2019年10月分
№1434~1466
【「結婚したんだ」という台詞で始まり「笑顔からこぼれ落ちる涙が光を纏って美しいと思った」で終わるお話】
1434.『結婚したんだ?』
#twnovel「結婚したんだ」言葉尻が、少し上がっている気がした。あるいはカマをかけているかのように。まるで昔のように。駆け引きが好きで、こんな掛け合いができる相手は他にいない、お互いにそう思っていた頃。振り返り言った。「結婚したんだ」笑顔からこぼれ落ちる涙が光を纏って美しいと思った。
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1435.『惰性』
#Twitterサービス終了 のトレンドを見て、ショックの中に僅かな期待があった。やめる機会を失っていたアレを終わりにするにはいいかもしれない。さっそく宣言しようとして、大元が終わるんだからそんなの誰も気にしないと気づく。少し考えて、どうせすぐ復旧するのだからと俺はまた #twnovel を書く。
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【「やあ、また会ったね」という台詞で始まり「また必ず会えると知っているから」で終わるお話】
1436.『ほら、何度でも出会っているでしょう』
#twnovel「やあ、また会ったね」怪訝な顔をされるのはわかっていたが、もう「はじめまして」と言うのは飽きた。実は何度も出会っているんだ。君が忘れた頃に、君が道に迷ったときに。今のところ同じ道を選んでるようだね。それじゃ、今回もひと足お先に行くとするよ。また必ず会えると知っているから。
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1437.『LOSER』
#twnovel とんでもない映画が公開された。「お前は…観てないのか。いいなあ、負け知らずで…」誰もが敗北者になって映画館から戻って来る。このままだと、何もしなくても俺が人類の頂点に立ってしまうかもしれない。そして俺以外の全員に妬まれ足を引っ張られるのだ。怖くなって映画館に駆け込んだ。
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1438.『スマホ禁止の店』
#twnovel「グルメサイトへの掲載はお断りだよ」ぶっきらぼうに店主が言った。注意された客は照れ臭そうに「外食したら妻に写真を送ることになってるんです」と食事管理されている事情を話す。「めんどくせえな。次は嫁さんと一緒に来な」そのやりとりに、私はスマホを閉じた。ここは教えたくない店だ。
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1439.『ついでにクエスト』
#twnovel ちょっとした届け物なら、護衛として雇うより、届け先に用事のある冒険者についでに持って行ってと依頼した方が安上がりでは?と考えた商人ギルド。後回しにされて到着が遅い、粗雑に扱われた、ていうかパクられた、という苦情は、いかつい配達人を前にしては霧散する。
#ファンタジー社会問題
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1440.『食べ納め』
#twnovel 寒くなってきそうな気配もしてきたし、今年の冷たいラーメンも食べ納めか。そう思いながら箸で氷をつついた。冷たいラーメンは、実は氷が浮いている方が珍しい。ここの場合は、だしを凍らせていて溶け出すと味が変わっていく仕掛けだ。待ちきれずにお湯を足した。ああ、やっぱり食べ納めだ。
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1441.『残業代をなくすには』
#twnovel「冷房の温度を下げただけで残業代を大幅に削減した市役所があるそうです」「いいね、うちでもやろう!でも庁舎が快適だと文句言う市民がいるからな…とりあえず是非のアンケートをとれ」「結果出ました」「よし、様式に不備があったことにしてとり直せ。それまでに反対した市民を始末するぞ」
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1442.『読んだ?』
#twnovel 本当に読んでるのか見分けるポイントがひとつある。俺が貸した小説を読み終わった友人が「ここ、お前はどう思った?」と話を振ってきた。俺は「作者のこれまでの作風から考えると…」で乗り切った。もうわかるだろう。作品じゃなくて作者、感想じゃなくて見解について述べる奴は読んでない。
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1443.『お返し』
#twnovel 北海道出張の折、ラーメン通の知人の紹介でラーメン屋を訪れると、漁船に乗せられた。「北海道のラーメンを美味しく食べるには、食べる側にも修行が必要なんですよ!」なるほど漁の後の朝イチのラーメンは格別だった。俺が転職して漁師を極めるまで放っておいてくれた礼だ。お前も船に乗れ。
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1444.『酷い写真』
#twnovel 生前に遺影を撮りたいと、今にも死にそうな顔の客がやってきた。とりあえず撮ってやると、しばらくしてから就活用の写真を撮りに来た。「死ぬつもりだったが、写真が酷すぎて思いとどまった」なるほど、酷い顔してたもんなあ。「いやあんたの腕が」今日のこれをマジの遺影にしてやろうか。
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1445.『プロポーズは空の上で』
#twnovel プロポーズは飛行機の中で、愛していますとシンプルな言葉で。そう話すとロマンチックとかオトナっぽいとか言われるが、実際は念仏を唱えた後の、観念の「愛しています」だった。その時の私の返事が「うるせえ死亡フラグ立てんな殺すぞ」で一緒にガタガタ震えていたことは話したことがない。
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【twnvday2019/10/14 お題「トライ」】
1446.
#twnvday 台風が過ぎたからって、インフラが復旧しきってない状況でラグビーとか正気かよ。そう思ったが、やはり熱い試合は感動するものだ。できればメシ食いながら観たかったなーと思ってたらチャイム。やっと来たか。もー遅いよー「こんな状況で出前頼むんじゃねーよ!」脳天にトライを決められた。
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1447.『配慮』
#twnovel「避難所からホームレスを締め出すなんて、よくそんなひどいことができますね。こういうときこそ助け合いでしょう、避難者のことを第一に考えられないんですか!」「はあ。その避難者の方々が、ホームレスと一緒なんて我慢できないと仰っていて…野宿者の身の安全のためにも仕方ない措置かと」
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【『倉庫』を舞台に、『愛憎』と『氷』と『相似形』の内二つをテーマにした話】
1448.『冷凍倉庫』
#呟怖
冷凍倉庫には、さっきまで生きていた人間が凍りついたのかと見紛う氷像が立ち並ぶ。数えていくと自分に似た氷像が見つかるなんて噂があるが、見つかるどころか、どう数えても1体足りない。ギイ、とドアの軋む音。閉じこめられる寸前、ドアの隙間から見たのは、霜だらけの冷たい自分の顔だった。
1449.
#呟怖
「私たち、双子だったの」最初は驚いたが、仲良くなるうちに「実は三つ子なの」「本当は六つ子」と増えていくので慣れた。初めて招かれた、倉庫みたいな家は、人が入れそうなカプセルでいっぱいだった。全て割られて、赤い液体が飛び散っていたが。そういえば今日ほかの子は。「もう私だけなの」
1450.『これで最後だから』
#twnovel 酒樽倉庫で浴びるほど酒を飲んでいたら、もう1人やって来た。酒は飲まないと言っていたはずの奴だった。「こんな時だからな、正直になることにした」酒で失敗して以来断っていたが、やはり酒を愛していたのだ。「愛も憎も溶けては消える一杯に、乾杯」氷山が近づく。この船はもうすぐ沈む。
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1451.『特定班』
#呟怖
特定班って自称してるアカウント、たくさんあったじゃないですか。「あの炎上した店を特定!」ってやつ。この前もやってたけど、結局アレ嘘松で、実在しない店だったんですよ。なのに「ここだ!」って言ってた人たち、どこ行ったんですかね。それ以降ツイートがないし、本当、どこ行ったんだろ。
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1452.『曜日感覚』
#twnovel 海岸に無人船が流れ着いた。行方不明となっていた、水産高校の実習船だった。何があったのか知ろうと残された日誌等を調べたが、彼らの曜日感覚が次第に狂っていくのがわかりゾッとした。そして調理場には手つかずのカレールーの山が。「そうか、航海中に給食でカレーが中止になったから…」
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1453.『下を向いて歩こう』
#twnovel「大人になってから、下向いて歩くようになった」「そうか。いろいろあるだろうけど、うまくいかないことなんてそう長続きしないさ。胸張って生きていこうぜ」「…いや、足元を歩く子どもにぶつからないよう、気をつけて歩くようになったって、話だったんだけど」「すまんかった」「俺こそ…」
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1454.
#twnovel 傘はなくていいと思ったし、それは特に後悔していない。車の中から家に入るまでの間、雨に濡れて歩くのがやけに億劫なだけだ。シートを倒す。止む気配はないし、待つ意味はないけど。ただ窓を伝う雨水を眺めて、ただ車体を打つ雨音を聞いて、出たくないなあと何となく横になる。
#秋雨のカノン
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1455.
#twnovel レジの人にはレジ袋いりませんとだけ伝えればいいのに、何故か、マイバッグあるんで、といらん情報を伝えてしまう。たぶん思ってることがつい口に出るんだろうな。「…で?」マイバッグあるんでレジ袋いりません。「エコポイントおつけしゃーす」また言った。レジの人にはレジ袋いりませんと
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【「人は本当に悲しいとき、涙が出ないのだと知った」で始まり「花瓶にバラが一輪だけ差してあった」で終わるお話】
1456.
#twnovel 人は本当に悲しいとき、涙が出ないのだと知った。「涙が出ないのは、本当はそれほど悲しくないからさ」クッションを投げつける。「泣きたいなら、渇いた心から何とかしなよ」ドアの閉まる音に顔を上げると、殺風景な部屋に一点、鮮やかな赤が目に入った。花瓶にバラが一輪だけ差してあった。
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【お題は「目と目で会話する」、メルヘンチックな恋愛作品】
1457.『見つめ合うだけで』
#twnovel 言葉がなくてもわかりあえる関係になろうね。そう誓い合った人と、今では、見つめ合うだけで会話ができるようになった。ウインクすれば思いが伝わる。なんてメルヘンチック。その実はまばたきでモールス信号を送るという白鳥は水面の下では何とやらな努力の賜物だ。メルヘンの維持はツラい。
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1458.『かんたんレシピ』
#twnovel やっべえ買い物忘れて白米とキャベツしかねえ。こんなときこそネットの知恵だ。適当に検索したらキャベツ丼なるものが数種類ヒット。さっそくレシピを『肉を乗せます!』『玉子を乗せます!』『天ぷらにします!』あーーーーご飯に千切りキャベツ乗せてケチャップかけたやつ美味いわ。優勝。
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【「幸せになってください」という台詞で始まり「もう随分昔の話だ」で終わるお話】
1459.
#twnovel「幸せになってください」何様だよと自分でも思うが、失恋した者として言っておきたかった。君の幸せを曇らせないように、また会うときは私も幸せになっているつもりだと決意を込めて。はっと我に返り、再会の挨拶はしないまま背を向けた。あの人だあれの問いをはぐらかす。もう随分昔の話だ。
1460.
#twnovel「幸せになってください」その言葉に、相手は戸惑い、言った本人も戸惑い、何ならその場の全員が戸惑っていた。彼女は咳払いをして、包み込むように手を重ねると「幸せにしてください」と笑った。これが日本一の無責任新郎事件の全容で…つまり僕のことで…勘弁してくれよ。もう随分昔の話だ。
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《ショートコント飯店》
1461.『ハロウィンセット』
#twnovel「大将、このハロウィンセットって何」「カボチャの煮物とキノコ汁」「酒の肴にしちゃ郷土料理っていうか、ヘルシー過ぎない?」「よく知らんが、お盆みてえな行事なんだろ。そんな日ぐらい酒はご先祖様に捧げて、てめえの体を労りやがれ」「みんなが浮かれてる夜に聞く説教は身に染みるな…」
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【「拝啓、愛しい人。どうしていますか」で始まり「そのときの手紙はまだ大切にしまってある」で終わるお話】
1462.『出せなかった手紙』
#twnovel 拝啓、愛しい人。どうしていますか。そこから先が書けなかった。告白するという一番大事な目的を書き出しで果たしたのだから当然か。それでも何とか書き上げて、その勢いで直接告白して、結局追いかけてしまったので手紙に用はなくなった。なので、そのときの手紙はまだ大切にしまってある。
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【「手紙が届いた。差出人の名前はない」で始まり「そうして何事も無かったかのように振舞った」で終わるお話】
1463.
#twnovel 手紙が届いた。差出人の名前はない。こういうとき、郵便局に突き返すと、局員は誰に返送すればいいのかわからず困ってしまうので、署名がないものかと封筒の中身を検める。僕は、封筒に名前を書くのを失念するほど恥ずかしい恋文の帰還に悶絶し、そうして何事も無かったかのように振舞った。
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1464.
#呟怖 こないだハロウィン行ったじゃん、仮装して。こんだけいりゃホンモノの怪物もまじってんじゃね、いや、ヤリモクの俺らこそ怪物か、なんてふざけてさ。俺は結局ダメだったけど。それでよ、相手見つけたって奴らが送ってきた写真、全部同じ女に見えないか。なあ。あいつら、まだ帰ってきてないの。
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【twTorT お題「仮面」or「きかん」】
1465.
#twTorT 誰もが浮かれてる夜に、こっちは仕事かあ。いや、だからこそだと気を持ち直す。トリックオアトリートと声をかけ、妖しく微笑んだ女を路地裏に連れ込み、斬り捨てる。襲い掛かってきた女が、本性を晒して絶命するのを見届けた。標的が油断して出歩く今宵は、我が退魔機関にとって掻き入れ時だ。
1466.
「ククク、仮装して騒いで街に迷惑をかけてやる!」「待てィ!」「貴様、ハロウィン仮面!」「選べ悪党、トリックオアトリート!」「ええい、貴様をもてなす菓子などないわ!」「ならばトリックだ!」「グワーッ!ハッピーハロウィーン!」
#twTorT
仮装者は、一緒にされたくなさそうに帰って行った。




