2019年2月分
№1208~№1236
1208.『略奪』
#twnovel「ヒャッハー!」モヒカン市民たちがスコップで雪をトラックの荷台に積み上げていく。「やめてくれ!雪はこの村の観光資源なんだ…」「黙れ!雪祭りの雪が不足してんだよ。寂れた村より市街地に寄越しな!」実は望むところだが、そう言うと雪かき代を取られるので村民は嫌がるふりをしている。
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1209.『打ち上げ花火、一人で撮るか……』
#twnovel もうすぐ花火が上がるので、手ぶらで場所取りをする。食べながら見るのは風情がない、というわけじゃなく、動画撮影が目的だ。「あれ、手ぶらなの?」面倒なのに見つかった。荷物を持たされ…ずに、手を握られた。「良い心がけね」撮影は…いいか。記録より、記憶に残そう。手を握り返した。
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1210.『鬼の説教』
#twnovel 正座しろ、と鬼は言った。「俺も長く鬼やってきて、色んなパターンで豆をぶつけられたよ。豪速球だったり、袋ごとだったり。そうそう、豆がないからって柿ピー投げられたこともあったな。それと同じ考えなのかもしれないけどさ」鬼は嘆息する。「納豆はないだろ」ネバネバの鬼に頭を下げた。
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《異常聴取》
1211.『そこまでするつもりはなかった者の供述』
#twnovel 相手を害するつもりは…なかったと言えば嘘になります。怖かった。昔からそういう存在だと教わってきたし。でも、退けるために必要なものを用意してなくて。近いと思うものがそれしかなかったから咄嗟に…まさか豆腐の角をぶつけたら死ぬなんて。鬼って本当に豆がダメなんですね、刑事さん。
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1212.『リアクション』
#twnovel 俺は笑いを獲るためになら何でもやってきた。どんなに酷い目に遭っても、俺が辛そうにしているのを見て人が笑うならそれで良かった。なのに、それで笑わない人間に会ったのは、嫁に続いて人生2度目だ。「赤ちゃんは笑ってみせると笑い返すのよ」…本当だ。君の遺伝かな。「そうでしょうね」
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1213.『湯の女神さま』
#twnovel 風呂から女神が出てきた。「あなたが落としたのは、こちら森の香りの入浴剤ですか。それとも檜の香りの入浴剤ですか」…森の方です。「正直ですね。両方差し上げましょう」いなくなったので、また入浴剤を入れた。また出てきた。「あなたが落としたのは」もういいから風呂に入らせて欲しい。
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1214.『老刑事』
#twnovel 長年刑事をやってるが、一番手こずるのは若い連中が相手のときだな。捜査はある程度、犯人の動機に沿って、同じ気持ちや考え方になる必要がある。若い奴らだと「面白いから」が多いな。単純でいいじゃないかと思うかもしれないが、ところがそれが難しい。何故かって。何も面白くないからだ。
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1215.『役者は所詮、舞台装置』
#twnovel 役者は所詮、舞台装置。監督のその発言には、なんて古い考え方だと憤った。でもその後、思想的に問題がある作品の出演者を守るための理屈だと知った。そんな作品が減った今では時代遅れかもしれないが、別の理由で必要かもな、と思っている。役者1人の問題で、公開中止はたまらないよなあ。
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1216.『原作はあくまで別物』
#twnovel 原作はあくまで別物。監督のその発言には、なんて古い考え方だと憤った。でもその後、命令による路線変更について原作者を立てるための理屈だと知った。原作通りを重視する今では時代遅れかもしれないが、別の理由で必要かもな、と思っている。原作者の炎上で、企画倒れはたまらないよなあ。
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《今日の献立報告》
1217.『肉の日』
#twnovel「今日は肉の日です」「そーですね」「なので肉料理です」「おお」「でも給料日前ですよね」「はい」「贅沢できませんね」「うん」「ところで生きとし生けるものはすべて肉ですよね」「まあ」「魚だって魚肉って言いますもんね」「ああ」「その路線です」「はあ」「今日はイナゴの佃煮ですよ」
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1218.『本末転倒』
#twnovel 去年は溶かしてしまった仮想チョコだが、今年は運用をプロに委託することにした。仮想彼女だ。仮想チョコの取り扱いに長けている仮想彼女なら、きっとバレンタイン当日には何倍にもして僕に贈ってくれるだろう。あとは元手にする本物のチョコを用意するだけ。くれる本物の彼女を作るだけだ!
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【深夜(または夜)の教室」で登場人物が「さよならを言う」、「花」という単語を使ったお話】
1219.『卒業の夜に』
#twnovel さよなら。それだけ言って、最後の思い出にするつもりだった。なのに、話し込んでしまってもう夜に。もっと教室でこうやって話したかった。それはこっちの台詞だ。最後の最後に、どうしてこんなに会話に花が咲く。明日からどうするのかも知らないのに。さよならを言わなければいけないのに。
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【twnvday2019/2/14 お題「溶ける」】
1220.『いいねチョコ』
#twnvday チョコ溶かされた。そりゃ、ハートで本命チョコっていうのが恥ずかしいから、『いいね』チョコってことで誤魔化したけど。それにしたって「不気味だから作り直し」と溶かすのはあんまりだ師匠。自分の手を型にしたチョコが、親指を立てて湯煎に沈んでいくシーンは涙なしでは見られなかった。
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【『殺人現場』を舞台に、『傷』と『傘』と『錯覚』の内二つをテーマにした話】
1221.『遺痕』
#twnovel 殺人現場の床には、杖で突いたような傷がそこら中にあった。犯人は脚が不自由で、殺害の際に杖を激しく振り回した。捜査員はそう考えていたが、実際の犯人は杖など所持していなかった。「あれは傘です」傘。「嬉しくなって、傘の先端でリズムをとりながら小躍りしてただけですよ、刑事さん」
1222.『犯行目的』
#twnovel 捜査が遅れたのは、犯行当時に雨が降っていたと錯覚していたから。それは現場に傘がなかったからだ。正確には、凶器となった犯人の傘の代わりに、被害者の傘が消えていた。しかし犯人の目的は、雨が降っていようがなかろうが傘を持ち去ることだったのだ。取り違えられた傘を取り戻すために。
1223.『幻痛』
#twnovel 現場では傷が疼く。俺は無傷だが、被害者が受けた傷と同じ箇所が勝手に痛みだすのだ。ただの錯覚さ。だが解決と共に痛みが引いていくのを何度も経験すると、刑事は天職なのだと思うようになった。その職を全うできて本望だ。痛みに慣れた体は、撃たれた後に撃ち返すだけの時間を俺にくれた。
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1224.『妥協メシ』
#twnovel 店の人には失礼なので言えないが、ここでいいやと思った店に入るのが好きだ。素朴な内装、凡庸なメニューは予想していたが、まさかテレビもラジオもついていないとは。人のよさそうな店主に会釈し、店にそぐわないと思い、俺はスマホを仕舞った。たまにはレポなんて忘れて、普通に食べるか。
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1225.『施工不良問題』
#twnovel 施工不良問題の拡大は、魔王城にまで及んだ。退去を余儀なくされた魔王は、先に宿屋から退去していた勇者と合流し、損害賠償を求める原告団を結成することを表明。突如として訪れた平和に、家の天井だけでなく敵味方までひとつにつなげたかと、市民は逆に感心している。
#ファンタジー社会問題
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1226.『アイドルライブ』
#twnovel「あのアイドルライブ、何かあったんスかね。客がみんな途中で帰ってますよ」「ああ、あれは元カノ系アイドルのファンだよ」「元カノ系!?」「アイドルになる夢を叶えるために別れた彼女が、ステージで歌ってる。その姿に満足して、元カレ面で途中で帰るんだ。だからライブには誰も残らない」
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《ショートコント飯店》
1227.『やっちまったラーメン』
「大将、この『やっちまったラーメン』て何?」「うっかりしてスープの味つけ失敗したラーメン」「出すなよそんなの!」「胡椒をどっさり入れてやっと食える」「だからそんな…どっさり?」「どっさり」「つまり…」「思いっきりやれ」「…せいっ!ああーっ、やっちまったー!」#twnovel 楽しかった。
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1228.『平成最後のスーパームーン』
#twnovel 平成最後のスーパームーンだから。そう思えば、外に出てみようと誘うのは気楽だった。本当に月のきれいな夜なら、月がきれいですねなんて簡単に言えると思った。なのに生憎の曇り空。どうしようかと困る様子を笑われて、本当は何を伝えたかったのかを思い出す。僕は冷たい空気を吸い込んだ。
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【『海』を舞台に、『茶碗』と『苦悩』と『城壁』の内二つをテーマにした話】
1229.『欠けた茶碗で』
#twnovel 茶碗が欠けた。これは死活問題だ。新しい茶碗を調達しようにも、海の上ではそう簡単にはいかない。というかここはそもそも海なのか。私はいったいどこに向かっているのか。ひとりぼっちの航海に苦悩は尽きない。欠けた箇所から入り込んでくる海水をかぶりながら、一寸法師は茶碗の船を漕ぐ。
1230.『築城の呼び声』
#twnovel 築城にあたっては悩みの種があった。城壁の問題だ。この地は潮の満ち引きの幅が激しく、城壁の高さを見誤れば城内への浸水を許してしまう。だが高くしすぎると工期が延び、潮に飲まれる者も増える。そもそも建てなければいいのはもっともなんだが…どうにしてもここにと、声が…いあ、いあ…
1231.『謎は解いたと思ったそばから新たに生まれるものである』
#twnovel 海の底に城壁らしきものがあると噂が立った。真偽を確かめるために調査員が訪れると、城壁は確かに存在し、更には建築した知的生命体とまで接触した。確認を終えて調査員は去り、彼女が乗っていた茶碗のような潜水艇は、俗世の荒波の中に棲む民の間で『うつろ舟』と伝えられるようになる。
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【『もっふる島のもふもふさん達空を飛ぶ』】
1232.『タイトルから思ってたのと違う』
#twnovel もっふる島のもふもふさん達は、ある日思いました。「ぼくたち、どうしてもふもふなの?」毛だらけなのをもふもふさん達は「そうか、ぼくらは鳥なんだ」として、飛ぶ練習を始めました。でも、もふもふだというだけで飛べるはずもなく…努力がコミットされた結果、今の呼び名はマッスル島…。
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【『玄関』を舞台に、『風来坊』と『紅茶』と『ゆで卵』の内二つをテーマにした話】
1233.『茶葉の宅配便』
#twnovel チャイムを聞いて玄関に出ると、宅配便が届いていた。あの風来坊が、便りの代わりに送ってくるようになったものだ。中身は茶葉の詰め合わせ。「いい茶葉らしいからさ」宅配便を持参した男が言う。「やっぱり、あんたに淹れて欲しくてね」紅茶を求めてさすらうくせに、よく戻ってくる風来坊。
1234.『フット・イン・ザ・ドア』
#twnovel 玄関の扉に足を差し込まれた。しまった、これは押し売りだ!「紅茶で茹でた卵いかがですか!」案の定くだらない商品だ!「卵にポリフェノールが染み込んでます!」それに何の意味があるんだ!「ポリフェノールの効能で卵アレルギーを軽減します!」うわっ説得力ある!聞いちゃダメなやつだ!
1235.『風来坊のハンプティダンプティ』
#twnovel どこからともなく、風来坊のハンプティダンプティがやってきた。「今日は、こちらのお宅にお邪魔しようと思いまして」それはいいけど、その体で玄関通る?あ、ちょ、そんな無理に…あーあーバラバラになっちゃって。風来坊っていうなら、破片もどこへともなく消えて欲しい。片付けめんどい。
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1236.『ぼっちでロック』
#twnovel ひとり呑みで重宝するのは #氷の吐息。お酒を口に含んで転がせば、氷いらずでロックを味わえる。ひとりで黙々と嗜むのが前提だが。「先輩、ここにいたんですか」ひとりで…「何飲んでるんです?」飲み会では無理な話か。答えようとして、ああ、と漏れ出た吐息は、氷とは程遠い熱量があった。




