2019年4月分
№1253~1282
1253.『さみしい』
#twnovel「一人暮らし最高!」そう言うタイミングを窺っていたが、日中は初出勤日でそんな場合ではなかった。家に帰ったら、そもそも言う相手がいなかった。無意識で打った四文字を消して、元気です、と打ち直してメッセージを送る。返事を待つ間、これはエイプリルフールにするべきだろうかと考えた。
*
1254.『顔パス決済』
#twnovel 顔パス決済の導入により、現金はおろかキャッシュカードすら持たずに買い物が可能に。更には、口座に残高がなくても、本人の価値を元手に買い物が可能に。「…って聞いたんですが、それってどういうシステムなんですか?」「質入れみたいなもんさ」「質入れって何を」「臓器とか」「ちょ…」
*
1255.『回復プログラム』
#twnovel 職場の自販機から栄養ドリンクが撤去された。ウソだろ、あれが残業の頼りだったのに。力が入らず、定時で帰る。そんな日が続く。案の定、日中はまったく余裕がない。でも、不思議と残業しなくても仕事が回る。そうか、今まで夜に疲労回復してるつもりでしきれず、日中ボーッとしていたのか。
*
1256.『完全を目指す者』
#twnovel 完全試合とは、1人も走者を出さないことを言う。あいつがいつもそれを目指しているのは知っているが、この局面で無理な勝負は合理的でない。敬遠してノーヒットノーラン狙いに切り替えるよう進言したが、あいつの返事を聞いて、勝負するしかないと思った。「なら死球ぶつけた方が合理的だ」
*
1257.『曇りなき窓』
#twnovel 休日だけどやらなきゃいけないことは山ほどある。体を引きずり車に乗り込んで、すぐに汚れだらけのフロントガラスに気付いた。ああ洗車までしないといけないのか。いや、洗車からしないといけない。駆り立てられるようにそう思った。磨いた窓越しに青空が見える。今日って、晴れてたんだな。
*
【『階段』を舞台に、『豆腐』と『カメラ』と『水槽』の内二つをテーマにした話】
1258.『インスタント・リプレイ』
#twnovel 長い長い階段をぼんやりと上っていたが、ふと思った。やっぱり豆腐の角に頭ぶつけて死んだとか信じられねえ。「では再生して確かめますか?」天使が言った。下界監視カメラとかあるんだろうか。「はい。高度な技術で時間を巻き戻し、死因に納得してからまた死んでもらいます」やめときます。
1259.『ご指名』
#twnovel 踊り場にアクアリウムがある。いい店はここに趣向を凝らすんだよ、とは上司の弁。いいところに連れてってやるよ、と誘われてしぶしぶついて来たが、水槽の中から人魚に微笑まれて俄然その気になった。スマホのカメラで撮り、このコを!と指名する。そして今、僕の前にはお刺身が。あ…れ…?
1260.『どじょう豆腐』
#twnovel どじょう豆腐。どじょうを生きたまま煮て、そこに豆腐を投入すると、どじょうが熱から逃れようと豆腐に潜り込むという料理。非常階段を下りながら、そんなことを思い出した。火事なのに我先にとエレベーターに乗り込んだ人々は無事だろうか。せめて防火用水槽を目指してくれ、どじょうたち。
*
【『本の中』を舞台に、『流星』と『万年筆』と『指輪』の内二つをテーマにした話】
1261.『黒い流星群』
#twnovel 青空や白い雲を塗りつぶすような、黒い流星群が空に現れた。この世が滅ぶ前触れではないかと騒ぎになったが、“彼”だけは落ち着いていた。『この世界の創造主の分身』を名乗る狂人は語る。「この世が滅ぶ?むしろ逆さ。ちょうど筆が乗っているんだろう。万年筆からインクを飛散させるほどに」
1262.『質屋と作者』
#twnovel 私はこの物語の中で質屋を営んでいる。モブキャラだ。ただ、質屋という理由だけで、作者から万年筆と指輪を預かっている。そろそろ取りに来る約束だが…おや、指輪だけでよろしいのですか。なるほど、お幸せに。筆は…折らずに、置くだけ、と。承知しました。お帰りを、お待ちしていますよ。
1263.『セカイ系小説』
#twnovel 放り込まれてみて、昔の自分がどれだけアホな話を書いていたか思い知った。何が『地球を滅ぼす流星を止めるには彼女に指輪をはめるしかない』だ。「ああ、そして」俺の自己投影主人公が言う。「指輪の力で、彼女に流星をワンパン粉砕してもらうんだ」あっこれB級映画にハマッて書いたやつだ。
*
1264.『5人と1人』
Q.暴走したトロッコの先には5人の作業員がおり、線路を切り替えれば1人の作業員がいます。このときあなたは線路を切り替えますか。
A.すみません、決められないのでイージーモードにして下さい。
Q.5人の作業員はスーパー戦隊、1人の作業員は仮面ライダーとします。
A.わあ何も問題ない。
#twnovel
*
1265.『トロッコスレイヤー』
Q.暴走したトロッコの先には5人の作業員がおり、線路を切り替えれば1人の作業員がいます。このときあなたは線路を切り替えますか。
A.両方を救う方法は。
Q.ありません。
A.トロッコそのものを破壊できますか。
Q.できません。
A.何で二択しかない。
Q.TRPGじゃねーんだよ。
A.ムギャオー。
#twnovel
*
【twnvday2019/4/14 お題「成」】
1266.『成れのはて』
#twnvday 就職が決まりばたばたと上京したので部屋の整理に帰ると、成れなかった俺がひしめいていた。ギターはすぐやめちまったな。小説はいつから書かなくなったろう。捨てるか、もう成れないんだから。だって俺は、俺は、したくもない仕事に就いて、何に成ったっていうんだ。残骸の中に倒れ込んだ。
*
1267.『一生一度』
#twnovel 普通に生きていればそんなことする機会は一生に一度あるかないかなんだから、相手は慎重に、人生を棒に振ってもいいと思う人を選ばないといけない。積み重ねもタイミングも大事。不安で緊張してたよ、動かなくなるまで。
#殺すという言葉を使わずに殺すを一人一個表現する物書きは見たらやる
*
1268.『薫陶』
#twnovel インターネットの危険性はよく知っているつもりだから、黎明期を生きた者としてしっかり教育したつもりだ。本名や私生活を晒すものではないと。功を奏して、娘のアカウントは鍵付きだ。私には閲覧許可がない。離れて暮らすようになって、ちょっとおバカなくらいが良かったかなと思うなどと。
*
1269.『初めての料理』
#twnovel この時間は食事中だから、と教えられた時間にあえて見舞いに行った。あまり話したくなかったからだけど、家にいたときよりよっぽど食べているのを見て、何だか去り難くなり、喧嘩するまで話し込んでしまった。食べている姿って、安心する。これが、私の初めての料理が病院食になるまでの話。
*
1270.『♨』
#twnovel「温泉のマークが変わるらしい」「何で?」「今までの♨だと、ホットプレートに見えて温かい料理を出す店だと勘違いされるかもしれないからだって」「ああ、それは洒落にならないな」「そんなに?」「メシ食うつもりでいたのにお湯に浸かれと言われたら、自分が料理されると思うわな」「怖い」
*
《今日の献立報告》
1271.『〇〇づくし』
#twnovel「ガチャってそんなに面白いんですか」「それほどでもないけど」「ある程度当たりが保証されていないと面白くないと思うんですよね」「普通はそうだろうね」「そんな普通の感覚にちょうどいい、一定の確率であたるものがメインディッシュ」「えっ」「今日は牡蠣づくしですよ」「食べづらいな」
*
1272.『犯人は……』
#twnovel SNSを悪用した、映画の「犯人バラし」に対抗するため、制作陣は「劇中で犯人を明らかにしない」ことにした。ちゃんと観て推理すればわかるはずだと。そして「わからないから持ち帰って検証する」映画泥棒が増えると、公式は告げた。「そうです、犯人はあなたたち自身だったのです」炎上した。
*
1273.『居すぐり』
#twnovel「俺、有名グループのメンバーなんだけど。知らない?」いきなり話しかけられて、戸惑いながら「知らない」と答えると、男は殴りかかってきた。すぐに取り押さえられたが、もう釈放されるという。まずい、きっとまた襲いに来る。あの質問で擬態を見破られたのだ。早くこの惑星を脱出せねば…。
*
1274.『南極レポート』
#twnovel 南極探検隊は「人間のような生物に遭遇した」という耳を疑う報告をした。後に、それはペンギンのことだとされるのだが、証言内容に妙な食い違いがある。ペンギンは鳥なのだが、探検隊が食した生物は鯨肉のようだったと。ニンゲンという未確認生物の存在が語られるのは、もっと先の話である。
*
1275.『無責任飼い主』
#twnovel 王族がペットに無責任なのは度々指摘されてきたが、その最たるものはドラゴンだ。成長して邪魔になると捨てる。しかもある目論見から勇者に処分させるのだ。人に馴れているはずのドラゴンが勇者に牙を剥いて守ろうとするのは、可愛がってくれた結婚適齢期の王女である。
#ファンタジー社会問題
*
【『近未来』を舞台に、『風来坊』と『絵筆』と『自由』の内二つをテーマにした話】
1276.『押し売り』
#twnovel「お、お、おにぎりが欲しいんだな」絵筆ひとつで旅をしている。我が家を訪れた風来坊はそう言った。「そんな!お米なんて、いくらすると思って…」「も、もう描いてしまったんだな。用意できないなら、い、家の壁ごと絵を持っていくんだな」近未来。芸術家が押し売りをはたらくディストピア。
1277.『未来は今』
#twnovel 自由に描きなさい。そう言って渡された絵筆で、私は画用紙に空とぶ車を描いた。その時からすれば今は近未来。遂に空とぶ車が市販化される。更に先の未来では、低価格の車が増えて空も規制されるだろう。空を自由に走るには近未来の今しかない。ということで、ちょっとお金の御相談をですね…
1278.『遠くない未来から』
#twnovel「自由を求めて風来坊になった」そう言ったのは、遠くない未来から来たという俺だった。よくそんな決心がついたな。「それだけの時間があったのさ」未来と言っていたけど、いつから来たんだ。「令和」令和。「10連休を越えた先の、そう遠くない未来さ」こいつ、5月病にかかっただけだな。
*
1279.『新幹線トラブル』
#twnovel なぜ大型連休に限って新幹線のトラブルが頻発するのか。有識者に見解を求めた。「単純な重量オーバーでしょう」定員は厳守されるはずでは。「新幹線は人の想いも乗せて走ります。乗客の気が重いと当然車体に負担がかかる。実家への帰省、家族サービス…要は、本当は行きたくないんでしょう」
*
1280.『ショーマン』
#twnovel 彼がいつか言っていた。「俺には夢がない。だが誰かに夢を見せることはできる」ショーが始まれば、誰もが彼に魅了された。なのに突然、姿を消した。夢ができたんだと言っていたよ。夢を見たいっていう夢が。今頃、ステージに立てなくなった自分に夢を見せてくれる後進を育てているところさ。
*
《今日の献立報告》
1281.『からあげ』
#twnovel「今日はからあげですよ」「あっごめん、俺もコンビニで買ってきちゃった」「大丈夫。鳥じゃないからかぶってませんよ」「じゃあエビとか?」「うふふ」「そういや、軒先の蜂の巣なくなってたね。業者さん来たんだ」「いえ、お金がかかるので私が処理しました」「処理って?」「からあげです」
*
1282.『暦』
#twnovel「最後、最後と、何をこの世の終わりのように騒ぎ立てていやがる」と、爺さんが嘆く。「振り回されて、それほど暦が大事かねえ…」大事だよ、と心で呟いた。入院当初はボケかけてたのに、時計を持ち込んだら何時だと意識するようになり、テレビを解禁したらこんなにやかましくなったんだから。
ありがとう平成。




