっている合間に問うと、やはり死にそうな声で「私が死んだら誰がお世話するんだと思うから」と答えた。なるほど、俺がお前に思っていることと同じか。
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【#このお題で呟怖をください「コロコロ」】
1883.
#呟怖
ころころ。カーペットの上にクリーナーを転がす。ころころ。抜けた髪の毛が貼りつく。短い。全部、俺のだ。足ふきマット、布団、どこに何回転がしても、俺のものしか見つからない。確かにいたはずなんだ、この部屋に。ずっと。俺はあの手触りを覚えているのに。どうして一本も残ってないんだよ。
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1884.
#twnovel マッサージ店って大人の店なんだよな。親に連れられていった飯屋や床屋にずるずる通うってのはあるけど、マッサージが必要なほどの疲れがたまるのは大人になってからだろ。だから、自力で探さないとってところが、恋人探しと同じなんだよ。あ、いや、その。普通の、マッサージ店の、話だよ。
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1885.
#twnovel 知っていたわ、あなたが夜な夜な活動している【正義の味方】だってことは。私と会うとき、いつも思いつめた顔をしていたんだもの。きっと、自分に幸せになる資格があるのか悩んでいたのでしょう。でもそれだけだった。自分の、しかも目先のことでしか悩むことがないなんて、おめでたい人ね。
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【本日のログインボーナスは「一日だけ鳥になれる薬」です。】
1886.
#twnovel 冗談で買った一日だけ鳥になれる薬、その効能を俺が確かめることはなかった。同居人といっしょに消えてしまったからだ。相談ぐらいしてくれれば良かったのに。言っても仕方がない、あいつは、自由な鳥になることを選んだんだ。しんみりするが、それでも焼き鳥を食べるのはやめられなかった。
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【twnvday2020/10/14 お題「山」】
1887.
#twnvday どうもこの土地の人々は、自己評価が異様に低い。地元のいいところを聞いても、誰もが「わかんね」と言った。「四方八方が山に囲まれてんべ」ええ、壮観ですね。それがいいところですか。「んね。ここで生きてると、いつも見下されてる気になって窮屈なんだ」山にマウントとられる山形県…。
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1888.
#twnovel「この御時世だから市場の競りにもオンラインを導入したんだ」「じいさんたち、ちゃんと使えたの?」「不安だったけど全員ばっちりだった」「競りへの熱量すごいな」「それどころか、教えてないのに相手を蹴り出す方法を全員覚えてきてて、初手で蹴り合いが発生した」「競りへの熱量すごいな」
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【本日のログインボーナスは「好きそうな小説」です。】
1889.
#twnovel 音楽や映画と違って、趣味:読書は出会いがない。だから「好きそうだったから、貸す」とクラスメイトに渡された小説の取り扱いに困る。いったいどうしたらいいのかと悶々と読み進め読了した勢いで自転車を走らせ、夜分遅くに窓辺の彼女へ「僕も好きです」と叫んだ。LINEを交換してもらった。
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【#サカイメの書架応募 お題「笑顔」】
1890.『だましだまし』
人をだますにはまず笑顔から。笑顔は警戒を解く。笑顔でいれば大したことじゃないと誤解してくれる。笑顔は万能。と、そんな御託を並べる前にだまさないといけない相手がいる。ぼんやりした顔を見つめ、口の端を持ち上げて、鏡の前でにっこり。よし、なんだかたのしくなってきた。
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【#サカイメの書架応募 お題「雨の日」】
1891.『使わない傘』
雨の日は相合傘のチャンスだ。私が傘を持ってないふりをして話しかけると、彼は2本持っていると言った。あ、そう…だけど、私たちは1本の傘の下にいる。何でそっちは使わないの。まさか、相合傘したくて…?「いや、これは使えないんだ。アバンストラッシュ用だから」あ、そう。
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【#サカイメの書架応募 お題「今年の終わりに」】
1892.『手軽な年末年始』
今年の仕事納めはテレワークだった。正月の帰省はリモート。初詣もオンラインで、タップでバーチャル除夜の鐘を鳴らし電子マネーでお賽銭。年越しそばとおせちは出前取り寄せ。年の瀬は一歩も外に出ない環境が整った。ところで大掃除をお手軽に済ませるシステムはまだでしょうか。
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1893.
#twnovel 安いのにでかいと聞いていたから期待していたのに、何だこのからあげは。肉は大ボリューム、さっと揚げているから油っこくなくて肉汁がとってもジューシーじゃないか。それの何が悪いのかって。俺はな、大きさをころもで嵩まししたカリカリのからあげが、いや、ころもが食べたかったんだよ…
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1894.
#twnovel 俺だって「絶対盗む泥棒」と呼ばれた男だ、手ぶらじゃ帰れねえ。しかし目の前の職人に盗むほどのワザがあるとは思えなかった。意地になって観察し続けると、奥深いもので、素人では気付かない繊細な技術が確かにあった。ざまあみろ、盗んでやったぜ。墓前に報告する。後は任せてくれ、師匠。
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【#このお題で呟怖をください 「闇鍋」】
1895.
#呟怖
鍋を囲めばもう家族だ。家族になろう。そう言われてここに来た。俺たちの目の前では、具の入っていない鍋がぐつぐつと煮えている。俺たちは謝罪するつもりで来た。頭を下げた先に鍋があるのは、つまり。ちらりと視線を遣ると、家族になるであろう人は「お前らテープ回してないやろな」と嗤った。
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1896.
#twnovel「やめたいって、もう本番一週間前じゃないすか」「…昨日、オリオン座流星群あったろ。『今年は月明かりに邪魔されなくてよかった』って聞いてさ。俺、ほんとに、二回目の中秋の名月として出ていっていいのかな…」「そんな気にせんでも。地球人も言ったこと忘れて月見バーガー食ってますよ」
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【本日のログインボーナスは「大根」です。】
1897.
#twnovel 大根おろしは、優しい気持ちで擦りおろすと甘くなり、イライラした気分で擦りおろすと辛くなる。そんなバカなと思っていたけど、この結果がすべてということか。仰るとおり、あの人の大根おろしは私が用意しました。殺意を込めて擦りおろしたから、毒にでもなったんでしょうかね、刑事さん。
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1898.
#twnovel 精密検査で女性の先生にあたったときは、こんな美人にだらしない体を晒すのかと凹んだものだが、だからこそこのままではいけないと一念発起。先生、前回の検診から鍛え上げ、貴女のために生まれ変わったこの健康体を見てください!「すごいです!じゃあ次からは来なくてもいいですね」あっ。
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1899.
#twnovel すずめのお宿でもてなされたおじいさんは、お土産に小さな箱を選びました。それに怒った欲張りおばあさんは、すずめのお宿に押しかけて大きな箱を開けました。それはライフルケースでした。震えるおばあさんにすずめが囀ります。見たからには、ただでは帰せない。#全米ライフル協会力高い童話
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1900.
#twnovel イベント当日は見事に天気のいい日にあたった。来場するとちょうど混んでいなくて駐車や手続きがスムーズな時間帯にあたった。なんと抽選会で豪華賞品にまであたった。そう、私は今日ここまであたり続けている。だからこそ、とても美味しそうなのだが、賞品の牡蠣を食べるのが、その、怖い。
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1901.
#twnovel 吹雪の夜に訪れた娘は家に居着き、部屋に籠って「仕事」を始めました。開けないように言われていた戸を開けると、そこには狙撃銃があり、その銃口は、かつて自分が仕掛けた罠の場所を向いてました。猟師はやっと気付きました。娘の正体と、目的と、背後の気配に。#全米ライフル協会力高い童話
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【本日のログインボーナスは「ハムスター」です。】
1902.
#twnovel いつからだろう、俺にしか見えないハムスターがちょろちょろし始めたのは。そいつは俺のことを全肯定してくれる。背中を押されて何でも乗り切ってきた。だから今回もそのとおりなのだって言ってくれ。お前が肯けば俺はデスマーチを続けられるんだ。何で首を横に振るんだよ。ねえ、ハム野郎。
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1903.
#twnovel 彼女が俺の車をダサいと言った。そりゃ中古で軽だけど、乗ってみれば良さがわかるって。説得しても「死んでも乗らない」と言っていたけど、何とか乗せた。これが最後のドライブかと黄昏れながら山道を走る。山間部で彼女を降ろす。トランクの乗り心地はどうだった。返事はない。放り投げる。
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1904.『名前がいっぱいあるアイツ』
#twnovel「今川焼き、大判焼き、回転焼き…いろんなところに行って、いろんな名前で呼ばれたわ。もうあなたの知っている私じゃないのよ」「そんなことない…俺にとって、お前はあじまんだよ!」「ふふ、懐かしい名前…でもね、ここは山形じゃないの。次にそう呼ばれても、私はきっと振り向かないわ…」
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【#twTorT/Trickお題「つき」】
1905.
#twTorT 去年のハロウィンは見惚れるほどきれいな月が浮かんでいた。今年はちょうど中秋の名月にあたるなんて、僕たちを祝福しているようじゃないか。仮装どころじゃなくて人もまばらな街中で、僕は歩道橋の上から「きれいですね」と叫んだ。月は照れたように雲に隠れた。ちょっとからかいすぎたかな。
1906.『初参加です』
#twTorT 前からハロウィンには興味があったが、夜がメインのイベントだから自分には縁がないものだと諦めていた。そんなときに「今年は代わりに出てみないか」と誘われた。46年ぶりの満月のハロウィン。確かにこれなら仮装は難しくない。ドキドキしながら、ぐっと輝きを抑えて、太陽は月のふりをする。
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【#twTorT/Treatお題「ごちそう」】
1907.
#twTorT コロナ禍ということで今年のハロウィンはオンライン。毎年ワンパターンな仮装で出歩いていたメンバーと各々が用意したごちそうを食べるのだ。かぼちゃ料理を用意してカメラの前に座り、皆の様子を見て、すぐ退出した。どれも、人間が食うようなものじゃ、なかったような。戸が叩かれる。強く。
1908.
#twTorT ハッピーハロウィン!と料理を並べると、暗く沈んでいた子どもたちの表情はぱっと輝いた。どうせ苦手なカボチャ料理ばかりだと思い込んでいたのに、カボチャは影も形もなかったからだ。ごちそうだと言って、残さず食べてくれて嬉しい。がんばって化けさせた甲斐があった。ハッピーハロウィン!
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1909.
#twnovel 二度寝したい微睡から這い出て洗濯のためコインランドリーへと車を出す。霧の中を走っているとすべてを放って逃げ出したい気分になるが、本を読んで乾燥を待っているうちに霧は晴れてしまう。部屋に戻り、冷えた布団を畳んで、その間に淹れたコーヒーの香りと霧の名残を吸い込んでむせる朝。
あと91篇。




