2019年11月分
№1467~1500
【Novelber 11/1 お題「窓辺」】
1467.『窓辺のフチ子さん』
#novelber フチ子さん。勝手にそう呼んでいる。向かいのビルの窓辺に腰かけている、窓辺のフチ子さん。毎日何してるんだろう。思い切って訊くと「ぶらぶらしてまーす」と返答。それは脚だけでしょう。でも、俺もそんなこと言ってみたい。明日の昼は職場から出ようか。フチ子さん、ランチ何好きだろう。
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【Novelber 11/2 お題「手紙」】
1468.『恋文』
#novelber 拝啓。メールやSNS全盛の時代にこうして文をしたためるのは、私があなたのアドレスもアカウントも知らないからです。住所も知らないので宛先はデタラメを書きました。差出人も無記名なので、送り返すために封を開けてこれを読んでくれていることでしょう。あなたが好きです、郵便局員さん。
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【Novelber 11/3 お題「焼き芋」】
《今日の献立報告》
1469.『焼き芋』
#novelber「今日は焼き芋ですよ」「芋だけ?戦時中じゃないんだから」「何言ってるんですか、戦争の真っ最中ですよ。だから里芋でもじゃが芋でもなくさつま芋なんです」「…戦争って芋に」「しっ!クレームで『すき焼き風』『とん汁風』と改名したんですよあらゆる芋煮味は!」「言っちゃってるゥ!」
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【Novelber 11/4 お題「恋しい」】
1470.
#novelber 知らなければ求めなかった。教えられなければ知ることはなかった。教えたのはあなたなのに、どうしてあなた以外を求めなければいけないのか。思いたくない、恋しいなんて。忘れてしまいたい、恋しさなんて。それでも、なくせない。あなたが恋しいと思えるようになった、忘れたくない記憶は。
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【Novelber 11/5 お題「トパーズ」】
1471.『誕生石を贈ろう』
#novelber 誕生石を贈ろう。美的センスがないと散々言われてきた僕にとって、それは理屈という抜け道が開けた起死回生のアイデアだった。店員さんに見せてもらって、呆然とした。「トパーズって黄色じゃないの」実は色んなバリエーションがあって、という説明が耳を通り抜けていく。選べるのか、僕は。
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【Novelber 11/6 お題「当日券」】
1472.『何でも当日の男』
#novelber 前売り、早割とみんな忙しないが、俺は断然、当日券。値引きなしで払った方が相手も儲かるだろうし、意外と何とかなるものだ。だから今回も、いきなりでも大丈夫だと思っていた。「今更何言ってるの、バカ」結婚式当日、俺と逃げてはくれなかった。気持ちだけは、いきなりではなかったのに。
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【Novelber 11/7 お題「朗読」】
1473.
#novelber「きみは音読が上手だね」先生に褒められた、それだけで頑張る理由になった。読み上げる声に気持ちがこもる。「朗読になってきたね」感情を乗せるだけでいいのだろうか。登場人物に違いを持たせなければ。「もはや落語だね」納得できない、何だこの筋書きは。「勝手に改変するのはダメだね」
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【Novelber 11/8 お題「天狼星」】
1474.
#novelber「あの一番明るい星は何?」「シリウスだ。日本では大星、中国では天狼星と言ったか。その調子で多くの別名がある」「目立つと勝手にあだ名をつけられるのは人も星も一緒だね」「…冬の大三角や冬のダイヤモンドの一つでもある」「コラボに余念がないから輝きを維持できるんだね」「うーん」
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1475.『誰が轢かれたのか知らないが』
#呟怖
歩道の隅に花を添える。誰が轢かれたのか知らないが、近所で起きた交通事故なので悼みに来た。自動運転のテスト中の事故だという。すでにいくつか花があった。故人宛ての手紙はない。他の人たちも、誰だか知らないと話していた。AIは「人間だと認識できなかった」らしい。それ以降、続報はない。
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【Novelber 11/9 お題「ポツンと」】
1476.『弥次喜多おじさん』
#novelber 旅装でポツンと座ってるおっさんに「一人旅ですか」と声をかけてみた。おっさんは「一人じゃねえさ」と答えた。「明るいうちから酒を飲みたいと思う俺、それに待ったをかけるもう一人の俺とでの弥次喜多道中さ」そう言っておっさんは缶ビールを呷った。お連れさん、今はいないみたいっすね。
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1477.『酒とパフェ』
#twnovel 夜パフェ。酒飲みの〆にパフェを食べるっていうのは、そう悪い風習じゃないと思うよ。酒を飲むと甘いものが欲しくなるのは生理現象らしいし、合理的だよね。そういや前に食べたどら焼きの天ぷらは、甘いのに肴にもなって良かったなあ…って話の流れから、何故パフェを天ぷらにしたんだ君は。
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【Novelber 11/10 お題「私は信号」】
1478.
#novelber ハイハイ、と聞いていれば、いつまでも喋り続ける。んん、と目を瞬いて反応すれば、ちょっと注釈を挟んでまた喋り出す。無言でじっと見つめれば、口を閉じて私が何か言うのを待つ。あの人にとって、たぶん、私は信号。
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【Novelber 11/11 お題「時雨」】
1479.
#novelber 時雨だ。そう思うことにしている。暗雲のような昏い思想も、土砂降りのような激情も、じっとしていればすぐ通り過ぎていく。うまくいかない日々なんてそう長くは続かないでしょう。だからじっとしてなんていられない。もっと叫んでじたばたしていたいから、心の時雨といっしょに駆け抜ける。
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【Novelber 11/12 お題「並行」】
1480.
#novelber どうも僕は寝ている間に並行世界を行き来しているらしい。「並行世界?」ああ、同じ時間を刻んでいるのに、似ているようでどこかが違う、間違い探しのような2つの世界さ。「どうしてわかるの?」その2つが決して交わらない理由が、目の前にいるからだよ。嗚呼。どうしてこっちが夢なんだ。
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【Novelber 11/13 お題「あの病院」】
1481.
#novelber 近頃来ないと思ったら、こういうことだったのね。間違えたじゃないわよ、あんたが出したの、最近できたとこの診察券だったじゃない。職場の紹介?精密検査で指定された?やめて!あっちの設備の方がきれいだったなんて聞きたくない!あんたのことは、いつもうちが診ていたのに…あの病院…!
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【twnvday2019/11/14 お題「十」】
1482.『±』
#twnvday「君、これは何だね」マイナスドライバー。正当な理由なく所持していると逮捕される代物だ。どうしたものかと思っていると「すいません、落ちてましたよ」と通行人がもう一本のドライバーを持ってきた。「失礼、二本差しの方でしたか」+と-の2本をベルトに差す。これで俺は士だ。
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【Novelber 11/14 お題「ポケット」】
1483.
#novelber スーツをクリーニングに出す前にポケットをまさぐると、入れた覚えのないハンカチが出てきた。趣味の柄じゃないし、他人のものだろうか。あッと思い出した。落としたのを拾ったんだ。今更いらないかもしれないけど、これから渡すものに混ぜて返そう。花束と指輪ケース、どっちに仕込もうか。
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【Novelber 11/15 お題「七五三」】
1484.
#novelber 七五三には十二単を着せよう。それはテレビで見て思いついただけだった。しばらくしたらテレビで十二単は重い、それは女に逃げられないようにするためと言っていた。何だか気落ちしたが、いや、だからこそと思った。どこにもやらないなんて気持ちは、十二単と一緒に写真の中に収めておこう。
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【Novelber 11/16 お題「編み込み」】
1485.
#novelber「女子だけの授業あったじゃん。あれ何やってたの」「編み込み習ってた。髪のやつ」「学校で教えることかぁ?」「意外と役に立つよ。髪の中にモノ仕込む時とか」「忍者かよ」「まあね。今日も毒薬隠すのに使ったし」「え」「解毒剤が欲しくば、この編み込みに似合う髪飾りを買って貰おうか」
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【Novelber 11/17 お題「通信士」】
1486.『便りがないのは良い便り?』
#novelber「その気持ちはわしもわかる」えっ、おじいちゃんが。ウソだぁ。「わしは昔、通信士をしていてな。電報を送ったのに、返事が来ないと気が気でなかった。向こうは最前線だったからな」おじいちゃんが寂しそうに笑う。「既読スルーか。相手が健在かどうかすぐわかるだけ、わしは良いと思うぞ」
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【Novelber 11/18 お題「毛糸」】
1487.『運命の赤い毛玉』
#novelber 運命の赤い毛玉。そう言ったのを聞いて、いや赤い糸でしょ、せめて毛糸。そうツッコみたかったが、黙っておいた。どう表現しようが個性だし、人生経験が豊富なわけだし、人との縁について一家言あるのだろう。それに、毛玉に見えているということは、辿った先に相手がいな…何でもないッス。
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【Novelber 11/19 お題「残光」】
1488.
#novelber テレビで見たのか。見栄張るな、テレビはとっくに新しいネタに移ってるよ。どうせ何日か前のバズりツイートに触発されて、イキっちまったってところか。刺激に痺れたのはわかるが、大勢にとっちゃ、もう放電は終わってんだよ。なあ、誰も騒いでる奴なんかいないだろ。残光なんだよ、あんた。
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【Novelber 11/20 お題「橋の上」】
1489.
#novelber 私が彼を橋の上から突き落とすに至ったのは、命の危険を感じたからです。そういうとき、正当防衛って成立するんですよね。交際はしていません。なのに橋の上に呼び出されて、あんなに揺らされたら、そりゃドキドキしますよ。殺されるんじゃないかって。吊り橋効果ってやつですね、刑事さん。
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【Novelber 11/21 お題「ボジョレ・ヌーボー」】
1490.
#novelber「ボジョレー・ヌーボー解禁!」「ボージョレ・ヌーヴォー解禁!」「ヴォジョレ・ヌーヴォー解禁!」「乾杯!」「動くな、ワイン警察だ!バカモン!それは解禁前のボジョレ・ヌーボーだ!」「全部同じじゃないですか!」「ちがいますよーっ」「これだから素人はダメだ!ちゃんとよく見ろ!」
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【Novelber 11/22 お題「冬将軍」】
1491.『ナマムギ事件』
#novelber「下ぁーにぃー、下に」その声を聞くと、皆が慌てて道を譲る。冬将軍の南下行列だ。こうなると、着込んで、縮こまって、やり過ごすしかない。それなのに、ナマ意気にもム理して薄ギになって躍り出た余所者が手討ちにされるナマムギ事件が後を絶たない。外は危険だ、出たくない。こたつ最高。
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【Novelber 11/23 お題「温かい飲みもの」】
1493.『ゆっくりコーヒーでも』
#novelber つめたいの、いや、あったかいのか。ボタンを押しかけて、思い直してお金を取り出す。家に戻って、ポットでお湯を沸かしてドリップ。冷まさないといけないほど熱いコーヒーは、一手間がないと用意できない。飲みごろになるまでゆっくりしなよ。勤労感謝ってことで、仕事の話でも聞くからさ。
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【Novelber 11/24 お題「蝋燭」】
1494.
#novelber 故人の好きだったものを…という計らいで、最近はユニークな蝋燭も増えている。このワンカップ型なんて、酒好きだったあの人への手向けとしてちょうどよさそうだ。「へえ。おいくら」約700円だね。「…アルコールランプの要領で、本物のワンカップを燃やした方が安上がりなのかも」やめて。
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【Novelber 11/25 お題「初霜」】
1495.
#novelber 朝靄に街が沈んだ。これだけ放射冷却が起きていれば、どこかに初霜も降りているだろうが、辺り一面が真っ白では見つかりはしないだろう。探す時間もない。車のフロントガラスに氷が張っている。遅刻を回避するためスノーブラシで必死に削って白い粉をとばす。これが俺の初霜だ、クソッタレ。
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【Novelber 11/26 お題「にじむ」】
1496.
#novelber 蛇口を捻る。ワイシャツに直接水をかけるわけにはいかないから、ハンカチを湿らせて擦る。何とか滲ませることはできた。これならただの赤い染みにしか見えないな。空港の検査場も通れるさ、大丈夫、大丈夫…えっダメ?ネクタイ?あっ調べなくてもいいです、これ血です。血ですけど鼻血です!
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【Novelber 11/27 お題「銀の実」】
1497.『銀の実があるところ』
#novelber 僕は探している。銀の実があるところで待ってる、そう言った彼女を、もうずっと。そんなものこの世に存在しないのだから、別れの言葉だったのだろうか。思考まで迷路に入り込みそうになった僕を引き戻したのは、袖を引き、東京駅に居たのに、と怒る彼女だった。君それは銀の鈴だバカヤロー。
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【Novelber 11/28 お題「ペチカ」】
1498.
#novelber「ペチカって知ってる?」暖をとる間、じっとしているのも暇なので話しかけた。「ああ…懐かしいな」えっ?「俺、途中までしか読んでなくてさあ…」彼が知ったかぶりするために作られた架空の漫画『ぺちぺちペチカ』の話が存外面白く、目の前で暖めてくれてるそれがペチカだと言いそびれた。
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【Novelber 11/29 お題「冬の足音」】
1499.
#novelber 冬の足音なんて、聞いたことはない。聞こえるものか。奴はしんしんと降る雪に紛れて、音もなく忍び寄るのだ。まるで忍者か暗殺者のようか。その通りだよ。まだ秋だって顔で氷を忍ばせて、スリップさせて命を奪うのさ。ちょうどそこの事故車みたいにな。タイヤ、早めに換えといて良かったろ。
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【Novelber 11/30 お題「真っ白い」】
1500.
#novelber 燃えたよ、燃え尽きた、真っ白にな…。1ヶ月間、決まったお題に沿って #twnovel を書き続ける企画をやりきった。俺にしちゃ上出来だ。しかもこれで1500本目、筆を置くにはキリがいい…だというのに、悪魔が囁く。「あと500本で2000ですね!」俺はまた筆をとり、空白に文字を打ちこむのだ。
#novelber 勝手に参加させていただきました。




