2020年7月分
№1745~1785
1745.『空白の二週間』
#twnovel 新型ウイルスの感染者が「ここ二週間の記憶がない」と供述。その間、失踪していたようだし、知られては困る感染経路を隠すつもりだろう。取り調べられたが、どうやら記憶がないのは本当のようだ。一方、ふらふら飛ぶ未確認飛行物体が目撃され、墜落。乗っていた宇宙人からは陽性反応が出た。
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1746.『スプーンはどこへ消えた』
#twnovel「スプーンがないよ。手で食べればいいの?」ちょっと冗談を言っただけなのに、大変なことになった。妻は「はぁ?」と睨んできて、手本を見せるようにカレーを素手でガツガツ食べ始めた。恐ろしくなって家を飛び出す。この世からスプーンが消えた。スプーンを覚えているのは俺だけに違いない。
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1747.
#twnovel「スプーンがないよ」メインディッシュはこれからだとぬかした対戦相手に、俺はそう返した。武器を持っていないことを揶揄して。ナメられてるのかと思ったが、奴と目を合わせてすべて悟った。武器を捨て、ファイティングポーズを構えると口からは笑みと軽口が零れる。「手で食べればいいの?」
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1748.
#twnovel 全国を旅して回っているというドライバーに出会った。どうして旅を、と尋ねる僕に、彼はETCカードを掲げる。「俺の仲間は、走ってる最中に高速道路をETCカード専用にされちまった。だからこれを手渡して、高速から降ろしてやるのさ」走り去る彼を見送りつつ、僕はETCカードの期限を確認した。
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【ついのべ三題ったー「ノイズ」「火星」「カマキリ」】
1749.
#twnovel 観測用の人工衛星が火星から妙なノイズを拾うようになった。故障にしては規則的で、これはある種の信号であり、長らく探し続けていた火星の生命体から発せられているのではと気運が高まる。いったいどんな生き物がいるというのか。解読した内容を読み上げる。
おう なつだぜ
おう あついぜ
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【「意図せず漏れた溜息に、傍らのその人が顔を上げた」で始まり「そんな思い出が今でも心臓を刺すのだ」で終わるお話】
1750.
#twnovel 意図せず漏れた溜息に、傍らのその人が顔を上げた。溜息をつくと幸せが逃げていくよ、なんて物知り顔で言ってくるけど、じゃあ溜息をガマンしたら行かないでくれますか、という僕の精一杯の言葉は笑って流された。その人が溜息をつくことはなかった。そんな思い出が今でも心臓を刺すのだ。
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1751.
#twnovel「ラタトゥイユ君、会議は終わったはずだが」「納得いきません!何であの面子で、私が朝食選抜に落ちるんですか!」「オレオとチリソースはセット、汁気はとんこつ麺で足りている」「でもコーヒーはともかく酒は…」「今日は休日だ」「!」「朝から飲む、その自由に思い至らない君は未熟だよ」
※画像に添えさせていただいたついのべです。
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【『倉庫』を舞台に、『白黒』と『煉瓦』と『強風』の内二つをテーマにした話】
1752.『現代アート』
#twnovel 芸術家のアトリエ兼倉庫は、白と黒のレンガで造られていた。やばそうだなと思っていた矢先、人種問題を想起させるといちゃもんをつけられ、倉庫は壊された。跡地には、残骸がQRコードのように並んでいて、読み込むと倉庫に寄せられた誹謗中傷コメントのまとめページ。ここまでが作品なのか。
1753.
#twnovel 修業した狼にとって、レンガの家など問題ではなかった。後のない子豚サイドは最終兵器を投入、イナバの物置だ。その特性を利用して、屋根に百人乗せた状態で挑むという掟破りを仕掛けてきたのだ。何も言わず、深呼吸を始める狼。ここまで狼に肩入れしたくなる三匹のこぶたがあっただろうか。
1754.
#twnovel 風は止みそうにない。嵐がくる前に白黒つけようじゃないか、この倉庫の中で起こった事件の犯人を。いや、事件といっても大したことじゃない、怒ってないから出ておいで。犯人がいないと困る。外から鍵がかかって倉庫に閉じ込められた俺を、もし風で勝手に閉まっただけなら誰が助けるのだ。
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1755.
#twnovel「えっ宣言解除っすか」今年は緊急事態宣言で、まず逢瀬はないだろうと踏んでいた織姫と彦星は焦った。とっくに別の予定を入れていたのだ。あとは当日の天気次第だが――例年通り、雨。残念無念と心にもないことを言うと「リモート逢瀬という手がある!」との提案。何でそんなに会わせたいの。
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【「結婚したんだ」という台詞で始まり「笑顔からこぼれ落ちる涙が光を纏って美しいと思った」で終わるお話】
1756.
#twnovel「結婚したんだ」何のことだ、誰に言っているのだと思ったら、パソコンの画面をぼうっと眺めていた。芸能人の話だろうか。それから魂が抜けたように夜を過ごし、朝日が差し込む頃にようやく「おめでとう」と口にした。受け入れられたのか。笑顔からこぼれ落ちる涙が光を纏って美しいと思った。
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1757.
#twnovel TLが賑わしいからポテトサラダを買ってきてしまった。狂ったように食べ続けていた時期を思い出す。レンジでチンすら億劫になっていたあの頃。冷たくても美味しいポテサラは救いだった。温かい食事なんかなくてもやっていけるさ。そう唱えながら、故郷を想って流した涙はやたらと熱かった。
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【「今世紀最大の一大事だ」で始まり「繋いだ手は今度こそ振り払われずに、きゅっと握り返された」で終わるお話】
1758.
#twnovel 今世紀最大の一大事だ。2000年にパソコンが予想もつかないエラーを出してそれを防ごうとする僕らはアンゴルモアの大王に狙われていて安全のために家族を突き放した。パパの時間はそこで止まってるんだね。お陰様で、何にもないよ。繋いだ手は今度こそ振り払われずに、きゅっと握り返された。
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【「意図せず漏れた溜息に、傍らのその人が顔を上げた」で始まり「銀色の指輪が朝日を反射して眩しかった」で終わるお話】
1759.
#twnovel 意図せず漏れた溜息に、傍らのその人が顔を上げた。「後悔してる?」そりゃそうでしょ。高価かったんですよ。「でもソレを使いまわすのはねえ?」わかってますよ。これがこっ酷くフられた僕に寄り添ってくれた貴女への誠意だオラァ!太陽に投げ捨てた銀色の指輪が朝日を反射して眩しかった。
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1760.
#twnovel 士農工商というが、山形において最も地位が高いのは農家である。さくらんぼ獲るぞと農家が一声かければ、武士もとい公務員すら無給で駆り出される。夏は暑く冬は寒い、そんな人間が住むのに適さない地で育った甘い果実には、尽くすだけの価値がある。訂正。一番偉いのは果物様にございます。
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【#サカイメの書架応募 お題「靴」】
1761.
大学生のとき中古車を買ってもらった。田舎では生活必需品。靴みたいに使い潰してなんぼだと思っていたけど、やがてまめに洗車するようになり、車検のたびに替え時だと妻や車屋に言われると悲しくなる。ボロになった靴をまだ履くのと言っている我が子に、自分を重ねて頭を撫でた。
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【#サカイメの書架応募 お題「絵」】
1762.
君を苦笑いさせるのは何度目だろう。何かと理由をつけては、僕は「納得がいかない」と芸術家ぶって君の絵を描き直した。君の幸せな笑顔をキャンパスに描くたびに、きっと僕なんかいなくても生きていけるんだろうと思ってしまって。何年経っても、僕は君の隣に、僕を描けずにいる。
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1763.
#twnovel「山形は初めてか?なら『冷やしラーメン』と『冷たいラーメン』の違いに気を付けな。『冷やし』は県政が推し進める名前、『冷たい』は従来の呼び名。恭順派と抵抗派を組織して睨み合っている。メニュー通りに注文しないと空気が凍るぞ。ローソンでファミチキくださいって言うようなもんさ…」
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【twnvday2020/7/14 お題「隕石」】
1764.
#twnvday 隕石みたいな奴だった。惹かれたなんて寄ってきて、こっちを散々ざわめかせて。これで世界が終わってもいいと覚悟を決めて受け止めたときには、燃え尽きてどこにもいない。世界なんてこれくらいじゃ終わらないことを教えて、ただ心にクレーターを空けていく。そんな、隕石みたいな奴だった。
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【「今世紀最大の一大事だ」で始まり「ふと思い付いて、ごく自然に筆を執った」で終わるお話】
1765.
今世紀最大の一大事だ。それくらい面白いアイデアだったはずなのに、あっさりと頭から消えてしまった。もうやだ書けない。でも様子を見に来るんだよな。スマホ片手にごろごろ、作家の姿かこれが。何とか誤魔化すため、例のポーズで固まることにした。
#twnovel ふと思い付いて、ごく自然に筆を執った。
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1766.
#twnovel クレーマーへの対応にうんざりして「色々あるんです」とつい零したら「そうか…色々あるのか…」と去っていった。何でそんな物分かりのいい人がクレームをとか色々で済んでしまったあれこれの行き場がなくて居心地悪いとかぐるぐる考えてたら「どうしたの?」と君の声。いや…色々あってね。
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【『坂道』を舞台に、『白黒』と『拳銃』と『鋼鉄』の内二つをテーマにした話】
1767.
#twnovel あの坂道が勝負。ピストルが鳴る前から皆がわかっているはずだ。俺は堅実な追い上げるマラソンを、アイツはやりきった充足感が欲しくて最初からとばすマラソンをしている。あの坂道で俺はアイツを抜かすだろう。だけど、ああ。そのとき、アイツの白も黒もない笑顔を視界に入れるのが憂鬱だ。
1768.
#twnovel 銃を抜く暇もなかった。俺もガンマンの端くれ、決闘には憧れるが、あんな思いはもう御免だね。鉄の棺桶の肌触りを間近に感じたよ。ここで逃げたら人生下り坂だと思ったが、こうして上ってるってことは、俺は逃げなかったのかな。銃を抜く暇もなかったけどさ、俺は前向いて死んだかい天使様。
1769.
#twnovel「なぜお前のマシンだけ鋼鉄合体に間に合わない?」「基地からの坂道発進がキツイからですよ…いい加減オートマにしてください」「ダメだ。お前のマシンはパトカーモチーフ、パトカーといえばマニュアルだ」「今は全部オートマですよ!つーか結局ロボになったら関係ないのに何そのこだわり!」
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1770.
#twnovel 転生先の異世界では争いが絶えない。武力以外の解決方法を示すため、俺は前世の知識でカードゲームを再現し、普及させた。これですべての争いをカードバトルで解決する平和な世界になるだろう。街に繰り出すと、皆はカードデッキのカドで殴り合っていた。そういやルールの翻訳してなかった。
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1771.
#twnovel 初めてやり込んだゲームはRPG。ニューゲームのたびに「いってらっしゃい」とだけ言う村人に話しかけるのが習慣だった。たまにはただいまをしてみるかとニューゲームの前に村に戻って話かけてみる。「ありがとう」と台詞が変化。スタッフの粋な計らいか。「きみはようずみだ」ラスボスだった。
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1772.
友人の披露宴に全裸で出席したら怒られた話。#twnovel「…確かに招待状には『礼装じゃなくていいです。新郎新婦もはっちゃけるので!』とは書いたよ。でも全裸はないだろ」控え室に呼ばれて正座させられ、神妙に聴く。申し訳ないと思っている。「新郎新婦のお色直しが全裸の可能性を考えなかったのか」
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【「こんなところで、どうしたの」という台詞で始まり「濡れた睫毛がゆっくりと下を向いた」で終わるお話】
1773.
#twnovel「こんなところで、どうしたの」こんなところとは何だ、こんな路地裏でも俺が最期を迎える場所なんだぜ、そんなにゆするんじゃねえ、逆に血が溢れるだろうが。もうほっとけ、雨なんだから風邪ひくぞ…なんてしゃべり出しそうな顔をそんなわけないと撫でる。濡れた睫毛がゆっくりと下を向いた。
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【『橋の上』を舞台に、『緑色』と『恋心』と『対決』の内二つをテーマにした話】
1774.
#twnovel シグナルが緑になる直前、僕は橋の上を駆け抜ける僕の姿を思い描いた。最初は不純な恋心。この橋には彼女との吊り橋効果を望むだけだった。今は違う。すべての勝負が決まるあの橋を、誰よりも早く走りたい。同じ気持ちだろう彼女が笑ったのがわかった。皆が恋を捨てる。シグナルが緑になる。
1775.『吊り橋にて』
#twnovel 橋の上の対決といえば弁慶と牛若ですが、僕が対決したのは、自分の恋心でした。彼女が素直に橋に来たとき、いけるかも、と色んな意味で思いました。結局、恋心には蓋をしたんですが、最後の最後、泣き所を打ってきましてね。彼女は隙をついて僕を突き落としたけど、正当防衛です、刑事さん。
1776.『大工と鬼六』
#twnovel 鬼六は迷っていた。橋をかけてやった代わりに、名前を言い当てられなければ大工の目玉をもらう約束だった。鬼六は大工に問う。「何で、鬼緑だと思った?」「鬼で、体が緑色だから…」鬼六は困っていた。当てずっぽうでない上にニアピンなので、あっさり違うとは言い辛かった。
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1777.
こんな状況で、実家に帰れなくなってどうなることかと途方に暮れたりもしたけど、案外生きてます。昔から味がダメで嫌いだったアレも、思い切ってチャレンジしたら食べられるようになりました。思ってたより味しなかったです。これって、大人になったってことかな。え?検査?#twnovel 陽性…ですか。
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【「聞き覚えのある声が聞こえた気がした」で始まり「黙って頷いたその瞳があんまり優しくて泣いてしまった」で終わるお話】
1778.
#twnovel 聞き覚えのある声が聞こえた気がした。振り返ると、満面の笑顔で手を振っている人がいる。こっちに駆けてくるので頬を緩め手を振り返すと、横を通り過ぎていった。気まずく視線を彷徨わせると、隣で同じような仕草をする人と目が合う。黙って頷いたその瞳があんまり優しくて泣いてしまった。
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【「まだこんな場所があったのか」で始まり「答えはイエスしか思い浮かばなかった」で終わるお話】
1779.
#twnovel まだこんな場所があったのか。ガキの頃、秘密基地と呼んでいた洞窟。とっくに崩落しているかと思っていた。懐かしくて足を踏み入れると、先客が。もしかしてお前か。声をかけたが、熊だった。唸り声がお逃げなさいと言っているように聞こえる熊だった。答えはイエスしか思い浮かばなかった。
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1780.
#twnovel クソデカ主語のうちのひとりとして生きている。最初はただひとりのために始めたはずだった。幸せになってほしかったし、できれば好きになってもらいたかった。するべきだったのは、それを素直に伝えることだったのだ。想いはハッシュタグに飲み込まれ、今日も傷つけるためだけの言葉を紡ぐ。
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【『漁港』を舞台に、『レインコート』と『霧』と『遠雷』の内二つをテーマにした話】
1781.
#twnovel この漁港にはオバケが出る。黄色いレインコートを着たそいつは、霧と共に現れて、親が漁に出ている子どもの遊び相手をする。そいつと会わなくなったら一人前、海に出る頃合いだ。俺は早く漁に出たくて見えてないふりをした。で、こうなった。俺を無視してると次にコートを着るのはお前だぜ。
1782.
#twnovel その音を聞いたとき、砲撃だと思いました。この漁港近辺には、違法漁船がたびたび現れていましたから。実際には霧の向こうの遠雷だったようですが。ところが、違法漁船は本当にいて、しかも向こうも砲撃されたと思い込んだ。それが事の発端であり、違法漁船同士が撃ち合って沈んだ顛末です。
1783.
#twnovel 遠くで雷が鳴っている。じきに嵐がくる、直感した俺はレインコートを着て波止場に出た。案の定、港の漁師はみんな集まっていた。ここが漁港と呼ばれながら、魚がとれなくなってずいぶん経つ。嵐の日は数少ない稼ぎ時なのだ。望遠鏡を覗く。やったぞ、竜巻の中に大量の魚が巻き込まれている!
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1784.
#twnovel クローンはテロメアが云々で短命って今でも言いますが、あれ実はもう克服できるんですよ。だって寿命でまで負けちゃったらオリジナルの存在意義ないでしょう。クローン廃止論が出ないのはそのおかげです。愛すべき欠点ってやつですよ。クローンの方も全てが劣るオリジナルをそう思ってます。
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【本日のログインボーナスは「5000兆円」です。】
1785.
#twnovel 誰だよ、俺が5000兆円もってるなんて言いふらしたのは。そんなんあったらこんな人生しとらんわ。しかもログインボーナスだって言ってるのに釘バットで襲ってくるやつばっかりなのはどういうことだ。奪われるくらいなら、そこのお嬢さん、5000兆円あげるから結婚して!嫌?5000兆円ですよ!?




