2019年6月分
№1314~1343
1314.『因果』
#twnovel 入院中に容態が急変、原因がよくわからないまま亡くなってしまった。こんなことなら、医者に止められていた酒をこっそり飲ませてあげたかった。その想いが私を生前にタイムリープさせたのだろう。夜の病院に忍び込んで酒を届けると、驚きながらも嬉しそうに飲み、その直後、容態が急変した。
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1315.『副葬品』
#twnovel 納棺の際、一緒に入れたいものとして、全員が酒を持参したのは呆れた。いくら何でも飲みきれるか。そう思いながらも、結局そのまま焼いてしまった。告別式で振る舞うはずの酒瓶が、突然落ちて割れてしまったと聞いたのは、そのすぐ後だった。おいおい、飲み足りないってか。さすがに笑った。
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《ショートコント飯店》
1316.『たまご酒』
風邪気味になると、たまご酒を思い出す。付き合っていた彼女が作ってくれたんだ。栄養をつけなさいって。久しぶりに飲みたいから大将、一杯つくってよ。
#twnovel
「で、つくってやったら何か違うって言うから、その客の証言通りにつくったのがこれだ」「…焼酎の生卵割り?」「ロッキーハイと名付けた」
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【『猫カフェ』を舞台に、『茶碗』と『転倒』と『音色』の内二つをテーマにした話】
1317.『給仕猫』
#twnovel 近所に猫カフェができたので好奇心で行ってみると、猫が給仕をしているカフェだった。アッこういうものなんすか。お茶を運んできてくれるが頭に乗せているので転ばないか心配だ。無事到着した。一仕事終えた顔で勝手にお茶を舐める。猫舌には熱すぎて暴れ回る。茶碗が割れる。癒されねェ…。
1318.『アヘン窟的な』
#twnovel 近所に猫カフェができたので好奇心で行ってみると、何だか店の中から不思議な音色がする。その正体は店に入ってわかった。寝転んだ猫たちが、聞いたことのないような鳴き声を出しているのだ。店の人に尋ねて、すぐに店を出た。マタタビで酔わせてるんですよ、っていかがわしい店じゃねーか!
1319.『身請け』
#twnovel 近所に猫カフェができたので、好奇心で行ってみたらドハマりした。先日も店のコに茶碗を貢いだばっかりだ。なのにその茶碗が、店のママから俺に返された。「持っていけないからってさ。里親決まったんだよあのコ」何日か後、散歩中のところをすれ違った。首輪の鈴の音色を、背中で見送った。
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【『本の中』を舞台に、『傷』と『光』と『錯覚』の内二つをテーマにした話】
1320.『物語の修復士』
#twnovel「いやあ、外から修復士さんが来てくれて良かった」案内された場所は、なるほどひどく傷んでいた。「頼みましたよ。これじゃあ結末に進めなくてお先真っ暗だ!」彼ら物語の住人は知らない。この先のページを傷ませたのは、数多の読者の涙。私は嘆いた。彼らを光などない未来に導く己の仕事を。
1321.『トリックの実践』
#twnovel この作家はよく、光による目の錯覚をトリックに利用する。実際に本の中に入って確かめ、現実に戻ろうとすると「やめときなさい」と作家本人にあとがきで止められた。「君が何を考えているか咎めはしないが、現実じゃ通用しない。実際にできちゃ困るから、フィクションとして成立するんだよ」
1322.『僕の傷』
#twnovel 気がつけば、僕は傷だらけになっていた。どれも身に覚えはないが、心に覚えがある。すべて本を読んで受けた錯覚の傷だ。おかげで僕は、臆病で何もできないが、優しい人間として生きてこれた。そのせいで負った現実での傷は、どうやら本の中では癒せない。僕の傷から、僕の物語が滲み出る。
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1323.『記者のテクニック』
#twnovel「先輩、報道部にいたんスよね。いい記事書くコツとかあるんスか」「忍耐力、かな」「えーっ。先読みとかじゃないんスか」「それも大事だけど、先読みで記事を書くと、思った通りの言質が取れないと困るだろう。そこで、曖昧な返事を引き出すまで、ごねる」「だからとばされてきたのかアンタ」
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1324.『なんでもかんでもサイゼリヤのせいにするな』
#twnovel「デートで遊園地をせがむ女には辟易するし、結婚して子ども連れて家族サービスもだるいが、ついこっちまで楽しくなる女に恋したいし、子どもと遊園地で家族仲良く楽しめるような結婚がしたい」という男心をサイゼリヤで告白したらフラれた。デートでサイゼリヤをチョイスしたのが悪かったか。
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1325.『高価い酒』
#twnovel「安酒ばかり飲んでないで、高価い酒を飲め」との言葉を、老害の小言と聞き流すことなかれ。金をかけるせいで飲み過ぎずに済むという、口伝えの健康法である。もともとは禁酒を言い渡しても守らない呑兵衛どもに業を煮やした医者が言い出したことだとは、アルコールにより忘れ去られて久しい。
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【twnvday2019/6/14 お題「勇者」】
1326.『嗚呼苦労の紙々』
#twnvday あっ、これはクエストだなと直感があった。これで3軒め、目当ての漫画はない。ここまでやったんだ、手に入れないと先に進めない。俺は冒険をする必要があるのだと暗示をかけ、遠出までして遂にゲット。でもその日は読まずに寝た。おお勇者よ、これしきで死ぬほど疲れてしまうとは情けない。
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1327.『一日一ガチャ(ドアノブを回す音)』
#twnovel 不登校だったころ、同じ通学班だからという理由で迎えに来るヤツがいた。出たくないと言うとあっさり引き下がるが、毎日来た。何でだ。「次は出るかもと思ったら何かやめられなくなって」人をガチャのように。しかも課金なしで出しやがって。ちょっと悔しいから、今日もSSRヅラして表に出る。
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1328.『炎上映画』
#twnovel 観たばかりの映画が盗作疑惑で炎上していた。なるほど、確かに似てると思ったと乗り込もうとしたら、槍玉に上がってるのは設定だった。あんな手垢のついた設定よりもストーリーがアレに似てるだろ!と放り込んだらネタバレすんなと俺に炎上の矛先が向いた。オイ中身観ないで騒いでたんかい。
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1329.『お持ち込みは御遠慮ください』
#twnovel ラーメンを注文したことを忘れられていた。謝罪を適当に流しつつ、店を出る。残念だがもう時間だ。未練を振り切ってゲートを潜る直前に「出前、お持ちしました」とさっきの店員が。追いかけてきてくれたのか。受け取ったが、持ち込めるのかな。映画館の受付の人は視線でダメって言ってるぞ。
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《今日の献立報告》
1330.『セルリー』
#twnovel「今日はセルリーですよ」「ちょっと待った。名前変えただけじゃ騙されない」「はい?」「セルリーってつまりセロリだろ。何でそう言わないんだよ」「育ってきた環境が違うから」「…な、なら、好き嫌いも」「好き嫌いを克服する覚悟はいいですか」「…がんばってみるよ。やれるだ「もっとだ」
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1331.『コスプレ』
#twnovel 何か声の大きい人がいると思ったら、広場で「往来でのコスプレはマナー違反」と喧伝していた。それを聞いて立ち止まった人が慌てて人間をやめた。周囲の人々も続々と化けの皮を脱ぎ、広場は魑魅魍魎だらけに。声の大きい人が視線で助けを求めているが、ごめん俺もいい人のコスプレやめるわ…
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1332.『訓』
#twnovel 十五年ほど前、床屋の待ち時間。後に自分が床屋のおっちゃんが匙を投げるほどの天パになるとは知らなかった頃。その時読んだ漫画の「天然パーマに悪いやつはいない」の言葉に背筋伸ばし生きてきた。そして現在、最終回。「天然パーマにロクなやつはいない」てめっ ふざけんなコノヤロォォォ!
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1333.『新時代取調室』
#twnovel 始まりは警察による取調べの可視化からだったか。調子に乗ったバカどもは「録音します」を流行らせた。凡人に普及すれば、次に起こるのはそれを無意味にする革新だ。(…きこえますか…『容疑者』よ、『刑事』です…今… あなたの…心に…直接… 呼びかけています… )黙秘したい。できない。
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1334.『最初は何だかわかってなかったよね』
#twnovel「タピオカの様子はどうだ」「SNS映えのフェーズはクリア。『撮るだけで捨てるな』の人、発生確認しました」「では次のフェーズ、タピオカチャレンジを流行させろ。『食べ物で遊ぶな』の人が出るまでな」これは、得体の知れないモノが『とりあえず食べ物』と認識される過程を追う、社会実験。
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1335.『私だけに優しい彼』
#twnovel あなたは誰にでも優しい。そういうところを好きになったのだけど、私もその誰かのうちに過ぎなくて、勘違いしているだけかもしれないと不安になった。だから、誰にでもじゃなくて私だけに優しくしてほしい。そう伝えた次の日から、あなたは店員にオラつくようになった。違う、そうじゃない。
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【『酒場』を舞台に、『栄光』と『金網』と『落葉』の内二つをテーマにした話】
1336.『煙い酒場』
#twnovel ぶらりと寄った酒場が何か煙かった。「今が旬の魚介焼き選手権開催中です。いかがですか」と七輪を渡される。選手権と言うだけに、1位の栄光を目指して頑張っている人々の中で、こそこそとうずくまり、煙草の煙を紛れさせる人がいた。ああ、完全禁煙化で割りを食った常連客への救済措置か。
1337.『丸見え酒場』
#twnovel ぶらりと寄った酒場では、間仕切りに金網を使っていた。「閉塞感を感じなくていいでしょう」たしかに。だが、他の客の様子が丸見えというか、酔いすぎで落ち葉がずれて人化けが解けてる狸がいるじゃあないか。「上客向けの品定めを兼ねております。あの狸なんか、シメの狸鍋にいかがですか」
1338.『相席酒場』
#twnovel 相席になったのは、昔の俺だった。「あっちでの暮らしはどうだ。夢の方は順調か」一花咲かせるって信じているのか。悪かったな。俺は振り落とされた落ち葉だよ。「それは家に帰ってから言えよ。酒場じゃ、風に舞ってる途中だろう」キープしたままだったボトルを空け、残った金を握り締める。
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【『映画館』を舞台に、『強運』と『数字』と『呼吸』の内二つをテーマにした話】
1339.『転売防止策』
#twnovel「劇場先着制プレゼント、お客様で最後の1つです」へえ。グッズには大して興味なかったけど、なんかツイてるな。「では、転売防止に質問をさせていただきます」えっ。「映画の中盤、○○が××しますが、そのときに」ちょっ、待っ、これから観る映画のネタバレを堂々とかまさないでくださいよ!
1340.『5D映画』
#twnovel 4D映画は五感を使う体験型とくれば、5D映画とは何ぞや。好奇心で、特殊効果マシマシが期待できるホラー映画を選んだが、普通の4Dだった。何となく身体が重く、眠気覚ましにトイレで顔を洗う。ふと思った。単純に数字を足せば、5Dで使うのは第六感。呼吸が止まりそうな思いで、鏡に、視線を。
1341.『映画みたいに』
#twnovel 出会いは偶然に隣の席になった映画。息を呑むタイミングが同じだった。それ以来、何となく互いの姿を探すと、ほとんどの上映で一緒だった。こんな相手と出会えたのは強運としか言えないが、呼吸が合わないこともある。どっちも映画の主人公をトレースするから、キスはいつも衝突事故になる。
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1342.『光鍋』
#twnovel「最近、闇ってつくとイメージ悪いからな。光鍋をやろう」「光鍋」「それぞれが持ち寄る材料を予め宣言するんだ」「それ面白いのか?」「せーので発表だぞ。せーのっ」「「「ネギ」」」「…おい、誰か肉って言えよ…」「…ハァ?テメェが言えよ…」「光属性とは思えない殺伐とした雰囲気に…」
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1343.『ひと手間』
#twnovel こってり系ラーメン店の朝は早い。今日も未明から見習いがスープを仕込む。「店長が開店準備を始める前に仕上げないといけないんです。誰の口にも入らないスープですけど」そう言って店の床にスープをぶちまけた。こってり系なら床がベタベタであってほしいという客の声に応えたひと手間だ。




