2019年5月分
№1283~1312
1283.『ジャガラモガラ』
霊山にぽっかり空いた窪地、誰が呼んだかジャガラモガラ。ジャグジャグしている地形だから。穴から噴き出る風の音から。名前の由来は諸説あれど、確証に足るものなし。ならば足を踏み入れた者が聞いた、異界の言葉ではないと何故言えようか。耳を澄ませばジャガラモガラ。その呪文の意味は…
#47のべる
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1284.『最後の手記』
#ゾンビが大量発生した体でツイートする
くそっ、何かが起こるとは思っていたのに。
昨日まで何事もなかったから油断していた。
誰にも実感がなかったから発症が遅れたんだ。
まずい、俺にも症状が。
…やり残したことはなかったのか。
ダメだ、おちつかない。つらい。
もどりたい
へい
せい
#twnovel
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1285.『デートには水族館』
「ロマンチックな水族館は女性が喜ぶデートスポットです!」その情報に従い、僕は彼女を水族館に誘った。#twnovel「…という情報を流しているので水族館に誘ってきますが、実際穴場です。変な生き物に男性の方が夢中になるので、喜ぶフリをしなくてもバレません」その情報に従い、私は水族館をOKした。
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1286.『おい、おやじ』
#twnovel「おい、おやじ」「へい」「美味いと評判だというから来たのに、何だこのラーメンは」「お客さん用に特別に作ったんでさあ」「ふざけんな。麺はぬるいし、もやしは味しないし、メンマは妙に酸っぱいし。こんなもの」「子どもの頃に食わされたものと変わらないか」「…うん」「母さん、元気か」
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1287.『動物愛護』
#twnovel「うわあああ!くるなァーッ!」森のあちこちから悲鳴が上がる。彼らを連れて来た者として心が痛むが、必要な措置だ。草むらが揺れ、子狐が飛び出してきた。だが私を見て、また叫ばれると思ったのか逃げていった。これでいい。人に馴れすぎた動物を救うために、動物嫌いたちを連れて来たのだ。
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1288.『すすきの旅情』
北海道の思い出は1枚の名刺。出張先の相手にいい店があると誘われて、てっきりラーメンだと思って付いていったら“夜の店”だった。女の子に経緯を話すと、お持ち帰りを条件にラーメン屋台を教えてくれた。サボりたかっただけ。そう言って名刺の裏に地図を描いた彼女、今も札幌にいるのかな。
#47のべる
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【『美術館』を舞台に、『恩讐』と『数字』と『対決』の内二つをテーマにした話】
1289.『売れない画廊』
#twnovel なぜ無名の画家の画廊など作ったのですか。そう訊くとオーナーは罪滅ぼしだと語った。その画家に絵を教えたのはオーナーで、彼が絵を描くたびに買い取っていた。「匿名なのがまずかった。お前の絵は世に出てなどいないと、世に出しても値がつかないと教えねばと思った。たとえ、恨まれても」
1290.『一番の宝』
#twnovel 怪盗から『この美術館で一番の宝を頂戴する』と予告状が届く。探偵は下見だけして「怪盗は現れない」と断言した。「一番の宝とは、時間だったということです」本当に現れず、無駄足を踏んだ警察に説明する。「ニセモノの美術品ばかり見せられたら『貴重な時間が失われた』と思うでしょう?」
1291.『恩讐美術館』
#twnovel「この『恩讐美術館』は、愛憎入り混じる感情の尊みを広く知らしめる目的で設立されました」「悪趣味な…」「こちらがメインの展示物『心を閉ざしていた自分を懸命に育ててくれた里親こそが親の仇という真実を知り苦悩しつつも受け入れて対決に臨む決意の表情』です」「ン゛ン゛ッッッッ!!」
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1292.『タバコをふかす』
「ま、一息入れようや」
そう言って先輩はタバコをふかした。その洗練された動作は、僕が憧れた大人の姿そのものだった。
「悪い。タバコ、ダメだったか?」
「いえ。じゃあ僕も…電子ですが」
タバコを霧吹きで濡らして電子レンジで加熱する。鍋でふかすのはまだ難しい。
#タバコを全く知らない物書き
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1293.『無人島にもってきたモノ』
#twnovel 一夜明けると無人島にいた。サバイバルしろってか。すぐにそう割り切れる程度には、ろくでもない人生を送ってきた。それは他の連中も同じで、持ち物を出せと言えば、カタギではありえない役立つモノを持っていた。問題は…「俺は…カーネーション…」こいつだけは母ちゃんのもとに帰さねば。
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【twnvday2019/5/14 お題「万」】
1294.『よろず屋、はじめました』
#twnvday よろず屋、はじめました。そんな看板を立てたのは、ハローワーク通いの果ての意趣返し。言われたことしかしない奴というなら、頼まれたことは何でもする奴になろう。そう決意したが、早速難題がやってきた。「戻ってきてください」その憔悴具合はまさに一事が万事。よろず屋、万事休みます。
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1295.『シャリキン』
#twnovel クールビューティな女将さんが目当てで通い始めた店だけど、シャリシャリでキンキンの酒にすっかり夢中になってしまった。足しげく通いつめ、遂に大将が折れた。「実はあれは女房が作ってんだ。それというのも女房はゆきおん」最後まで言うことなく、大将は氷漬けに。今では私が二代目です。
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《今日の献立報告》
1296.『テイクアウト』
#twnovel「今日は時間がなくて、お店から買ってきました。はい、クワトロベンティーエクストラコーヒーバニラキャラメルへーゼルナッツアーモンドエキストラホイップアドチップウィズチョコレートソースウィズキャラメルソースアップルクランブルフラペチーノですよ」「大山鳴動してコーヒー1杯…」
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1297.『父は観に来ない』
#twnovel 父はとにかく試合や発表会という類いの行事に顔を出さない人だった。見なくても私の口から聞けるからいいやと思っていた節がある。そのことに抗議すると「見るよりお前から聞いた方が面白い」とおだてられ、私は満更でもなかった。おかげで、いつもベンチや舞台裏でもくさったりしなかった。
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【『美術館』を舞台に、『コーヒー』と『カメラ』と『鋼鉄』の内二つをテーマにした話】
1298.『監視役の夜』
#twnovel やられた。美術館のカメラを監視する仕事など退屈だろう、と差し入れられたコーヒー。あれに怪盗が睡眠薬を仕込んだのか。カメラに細工されたようなので確認すると『キミの退屈な時間を頂戴する、怪盗ちゃんねる~!』それしか映らないから電源切った。その夜、盗まれたものは何もなかった。
1299.『ヒーロー記念館』
#twnovel この記念館は、今は亡き英雄・アイアンストマックを讃えるために作られた。どんなに濃いコーヒーをがぶ飲みしても胃が荒れないという程度の下級超人であった彼だが、世界を救うために特攻し、真の英雄となった。一説によるともう胃がボロボロで、それを墓まで持っていくためにやったという。
1300.『撮影トラブル』
#twnovel 心霊現象が起こると話題の美術館を訪れた撮影クルー。何があってもカメラを止めない鋼の意志を、早くも揺るがす事態が。「あんたらのお供え、ショボすぎんだけど?」ギャランティを理由に、幽霊が出演を渋り出したのだ。調子に乗った演者が面倒くさいのは、生きてても死んでても同じである。
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【『倉庫』を舞台に、『愛憎』と『オルガン』と『司書』の内二つをテーマにした話】
1301.『古オルガン』
#twnovel 倉庫のオルガンだからといって、常に埃をかぶっているわけではない。持ち主がたまに私を弾きに来る。「イマイチだなあ」とぼやく奏者。イマイチで悪かったな、と私もわざとズレた音を出す。奏者は新曲の演奏に挑むとき、妥協しないために老朽化した私を弾く。憎たらしく、愛おしい我が兄弟。
1302.『弾き手』
#twnovel 書庫にオルガンの音色が届く。誰が弾いているのか知らないが、ここで長い時間を過ごすことの多い僕には小さな救いだった。3年しか聴けなかったということは、生徒だったのだろう。だが数年後、また同じ音色が。元生徒で、新任の教師…すぐに特定できそうだが、やめた。聴けるならいいんだ。
1303.『愛憎版』
#twnovel 蔵書点検で『愛憎版』なる文庫を見つけた。愛蔵の誤字か。手に取ってページを捲ると、落書きでいっぱいだった。「好き!」とか「天才!」など称賛する内容。だが巻が進むにつれ、苦悩する恨み辛みに変わっていく。せめて今は感謝の気持ちでいてほしい。作者にファンレターを書こうと思った。
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1304.『サーカスの子』
#twnovel サーカス団に拾われたからには芸を仕込まれると思っていたが、僕も、顔立ちや背格好が似ている他の孤児たちも、別に特訓は受けなかった。しかも舞台には一度立てば卒業らしい。僕にも出番が来た。演目は脱出ショー。僕は脱出後の位置にスタンバイ。箱の中の子、どうやって脱出するんだろう。
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1305.『もろきゅうでトマトハイ』
もろきゅうでトマトハイ。こんなヘルシーな呑み方、昔の俺なら鼻で笑うだろうな。でも、衰えたおかげで、若い部下に気を遣わず一緒に呑めるようになったよ。
#twnovel
「3軒目でやっとチューハイがお冷や代わりとかついてけねえよ…」「酒豪の噂はマジだったんだな…次からは誘わないようにしような」
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【『離島』を舞台に、『自転車』と『石鹸』と『ハンバーグ』の内二つをテーマにした話】
1306.『事故多発地区』
#twnovel 交通インフラが整備されてない離島で、何故交通事故が多発するのか。鍵は大量に消費される石鹸にあった。自転車が主な移動手段で、たくさん汗をかくから。そういう需要だと思っていたのだが、実際の石鹸の使い方に目にして謎が解けた。島の道路には、速度を出すため石鹸が塗られていたのだ。
1307.『代用』
#twnovel 郷土料理の本質は「材料がないからあるもので代用した」のだと思っている。こんな離島じゃ材料が揃わないのは仕方ないが、ハンバーグに石鹸が入っているのはさすがに意味がわからない。「あ、それはチーズの代用です」何の断りもなくハンバーグにチーズを入れる悪習がこんな離島にまで…ッ!
1308.『放送事故』
#twnovel はい、こちらの島ではですね、ちょっと変わったハンバーグを作るらしいんです。今日はそれを見学させてもらいましょう。まずはひき肉から。牛と自転車が対峙しています。ぶつかり合って負けた方が轢き肉となるわけですね。あー道理で昨日食べたやつ牛っぽくないと【しばらくお待ちください】
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1309.『ネタバレ被害』
#twnovel 映画を観終わったあと、ネタバレを喋りながら出てくるのはやめてほしい。あなたには過ぎたことでも、すれ違った私にとってはこれからなんだぞ。「いやあ、新しい味のポップコーン失敗だったわー。買ったの後悔して映画に集中できなかった」どうしてくれる、こっちはもう買っちまったんだぞ。
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1310.『安全ピンを持つ女』
#twnovel「この女、安全ピンを持っていやがるッ!」騒然とする車内。自衛とはいえそれは過激だと世論は決したはずだった。「持てと言ったり持つなと言ったり、忙しないですね」「何を…いや、これは安全ピンではない。まさか…」かつて持ち歩くべきとされた、女子力の権化。「ソーイング…セット…!」
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1311.『神説教』
#twnovel「異世界転生者の基準に『かわいそうなやつ』ってのはあるのよ。でも『報われるべき』って前提が抜けてることがあってね。君の場合、死んだじいちゃんの分まで頑張ろうと思った。これはいいよね。酒豪だったじいちゃんの分まで飲んで急性アルコール中毒ってかわいそうの意味違うわばかやろう」
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1312.『教唆』
#twnovel「これは殺人です」と探偵は言った。食べものを喉に詰まらせただけの事故じゃないのか。「被害者は明日、釈明会見を予定していた。特に禁酒中であることから、コニャックを大量に飲んだことは何とか誤魔化したかった。唆されたんですよ。『飲んだのはコンニャクだ』と言って、実演するように」




