2019年8月分
№1375~1406
1375.『死神』
#呟怖
祖父の見舞いには毎日のように行っていましたが、もう俺はあの世にいくんだ、と言い出したのは本当に突然でした。その後すぐに亡くなったのも。思いあたるのは、死神です。祖父の病室から出てくるのを一度だけ見た、黒服の女性を、私はそう呼んでいました。あなたですよね。私も、いくんですか。
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1376.『子どもらしからぬ手紙』
#呟怖
祖母のお葬式で、私の息子が曾孫代表として読んだ手紙は今でも親戚に笑い話にされる。明らかに子どもが書く内容ではなく、幼い息子が知る由のないエピソードもあったから、親の私が書いたのだと思われていた。あの時、息子は先生にみてもらって書いたと手紙を見せてきた。祖母は国語教師だった。
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1377.『夏祭りの引換券』
#twnovel うちの夏祭りでは、引換券が1人につき2枚配られる。レートは1枚で冷酒か焼き鳥、2枚でビールが1杯。これってビールを選ぶやついるの、と代表して全員分の引換券を持っていったヤツが、人数分×2杯の冷酒を携えて戻ってきて、つまみはどうしたとボコボコにされるまでが夏の風物詩である。
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1378.『どちら様』
#呟怖
スマホに着信。また同じ番号からの無言電話だ。苛立ち、つい「どちら様?」と訊いてしまった。『スマホをなくしちゃって、自分の番号にかけてるはずなんですが』いや、これは私のスマホですよ。それにどちら様かと伺ったんですが。『私は』反射的に通話を切った。自分の名前が聞こえた気がして。
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1379.『付加価値』
#twnovel 久しぶりに会って話して、これがあの彼女かと驚いた。「私には価値がない」と口癖のように言っていたのに、今は自信に満ち溢れている。何が変えたのだろうと思うと、どうしても刺青が目につく。「わかっちゃう?」と彼女。見送った後も刺青が気になってしまう。なんかバンクシーっぽかった。
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1380.『二礼二拍手一礼、じゃないところもある』
#twnovel 最初にお賽銭を払ってるのに、そのあと正しい手順を踏まないと御利益がもらえないかもしれないなんて悪どい商売ですよね。私がチクリと嫌味を言うと、神主さんは笑い飛ばした。「人間社会にも似たような仕組みのものがあるでしょう。その勉強と思ってください」何のことですか?「保険です」
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【『掌の上』を舞台に、『カレー』と『張り紙』と『音色』の内二つをテーマにした話】
1381.『チャレンジャー』
#twnovel「…待ってくれ、いくら何でも無謀すぎる!あの張り紙に書いてあったろ、誰も成功した者はいないって。あんたにそんな無茶をさせないために俺がいるんだ。そんなに金を浮かす必要があるかよ…」尚も説得を続ける五百円玉を握り込んで、俺は張り紙を指さした。完食したら無料の激辛カレーくれ。
1382.『スマホはポケットに』
#twnovel 私の世界は掌の上で完結する。音楽が欲しければ、ポスターのQRコードをスマホで読み込めば音が鳴る。一瞬かと思いきや、意外と長い。仕方ないから鳴らしたままポケットに入れて歩く。いつも歩いている道なのに、何か新鮮。ポスターに書かれていたのは確か、『歩きスマホをやめましょう』…。
1383.『本場のカレー』
#twnovel 本場インドのカレーは何てすごいんだ。口に入れた瞬間、頭の中に音色が鳴り響いて、気が付けば体が踊り出していた。そして悟った。この世はすべてお釈迦様の掌の上なんだって。踊り狂う俺に、店員が天から覗き込んで言った。オキャクサンマジメンゴ、ウッカリヤベースパイスイレチマッタヨ。
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1384.『口裏』
#呟怖
田んぼの様子を見に行くと言っていた。父が行方知れずとなったあの日、村の誰もがそう答えた。だから警察や消防も、氾濫した川に流されたのでしょう、残念ですがよくあることです、と捜索を打ち切った。そう、この村ではよくあることだ。台風の季節、村の厄介者が、田んぼの様子を見に行くのは。
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【#このお題で呟怖をください『蒼ざめた馬』】
1385.『ラッパと馬の像』
#呟怖
この辺りに学校ですか。いや、ありませんねえ。ああ、このラッパの音ですか。最近どこからともなく聞こえてくるようになりましてね。まあこの音も不思議かもしれませんが、今回取材をお願いしたのはこちらの突然現れた馬の像でして…あれ、罅が入ってる。あ、またラッパ。あれ、罅が広がってく。
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1386.『半分の世界』
#twnovel 電車にも、職場にも、人がいつもの半分しかいなかった。ちょっと前にあった、世界の人口が半分に、なんて冗談を思い出す。案外その方が世界はうまく回ったりして。書類は片付いていくが、その書類が決を受けることはない。気づきたくない。世界は回ってないし、俺は消えた半分の方だなんて。
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1387.『お盆玉』
#呟怖
お盆の時期にだけ顔を見せる親戚がいる。大人たちの宴会をどこか居心地悪そうに眺め、挨拶もなくこっそりいなくなる。一度だけ、不意をついてお盆玉をねだったことがあるが、無一文なんだ、とかわされた。今では私がお金をあげる側になった。六文銭を胸元に置く。やっと見つかって、良かったね。
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【twnvday2019/8/14 お題「賭け」】
1388.『人生を賭けて』
#twnvday たった一度の人生、俺に賭けてみないか。ギャンブル好きの彼女なら、必ず食いつく殺し文句だった。そして俺は彼女に報いるため、一介の博徒から胴元にまで上りつめた。それだけだ。彼女は俺の人生から下りた。勝ち馬に賭けてもつまらないわ。あの女と俺とでは、命を懸けるものが違っていた。
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1389.『誰にも読めない本』
#twnovel 誰にも読めない本だって…? カタログの謳い文句に、失いかけていたオカルトへの好奇心が疼き出した。ヴォイニッチ手稿のようなものだろうか。きっと物凄い熱量で書かれた逸品に違いない! わくわくしながらブースに寄ると『発禁食らったので出品できませんでした』という立札だけがあった。
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1390.『無間地獄』
#呟怖
無間地獄。休む間もなく苦しみを味わい続ける、最も恐ろしい地獄と言うが、冗談じゃない。まさに今、この世のことじゃないか。もう何度も同じことを繰り返して、それでもようやく終わりが見えたとき、鬼がやってくる。あなた、またお中元とおすそわけいただいたわ。ええ、そうめんとすいかよ。
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1391.『野(蛮な)球(技)』
#twnovel「たかが部活動に選手生命を賭けて故障しちゃう高校球児も大概だけど、それを良しとするどころか後押ししてしまう空気は何なの」「そりゃお前、何人壊れようが知ったことじゃないって考えの名残だろう。野球ってのは不良のするものだから、ここでダメになっといた方が社会のためだっていうアレ」
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1392.『猫とタンブラー』
#呟怖
猫がタンブラーに顔を突っ込んでいる。抜けなくなったのかと近づくと「水飲んでるだけ。飲み干すまで構わない方がいいよ」と飼い主。いや飲み干すのは構造的に無理でしょ。猫が退いたので覗き込むと、底まで空っぽだった。何で。たまらず訊いた。あれって本当に猫?「ん?猫だなんて言ったっけ」
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1393.『東京湾にて』
#twnovel 東京湾は大腸菌でいっぱいだったけど、すぐキレイになったって話じゃないですか。今だったら何が捨ててあっても見なかったふりしてキレイにしてくれるんじゃないかと思いましてね。みんな考えることは同じみたいで。最初にあった大腸菌も、先に沈んでた連中から出てきたモンなんですかねえ。
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【『雲の上』を舞台に、『カレー』と『自由』と『独立』の内二つをテーマにした話】
1394.『大空の密室』
#twnovel「お客様、おやめください!」キャビンアテンダントが叫ぶ。ここは雲の上、大空の密室。やめろと言われても、俺はこのために手荷物検査をすり抜けたんだ。「他のお客様もいらっしゃるんですよ!」知るか。ビーフでもチキンでもなく、俺は自由を選ぶ! 蓋を開け、飛行機にカレー臭が充満した。
1395.『雲の上』
#twnovel 雲の上に住んでいるような人。そんな師匠の前で、頭を下げる。「やりたいことができましたが、それは教えに背きます。どうか破門してください」頭を地に擦り付けようとしたら「好きにしな」という師匠の言葉がクッション、いや、雲に。「もう降りられやしないよ」上がったのは、同じ雲の上。
1396.『独立カレー』
#twnovel 独立カレー。インドが植民地を脱した時の喜びをイメージしたカレーらしい。口に入れた瞬間、雲の上まで飛び上がった。こりゃすごい。本場インドの独立の歴史を体で感じ踊り狂う俺に、周りを筋斗雲に乗って飛び回る店員が言った。オキャクサンマジメンゴ、マタヤベースパイスイレチマッタヨ。
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1397.『ファンタジーメシマズレビュー』
#twnovel 転生者が元いた世界の調味料の再現に成功してから #ファンタジーメシマズレビュー と称して、従来の料理をこき下ろす行為が流行している。しかし彼らのほとんどは酷評した料理にマヨネーズさえかけてやれば喜んで平らげるので、レビューの信用度には疑いの余地がある。
#ファンタジー社会問題
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1398.『峠のドライブイン』
#呟怖
山奥で、廃屋のような外観のドライブインに興味を惹かれて立ち寄ると、すみませんもう営業してないんですよ、と店主に断られた。ただね、峠で亡くなって、まだ走り続けてる人がたまに寄るから、そのために開けてるんです。そう言うあなたも既に亡くなっているはずだと、帰り道で告げようか迷う。
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1399.『あらすじを書くだけにさえならなければバレないはず』
#twnovel「夏休みの最後に、映画に連れてって」甥っ子にそうねだられるのは珍しくないが、お前、こういう映画が趣味だったっけ。「これ、原作は小説でしょ。読んだことにして読書感想文を書くんだよ」なるほど、よく考えるなあ。でもそういうことなら、これ、原作と全然違うって教えた方がいいかなあ。
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1400.『ネタ出し』
#twnovel が何も浮かばなくなった。こういうときはアレだ、南米へ飛ぼう。旅行でもすれば何か書けるだろうと表に出たが、思ったより外は暑く、駅に行く途中で引き返して、冷房の利いた部屋に閉じこもった。空想でどこにでも行けるのが小説だと開き直り、物語が降りてくるのをごろごろと待って、寝る。
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1401.『ループオチなんて最低』
#twnovel ずいぶん荒れてるな。何、1年間追いかけてきた物語がループオチだった。1年をなかったことにされた気分、か。なるほど。だがまあ、そう言うな。物語の時間は巻き戻ったとしても、お前の時間はそうはならないんだから。それしかなかったわけじゃないだろ。なあ。この1年間、何してたんだ。
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1402.『レモンが多すぎる』
#twnovel 生絞りレモンサワーとはいえ、レモンが多すぎる? …お客様、ちょっとこちらへ。いいですか。あれはレモンサワー用のレモンとして提供していますが、それは本当の用途を隠すためのフェイクです。そんな戦時中みたいなって…まさしく戦争になるんですよ。唐揚げにレモンをつけ合わせで出すと。
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【現実を見ようとしないやのつく自由業の人といい年して捩じくれた根性の大人、二人のせつないごっこ遊びの話】
1403.『破局』
#twnovel クスリは嫌いだ。そう言ったのは本心さ。だからアンタも俺を協力者に選んだんだろう。昔、憧れた仁義を感じて手を貸してきたが、よく考えれば、悪人を利用しようとする性悪にそんなもんあるわけねえか。ここで俺が奪われたクスリは誰の懐に入るのかね。相棒ごっこは楽しかったよ、刑事さん。
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1404.『受注辞退率』
#twnovel ギルドが依頼主側に提供していた、冒険者の受注辞退率予測のサービスが終了した。各冒険者の受注履歴と、同時期に出されている依頼を照合し、他の依頼に乗り換える確率をスコア化したものである。ダブルブッキングの果てのドタキャン予防策として依頼主には好評だった。
#ファンタジー社会問題
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【#このお題で呟怖をください『とんぼ』】
1405.『とんぼと精霊馬とキュウリ』
#呟怖
とんぼは亡くなった人の魂を乗せてくれるのよ。昔はぼんやり聞いていたが、歳をとって、だからここでは精霊馬を用意しないのかと腑に落ちた。更に歳をとって畑を継ぐことになり、“そういうこと”にせざるを得ない本当の理由を知った。精霊馬にする余裕はない。川に流して、供物にしないと、奴が。
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1406.『我が自由研究』
#twnovel「なに? 自由研究というからには『自由』を研究しようと思い、学校をバリケードで封鎖して、始業式を中止させて自由を勝ち取るまでが研究成果なので学校に来ないでほしい? 先生、そのバリケードが成果でいいと思うから今すぐ見に行くぞ。何なら作り方も教えるぞ先生そういうの経験あるから」




