2019年12月分
№1501~1540
【playback twnvday】
※各月の「ついのべの日」に書いたものへのアンサーを意識しています。
1月 お題「告白」
1501.『皆まで言うな』
#twnvday 成人式で彼女を見かけた。人間とは違う長寿種族なので、成人式には行けないと言った彼女を。「あれは本当だったんだね」息子の付添いで来た僕と違って、若いままの彼女に声をかける。「ごめんなさい、それは嘘で、実は私は…」僕はその告白を遮った。わかっているよ、お母さんそっくりだね。
2月 お題「溶ける」
1502.『いいね(ハート)チョコ』
#twnvday まったく…渡したい本命がいるというから手作りチョコを手伝ったのに、親指立てた手型のチョコなんてジョークグッズ作りやがって。個人的には嫌いじゃないが、普通は引かれる。作り直すのがあいつのためだ。だが『I'll be back.』と添えられていいねチョコは復活していた。『for you』とも。
3月 お題「平」
1503.『平らげない』
#twnvday ヒラでなくなるって大変だ。今まで辿ってきた平坦な道は、先人が整えてくれていたのだと実感する上司生活。平凡な俺にはキツくてふらっとくるが、後ろに控える部下に苦労をかけないためにも…「先輩、全部平らげないで残しといて下さいよ」俺も忘年会の料理を食べきれない歳になったんだな。
4月 お題「成」
1504.『なせば成る』
#twnvday がばっと夢の残骸の中から起き上がった。ギターは現物があるしまた弾ける。小説を書くなんて楽なもんだ。何が成れなかっただ、それはプロにはって話だ。したくもない仕事に就いた。でも趣味の時間を確保できるものを選んだ。ギター弾こう、小説も書こう。これが俺だ。俺は、俺に成ったんだ。
5月 お題「万」
1505.『よろず屋、やってますん』
#twnvday パソコン屋ってのはよろず屋みたいなもので。どんな仕事もパソコンを使うから、修理からチラシ作りまで何でもござれ。ネット販売なら店頭に立つ必要もないから副業もしてます。どうぞ御贔屓に。でも、パソコンがないと仕事できませんから。今?趣味で登山中です。よろず屋、万事休みまーす。
6月 お題「勇者」
1506.『そして積読へ……』
#twnvday 苦労して手に入れた漫画も、積ん読に埋もれてまだ読んでいない。その他の本も、それなりに遠出して買ったものだ。冒険のトロフィーは袋からも出さずにどんどん溜まっていく。報酬に興味はない、クエストをこなすだけ。俺もだいぶ勇者らしくなったな、と今夜もお楽しみがないまま疲れて眠る。
7月 お題「玩具」
1507.『きみのこ』
#twnvday キミは子どもらしくない子どもだったね。大人が見ている時にしか手に取ってくれなかったこと、よく覚えてるよ。おもちゃ箱に入れないで、棚に飾っていたのもキミらしかった。中古屋に売らずにずっと棚にいた僕も、遂に外に出しっ放しになる時が来た。はあ。この子、キミに似ないで元気だね。
8月 お題「賭け」
1508.『すべてを賭けて』
#twnvday 胴元に負けはない。その地位に上り詰めた俺は、人生の賭けに勝った。俺は勝ちたくて、あの女は賭けがしたかった。それだけの違いだ。大負けして売り飛ばされたと聞いて探してたんだ、自由にしてやるよ。施しじゃない。賭けで俺に勝てたらだ。檻の中にサイコロを放る。彼女の目がギラついた。
9月 お題「剣」
1509.『勇者の拳』
#twnvday「遂に来たか、勇者よ…」ああ、とうとう魔王のところまで来た。今まで剣を大事にしてきたのは、この時のため。剣を装備!行くぞ魔王!うおおおおおお何だこれ重いし邪魔でステータスさがるじゃん捨てよう、うおおおお勇者パンチ!「グワーッ!馬鹿な、この魔王がワンパンで死ぬとはァーッ!」
10月 お題「トライ」
1510.
#twnvday 雨風が強くなり、帰れなくなった出前の配達員と一緒に試合を観ることにした。出会い頭に感情MAXでやりとりしたせいで、数年来の友人のように盛り上がった。ところで、頭にトライされた出前の支払いはナシでいいよね。被害者面で無銭飲食にトライしたが、最終的には俺の頭が床にトライされた。
11月 お題「十」
1511.
#twnvday マイナスドライバーがない。探していると、浪人に取り囲まれた。「士の証は預かった。このまま逮捕されちまえ」とほざいたが、一蹴してやった。「何で警察が来ないんだ…!」勉強不足だな。プラスは規制対象外なのだ。取り戻した-と+の2本をベルトに差す。士を語るには、十年早かったな。
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【twnvday2019/12/14 お題「元」】
1512.
#twnvday「こんなところにいたんですか」毎度毎度、よく探しにくるものだな。「もうすぐ今年も締め括りです。あなたにもいて貰わないと」もう私は引退した身だよ。「そうかもしれませんけど、今年はあなたの年でもあったんですよ。元・元号の、平成さん」やれやれ…今度はいったいどこでP.A.R.T.Y.だ?
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1513.『掛け合い』
#twnovel めっちゃ話しかけてくるからこっちも話題のストック増やして、作り話とか誇張を交えるようになったらツッコミ入れてきて、その会話聞いた人が笑うようになって、ってとこまできたけど、俺たち漫才師目指したりするの。「まさか。俺、髪切るのが仕事ですもん」だよな。俺もただの客でいいや。
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1514.『虫がいる』
#呟怖
部屋に虫がいる。そうはっきり言えたのは何日か前までで、そのときは電灯に体当たりしていた。俺は放っておいて寝た。今は常に羽音が聞こえるものの、虫の姿は見えない。しかし今日、久しぶりに見た。寝返りを打って、ころんと音がしたと思ったら、耳元にいた。お前、俺の頭の中に住んでないか。
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【『階段』を舞台に、『渡り鳥』と『煉瓦』と『靴下』の内二つをテーマにした話】
1515.
#twnovel「この煉瓦積みの階段が似合う男になって戻ってくる」なんてバカじゃないかと思っていたけど、数年ぶりに会って、階段に片足をかけている姿は、確かに様になっていた。あちこち回ったけど戻ってきたよ、なんて言っておいて、次の日には旅立っただなんて。すっかり渡り鳥になってしまったのね。
1516.
#twnovel「これは衝動的な殺人です」「何故だ、凶器が消えてるんだぞ」「現場に残っていますよ。伸びきった靴下と、階段の煉瓦ブロック」「!?」「カッとなった犯人は煉瓦を引き抜き、靴下に詰めて殴った」「勢いで煉瓦引き抜く奴がいるか!」「ええ…素手でも充分でしょうからね」「そうじゃねぇ!」
1517.
#twnovel 冬になると、非常階段の踊り場に現れる一羽の白鳥。脚の黒がくっきりしているので、クツシタと呼んでいる。病院から出られない私にとってサンタよりも嬉しい来訪者だ。そのクツシタが、どうやら怪我したらしく、保護団体の人が連れ添っていた。目が合ったとき、靴下のプレゼントを予感した。
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1518.
「定食屋の娘に話しかけたい?なら良い手がある、下膳しろ。印象を良くできるし、しなくていいですよと笑ってくれるぞ」
「さすが先輩!やってみます!」
#twnovel
「店長に叱られるんで勝手なことしないでくださいっていっぱいいっぱいな顔で怒られました」
「その店やべえよ…寿退職させてやれ…」
*
1519.
#twnovel「尊敬してた小説家の講座を受けたけど、がっかりしたよ。あの人だけは違うと思っていたのに、他の人が言うことと何も変わらない。みんな示し合わせたように同じことばかり言う。誰も小説家になる方法を教える気なんてないんだ!」「…みんなが同じことを言ってるなら、それが正しいのでは?」
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1520.
#twnovel 最近、どこの扉をノックしても返事がある。はいってます、と言われたり、ノックを打ち返されたり。だから葬式のときは、棺桶に釘打ちをしたら返事をされてしまうんじゃないかと緊張していた。当然そんなことはなかったけど、そのときになってようやく涙が出た。心を打ってきたってことかな。
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【「好きって言ったら怒る?」という台詞で始まり「焦げたトーストは、苦いのにやたら美味しかった」で終わるお話】
1521.
#twnovel「好きって言ったら怒る?」そう訊くのは、怒られた覚えがあるから。本人にとっては失敗なのに、それを好きと言われるのは複雑なのだろう。案の定、君も困った顔をして、それでも「いいよ」と許してくれたので僕はかぶりついた。昔からそうだ。焦げたトーストは、苦いのにやたら美味しかった。
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【「耳触りのいいその声が、好きだと思った」で始まり「腹が立ったから、脇腹をつついてやった」で終わるお話】
1522.
#twnovel 耳触りのいいその声が、好きだと思った。実家で飼い始めた猫に多少は身構えていた私だが、その第一印象ですぐにボールを投げる遊び相手となった。あれからそんなに時間は経ってないのに、猫はもうボールを追わない。声も出さず横目でフッと鼻で笑う。腹が立ったから、脇腹をつついてやった。
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【「やあ、また会ったね」という台詞で始まり「繋いだ手は今度こそ振り払われずに、きゅっと握り返された」で終わるお話】
1523.
「やあ、また会ったね」それは確かに手を振り払ったはずの相手だった。「お前、何で」「追ってきたんだ」馬鹿なことを。お前だけは助かるように手を離して落下したのに。奴は栄養ドリンクを飲み干し、手を差し出す。「ファイト!」「一発!」繋いだ手は今度こそ振り払われずに、きゅっと握り返された。
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【「背中についた爪の痕が、痛いのか熱いのかわからない」で始まり「そのときの手紙はまだ大切にしまってある」で終わる話】
1524.
#twnovel 背中についた爪の痕が、痛いのか熱いのかわからない。こうなるとわかっていて近づいたのは俺だ。縋り付いて泣こうにも、その相手がいなくてはと抱きしめたのは俺だ。あのふたりがこんな結末を迎えるとは思わず、恋文を渡さないことにしたのは俺だ。そのときの手紙はまだ大切にしまってある。
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1525.
#twnovel『事情によりマスクをしている店員がいます。すみませんがご理解ください』という貼り紙を見て、げんなりした。そんなくだらないクレームをつけた客がいたのか、自分はそんなこと言いやしないぞと、気を取り直して店に入る。「いらっしゃいませ」とスケキヨが出迎えた。言わない、言わないぞ。
*
【#サカイメの書架応募 お題「ヒーロー」】
1526.
ヒーローになれると思っていた。弱きを助け、強きを挫くような。だってあの頃は、自分が弱いなんて思いもしなかったから。今は自分を救ってくれる誰かを探している。寄り添ってくれるだけでいい、あとは勝手に救われてみせるから。ヒーローになるって、こんなにも簡単で、難しい。
*
【#サカイメの書架応募 お題「お菓子作り」】
1527.『誰がための』
お菓子作りにおいて、「好きに作れ」は通用しない。設計図通りに組み上げるものであり、愛情なんて異物混入はもってのほか。そうして完成したものを眺めるけど、はて、誰のために作っていたのかしら。思い出せなかったので自分で食べた。これならもっと好きに作ってもよかったな。
*
【『暗闇』を舞台に、『コーヒー』と『傘』と『荒波』の内二つをテーマにした話】
1528.
#twnovel 傘を忘れたので取りに戻ると、もう店じまいを始めていた。照明は落としちゃったけど、コーヒーでもいかが。そう誘われ、スタンドの灯りを頼りに暗がりでコーヒーを飲む。忘れたのは傘だけじゃない。帰り道もだ。ここはどこなんですか、それが訊けないでいるうちに、コーヒーが冷めていく。
1529.
#twnovel 荒波の夜は傘に気をつけろ。その昔、嵐の夜に船を出して、戻ってきて死んだ漁師が言い残した言葉だ。ひどく衰弱していたという。意味がわからなかったが、明かりのない夜の海では正体が分からず傘と言う他なかったのだろう。荒波に乗って、頭上から被さってくるのだ。傘を広げた毒クラゲが。
1530.
#twnovel コーヒーの水面に波が立った。唯一の光源であるロウソクに目を向けるが、大丈夫なようだ。あれから、あの時のような荒波は立っていない。波が止まるのを見届け、溜息を吐く。停電した家で、唯一の暖となってしまったコーヒーの湯気を吸う。これを淹れた直後に、大きな揺れが来たんだったな。
*
1531.
#twnovel「あの常連の二人、付き合ってるんですよね?スマホばっかいじってますけど」「うちには映画の後に寄るんだよ。ネタバレをばらまかないようにSNSで会話してるのさ」「へえ」「ただ先日、解釈違いが発覚して、今ではあの感想戦もそれぞれの界隈でやってるらしい」「それもう別れてないですか」
*
【#このお題で呟怖をください『机上都市』】
1532.
#呟怖
教室の隅に座っていたクラスメイトの顔が思い出せない。見た覚えがない。いつも下を向いて、机に何か書き込んでいたから。やがて教室に来なくなり、空席と、机上に描かれた精緻で乱雑な都市が残された。じっと見ていると、建物から覗く顔がある。どこかで見た気がするけど、さて、誰だったかな。
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1533.
#twnovel 普通の夜だった。普通に残業して、普通にコンビニで値引き品を買った。晩酌のお供と朝食のおかず兼用で買ったチキンの箱が赤と緑の装いだったこと、無造作に放っていたレジ袋にお手拭きがふたつ入っていたことに気づいたのは、翌朝になってからだった。その意味にまでは気づきたくなかった。
*
【『川辺』を舞台に、『コーヒー』と『斜面』と『孤独』の内二つをテーマにした話】
1534.
#twnovel「おじさんは何をしてる人なの」「おじさんはね、河川敷のいい感じの斜面に寝そべってる人だよ」「どうして寝てるの」「この斜面はね、缶コーヒーを傾けて飲んだり、川の流れを眺めるのにちょうどいい角度だからだよ」「…本当だね」「この角度の良さがわかるのか。何があったか話してみな…」
1535.
#twnovel 斜面が崩壊した。川辺である以上、いつかは起こることだとわかっていたが、対策が間に合わなかった。何度回収しても、子どもたちが堤防用の石を持ち去ってしまうからだ。親と離れ離れになってしまった孤独が、無心の作業に駆り立てるのだろう。三途の川を担当する鬼たちは頭を悩ませている。
1536.
#twnovel 川辺で飲むコーヒーは一味違う。ありがとう、ありがとう、美味しくなれよと声をかけながらじっくりと淹れられる。ここには水に感謝を述べたところで味は変わらないと言ってくる煩わしい輩はいない。そうとも、味は変わらない。変わるのは気分を害した私の舌だ。それだけで一味も二味も違う。
*
【『百貨店』を舞台に、『コーヒー』と『謎解き』と『トマト』の内二つをテーマにした話】
1537.
#twnovel この百貨店には探偵がいる。フードコートに屯し、依頼人がやってくるのを待っている。店子ではないが、店側は彼の存在を黙認している。彼が謎解きの代わりに要求するのは、千円以上買い物した際に発行されるコーヒー無料券。そのコーヒーが、大して美味しくはないことが、この店一番の謎だ。
1538.
#twnovel「死体が消失した謎が解けました」「本当か探偵!」「ええ、百貨店の生鮮食品売り場を調べれば、トマトも消えているはずです」「そうか、あれは血ではなくトマトの果汁。死んだふりをして逃げたんだな!」「いや、入荷されたトマトが殺人トマトだったので」「お前ジャンル変わる推理するなや」
1539.
#twnovel「トマトコーヒー、意外な組み合わせだけど美味しいですね」「ありがとうございます。こうして百貨店に店舗を構えていると、ブレンドのアイデアが刺激されていいんですよ」「へえ…あの、私も、トマトコーヒーをもっと簡単に作る方法を思いつきました」「ほう!」「ケチャップを」「ボツです」
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1540.
#twnovel 除夜の鐘がうるさい、と苦情を受け、近所の寺でも中止を決めたようだ。その旨の看板があった。にも関わらず、今日は一日中鐘が鳴っている。苦情を入れたと思しき人が妨害してくるが、俺も我慢しないで叩きに行こう。看板にはこう書かれていた。『絶対に鳴らしてはいけない除夜の鐘24時』。




