2020年4月分
№1642~1673
1642.
#twnovel「今年はウソつかないんですか?」なんて訊いてくるもんだから、ウソつく気分じゃないと答えた。不謹慎だって意味ではない。普段は真面目にやってる人らが楽しいウソをついてるのに、エンターテイナーを気取ってる連中がドヤ顔の雁首揃えて政治に愚痴言ってる。エンタメは敗北したよ。俺もだ。
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1643.
#呟怖
片道1時間かけての通勤と、ボロアパートへの転居。転勤の折、その2択から、後者を選んだ。みんな1時間くらいって言うけど、高速乗るんだよな。ボロアパートには“出る”って噂だよと脅されても、高速にだって出るし、数も多いし。大丈夫、ちょっと話したけど、アパートのはまだマシなやつだよ。
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1644.『京都大学お嬢様部研究部』
#twnovel 京都大学お嬢様部と聞いて、あんな魑魅魍魎が跋扈する大学にお嬢様など存在するのかと各大学で研究部が発足した。実態は四月馬鹿だったが研究は続く。早よ実地検分しろとは尤もなお言葉だが、お嬢様や魑魅魍魎どころか、狸も天狗も性格の悪い人間すらいない京都など誰も暴きたくはないのだ。
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1645.『からだひとつで』
#twnovel 最初はただの空っぽの箱にしか思えなかった。でも水道や電気が通ると、ああ、ここは家なんだなと腑に落ちた。俺はこれからここで暮らすんだ。実感がなくて何も準備しなかったけど、今日からここで暮らすんだ。テレビもない、冷蔵庫もない。それは何とかなるが布団もない。暮らすって、大変。
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1646.
#twnovel SF?ああ、昔は人気だったジャンルだな。新型ウイルスの折に廃れてしまったが。現実が創作を超えてきたってのもあるが、何より、自分が有識者になったと勘違いした作家がつまらない批判を繰り返したことも一因だ。ファンは皆思ったよ。見たかったのは、それをネタに昇華した新作なんだって。
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1647.『連れ込み』
#呟怖
男の一人暮らしと聞いていたのに、ガーリーな小物が多々あった。これは隠れて女を住まわせてるな。そう問い詰める。「黙ってついてきて、居ついちゃって。事故物件で居心地いいみたいで」ぎょっとする。ここが事故物件だなんて伝えていない。家主が頭を下げると、奥でぬいぐるみが頭から落ちた。
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【『郵便局』を舞台に、『強運』と『氷』と『孤立』の内二つをテーマにした話】
1648.
#twnovel「もう出ちゃいました!?」郵便局に駆け込んで来た客は、自分が出した手紙を書き直したいとのこと。泣き出す寸前、局員は「運が良いですね。今日はまだ配達前です」と手紙を差し出す。喜ぶ客を見送り、「冬タイヤなら配達に行っていた」と、4月に降る雪を眺め、自らのうっかりを正当化した。
1649.『凍結』
#twnovel 孤立集落といっても環境の厳しさには限度があるべきだ。郵便ポストが氷漬けじゃないか。これでは手紙が回収できないし投函もできないだろう。融かそうとすると、管理人を名乗る者に止められた。「わざとこうしてある。ここの住所をもつ者に便りは必要ない。なんたって凍結されてるんだから」
1650.
#twnovel 我が郵便局の管内には、貰った年賀状のほとんどがお年玉くじで当たりになるという人がいる。「俺あての年賀状は当たるはずだと、誰もが書くが送ってこない。寂しい正月を過ごしているよ」口ではそう言いつつも楽しそうなのは、年賀状以外のあけおめが発達したおかげだろうなとちょっと複雑。
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1651.
#呟怖
前の人の忘れものだと思うんすよ。新しい入居者が差し出したのは、汚れた包丁だった。キッチンで料理してた感じしないのに、使用済の包丁があるって怖くないすか。そうですかと引き取らせてもらった。よかった、ここにあったのか。残念だが彼にも失踪してもらってまた新しい入居者を探さなきゃ。
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1652.
ヒーローになりたい。遠い記憶を呼び覚ましたのは、あの頃憧れたヒーローの言葉だった。情けない奴になってしまったと嘆いていたけど、それでもあなたと同じことができるはずの、大人になったんだ。俺はみんなを守る。だから家に籠っているよ…!
#twnovel「ツッコミたいけど今はベストなんだよなあ」
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1653.
#twnovel ひとり暮らしをするにあたって、3食カップラーメンだけはしないと誓った。あっという間に容器の山ができた。こんなつもりじゃなかった。でも、カップラーメンってお湯使うだろ。あったかいんだ。せめてバリエーションは変えてるんだけど、何食べても勝手に塩味足されるんだよなあ。グスッ。
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1654.
#twnovel ウイルス対策だから。そう言って妻は醤油の皿を分けるようになった。私はいつものようにラー油を混ぜるが、妻は混ぜない。これまで我慢してラー油皿をシェアしていたのだろうか。醤油にポン酢を垂らした。そんな好み、私は知らない。今日の餃子は味がよくわからなかった。体温を計る。平熱。
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1655.
#twnovel 夕暮れに染まる街を練り歩き、ここでいいかと思った店の暖簾をくぐる。ラーメンを平らげて火照った体を夜風にあてながら一番星を眺めていると、ああ、この街で暮らしていくんだな、と思った。誰と会うでもなく、どこかで遊ぶでもなく、ただ、生きる実感が湧いたというだけの話。そんな休日。
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【twnvday2020/4/14 お題「蜜」】
1656.
#twnvday 結婚には大事な3つの蜜があります。ひとつは、言わずもがなの蜜月。ふたつめは、カレーの隠し味の蜂蜜。最後に…ちょっとばかりの他人の不幸。これらを合わせて三蜜といいます。最後の蜜は私からプレゼントいたしましょう。黙ってましたがずっと前から好きでした。おめでとう、さようなら。
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1657.
#twnovel「割り箸はおつけしますか?」いりません、と何度も答えているのだから、そろそろ省略されてもいいと思うが。もしやこの店員、俺に気があって、割り箸の本数で独身かどうか探ろうとしているのでは。名探偵の気分で『不要』をタップ。わかってる。AIだから、サボらずにちゃんと訊くんだよな。
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【『天国』を舞台に、『コーヒー』と『石鹸』と『記者』の内二つをテーマにした話】
1658.
#twnovel 風が吹いたら、干しているシャツがはためき、石鹸の残り香が鼻腔に届く。それをコーヒーの湯気と一緒に吸いこむ。そんな六畳一間の天国を作るつもりだった。部屋干しは乾かなかったのでコインランドリー。コーヒーは手間なので淹れてない。風、強くて寒くて窓は締め切り。何だこれ地獄かね。
1659.
#twnovel まるで天国にいるようですね。現場を取材しにきた記者は呑気に言った。坂道での横転事故であった。積み荷が路上に散乱し、辺り一帯は雲の上かと思うほどの白い泡に包まれた。大量の石鹸は滑り下り続け、泡は広がっていく。たしかに天国のようだ。その泡で滑った車同士が衝突を始めるまでは。
1660.
#twnovel 喫茶店ライターをやって長いが、やはりここのコーヒーが一番だ。やみつきになって何度でも来てしまう。俺が神と崇める店主も呆れ顔になるほどに。「いや実際、神なんだけどね」ごちそうさま、どれ転生するか。「ここ喫茶店じゃないからさ、コーヒー飲むためだけに天国に来ないでくれるかな」
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1661.
#twnovel ひとり暮らしを始めたのに毎週のように実家に通っている。引っ越しの際に紛失したと思っていた私物が実家のあちこちから見つかるからだ。今回は隣家の幼なじみの部屋から見つかったらしい。届けに来てくれたとき、来客用と言って自分好みの小物を置いていかれた。当分は続きそうな気がする。
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1662.
#twnovel ひとり暮らしを始めたら、1人でピザを1枚食べるのが夢だった。なのに何故3人でピザを囲んでいるのか。「俺は明日のお前だ。理由は言えないが2ピース残しておいてくれ」「俺は明後日のお前だ。1ピースでいい、残しておいてくれ」鬼気迫るものを感じ、1ピースだけ食べた。次の俺が来た。
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【ついのべ三題ったー「アメンボ」「ランプ」「約束」】
1663.
大きな池の前ですっかり困ってしまったホタルに、アメンボは約束しました。僕に乗れば、そのランプを消さずに池を渡してあげるよ。しかしアメンボは沈んでしまいました。どう考えてもサイズ差に無理があったのです。
#twnovel
「おしまい」「童話から急に現実的な問題に引き戻すのやめてくれませんか」
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【#サカイメの書架応募 お題「友達」】
1664.
上がりなよ。そう言って通されたアパートは整然としていた。これを気にしっかりしようと思ってさ。その声はやけに遠くから聞こえるようだった。嬉しいよ、友達が来てくれて。そうじゃねえだろ、あんなにぶつかり合った俺を、友達なんて呼ぶな。涙が出た。この部屋には、夢がない。
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【#サカイメの書架応募 お題「初夏」】
1665.
暑いか寒いかしかなくなった今、いったい何から季節を感じ取れば良いのか。と思っていたが、外に出れば意外とわかるものだ。桜の花が散って新緑が萌えるような切り替わりを探せば、自然と境界線をまたいだ気になれる。今年も始まった冷たいラーメンを前にして思う。境目の初夏か。
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1666.
#twnovel 半額弁当の味を知ったらもう戻れない。そんな時期が俺にもあった。あの頃はやりたいことがたくさんあって、結果的に半額シールの時間に居合わせていた。それが今は、と二割引の弁当を手に取る。かつて勝ち組に見えていた人もこんな気持ちだったのだろうか。もういい、久し振りの定時なんだ。
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1667.
#twnovel 皆がこぞって絵を描いた。路地裏でバンクシーが描いたらしき絵も見つかった。田んぼにはミステリーサークルが現れた。遥か宇宙から観測するとナスカの地上絵の中になんかそれっぽいものがあった。皆、終息を願っている。次は星空を見上げたらアマビエ座なんてものが発見されるかもしれない。
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【『印刷所』を舞台に、『三角』と『奇術』と『墜落』の内二つをテーマにした話】
1668.
#twnovel 困難の分割、という奇術用語がある。困難なことも分割して少しずつやれば達成できる。例えば「原稿より先に特典の印刷を頼みたい」と受けた印刷所は「△」とチェックしていたため、原稿が進んでいるかに見せかけた作家は極道入稿を成し遂げた。これが困難の分割である。真似してはいけない。
1669.
#twnovel 当印刷所では、割と色々なものへの印刷を承っております。先日は「空中脱出マジックに失敗して墜落、ぺしゃんこになって貼りついてしまった」モノを扱いました。観客にも大ウケだったようで何よりです。苦労しましたからね。すでに貼りついてしまったモノを印刷したかのように誤魔化すのは。
1670.
#twnovel その日、宇宙ステーションからカプセルが投じられた。カプセルは大気圏で外壁を焼かれ、三角に変形しながらもパラシュートを開き、無事に海に着水。それをボートで待機していた印刷所の職員が回収、入稿を確認した。「宇宙からでも原稿は落とさないから立派ですよ。いや落ちてきたんですが」
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1671.
#twnovel 外出自粛を利用して積ん読を崩そうと思っていたが、ふと、恐ろしい考えがよぎってページを捲る手が止まる。積ん読がなくなったあとも自粛が続いていたら、何をすればいいのか。それを寝そべってずっと考えているのだ。けして、時間ができても結局やらない言い訳をしているわけでは。けして…
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1672.
#twnovel ロボットにしろよ。病院の問診に手間取らされて、人間にやらせるからだと思った愚痴だ。それを叶えてやるなんて夢を見たものだから行ってみると、見違えるほどスムーズになっていた。俺は叫んで逃げた。変わったのは職員じゃなく「はい」「いいえ」しか答えない客の方だ。ロボットみたいに。
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1673.
#twnovel「自粛期間が延びるかもってな」「らしいね」「この店、このままじゃもたないだろう。持ち帰りでも始めたらどうだい」「性に合わなくてね。それに持ち帰ってまで冷めたものを食べたかないだろう」「冷めててもいいさ。俺がお熱なんでね」「…」「女将さん。俺だけにお酌しちゃあくれないかい」




